Archive for the ‘映画の感想’ Category

格闘技最強はチビ!ザ・レイド

金曜日, 11月 9th, 2012

プンチャック・シラット

『ザ・レイド』はすごいアクション映画だった。20人のSWAT隊員たちが、麻薬王が支配する高層マンションに強制捜査(レイド)に入る。彼らは誰にも気づかれないように麻薬王の部下たちを一人一人確保or殺害していく。だがその時、マンション中にあるスピーカーから麻薬王の声が聞こえてくる。

「住人諸君、お気づきのとおり今日は客人が廊下をうろついている、すぐに駆除にしろ。そして楽しむことを忘れるな」

そう、マンション住人全員が敵となったのだ!凄まじい銃撃戦と爆発が始まる。そして敵も味方も弾丸が尽きてくるとき、最強格闘術のシラットが炸裂する!


全編に渡って暴力的なアクションが展開する。設定もストーリーもシンプルでセリフもほとんど無いけど、ネタバレ要素はたくさんあって、観客がアクションに飽きてくるとネタが明らかになっていくタイミングが絶妙だった。この手の設定ではやらざるを得ない「敵の中に潜入捜査官がいた!」をあえてやらなかったのも偉い。

どうしてもシラットに注目がされるけど、音楽や銃撃戦もカッコいい。銃撃戦すら始まっていない序盤のストイックな演出もいい。久々に良い気分になれるアクション映画だった。


2012年は『バキ』と『タフ』という俺がガキの頃から大好きだった二大格闘漫画が終わってしまった。この二つの格闘漫画に限らないけど格闘漫画には「勝つ側の法則」がある、料理マンガの対決は後出しのほうが勝つみたいなやつ。格闘マンガの法則は「身長が低いほうが勝つ」というものだ。例えば『バキ』では32人トーナメントが行われるんだけど、背が低いキャラのほうが勝率高いのでベスト4に残るキャラのうち3人が低身長キャラだったりする。

格闘技はもちろん身長が高いほうが有利なので、格闘マンガの主人公は背が低いことをあえて強調されている。背が高いキャラと対峙するときの「デカい相手にはかなわんわ」という雰囲気を煽るためだ。格闘マンガなら「身長差のハンデキャップをどうやって乗り越えるか」がきちんと描かれるけど、映画の場合はもっと単純。主人公が戦う相手はプロレスラーみたいにデカい男、そんな男と面白おかしく戦うだけで主人公が身長差を乗り越えていることに説得力はない。

で、『ザ・レイド』の場合なんだけど低身長キャラは主人公ではない、敵キャラのマッドドッグという男だ。映画の序盤でSWATの隊長が「強制捜査に入るビルはとにかくヤバいビルだけど、マッドドッグはさらにヤバい」と説明されるほど高い危険度を持つ敵キャラクターだ。このマッドドッグが身長差をものともせずシラットを駆使してSWAT隊員と戦っていく。身長差があるからこそ観客にはマッドドッグの格闘術の凄まじさが余計に印象付けられる。その凄まじさ格闘マンガを実写映画で観ているかの如くだ。『ザ・レイド』は『バキ』と『タフ』の二大格闘マンガの喪失を埋めてくれる作品だ。


オマケ

川崎タカオ(漫画家)、古泉智浩(漫画家)、笹原和也(CGアニメーター/監督)、ジャンクハンター吉田(映画ライター)、早田恭子(日本プンチャック・シラット協会会長)、高橋ターヤン(格闘ライター)、中田圭(映画監督)、わたなべりんたろう(ライター、監督)という豪華なメンバーが参加した『ザ・レイド』の応援ユーストに俺も参加させてもらいました。

立場的に俺が一番下っ端なので「俺がシラットの実験台になったほうがいいんスかねぇ」と言ったところその通りになりました。気分は危険なロケをやらされるお笑い芸人。圧倒的身長差を乗り越えられて女性に倒される破壊屋管理人を紹介します。

プンチャック・シラット

『ザ・レイド』の応援ユーストに集った各界の男たち。唯一の女性は日本プンチャック・シラット協会会長の早田恭子さん。

プンチャック・シラット

見よ、この身長差!早田さんはかなり小柄な女性なのに対して、俺は身長179センチ。

プンチャック・シラット

「グヘヘヘヘ、ちいさい女が好きなんだよぉ」とスパイダーマンの格好には似合わないけど、顔には似合っているセリフと共に襲い掛かる。しかし早田さんの右腕は既に俺に狙いを定めている。

プンチャック・シラット

0.3秒後。

プンチャック・シラット

身長差も性別による筋力差もあっさりと乗り越えられた。このまま右ひじの関節を逆側から押されて無理やりしゃがまされる。

プンチャック・シラット

「こうすれば左手で反撃したくても届かないんですね」と早田さんが解説しているのを聞いて、自分が詰んでいることに気が付いた。

プンチャック・シラット

顔に寸止めで蹴りを入れられる俺。これ実戦で食らったら体のダメージもすごいけど、それ以前に心が折れるよね。

プンチャック・シラット

俺を取り押さえながらシラットを解説する早田さん。スパイダーマンパーカーを着ていなくて会社スーツのままだったら「駅員さん、この痴漢をお願いします」って感じだろう。

プンチャック・シラット

早田さんは暴力嫌いらしいんだけど、ナイフの使い方について説明しはじめた…俺はこのとき「え?ナイフ?どういうこと?」と思ってました。シラットの型にはナイフもあるらしいですね。早田さんは対ナイフの戦い方として「間合いから逃げる」と説明する。ソレ、マジで実戦じゃねえか。

プンチャック・シラット

「グヘヘヘヘ、女の肌切り裂くのが趣味なんだ」とテレビのリモコンをナイフ代わりに襲いかかろうとする。さあ間合いに入るぞ!

