踊る大捜査線 the MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!


    「踊る大捜査線」の魅力とは個性的なキャラクター達です。彼らの面白さを引き立てるのに事象が滅茶苦茶になるのは、製作側としても受け手側としても当然の事です。だから「踊る大捜査線」の事が好きな人はそういう風に楽しんでいればそれでイイはずです。っていうかファンの方たちには本当にごめんなさい!

    最初っからネタバレしています。未見の方は要注意!!あと一度観ただけの記憶で書いているので内容は怪しいです(いつもの事だが)。






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映画じゃない


    僕の中で遂に「WASABI」を越える映画が登場しました!まさか21世紀に「WASABI」よりも滅茶苦茶な映画が製作されるとは思わなかった。「踊る大捜査線2」は間違いなく2003年ワースト映画というか、21世紀のワースト映画です。もちろん「踊る大捜査線 the MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」はテレビ屋どもが芸能人を集めてビデオカメラで撮ったテレビ番組なので映画として評価するのは間違っています。しかし映画館に行って1800円を払って鑑賞した以上「踊る大捜査線2」も残念ながら映画扱いです。


    「踊る大捜査線」の映画版で製作者達がやりたかった事は明白です。それはハリウッドとパトレイバーをネタにしたZAZごっこです。ただZAZはパロディなんですが、「踊る大捜査線」はパクりになっています。また海外では「日本の珍妙なコミックムービー現象」と言われていますが、確かに「踊る大捜査線」はリュック・ベッソンが作り出すバンド・デシネ(フランスのコミック・ムービーみたいなもの)と全く同じ感覚の映画でもあります。ということは作品としては語る意味が無いけど笑いのネタとして観ればかなり面白いのでは?という疑問が沸いてきますがその通りです。観客が笑わされるのがコメディ映画だけど、「踊る大捜査線」は観客の笑いものになるタイプの映画なのです。
    「踊る大捜査線」はプロデューサーも監督も脚本家も全員インタビューでパクリを前提で作っていることを明言しているという「SCORE」のような映画です(やっぱり面白いのか!?)。     「踊る大捜査線」の第一作は映画全体(脚本も演出も撮影も演技も)がパクリで、挙句の果てに映画が一番盛り上がるシーンで主演俳優がキメ台詞の代わりにパクリ元を紹介するという映画史上類を見ない最悪のギャグをやってのけます。またこの「踊る大捜査線1」の監督が日本アカデミー賞の授賞式でパクリについて(怒っていた北野武に)謝罪するという信じられないことをやってしまいます。   おいおい映画なんていくらパクってもいいんだよ!多くの映画人が黒澤明をパクってきたけど、その黒澤だってパクリをやっている。「マトリックス」がパクリだらけなのは映画ファンの常識だけど、「マトリックス」のオリジナリティが優れているのも常識です。リュック・ベッソンだったらどんなにパクっても絶対に自分のクリエイティブな部分を主張する。だってリュック・ベッソンは最低映画を連発しても彼はれっきとした映画屋だから。だけど「踊る大捜査線」の製作陣には映画を作るつもりはない。単なるテレビドラマの延長としかとらえていない。だから既にある映画のネタに「踊る大捜査線」を当てはめる作業しかやっていない。しかも今回のパクリ元はなんと押井守です、結構ビックリした。っていうか「踊る大捜査線」という存在自体がパトレイバーのパクリだったんですね(何度も言うけどパクリ自体は決して悪くない)。
    ところで「踊る大捜査線2」は「座頭市」が結構目立つように2度ほど出てくるのですが、これは「座頭市」が控える北野武への謝罪のつもりなのだろうか?勿論「天国と地獄」も出てきますよ。


    「踊る大捜査線2」は宣伝しながら撮影していたので、宣伝内容やパンフの情報が嘘ばっかりになっています。第一弾の予告編では「レインボーブリッジが爆破されているのをバックに主演俳優がカメラ目線」というのがありました(っていうかこれはベイブリッジ爆破を真似ただけですね)。またメインポスターでは武装ヘリが飛び交い、パトカーが吹っ飛び、ミサイルランチャーを持ったテロリスト達がいて、ケルベロスがいて、ジェットスキーの部隊がいて、サーフボードに乗った特殊部隊がサブマシンガンを持っていて、厚底ブーツにミニスカのコンパニオンがいますが本編には登場しません。こういったポスターの嘘は「ラヂオの時間」のような映画だからこそ出来ると思うんだけど・・・、まあ映画の特徴が良く出たポスターだから楽しい作りになっているけど。でも劇中の衣装や小道具と違ったり、いかりや長介がショットガンを構えているのはやり過ぎ。それと3人のオッサンは何と「スリーアミーゴス」らしいですが、全然人助けなんてしません、役立たずです。それどころか悪いことばっかりやっています。それじゃあ「スリーアミーゴス」じゃないよ!
    さらに散々煽っていた「臨海副都心カジノ計画」も関係なく、SAVE THE RAINBOWBRIGDHも意味がなく、「湾岸署最悪の3連休」も無かったです(そりゃ宣伝していたときはゴールデン・ウィークだったからね)。っていうかストーリーはお台場封鎖でした。こんな頭悪い内容は確かに宣伝しにくいよな。


    「踊る大捜査線」の最大の魅力は織田裕二演じる青島刑事という男がキュートな笑顔を振りまきながら、突然熱い台詞を決めることにあると思う。だけど後半では”熱い台詞”でも観客達の失笑苦笑が漏れ、予告編でもガンガン流れている「湾岸署は血液を・・・」は劇場の客みんな笑っていました。 折角織田裕二を使うんだから、もっとまともな台本を渡せばいいのに・・・。