プンチャック・シラット

まあ結果は同じで一瞬で右手首を取られました。この日一番歓声があがった瞬間でした。

チビの格闘の達人が出てくる映画といえばジャッキー・チェンの『ゴージャス』
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『神秘の法』は観るだけでリューマチが治る奇跡の映画

月曜日, 10月 8th, 2012
神秘の法

宇宙人たちがUFOに乗って地球にやってきて、日本や中国の保守派と手を組むという内容。コメディ映画の『アイアン・スカイ』と同じ設定だけど『神秘の法』はコメディじゃないよ。左からタターガタ・キラー、張麗華(チャン・レイカ)、獅子丸翔、シータ。

神秘の法

大川隆法、人間やめるってよ

幸福実現党はボロ負けするわ、教祖の愛人問題で教団が内部分裂するわ、信者数が増えないので教義本の購入ノルマがキツくるなるわと、信じる者が救われない状態となっている幸福の科学だけど、彼らの最新アニメ『神秘の法』が公開された。俺が劇場に行った際には、映画が始まった瞬間に隣の席の人が「あ、間違えた」と退出した。きっと『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』と間違えたのだろう

比較的常識人である大川隆法の息子が製作した『ファイナル・ジャッジメント』に比べて、『神秘の法』は大川隆法本人の意見が強く反映されているため、大変クレイジーな映画となっている。なぜならここ数年の大川隆法は宇宙人と交信しているからだ

幸福の科学の教義内容には2年ほど前から「宇宙人」ネタが多く登場するようになった。詳しくは「幸福の科学を暴走させたハリウッド映画」を読んでもらうとして、その教義内容はというと「宇宙人が地球人として暮らしている」「中国人はレプタリアン星人に乗っ取られている人が多い」というもの。『神秘の法』はそんな教義内容をアニメ化したものだ。

警告

これより完全ネタバレのストーリー解説になります。

映画を観るだけでリューマチが治るそうですが、あなたはそれでもネタバレを読みますか?

神秘の法

『神秘の法』の公式サイトでは車イスから立ち上がれるようになる人も⇒奇跡を呼ぶ映画「神秘の法」 ――試写会で奇跡が続出!

地球破壊爆弾
  • 舞台は202X年の日本:出雲の沖から帝国ゴドム(以降:中国と表記します)のステルス潜水艦が次々に浮上してくる。自衛隊は何をやっていたのか!実は中国のステルス潜水艦は宇宙人の技術を応用しており、超音波を吸収するから見えないのだ!って解説がつくけど、レーダー対策できてもソナー対策はできないよなぁ。
  • 浮上した潜水艦を目撃した日本人たちは潜水艦を写真に撮ってネット上にアップするが、中国は日本のネット環境も支配していたので画像を次々に削除していく。そのせいで自衛隊も米軍も事態に気が付かない。
  • 中国に宇宙の技術を提供しているのは、張麗華(チャン・レイカ)という美貌の貿易商だ。また中国は仮面をかぶった皇帝:タターガタ・キラーの元に世界統一を目指していた。張麗華が提供する宇宙の最新技術はその野望の役に立った。
  • タターガタ・キラーはさらにとんでもない技術を持っていた、それは最終破壊兵器だ。最終破壊兵器とは6兆度の爆弾のことだ。6兆度とは太陽の40万倍の熱さで、ウルトラマンを倒した宇宙恐竜ゼットンよりも6倍も凄いのだ!
  • 張麗華はタターガタ・キラーが最終破壊兵器を持っていたことに動揺する。なぜなら地球上で6兆度の炎が生まれれば地殻まで影響を受けて地球は崩壊するからだ。でもタターガタ・キラーは「それでもOK」って感じ。

『アウトレイジ』みたいにイイ顔している中国の幹部たち
神秘の法

幸福の科学のクリスタルスカル
  • 中国は南台(間違いなく台湾のこと)を侵攻しようとしていた。アメリカ軍は南台を守ろうとしていたが、オバマ大統領が軍事費削減を行ったせいでアメリカ軍は弱体化、アメリカ軍空母はステルス潜水艦によって日本の領海内で撃沈される。
  • 日本は憲法9条のせいで中国軍の侵略を防衛できない状態であった。さすがにそれは無いと言いたいけれど、この映画は「何もかも憲法9条が悪い!」というスタンスです。
  • その頃、ペルーのチチカカ湖からクリスタルの杖が見つかる。これは大川隆法が語っているけど『インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの魔宮』を観て思いついたプロットだそうです。『インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの魔宮』も宇宙人ネタだしね。

無能な日本の政治家たち。民主党批判をしているんだろうけど、さすがに民主党議員そっくりに描くまではやらなかった。でも女性議員が日本を見捨てるシーンはネトウヨ的見地の蓮舫議員を思わせる。