    まあこの映画は全てがギャグなのだから、いくらでもパクっていいと思うし、宣伝で遊んでも構わないと思う。それに「最悪も進化する」というキャッチコピーは嘘じゃなかったしね。まさかここまでヒドイ最悪映画ができるとは・・・。


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女性蔑視


    「踊る大捜査線2」は女性蔑視がひどい、ジェンダー意識が無いとしか思えません。大勢の女性警官達が一生懸命接待の準備をしているというアメリカ映画だったら絶対に考えられない描写があり、パンフレットにも「男女雇用機会均等法施行以来、一般企業のみならず、凶悪犯罪者にも女性が増えているのは困ったものだが・・・」と神経を疑ってしまうような事まで書かれています。
    しかしこれらはまだ些細な事です。最大の問題点は青島刑事のカタキ役となる沖田管理官の扱い方です。この管理官はカタキ役のクリシェ(常に高圧的な態度で、失態を犯すと取り乱し、自分を栄えさせるはずだったカメラに醜態をさらす)によって誰からも惜しまれずに自滅していきます。このように「ムカつく女上司がいたけど醜態さらして消えたので良かった」というのなら、あんまし気分は良くないけどまあ問題は無いです。昔から女悪役なんてこんな感じだしね。問題なのはこの沖田管理官を男社会のエリート集団の中に颯爽と現れた女性エリート、という前提で描いている事です。そして周囲の人間も沖田管理官自身も女性の台等の象徴としてとらえている。そんな女性が破れ去っていきエリート社会は再び男だけになるのが「踊る大捜査線」的ハッピーエンドなんて非常に不愉快です。「無能な女上司」は構わないけれど、女性の社会進出自体をネガティブに捉えるってどういうこと?「ガチガチとなった男性エリート社会の中で台等する女性」をカタキ役に設定するのはジェンダー意識云々ではなく、製作者達に明確な女性蔑視があるとしか思えない。あのポール・バーホーベンですら女性の社会進出をネガティブに描くことはしない。
    っていうか自分の上司である女性役員を辱めるように惨殺した犯人に狙われ、怯える女性社員を「女性を馬鹿にした犯罪は許せない」と励ましながら「実は囮にするため」というシーンに至っては「製作者達は狂っているのか?」と思ってしまいましたよ。


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理屈抜きで面白い?


    リュック・ベッソンとジェラール・クラヴジックの書く脚本よりも支離滅裂な「踊る大捜査線2」の脚本を書いた人物は君塚良一という人です。実はこの人、キネマ旬報で脚本に関する連載を持ち、脚本にまつわる著作物を出し、脚本の講師でもあり、脚本家としての経歴だけは相当立派な人です。
    この君塚良一氏が、自身の脚本が「理屈抜きで面白い」ことを「犯人が電話をかけるシーン」を例にとって解説していました。    ”犯人が警察署の中から電話をかけるてくるのは実際あり得ない。しかし犯人が電話をかけている場所が警察署だとわかる瞬間は面白く、それが理屈抜きで面白い。”    という脚本家とは思えない発言をしているのです。「犯人が警察から電話をかける」というのは確かに面白いけど、それはサスペンスじゃなくてギャグとして面白いんでしょ!だいたい理屈抜きの面白さというのは「チャリエン」や「少林サッカー」といった作品にこそ当てはまる言葉で、「踊る大捜査線」のように観客に伝えるべきテーマと組み立てるべきドラマが存在する映画から理屈を抜いてどうするんだよ。こんな人が脚本の講師をやっていて邦画の未来は大丈夫なのか?


    例えば「湾岸署は血液を」という台詞のドラマが成り立つためには

    横暴なエリートの判断ミスにより、凶弾に倒れ病院にかつぎこまれた恩田刑事。しかし出血が激しく輸血用の血が足りない。病院で医者からその事を知らされた青島刑事は憤然とする。このままでは仲間が死んでしまう!会議室へ殴りこみ、「どうして現場に血が流れるんだ!」という台詞をキメはするが、「同じ血液型の人、輸血のために病院へ急行して!」と言い忘れた。そして恩田刑事が危険な状態のまま、湾岸署員はとりあえず捜査を再開する。

    青島刑事は何故かレインボーブリッジの上で記者会見を開き、「湾岸署は血液を求めています・・・。」   湾岸署は献血所になって多くの一般人が献血に訪れる。

    こうして湾岸署に集まった血液のおかげで恩田刑事の手術は成功する・・・。


    という青字の部分のような展開が必要ですが本編にはありません。それじゃあ映画じゃないよ!テレビドラマでもないよ!単なるCMだよ!「踊る大捜査線2」の感動って消費されていく安い類の感動だらけだけど、ここの部分はさすがに観客も笑ってたぞ。


    またクライマックスは例えば

    会議室の出した待機命令に逆らえなかったために犠牲者を出してしまった草壁中隊長。彼は何もすることが出来なかった自分を悔やむ。しかしそのとき会議室で燃える青島刑事の声が聞こえてきた。
「どうして現場に血が流れるんだ!」
    青島、そして室井の熱き想いを受け取った草壁中隊長はある決断をした。
   その頃犯人組織がアジトから脱出したことを知った青島刑事は、唯一封鎖が完了していないレインボーブリッジへ向かう。そこに逃亡する犯人達が!だが敵対関係を超え、組織を超え、生まれた包囲網によりレインボーブリッジの封鎖は完了。犯人達は全員逮捕される・・・。


    という状況であるべきなのに全部無いのです。「踊る大捜査線2」は事象が何も成立していない、ドラマもサスペンスも感動も何も生み出していない。お台場を封鎖をする理由なんて無い、いやいらない。封鎖するという結果だけがあればそれでいい。結果だけが成立している現象は奇跡とも言えます。「踊る大捜査線2」は奇跡の最悪映画なのです。ここまで来ると確かに理屈が無くて面白い


    それにこれは脚本だけの問題じゃないんだけど、パクリ元の劇パト2ってまずベイブリッジが爆破されて事件が始まる事が予告される。そしてそれ以降「分断された橋」が登場人物達の分断された関係を表現し、また最初のクライマックスでは橋が次々に分断され都市が封鎖される。ここで押井守は「高速道路を狙わず橋だけを狙う」という妙な演出をします。これは間違っています。だって都市を封鎖するんだったら高速道路を狙ったほうがいいのに。でも押井守にとって、そして映画的にはあくまでも橋が分断を意味するのです。だから現実としては間違っていても映画としては正しい。それどころかこの「橋の分断」は都市封鎖という有り得ない事態を映画として有り得るものにする。でも「踊る大捜査線2」はそういった「有り得ないことが本当に起きる」という映画の基本まではパクろうとはしなかった。
   もう一つ、劇パト2は都市が封鎖状態になる事により、工事中のまま放置され忘れ去られていた地下鉄のトンネルが出てきて、そこを主人公達が利用して通る。そして「都市は忘れ去られていくまぼろし」という事が観客にわかる。
   それに対して「踊る大捜査線2」ってお台場が封鎖状態になり工事中の地下トンネルが出てきて、そこを犯人達に利用される。そして「お台場はまだ発展途上の工事中の街だった事が観客にわかるなんてそれは映画として面白いのか?やる意味があるのか?それともウケ狙いなの?


    「踊る大捜査線」の製作側は「猟奇事件よりも署長の不倫事件を追っているのが”踊る”的なんです。」と言っています。踊る大捜査線のファンもそう受け取っているのならそれで構わないのかもしれない。でもそれじゃあ青島刑事が「どうして現場に血が流れるんだ!」なんて言う資格が無くなってしまう。青島刑事は大きな事件ばかりを求めている、だが事件が起きたところで必死に捜査をするわけでもない。所轄の仕事をバカにしていて、殺人事件に関わる全ての仕事(ボディガードも)に消極的。青島刑事が「どうして現場に血が流れるんだ!」なんてほざくずっと前から殺人現場に被害者の血が流れているんだよ!   それに「現場の事を何も理解していない会議室のお偉いさん達に、現場の人間が怒りのキメ台詞」っていう後藤警部補のパクリをやるためには、現場の人間が会議室の無謀な判断の犠牲にならなきゃダメでしょう?でも恩田刑事は自分でトリックに気がついて、自分の意思で犯人を追って、自分から少女を救おうとして傷つくんでしょ?それじゃあ「どうして現場に血が流れるんだ!」は青島刑事の愚痴になっちゃうし、和久の「若い人間を傷つけないでくれ」が的外れになってしまう。何で一番大事なシーンから理屈を抜いちゃうのよ。現場(の代表の青島刑事)と会議室(の代表の沖田管理官)の対立を描くべきなのに、アホな台詞ばっかり吐いている女上司が愚痴をこぼしている主人公をイビるって構造しか見えないよ。


    ここまで書いててちょっと思ったんだけど「踊る大捜査線2」って尺が100分切ってて、うざったいドラマや下手糞なサスペンスを排除してコミック・ムービーに徹していたら絶対に誉めてた


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遊びの時間が終わらないオープニング


    映画が始まった瞬間にテレビ画面が映し出され、ウォーターフロントお台場の連絡路についてのビデオ解説が始まる。お台場にはゆりかもめやレインボーブリッジなど全部で6つの連絡路があるというのだ。「踊る大捜査線2」のクライマックスはお台場封鎖だから、この6つの連絡路を封鎖すればお台場封鎖完了という伏線なんだが、ウォーターフロントなんだから当然海路もあるんじゃないの?


    画面はテレビサイズから映画のサイズへと拡大して(でも本編はずっとビデオ撮影のまま)、警察の特殊部隊SATの出動シーンが写る。港に停泊していた豪華客船を砂漠のテロリスト達が占拠したのだ!SATはヘリから、船から、次々に豪華客船をロープアクションで急襲する(隠密行動をとるつもりは無い)。
    実はこのテロリスト騒動は演習で、犯人兼人質役の湾岸署のメンバーはお遊び気分。そんな湾岸署の態度にキレたSATの隊長が鋭くクギを刺してくる。逆ギレした湾岸署のメンバーは徹底抗戦を決意。優れた動きを見せるSAT役のスタントマン達が湾岸署側のモタついた動きに倒されていく。しかも人質役も「犯人側に感化された」ということで抗戦に参加。湾岸署有利と思いきや、SATが閃光弾をマジで使うので湾岸署壊滅。だが何故か閃光弾が効かなかった青島刑事が土壇場で見事に大逆転勝利(SATのリーダーを”射殺”しただけなのに、どうして逆転できるかは不明)。こうして演習は湾岸署のせいで滅茶苦茶な結果に。


    それからしばらくたった湾岸署。湾岸署は道案内とかで忙しいということを警察署内を民間人で溢れさせることでアピール。署内では「ラスト・アクション・ヒーロー」の「映画のエキストラは美人」理論でも説明がつかないくらい、若くて美人のネーちゃんしか働いていない。ただこれはジェンダーに敏感なアメリカ映画じゃなくて日本のテレビ番組だからこういう描写になってしまうのか。
    湾岸署に青島刑事が出勤してきた。大きな事件だけを求める物騒な性格の青島刑事は、所轄内で婦女暴行事件が起きたということで「許せねえ!」とぬるい演技で怒りの炎を燃やす(が、実は事件を求めていた)。だが被害者の女子高生達が強姦されたわけではなくイタズラされて軽く怪我をしただけと知った青島刑事は「それだけ?」と事件を無視。さらに子供を使った家族スリ(ペアルック着用)事件も無視。ようやく所轄内で大事件が起きてくれたので大喜びで現場に勝手に駆けつける。すいません!僕主人公に共感できません!