神秘の法

ヘルメス・ウィング
  • 映画の主人公:獅子丸翔はヘルメス・ウィングという世界200々国に展開する秘密結社のメンバーだった。ヘルメス・ウィングは反中の言論人を中国から守る活動を行っている。
  • 翔は日本の保守派の政治家を守るために今日も活躍する。翔には予知能力があるので、どこに中国側の工作員が待ち伏せしているのか読めるのだ。しかし予知能力が役に立つのはこのシーンくらいで、その後の翔は全編に渡って敵の罠にハマりまくる。
  • ヘルメス・ウィングのリーダーはジェネラル(総督)と呼ばれる。ジェネラルは翔と見つめあい「いい目をしているから」という理由で、次のジェネラルに翔を指名する。
  • 翔の親友が裏切ったためヘルメス・ウィングの秘密基地の場所がばれてしまい、ヘルメス・ウィングは壊滅状態になる。さらにジェネラルも殺され翔も襲われる。翔の窮地を救ったのは催涙ガスで武装した仏僧たちだった。
  • 仏僧たちのリーダーはダラニという間違いなくダライ・ラマをモデルにした老僧だ。ダラニは翔のことを再誕の仏陀であると伝える。その根拠は2500年前の壺の中に、そう書かれた預言書が入っていたから。「その壺、金属製ッスよね?2500年前なのに」とツッコミ入れる翔だが、この壺はオーパーツとのこと。

この人が主人公。

神秘の法

日中開戦&日本敗北
  • ジェネラルの座を継いだ翔は八正道を読んで禅定する。八正道ってのは釈迦の教えで、禅定っていうのは瞑想だと思ってください。
  • 禅定する翔は霊的存在である木花咲耶姫(コノハナノサクヤビメ、日本神話に出てくる女神)と出会う。木花咲耶姫は翔に霊界の存在を伝える。また翔は中国軍の侵略を予知する。
  • 出雲の海にいた中国軍がついに上陸作戦を開始しよう進軍開始する。中国軍の動きを予知している翔は出雲の人々を救うために一軒一軒家をピンポンして中国軍の侵攻を知らせるが、大体3,4軒くらい回ったところで中国軍の上陸が成功し出雲は占領される。
  • タターガタ・キラーはさらに悪竜を召喚する。こいつは悪竜と悪魔に憑依されたタターガタ・キラーが合体したので「悪竜キラー悪魔」という超カッコいい名前がついています。
  • 悪竜キラー悪魔に対抗して木花咲耶姫はヤマタノオロチを召喚し撃退する。ヤマタノオロチは雲型なので、でどことなく『天空の城 ラピュタ』の竜の巣っぽくてけっこうカッコいい。
  • しかし首相が無能なせいで日本全土は占領され、日本は中国の自治区となる。
  • 中国に占領された日本では、宗教の本を持っていただけで死刑(捨て忘れでも死刑)、小学校では反日教育をするようになった。「俺って日本人じゃないのか?」と呟いただけでも逮捕される。

最近はこのくらいやらないとDQNネームとはいえない。でも悪竜キラー悪魔ってことは悪竜を倒す側じゃないの?

神秘の法

王女シータ
  • 再び禅定する翔はリエント・アール・クラウドと出会う。リエント・アール・クラウドは翔の前世だったのだ。
  • ここでちょっとリエント・アール・クラウドについて解説します。幸福の科学の教義ではリエント・アール・クラウドとは大川隆法の前世の一人で、幸福の科学の教義の中でも最高クラスの神です。ちなみに『太陽の法(2000)』ではリエント・アール・クラウド=7000年前の古代インカ帝国の王という設定だったのですが、「インカ帝国って15世紀だろ!」というツッコミが入り、『神秘の法』では「7000年前の古代アンデス文明の王」ということになっています。
  • 翔はリエント・アール・クラウドからUFOを呼ぶ力を授かる
  • 翔はUFOを呼び、金星人のユチカと会う。翔の前世はユチカの上司だったらしい。ユチカは張麗華と翔を会わせようとする。
  • 張麗華の家に忍び込む翔、張麗華は宇宙超能力によって翔を拘束するが、翔はそれに対抗して天使たちを召喚して張麗華を空中に拘束する。天使たちが女性を拘束するという結構スゴいビジュアル
  • 天使たちが張麗華を解放したので、張麗華は空中から地上に落下していく。それを『天空の城 ラピュタ』方式で受け止める翔。そして観念した張麗華は語り始める。「私の本当の名前はシータです」

金星人のユチカ。幸福の科学における人型宇宙人はたいてい白人。

神秘の法

妊娠上書き中出し
  • アジア人風の張麗華が変装を説くと白人風のシータが出てくる。シータは琴座のベガからやってきたのだ。ベガには高度な宇宙文明がありシータはそこの王女だった。あのーベガって太陽よりも熱いんですけど
  • ベガ人たちは他の国と戦争した結果、最終破壊兵器を使われてしまい滅んでしまったのだ。生き残ったベガ人たちは地球に移住する許可をリエント・アール・クラウドから貰って地球に移住した。
  • 移住の方法は妊娠中の地球人女性たちの胎内に入ったり戸籍がしっかり管理されていない中国人の体を乗っ取たりすることだ。
  • シータはさらに多くのベガ人たちを地球に移住させるべく、移住用の土地としてアフリカ大陸を貰おうとした。そのためには地球を一つの勢力で統一する必要があるのでタターガタ・キラー&中国と協定を結んだのだ。
  • ひどい発想だけど、この協定は現実の話なのでみなさん信じるように!ソースは大川隆法です。大川隆法がアメリカのエリア51やゴビ砂漠の中国軍事基地を遠視して宇宙人と政府の協定を確認しました。