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フジテレビ国家権力の陰謀


    駆けつけた殺人現場はお台場の公園。そこで死体がド派手にSM縛り(しかも麻縄でなくてヴェルベット・ロープ)されていた。猟奇殺人事件とは閉じられた空間で起きるからこそ緊迫感や残虐感があるはずだが、これは開放感溢れる場所でやってるのでまるでギャグ。青島刑事も笑っている。


    警察のエリート達が登場する。演出では階段から一斉に人が降りてきたり、背中を向き合わせて会話するなど、「みなさーん、この人たちはエリートですよ~」とわかりやすくアピール。っていうか何で背中を向き合わせて会話するのよ?これはアニメか?
    その中から一人だけ女性エリートが登場する。管理官の沖田だ。沖田管理官は完全な男社会となっている警察エリートの中で女性の進出をアピールするために、自分から宣伝材料になろうと常にカメラクルーを用意しているような人だ。
    湾岸署に向かう沖田一行、青島刑事を見つけた沖田管理官は「事件は会議室で起きているのよ」と青島刑事を否定、これが沖田管理官の一番マトモな台詞でした。   このシーン以降沖田管理官は青島刑事を始めとする湾岸署員を徹底してイビるカタキ役となる。

    早速大きな会議室でお台場猟奇事件についての会議を開く一同。沖田は湾岸署の署員達をパシリ扱い、わかりやすいカタキ役だ。
    残虐な猟奇殺人を追うために犯人の人間性や被害者の人間関係はあんまり注目せずに、物的証拠を手繰る警察官達。しかも湾岸署員は死体がSM縛りって事なので女王様を呼んで署内で緊迫プレイ。笑うシーンのはずなんだけど、全然笑えん。


    会議終了後に湾岸署の人間から口の固い二人が選ばれた。主人公コンビの青島刑事と恩田刑事だ。二人は湾岸署内の秘密の部屋に連れていかれる。そこには無数のモニターがあってお台場内の様々な風景を写し出しており、さらに指向性マイクにより盗聴も行っていた。そうエリート達は卑劣なことにお台場全体に警察による監視システムという恐るべきものを導入していたのだ!
    あのさ、こういうのってさ、新宿歌舞伎町とかだからこそ効果があるのでは?何でお台場に監視システムを導入するのさ。それに監視システムが秘密のプロジェクトって、それじゃあ監視じゃなくて盗撮だよ!監視カメラの最大の役割は防犯でしょ?秘密にしていたら効果があがらないでしょ!警察の仕事は事件を解決することもあるけど、事件を未然に防ぐのも重要な仕事でしょ?


    脚本の・・・じゃなかったエリート達のあまりの横暴さに怒りだす主人公コンビ。しかし彼らの意見は無視される。
エリート達「これで効果があれば法改正をして・・・」
    どんなに法改正しても盗聴だけは無理かと思います。


    こうして嫌々ながらお台場監視の任についた主人公コンビ。この監視室には監視システムの開発責任者兼オペレーターというわけのわからん仕事をしている日本の首相の息子もいる。ちなみに監視室は本編で何度も出てくるのですが、監視室の中はいつも異常なまでに暗いんです。こういう場所は明るいに決まっているだろ!秘密の監視室の中は暗くするなんてこれは児童映画か?


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リュック・ベッソンさん、今まで悪口言っててゴメンなさい


    決死の捜査もむなしく(と公式ストーリーに書いてあるがそのような描写は特にない)第二の殺人事件が起きてしまう。   ちなみに第二の殺人の演出は非常にわかりにくいというか、トンデモないというか、映画としてやっちゃいけないというような演出で、沖田管理官達が会議室で見ているモニタを通して殺人現場が描かれる。つまり殺人現場に警官隊がビデオカメラを持って急行して生中継をしているのだ。こんなふざけた演出やっているから映画じゃなくてテレビ番組止まりなんだよ!といっても「踊る大捜査線2」のメイン客層は映画ファンじゃなくて、テレビシリーズのファンなのでこれでもいいのかな。

    湾岸署のフロアに沖田が殴りこんできて、モニターの監視係だったのに手掛かりを得なかった(無茶言うな)青島刑事を、湾岸署員みんなの前でなじって侮辱した挙句解任を命じる。監視システムは機密じゃないの?


    犯人が湾岸署に電話をかけてきた。沖田管理官がリーダーとして電話に応対するが、高飛車な沖田は犯人に対しても居丈高で、説得するつもりがないのはおろか情報を引き出そうともしない(この沖田管理官の人格設定がこの映画で一番ふざけている)。当然犯人からの電話は切れる。

    ここで犯人が電話をかけてきた理由がすごい。目撃者の女性を狙うために警察に電話をかけてきたのだ!自分でも文章を書いていてよくわからんが、とにかくそういうことだ。この犯人達(注:彼らは組織犯)はおそらくDrイーブルのような人が集まってできた組織で、犯人が捕まらないのは警察がサボってるとしか思えない。

    っていうか製作者の方達いいですか。警察に協力した人物が狙われる!その人物を守る主人公刑事の決死の努力!っていうのはアメリカ映画みたいにその人物が存在すると犯人側が有罪になる場合じゃないの?もしくはリュック・ベッソンの「レオン」みたいに警察組織自体に頼れない理由がある場合でしょ!この場合目撃者を狙ったら犯人側にデメリットだらけでしょ!アメリカをパクるのならアメリカと日本の差を埋めなさいよ!「踊る大捜査線」はリュック・ベッソンより馬鹿じゃないか!(いや「レオン」は「グロリア」のパクリだが)   青島刑事はスタ公のコブラなのか?