エリア51に霊体を潜入させる大川隆法、オマエは秘密をバラしたけど絶対消されないから安心しろ。

神秘の法

悪の宇宙&中国 VS 地球
  • この秘密協定は3年前の話、その後タターガタ・キラーは悪魔に取りつかれて暴走した上に、何故か地球破壊爆弾までを手に入れてしまった。
  • 翔は予知能力でタターガタ・キラーの陰謀を暴こうとする。予知能力によればこうだ。
    1. ケンタウルス座からやってきた宇宙人(幸福の科学の教義によればレプタリアンと呼ばれる)たちは、地球人を食糧にしようとした。
    2. しかし宇宙条約があるので地球には侵略できない。
    3. だが宇宙条約は「地球人が自分で滅びの道を選んだときは軍事介入OK」ということになっている。
    4. そこで中国に最終破壊兵器を使わせることで、軍事介入して地球を支配しようとしたのだ。
  • 世界の人々が勇気を持って中国に反旗を翻し始めた。アメリカ、日本、ロシア、ウガンダ、そして中国国内でも次々に反中運動が起きる。ウガンダが含まれているのは、幸福の科学が2012年にウガンダ進出したからです。

神秘の法のガイドブックのキャプチャ画像。ゴジラがいるのはさておき、右から二番目ってそれアバターだよね?幸福の科学の教義によると映画『アバター』は現実の宇宙人像からインスパイアされたそうです。

神秘の法

釈迦+キリスト=翔
  • 翔は最終破壊兵器を破壊するために中国の軍事基地に侵入するので、まさに飛んで火に入る夏の虫。
  • 翔を補佐するのは中国人に成りすましたベガ人たちだ。ベガ人と中国人の戦いは『スターウォーズ エピソード1』の「ナブーの戦い」にソックリだが、ベガ人が二人戦死しただけで翔は戦意喪失してしまう。翔とベガ人は投降する。
  • タターガタ・キラーは翔の処刑を全世界生中継する。観ない地球人は逮捕される、時差とか関係なし。十字架に磔にされた翔は明らかにイエス・キリスト。
  • 翔は処刑されるが、まあキリストなので復活する。復活のシーンは説明が無いので俺が解説しましょう。魂となった翔が手に入れるのが「十三次元宇宙ボール」で、これは宇宙そのもの。翔や大川隆法は全宇宙の神なので、宇宙そのものをボールように入手することができるのだ。
  • 全宇宙の神となった翔は自分の前世たちと出会う。翔(大川隆法)の前世とはラ・ムー(ムー大陸の王)、トス(アトランティス大陸の偉い人)、リエント・アール・クラウド(アステカの王)、オフェリアス(エジプト神話の神)、ヘルメス(ギリシアの神)、ゴーダマ・シッダールタ(釈迦)という幸福の科学アベンジャーズたち。そして光輝くエル・カンターレが…。

劇中では十三次元宇宙ボールが翔の目に入るシーンの解説が無いけど、十三次元宇宙ボールは神の右目の眼球を意味するので翔の右目に入るのだ。俺はどんどん幸福の科学の教義に詳しくなっていくな…。

神秘の法

召喚対決
  • 復活した翔に何の伏線も貼っていなかった新キャラが登場して、クリスタルの杖を翔に渡して息絶える
  • タターガタ・キラーは翔を殺すために古代中国軍風の悪魔の軍団を呼び出すが、翔は弥生人(神道の神々)を呼び出す。フルプレステCG(フルCGだけどプレステ1レベルの映像)で悪魔と弥生人たちの戦いが描かれる。
  • 翔はさらに仏教の金剛力士たちも召喚する。ってことは神道と仏教両方から召喚したのか。世界よ、これが日本人の宗教観だ。
  • タターガタ・キラーも悪竜を召喚する。激化する神と悪魔の戦いだが、そのとき富士山が噴火する
  • 富士山の神でもある木花咲耶姫が富士山を噴火させて真ヤマタノオロチを召喚したのだ。でもそれって日本が東日本大震災以上のダメージうけてね?

フルプレステCGな弥生人たち。この辺りの有名神の出演シーンはみすず学苑のポスターみたい。

神秘の法

地球は自壊を選んだ
  • 真ヤマタノオロチは天使の羽が生えていてカッコわるいデザインだが、それでも悪竜を倒す。悪竜を滅ぼされたタターガタ・キラーはシータを人質にして最終破壊兵器を起動してしまう。こうして地球を狙うレプタリアンたちの計画は成功してしまった。
  • 地球自身が人類は悪魔たちに負けたと判断してしまった。地球自身は悪魔から浄化するために自壊を始める。台風や地震や津波は、実は地球が悪魔を滅ぼそうとする自壊なのだ(東日本大震災のあとだというのに…)
  • 地球が壊滅する中、翔がクリスタルの杖を振りかざし「愛と、知と、反省と、発展の光よ!」と叫ぶと仏教、キリスト教、イスラム教、世界中の人々のありとあらゆるミラクルパワーが翔に集まり…、まあ3文字で表現すると「元気玉」です

真ヤマタノオロチ。日本を守ってくれるけど富士山を噴火させるというオスプレイの墜落よりもハタ迷惑な存在。

神秘の法

ラスト
  • 翔が元気玉を発射して悪魔を滅ぼすと、地球の自壊も収まった。翔勝利。翔は全世界に向けて説法を行う。

    「あらゆる人間は等しい、なぜなら人間は全て神の子だから、これが民主主義の原点だ。」

    それは民主主義じゃない!

  • 敗北したタターガタ・キラーは仮面を外す、その素顔は18歳のイケメンだった。え?ってことは秘密協定の時は15歳?
  • タターガタ・キラーは中国の遺伝子操作で生まれた天才児だが、両親がいないので孤独を感じていたのだ。翔はタターガタ・キラーを赦し、シータとキスをする。でもタターガタ・キラーとシータのせいで日本人たっぷり死んでいるよね?
  • ラストシーンには2年前に開校した幸福の科学学園もちょっと映ります。
  • エンドクレジット。「何だろう この胸のときめきは 悪は善となり 善は悪となる」という意味不明の主題歌が流れるけど歌詞書いているのはリエント・アール・クラウド。

神から伝わりしクリスタルの杖を持って神の説法をする翔なので「マジカルステッキじゃん!」とか言ってはいけない。

神秘の法

感想

最初に述べたように、本作は幸福の科学の宇宙人路線の集大成だ。原作の内容も『神秘の法』よりも『宇宙人との対話』『宇宙の法入門』『宇宙からのメッセージ』といった大川隆法の妄想論が元になっている。宇宙人以外の思想については『ファイナル・ジャッジメント』とまったく一緒で、展開もほとんど似ている。

残念ながら本作はかなりつまらない。観ていて退屈で仕方なかった。ストーリー自体は派手だけど『仏陀再誕』のような豪快な楽しさは無い。翔が瞑想する⇒翔が中国の危険性を訴える予知を見る⇒宗教的な会話をする、の繰り返しだった。宇宙人ネタなんだからもっと遊んでもいいと思うんだけどな。

政治風刺コメディ『アイアン・スカイ』

土曜日, 9月 29th, 2012

アイアン・スカイ

ナチスがUFOに乗ってやってくる!といネタを映画化した『アイアン・スカイ』。フィンランドの人たちがこのアイデアの映画化を思いついて「製作資金募集」の動画を作って話題になったのも、確か5年くらい前の話。その映画が遂に完成して日本で公開された。設定がアレすぎるんだけど映画本編を観るとまっとうな政治風刺コメディになっているんだよね。映画のストーリーはこんな感じ↓ややネタバレありです。

第二次世界大戦以降、ずっと月面に隠れていたナチスたちが宇宙船に乗って地球に戻ってくる。なぜなら月面ナチスの最終兵器「神々の黄昏」は地球の高性能小型電子端末で動かすことができるのだ、そうiPhoneならね(劇中では特定の機種を使っていないけど)。アメリカにやって来た月面ナチスたちは時代遅れのナチス思想を振りまくが、それを聞いた保守派のアメリカ合衆国大統領が「良い思想ね!」と感銘を受けて、さっそく選挙キャンペーンにナチスを取り入れる。こうして映画は月面ナチスと現代社会のカルチャーギャップコメディになると思いきや、ナチスとアメリカ現代社会のギャップが意外と少ないという皮肉を描く。

アイアン・スカイ

『アイアン・スカイ』に出てくるアメリカ大統領。銃と剥製は保守派の記号。

アメリカ合衆国大統領のモデルになっているのは明らかにアメリカ保守派のヒロイン:サラ・ペイリンで、劇中では彼女のキャッチコピーが「Yes She Can !」になっているのが笑える。アメリカ保守派とナチスが意外とマッチするという展開は笑ってみられるけど、日本でも軍国主義時代っぽい思想が人気を呼ぶことはしょっちゅうあるので、そんな状況を考えると笑ってられない問題でもある。

超保守派の幼稚園で、園児たちが教育勅語と五箇条の御誓文を絶叫(1:35あたりから)。これ映画じゃなくて現代の日本の動画だからね。リンク先のコメントもステキ。

映画の後半では世界の主流国たち(アメリカ、ロシア、ドイツ、中国、日本、インド)の滑稽な姿も描くんだけど、その世界各国からはじかれているフィンランドがかわいい。クライマックスではスター・ウォーズやスター・トレックのパロディネタたっぷりのSF戦闘シーンもあってかなり面白い。映画史上に残る大傑作『チャップリンの独裁者』を、逆にナチスがプロパガンダに使ってしまうというアイデアもうまい。北朝鮮ギャグは俺が観たときは場内大爆笑に包まれたし、ネット動画で話題となった「相当閣下はお怒りです」のパロディもちゃんとやる。とにかくネタ満載で楽しい風刺コメディ映画だった。

オマケ:でも劇中でユダヤ人ネタとアウシュビッツネタだけは触れることが無かった。やはりナチスをパロディにする時はそこだけは絶対タブーなんだな。そういえばユダヤ人の強制収容所を舞台にした名作『ライフ・イズ・ビューティフル』でも「お友達がセッケンやボタンになっちゃった!(ユダヤ人の死体からセッケンを製造していた)」っていうセリフが物議を醸したので、本当に難しいのだろう。

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アウシュビッツのギャグがある『ハングオーバー!』だけど、この映画の主役級俳優二人がユダヤ人だ。

バトルシップ

水曜日, 9月 5th, 2012
バトルシップ

バトルシップ

宇宙戦艦に立ち向かう男(バカ)の背中!

最高のバカ映画

この映画は大スクリーンで観ろ!じゃなきゃDVDで何か他のことしながら適当に観ろ!と言いたくなるほど豪快かつ単純で中身の無い映画だった。DVDが発売されるということなので、ストーリーを最後まで紹介しますが、いかんせん観たのがだいぶ前なのでかなり省略してます。

状況説明

映画が始まるといきなり小学生SFのような以下の字幕が出てくる。

「地球外生命体を探すために5倍強い電波を発信するビーコンプロジェクトが始まった」

次に科学者が出てきて

「例えば地球外生命体がコロンブスで、俺たちが先住民だったら?」

と言うので、この映画の状況説明は完了した。こうして宇宙人と地球人が戦うのだ!便利だなぁ、先住民虐殺の歴史って。

ハワイでニート

ハワイに住むとある兄弟。兄:ストーンはアメリカ海軍の立派な軍人という死亡フラグが立っている男。弟:アレックスは主人公でニート。アレックスは今日も兄から説教を受けている………最中にブロンド美女を見つけたために兄を無視してブロンド美女をナンパ。美女が「ブリトー食べたい」と言ったために、閉店後のコンビニを破壊してブリトーを購入する。料金はきちんと置いているんだけど、コンビニは破壊されたために見事逮捕される。