    しかしここで映画はさらに驚愕の展開を見せる、湾岸署は逆探知に成功するのだが、その結果犯人は湾岸署内の公衆電話を使って電話かけてきたことが判明。Drイーブルより馬鹿だ。そして突然ありがちな民族調の音楽が流れ青島刑事だけが走り出す!何故なら青島刑事は主人公でありながら全編を通じて捜査に役立っていないので、こういう場面でしか(画面的に)活躍がないのだ。そして今後本編の中で青島刑事が一人で走っているシーンがあると捜査は必ず進まない。当然このシーンでも犯人に逃げられます。
    署内から電話をかけたんだから入り口を封鎖すれば済んだ話では?と思う当然の疑問をよそに、犯人が湾岸署内から外へ出たことに気がついた青島刑事は犯人を追うのをやめる。青島刑事は捜査範囲が激狭ですね。
    っていうか犯人は自分達から世間へのメッセージがあるんでしょ?だったらマスコミに電話をかけませんか?警察に電話をかける犯人は破滅型のはずでしょ?まあもっとも「踊る大捜査線」はテレビ局の人間達がテレビ局と警察とゴッチャにして作っているので仕方ないか。


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電話で色々


    どう考えても前代未聞の大失態をしたはずの警察側。だが沖田は平然とした表情で交渉人を用意する。猟奇殺人犯を相手に何を交渉するのかさっぱりわからんが。
    ちなみに交渉人のキャラクターは「交渉術は天才的だけど、私生活では女性を上手く説得できない男」というケビン・スペイシーのキャラをそのまんまユースケ・サンタマリアに当てはめた奴が登場。
    再び犯人から電話がかかってくるが交渉人はあえて電話をとらずそのまま電話が切れるのを待つ。そして電話は切れてしまった。しかし交渉人は 「再び電話をかけてくるはずです!」   そうしたら本当にまた電話をかけてきてくれる。     おいおいケビン・スペイシーは相手の電話を一旦受けて切るからこそ、犯人とのパワーバランスが崩れて映画的に緊張感が盛り上がるんでしょうが!その展開じゃあ「都合良く動いてくれる犯人」にしか見えないよ!
    また交渉人はすごい交渉術を見せたりもする。犯人に「君たちの要求はなんだい?上層部にかけあってあげるよ」超下手に出てるのだ。 犯人と交渉する場合は犯人側が人質を取ってたり、爆弾を仕掛けるなり、スコルピオだったりして警察側を脅迫できる状況の場合でしょ?しかも「踊る大捜査線2」の場合は犯人側からの要求なんて何も見えない、この最低の交渉術はパクリじゃなくて「踊る大捜査線2」オリジナルですね。

    交渉人の分析により、犯人は声にストレスが無いので定職についていない人間だとわかる、何だソレ?さらに交渉人は犯人と呼び捨てで呼び合えることを成果としているが、犯人側は組織犯罪でかわりばんこに電話をかけてくるので、あんまし成果があるとは思えない。



    ところでこの映画では交渉人の事をしつこく「ネゴシエーター」と呼ぶのだが、確かに「ネゴシエーター?ああ!エディ・マーフィーのやつね!」とパクリ元がわかりにくくなる効果があるかも。でも「踊る大捜査線2」の交渉人は「早く犯人像を分析してよ!」とせかされるような人なのでネゴシエーターではなくてプロファイラーだ。


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どんどんズタズタになる本編


    沖田管理官は目撃者の女性から事情聴取(何で沖田が?)をしている。どういう殺人事件だったかという説明は台詞だけで片付けられる。また目撃者は犯人の面相についてはよく見ていなかったが、「亀田」がどうのこうのと言ってたという伏線が貼られる。それじゃあ目撃者じゃないのでは?っていうか第一の殺人にも目撃者がいなかった?
    目撃者の女性はお台場で行われるパーティに出席する予定だが、自分の会社の女性役員が辱められるように殺されたことで怯えきっていて、パーティの出席をやめたいと考える。そんな彼女を男社会の中で奮闘してきた沖田管理官は「女性は馬鹿にされてるわ」と説得する。しかし実は沖田の目的は彼女を囮にすることだった。つーか「踊る大捜査線」が一番女性を馬鹿にしているだろ!嫌いです。
    沖田管理官は目撃者の護衛のために「湾岸署員は怪我をしても替えがきくから」という理由で、再び主人公コンビを呼びつける、バディムービーの真似ゴトがしたいんだろうな。主人公コンビは「私たちは自分達の仕事(連続婦女暴行、家族スリ、道案内、接待、痴話)が忙しいんです」と反論するが、沖田管理官に「殺人事件を優先させなさい、あんたたちの仕事はどうでもいいの。」と言い返され傷つく。この沖田管理官の主張って青島刑事の主張と同じですが、何でカタキ役と主人公も同じ事を言ってるの?それに警察として現在進行中の連続殺人事件を優先させるのは当然だと思う、主人公達が大きな事件より小さな事件を優先させる意味がわからない。自分の仕事に取り組む事が一番重要で、組織はそうなるように仕事を切り分ける事が重要じゃないの?「踊る大捜査線」って組織の難しさとか、その中の個人の辛さとかを描く事が出来ていませんね。っていうか青島刑事は小さな事件より大きな事件を優先させるっていう設定じゃないのか?どっちなんだよ!


    お台場でパーティが始まる。パーティ会場ではヨレヨレの服を着ている庶民的な青島刑事が上流社会の人間達に馬鹿にされるというクリシェなギャグが行われる。しかしこの映画の製作陣に上流階級と下流階級の対比なんて出来る演出力も、演技力のある役者も集めることが出来ないので、下流階級=イエロー、上流階級=ホワイト と非常にわかりやすいギャグになっている

    パーティの最中に怪しそうな二人組の男がいた。そのとき同時に青島は連続婦女暴行犯の特徴を持った男を見つける。さらに同時に恩田刑事もアットホームな家族を見つける。   ところでペアルックってコートがペアルックなの?それってわかりにくいんですが・・・。いや、わかるよ!夏の公開に向けて脚本書いていたけど撮影時はスゴイ寒かったというのはわかるよ!でもそれだったらもっとわかりやすい特徴を作ろうよ。
    主人公コンビはすぐに別件の容疑者を見つけたことを連絡するが、沖田管理官により待機を命じられる。っていうか待機している別の警官に任せればすむ話では?怪しい男がいたら事情聴取すれば済む話では?お台場には監視システムがあるんでしょ?何でみんなして事件が起きるのを待っているの?防犯思想が無いのでは?
    二人組の男が「亀田」とか言ってるのが聞き取れた。怪しい!   だがそのときカジノの演出が始まったために二人組に逃げられた。ねえ警察って全力でサボっていない?しかも犯人達は警察の存在を知っていたってどういうことなの?

    また青島刑事は連続婦女暴行犯を追うが、新たな被害者も出てしまう上に青島刑事も暴行犯に殴られ怪我を負う。画面的には悲惨なシーンのはずだが暴行犯がナインティナインの岡村のため観客は爆笑

    まじめに働いていたのは会議室でふんぞりかえっていたエリート達だけで、現場は全員全力で仕事をサボっていたとしか思えない大失態、沖田管理官はまた青島刑事をなじる。恩田刑事は「私たちは自分達の追っていた犯人を逃がしたんです」と反論するが、その場にいた全ての犯人に逃げられたことは反論のしようがないだろう。


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すげえトリック


    再び会議室で会議が行われる。犯人らしき人物をビデオに収めたという超重要な点は無視され、ドリフの大将と交渉人が大胆な推理をたてる。



殺人現場には必ず果物がある


この果物は


しかも西洋梨


つまり洋梨

つまり用ナシ


つまり犯人はリストラされた人たちだ!



すげえ!コナンでもこんなトリックやらないぜ!

しかも洋ナシって犯人から世間へのメッセージなんでしょ?

犯人達は自ら洋ナシって認めているわけね!



    こういうゴキゲンな推理ってリュック・ベッソンもよくやるけど、ベッソンはあくまで「ギャグ」として描く。しかし「踊る大捜査線2」はこのシーンを何と真面目なシーンとして演出している(爆笑したけど)。僕はこのシーンから「踊る大捜査線2」は素敵なギャグ映画であることを確信。


    またここで交渉人が推理の補足として
第二の殺人は第一の殺人と同じく被害者の死体は辱められるようになっていた。
第二の殺人は第一の殺人と同じく犯行現場に梨がおいてある。

   という事をとりあげる。トリック解明の直前に伏線貼るなよ、脚本家としてやってはいけないテクニックのはずだぞ!でもよく考えてみればトリック解明直前に伏線をはれば映画や物語を作るときに必要なあらゆるテクニックが必要ないので、もしかしてこれはすごいテクニックなのかも。
    あと第二の殺人は女性の死体を花で飾って辱めるってのがサッパリわかりません。女性を花で飾るのは愛や尊敬や祝福の気持ちがあってこそ出来ることでは?死体を飾ることで辱めるなら花は使うなよ。


    こうしてお台場にある会社(限定するな)からリストラされた社員がピックアップされた。

    また沖田管理官は湾岸署員達にお台場の全公衆電話の見張り番を命じる。なぜなら犯人達は必ずお台場の公衆電話から電話をかけてきてくれるからだ。どうして必ずお台場から電話が!という疑問以前にプリペイド式携帯電話があるこの世の中、こんなプロットは成立しないと思うのだが・・・。


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さすがコミックムービー


    怪我をした青島に目撃者の女性がお礼にブランド物のコートを届けに来る。ここで青島刑事は自分のヨレヨレのコートの思い出がつのり、警察官としての初心を思い出す。また自分のコートにこだわりを持つ青島刑事だが、とある理由でブランド物のコートもありがたく頂くことに・・・   このシーンはちゃんと伏線が貼ってあるし、ドラマも生み出されているので、この映画で唯一まともなシーンです。でも彼女の上司を殺した犯人も連続婦女暴行犯も逃した役立たずの青島刑事を、まだ命を狙われ続けているはずの彼女が御礼にやってくるのはおかしいけどね。

    恩田刑事が青島の机の下から未開封の耳栓(試供品)を発見する。だからオープニングで閃光弾が効かなかったのだ!   何で未開封の耳栓があることで効かなかった事が説明されるの?と思えるが、恩田刑事が「だから閃光弾が効かなかったんだ」わざとらしい独り言で説明してくれる
   ここでオマケ話、なんと監督はこの耳栓のトリックを否定しています。「否定って言ったって劇中で説明がついてるじゃん」と思うかもしれませんが、僕もそう思います。耳栓をしていなかったとしたら、どうやって青島は助かったんだよ!クライマックスで耳栓していなかった青島の耳が壊れるのと矛盾するじゃねえか!「閃光弾が効かなかった」→「オープニングで試供品をもらいながら出勤する青島」→「試供品には耳栓があった」→「それを見た恩田刑事が閃光弾を効かなかった理由を解説する」→「クライマックスでは耳栓が無いので閃光弾が効く」という風にトリックを組み立てておきながら否定する意図がサッパリわかりません。