ニート出世

場面が代わって5年後、ニートのアレックスは海軍の戦略下士官になっていてブロンド美女と結婚前提で付き合っていた。立派なお兄さんはあまりにも立派すぎるので艦長になっていた。この映画をテレビで放映したら「おいおい、いくら何でもカットしすぎだろ!展開早すぎ!」というツッコミが多そうだけど、ここらへんの展開は全部ノーカットだ。

ハワイで環太平洋合同演習(リムパック)が始まった。アレックスは艦隊の記念式典にバッチシ遅刻した上に、そこらへんのガキに戦艦がいかに強いかを得意げに説明したため大遅刻する。アレックスは相変わらず人間のクズだった。

日本人襲来

日本の自衛隊とアメリカ軍の親善サッカー試合が始まった。卑怯な戦略に定評のある日本人たちが優勢だった上に、浅野忠信がアレックスの顔面に蹴りを入れる。浅野忠信は自衛隊の護衛艦みょうこうの艦長という設定だ。

日本チームとアメリカチームの戦いの行方だが、チームプレイがとても大切であるはずのサッカーにおいて仲間と協力するという発想がないアレックスのせいでアメリカの敗北

試合後にアレックスは浅野とトイレで鉢合わせたので、その場で殴り合いの大ゲンカが始まる。この映画のプロットにはツッコミどころが多いけれど「まあ宇宙人が攻めてくる映画だし」の一言で片づけられるもんだけど、アメリカ軍の戦略下士官と自衛隊の艦長という役職の高い2人がトイレで殴り合うっていう展開だけは、ありえないだろう。

数々の問題を起こしてきたアレックスは演習後の解任が決定となる。

宇宙人襲来

リムパックの演習が始まったが、そのとき真珠湾南に宇宙からの巨大飛来物がやってくる。飛来物の調査に米軍の駆逐艦ジョン・ポール・ジョーンズ(以下:JPJ)とサンプソン、自衛隊のみょうこうの日米合同駆逐艦隊が向かう。サンプソンの艦長はアレックスのお兄さんだ。だがアレックスが勝手に飛来物に触ったところ飛来物が動作を開始した。

飛来物は広大な無敵バリアを張り巡らし、日米合同駆逐艦隊は主力艦隊から孤立してバリア内に閉じ込められてしまった。そんなすごい無敵バリアは飛来物の周囲に張るべきであって、バリアー内に日米合同駆逐艦隊がいたらバリアーの意味が無いと思うのだが。

愛の戦士たち

こうしてバリアー内で宇宙戦艦3隻VS日米合同駆逐艦隊の戦いが始まるのだが、圧倒的火力を持つ宇宙人戦艦はサンプソンとみょうこうをあっという間に撃沈。正直どうやって勝つんだ?感じなんだけど、「宇宙人は攻撃してくる脅威に対して反撃する。」というルールで動いていることが判明するので、観客視点で言わせて貰えれば何とかなりそう。どうやってルールが判明するかというと、脅威は赤色で非脅威は緑色で表示するので3歳でもわかるレベル

お兄さんは何もしないまま戦死し、浅野忠信たち日本人は海に投げ出された。JPJも被弾し、JPJの艦長・副館長は死んだ。もう瀕死の状態の日米合同駆逐艦隊だけど、さらに最悪なことが起きる。階級上、JPJの艦長を務めるのはバカのアレックスなのだ。

観客の「何もしなければいいんじゃないの?」という意思を無視して、バカのアレックスは残ったJPJで宇宙戦艦に特攻するという宇宙戦艦ヤマトみたいな作戦を思いつく。部下たちの「それよりもみょうこうから落ちた日本人たちを助けるべきでは」という意見を無視して、バカのアレックスはガンガン特攻!部下たちがキレ気味になってきたので、アレックスは仕方なく日本人たちを助ける。その中には浅野忠信もいた。

津波も宇宙人も日本人なら戦える

何もしなければ宇宙戦艦は攻撃してこないので、みんなとりあえず休憩。宇宙戦艦にミサイルを当てるには宇宙戦艦の位置解析が必要だ。浅野忠信は津波検知用ブイを使えば波の揺れで宇宙戦艦を検知できると提案。というか自衛隊はアメリカとの演習でもこっそりとそのブイを使って有利に戦っていたのだ!さすが卑怯な日本人。

アメリカ人たちが浅野忠信の意見に全面的に従ったところ、JPJはみごとに宇宙戦艦にミサイルを当てる。

アレックスは日本人の優秀さに感心して艦長の職を浅野忠信に譲る。同盟国とはいえ、他国の艦長に指揮権を投げるなんてありえないだろ!

地球ではオマエの悲鳴は聞こえない

アレックスたちは捕まえた宇宙人を調べる。宇宙人の目が爬虫類っぽいことから爬虫類好きの下士官が「太陽の光に弱いはず!」とアドバイス。っていうかマスクをしている時点でマスクが弱点だよね?『ダークナイト・ライジング』のべインにも同じツッコミが言えるけど。まあ映画『サイン』のように、リンク先『サイン』のネタバレ

ちなみに宇宙戦艦の動きは人間でいうところのバタフライなので波も音もすごくデカいので検知しやすいと思う。さらに宇宙戦艦で遠距離攻撃ができるのは歯車攻撃のみで、ほかの攻撃は全部視界の範囲でしか当たらない。宇宙人に至っては接近戦しかできない。あのー宇宙人ってもしかして弱い?さらに宇宙人の判断基準は「攻撃が自分に向いてない=安全」なので、人間からしょっちゅう反撃食らう羽目に。

明日に向かって撃て!