    コートの思い出から「やっぱり小さな仕事でも頑張らなきゃなぁ」と反省した青島刑事は頑張って電話番に出かける。雨の中手分けして公衆電話に張り付く湾岸署員達。刑事ドラマで犯人が刑事に銃をつきつけてくる時は必ず雨なので、間違いなくそういうシーンが今後展開される。


    犯人の一人から、たまたま湾岸署員が見張っていない(都合良過ぎ、それと湾岸署員サボリすぎ)お台場の公衆電話からかけてきた。だがそのとき例のスリ家族が犯人のバッグの中身から財布以外の何かをスッた。事件の証拠だ(だから都合良過ぎ)。監視カメラから見張っていた室井が女性刑事に指示、女性刑事はその場に駆けつけるが犯人に逃げられていた。だが犯人はわざわざ戻って来てくれて(何故?地図を忘れた?)、女性刑事に銃をつきつけて人質にして(だから何故?)逃走開始。犯人が逃走した後に駆けつけた恩田刑事はとりあえずスリ家族を逮捕。そして同じく駆けつけた青島刑事は走り出す。


ただやみくもに一晩中走る。

夜明けのお台場の日の出を背に走る

この辺りからついに観客達も笑いだしました。

こうして監視システムと湾岸署員の張り込みを併用した捜査も大失態に終わった。


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奇跡の傑作


    どうしてもここまでアホな犯人が捕まらないのか?   現場がサボっていたからとしか思えないがそうじゃない。交渉人が何度か説明するのだが、要は犯人達が「リーダーのいない新しい形の組織」だから捕まらないのだ。犯人達はお互いの事件を認識していない(知らない)、それぞれが意思を決定している、リーダーのいない新しい形の組織。・・・ってそれは組織犯じゃなくて単独犯じゃないの?    犯人が捕まらない説明になってないよ!というツッコミをよそに、犯人達の組織構成を知った恩田刑事は「軍隊みたいな私たちには勝てないわね」と意味不明のギブアップ。
    ちなみに犯人達の正体は以前お台場の会社に勤めていて、リストラされて、現所在がわからない5人なのだが、たった5人がバラバラに動いているならやっぱり組織じゃないような気もする。


そして遂に警察は最終決断を下す


犯人を捕まえるためにはあの手しかない!


そうお台場を封鎖するのだ1


この瞬間「踊る大捜査線2」は「WASABI」を超えた!


つーか何で封鎖するのよ!


犯人は昨日事件を起こしたんでしょ!

    お台場で女性刑事を拉致してまだお台場にいるわけない!とツッコミたいが、犯人達はお台場から離れないという理由のない前提で描いている映画なので、本当に犯人全員がまだお台場にいます。


    でも封鎖して捜査するより封鎖しないで捜査したほうが簡単に済むと思うし、そもそもお台場の公衆電話すら見張れない人達がお台場封鎖なんて出来るわけが無い。     こうして迎えるお台場の朝。大混乱に陥る道路!鉄道!各種企業!あまりの横暴に怒る政治家!都民!行楽客!マスコミ!考えられる限りあらゆる事態の描写は省略。休日のお台場を封鎖するという未曾有のカオスを、道にロープ張ってエキストラが困っているシーンなどで演出。警察が6つの連絡路を次々と封鎖するが、管轄が色々有りすぎてレインボーブリッジだけは封鎖できなかった(オイ)。


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砂の器


    だがその大混乱(は特に起きてない)の最中に例のスリ家族の女の子が行方不明になっていた。さらにスリ家族は犯人が持っていた地図を盗んでいたことが判明。スリ家族を事情聴取していた恩田刑事は地図を見て犯人側のトリックに気がつく。亀田は蒲田がナマって聞こえていた(訛がある人に実験するシーンがあったけど、そうは聞こえなかった)。地図には蒲田トンネルがある。つまり犯人達は6つの連絡路以外の蒲田トンネルを利用していたのだ。そしてここで「天国と地獄」に引き続く恩田刑事のキメ台詞!!


砂の器だわ」



つーかマニアックすぎだろこれは・・・、僕も全然わからなかった。


    そして青島刑事は蒲田トンネルへ急行!途中完全武装したSATが合流して青島刑事を引き立てるために一緒に走ってくれる。なんか悦に浸って盛り上がっている青島刑事!


そして蒲田トンネルに入るとそこにはブービートラップがいくつも仕掛けられていた!


だが青島刑事は躊躇なくブービートラップを踏む!


そして作動するブービートラップ!


その後も次々に現れるブービートラップ!


だが青島刑事は全部踏む!


途中カッターのようなものを出して解除すると見せかけてやっぱし切るのをやめて作動させる!