アレックスが宇宙戦艦を倒す作戦を立てた。日の出に合わせて宇宙戦艦の操縦席っぽい窓を銃で狙撃すれば大ダメージだ!
「あ、その程度で倒せるんだ」
という観客のガックリ感はさておき、この作戦は何の伏線も貼っていなかったけど実は狙撃の達人だったアレックスと浅野忠信がライフル構えて寝そべって「うふふ」「あはは」みたいに友情を高めあいながら発砲したことにより大成功(アレックスが成長して仲間と協力するようになったことを意味するシーンでもある)。こうして宇宙戦艦は撃沈する。しかし宇宙人の歯車攻撃によりJPJもついに撃沈する。

全ての戦力を失ったアレックスだが彼は諦めなかった。今は退役して観光船となった戦艦ミズーリを復活させるのだ!ついでに退役した元軍人の老人たちも復活!正直、このシーンが全然盛り上がらないのがこの映画の最大の欠点だと思います。なんでこのシーンで思いっきり興ざめしてしまうのだろう。伏線もちゃんと貼ってあるんだけどなぁ。

まあこのあと色々あってアレックスたちが宇宙人に勝ちます。以上、ストーリー解説終わり。

サイドストーリー

アレックスのバカっぷりが際立っているので、他の登場人物が紹介できなかったけれど、サイドストーリーとして黒人とユダヤ人が力を合わせて宇宙人と戦うという『インディペンデンス・デイ』と同じパターンの物語があったりして、そっちもかなり面白い。『インディペンデンス・デイ』の黒人とユダヤ人の描かれ方が「アメリカ的良心を持った男性たち」になっているのに対して、『バトルシップ』だと黒人=怖くて近寄りがたい男、ユダヤ人=臆病者で逃げ出す男という酷い描き方。でもまあ白人=バカ、日本人=卑怯者、スコットランド人=田舎のバカといろんな人種がそれなりにバカにされている映画なので、問題視する観客はいないはず。

他にも主人公のブロンド美女の彼女や、その厳しすぎる父親のリーアム・ニーソンや、優秀すぎる兄(スウェーデン人の役者なので、弟と人種が違う)などおいしいキャラが一杯いるけど、一番注目したいのは痩せすぎていて軍人に見えないリアーナ!『バトルシップ』は今年のサマーソニックのトリを飾ったリアーナの女優デビュー作だ。超大物歌手なのに実写スト2でキャミィを演じて女優デビューが大失敗に終わったカイリー・ミノーグよりかはずっと賢い出演作選びだと思う。

バトルシップ

『インディペンデンス・デイ』の主役コンビ。

アレックス

この映画で戦闘シーン以外の最大の特徴とも言えるアレックス、演じるテイラー・キッチュは同時期に歴史的大赤字をひり出した『ジョン・カーター』でもいきなり宇宙人を殺す男を演じていて、宇宙人が地球にやったらもっとも封印しておくべき男だと思います。

日本の扱い

俺がこのストーリーで一番驚いたのは、主人公が日本人に艦長の職を譲るシーンだった。「白人の主人公がマイノリティのために活躍の場を譲る」っていうパターンの映画はすごく多いんだけど、それはあくまでも「同じアメリカ市民だから」ということを意味している。でも他国の人間に「艦長」という責任が極めて強い職を譲るというのは、本当に驚かされた。俺はこのシーンを観たとき
「もしかして『グラン・トリノ』のラストシーン並みにすごい瞬間を目撃したのでは?うん、それは無いな、ただのバカシーンだ」
と自分を納得させたよ。

でも最初に「中身が無い」って書いたけど、意外と今の日米関係が見えてくる作品かもしれない。日中韓が海上の領土問題で揺れている今この時期に『バトルシップ2』が作られたらどういう設定になるのだろう?二回連続日本人を活躍させるはずはないので、他の国になると思うんだけど………韓国海軍だったりして。韓国国内では日本が活躍する『バトルシップ』はやはり反感を買っていて、監督がソウルの記者会見で続編にイ・ビョンホンを出すと言い訳したんだよね。

ちなみに最後に大活躍する戦艦ミズーリは日本の降伏文書調印式が行われた戦艦だ。

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アイドルが幽霊になった性犯罪者とプログラミングで戦う映画

金曜日, 6月 29th, 2012
携帯彼氏

携帯彼氏

スーフリ事件、歌舞伎町雑居ビル火災、メディアスクラムを背景に、アイドル女優の川島海荷が幽霊となった性犯罪者たちとIT技術を駆使して戦うというテンコモリな内容のケータイ小説映画。

バルス・コマンド

先週のことだけど、レンタルサーバー会社のファーストサーバのデータが吹っ飛んで、多くの企業のデータがバックアップごと消え去った。これはかなりの大ゴトだ。

絶対に消えてはいけないデータが何故消えたのか?ファーストサーバの中間報告でもそこらへんが曖昧に書かれていて真相はわからないんだけど、まっさきに連想するのは「rm -rf /」みたいなコマンドだ。UNIX系OSに触ったことない人にはピンとこないだろうけど、サーバを破壊するには短いコマンドで十分なのだ。このやたら短いくせに破壊力が強すぎる点は『天空の城 ラピュタ』の滅びの呪文:バルスにそっくりだ。

『天空の城 ラピュタ』でシータがうっかり「バルス」って言ったらラピュタは滅びるのか?って疑問に思ったことあるけど、ファーストサーバはそのうっかりバルスが現実に起きたみたいなもんだ。ちなみにシータがうっかり「バルス」と言っても大丈夫のはず、そうじゃないと誰にも伝えられない。

バルス!

バルス

バルテュス!

バルス

本題

今回の事件を受けて一斉消去プログラムが出てくる映画を思い出した。『携帯彼氏』だ。『携帯彼氏』については、映画評論同人誌『Bootleg Love Story』に書いたんだけど、せっかくなので破壊屋でも取り上げてみる。

『携帯彼氏』の基本設定は、イケメンと擬似恋愛できるモバイルゲーム「携帯彼氏」にハマった女性たちが次々に殺されるというものだ。

ヒロインを演じるのはアイドルの川島海荷。

バルス

携帯彼氏のストーリー

「携帯彼氏」にハマっていた里美の同級生がビルから飛び降りて死亡する事件が起きる。

また里美は数か月前に年上のイケメン先輩でパソコンに詳しい直人から、パソコンの使い方を教わっていた。直人に恋する里美だが、直人は新宿雑居ビル火災で焼死してしまったのだ。

里美がパソコンに詳しい直人(左)に恋するシーン。

バルス

よく見ると直人はExcelでグラフを出しただけだが、Excelの機能を使っただけで周囲の人から過剰に尊敬されるのはよくあることだ。

バルス

警告

以下の文章は『携帯彼氏』のネタバレです。それとこの文章は映画評論同人誌『Bootleg Love Story』に俺が書いた「ケータイ小説の愛」の一部抜粋&修正です。

スーパーフリー

新宿雑居ビル火災の原因はそのビルの5階に集団レイプを目的とするサークルがあり、被害者の女子中学生がガソリンを被って焼身自殺したからだ。レイプサークルのメンバーは直人も含めて全員焼死した。里美は色々な意味で大きなショックを受ける。

「携帯彼氏」に殺される女性が続出する中、里美は「携帯彼氏」の顔が、焼死したメンバーたちと同じであることに気が付いた。さらに里美のケータイに入っている「携帯彼氏」は死んだはずの直人だった。

新宿歌舞伎町の雑居ビル火災事件とスーフリ事件をマッシュアップさせた豪快な展開である。

バルス

携帯彼氏の真相

里美は「携帯彼氏」を配信するサーバーマシンを探す出したのだが、そこは火災現場の雑居ビルの6階だった。つまり携帯彼氏事件の真相はこうだ。

レイプサークルのメンバーたちが焼死した時に、上の階にあったサーバーマシンがメンバーを焼いた煙を吸い込み、メンバーたちはサーバーマシンの中で携帯彼氏として存在し続けることになったのだ。そしてケータイに配信されて次々と女性を呪い殺していたのだ。いや、火と水で絶対に使い物にならないだろそのサーバー!

里美の親友が「携帯彼氏」に殺されそうになる状況の中、里美のケータイに非通知で直人から電話がかかってくる。それは死んで携帯彼氏となった直人だった!直人がレイプサークルのメンバーだったという大勘違いは、マスコミがきちんと報道しなかったからの一言で済まされる。ちなみに直人はサーバー管理のバイト中に焼死して携帯彼氏になった。

携帯彼氏に襲われる里美の親友役を演じるのは朝倉あき。まあ中高生向けのホラー映画なので、ジージャンを脱がされるくらいだけど。やたら太ももを強調したカットが多いのも特徴的。

バルス

プログラミングで反撃!

携帯彼氏を倒すには、削除プログラミングを作ってサーバから配信するしかない!そして里美が作る削除プログラミングが↓。

えーとこのカッコの多さはLispでしょうかね。なぜLisp(かなり古いプログラミング言語)なんだ………教育現場で使われているからかな?

バルス

 

「削除プログラムをSCPコマンドでアップロードするんだ!」と幽霊になった直人先輩から指示されたときの画面。本当にSCPコマンドでテキストファイルを送信しているだけだ。っつーか直人先輩、あんたがサーバ内にいるのならあんたがバルスコマンドを入力すればいいのでは?

バルス

バルス!

こうして携帯彼氏たちは全滅したと思いきや………すぐ復活してしまった!復活の理由は説明されないんだけど、ファーストサーバと違ってちゃんとバックアップを取っていたのだろう。

里美は端末の中に焼身自殺した女子中学生のプログラムがあることに気が付いた。里美は女子中学生のデータを配信するプログラムを作る。彼女が携帯彼氏たちを倒すのだ。

バルス

そして里美が最後に作るプログラムというかスクリプトがこれなんだけど………実はこれTomcatの「startup.sh」のコピペ。このシェルはcatalina.shを起動するのが目的なので、最後の一行以外は不要なんだよなー。これを書いている間、里美の友達はずっと携帯彼氏に首をシメられている。まあとにかくプログラムは完成しバルスがさく裂して携帯彼氏は全滅する。

バルス

映画の感想

ケータイ小説映画全作品リストでも書いたけれど、『携帯彼氏』はケータイ小説映画の中では一番面白い作品だ(ただしこのジャンルの水準は著しく低い)。日常生活の中で死が襲ってくる感覚を『ファイナル・デスティネーション』風に派手に描いたり、黒沢清風に地味に描いたりしているし、脚本も社会的事件を取り込んでいるのできちんと観れる作品になっている。

IT関係の描写はツッコミどころだらけだけど、サーバ内に幽霊がいるというアイデア自体は成功している。

その後の携帯彼氏

続編がいっぱいあります。

携帯彼女 [DVD]

バルス

バルス

映画の中でリアルなコマンドを打つ映画といえば『トロン:レガシー』。

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