    ちなみにブービートラップを作動させると警報が鳴るだけ。だから青島刑事が自分を盛り上げようとしてトラップを踏んでいる様にしか見えず、画面上に溢れる緊迫感と、吹き出している観客との間にかなり深い溝が出来ます。っていうかドリフターズのコントみたい。


    犯人達は女性刑事を引きずりながら蒲田トンネルの出口から出てきた、そこはお台場。おーい、映画のトリックが機能していないぞ。このトンネルは脱出経路じゃないのか?
    恩田刑事は犯人のトリックに気がつくことが出来たために、既に蒲田トンネルの出口に来ていた。そこでは犯人が銃を振り回しながら女性刑事を引きずって歩いていた!(何かヤケっぱちの演出で楽しいぞこの映画)   SATの隊長は一発も発砲していない犯人に対して「発砲許可をください!」と現場に血を流す気マンマン「待機してなさい!」と誰が考えてもマトモな判断を下す沖田管理官だが、これが何故か「沖田管理官の大失敗」として描かれる。しかも「犯人達はお台場内で事を起こす」「お台場から脱出する事が犯人達の勝利」という前提で描いているのに、何で空港で盗まれた銃を持っているのさ。どんなに踊る大捜査線が矛盾だらけでも「犯人達は常にお台場内にいる」ってルールだけは守れよ!それじゃあ映画としてルール違反でしょ!沖田管理官のミスじゃないでしょ!
    また現場にはたまたまスリ家族の女の子もいた。スリ家族と犯人達が物語上邂逅するのはこれで三度目。犯人が突然小学生の女の子を撃とうとするので、飛び出す恩田刑事、身代わりに撃たれる恩田刑事。   どう観ても都合良く惨劇が起きるので爆笑。撃たれた恩田刑事に駆け寄る青島刑事。青島刑事のコートは血まみれになる。SATが犯人を取り囲んでいたはずだが、みんな寝てるので犯人達は徒歩で逃亡成功。またまた大失態を(何度目だよ)犯す警察。
   それにしてもリストラされた人達はSM殺人やったり、女性を拉致したり、辱しめて殺したり、少女を射殺しようとしたりスゴいっすね。というか「踊る大捜査線」のスタッフ達がスゴいのか。
    僕はこの一連のシークエンスは大爆笑しながら観ていました。面白いよ、この映画。


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でもお前ら仕事してないじゃん


    恩田刑事は病院へ搬送された。会議室ではいかりや長介が「俺達兵隊は現場で駆けずり回ってるんだ」 青島刑事が「どうして現場に血が流れるんだ!」と現場のキレっぷりを見せる。その心意気を映画に見せてくれよ、あとその台詞を吐ける資格があるのは最初から猟奇事件に立ち向かった人間のみです。小さな仕事も大きな仕事も否定した青島刑事の台詞ではありません。
    沖田管理官は自分が立てた作戦が失敗してパニックを起こしているが、冷静さを一生懸命装いつつ「お台場封鎖計画第二波」を発動しようとしていた、第二波って何?
    しかし上層部の命令で沖田は解任。室井が指揮官を勤める。こうして脚本の都合上散々滅茶苦茶な台詞ばっかりを吐いていった沖田管理官は消えていく、多くの観客が女性蔑視を感じながら。沖田が最後に凛々しい表情していたのが唯一の救いか。


    リーダーが交代した湾岸署員達は驚愕の事実に気がつく、お台場には工事現場がいっぱいあってそこはまだ捜査していないということを。


    お前ら今まで何やってたんだ!


    そこで湾岸署員達は自分勝手に各自の知っている工事現場にバラバラに向かう事にした。計画性は0だが血まみれの青島刑事はノリノリ。リーダーとなった室井も「現場のお前ら信じているから好き勝手にやってよし」とリーダーとしてあまりにもアバウトすぎる指令を出す。

    ちなみに以前「青島刑事が普段はキュートな笑顔を振りまきながら」と書いたが、この青島刑事は血まみれになってもギャグをやったり、キュートな笑顔を見せるので結構怖い。


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全員レインボーブリッジから叩き落せ!


    こうしてお台場の色んな場所に向かった湾岸署員は犯人組織の5人中2人を逮捕、拉致された女性刑事も救出する。また青島刑事は署長御用達の青姦スポット(嘘)に向かい、そこでブービートラップと洋ナシを発見する。青島刑事は「犯人達がアジトを引き払った事に気がつき、唯一封鎖されていないレインボーブリッジに駆けつける」(青い部分を鑑賞中に理解できた観客は少ないと思うぞ、実際青島がとりあえずレインボーブリッジに向かいだしたようにしか見えない。)
    レインボーブリッジに行くとやっぱりまだ封鎖は出来ていない、封鎖は出来なくても検問は出来ると思うが。まあ犯人の顔がわかっているのに手配書も無い警察ドラマだから仕方ない。
    青島刑事は残りの犯人3人が車に乗ってレインボーブリッジを走っていることにたまたま気がつく。走って車を追いかける青島刑事。「走る車を全速力で追いかける主人公」というのは映画演出でもっとも盛り上がる部分のはずだけど、青島刑事はジョギングで追いかける。それでもこのシーンはチェイスとして成り立つ、だって車も時速10キロちょいで走っているから。実にマッタリとしたチェイスシーンだけど殺気だけはみなぎってる。観客の殺気が。   またこのシーンでは突然画面の黒い部分が荒い粒子になるというビデオ特有の現象が起きて画質が悪化する。
    レインボーブリッジの中ほどで犯人達は何故か車を止めてくれるばかりか、車から降りてきてくれる。そして犯人達は「俺たちの組織にはリーダーがいない」という意味不明の勝利宣言。だが青島刑事は満面の笑みで「リーダーが良ければ組織もいい」(こんなのがキメ台詞かよ)と言う。
   っていうかさ、このキメ台詞ってトップダウン型を意味する言葉でしょ?でもこの映画のクライマックスってボトムアップ型が生まれたんじゃないの?いや、もちろん「踊る大捜査線」は組織とか現場とかそういう要素は「仕事って辛いよね」レベルでしか描いてない映画だから気にするほうがおかしいんだけどね(劇中出てくる組織図も何か変だった・・・)。

    犯人達は爆笑しながら再び車に乗って逃亡する、そして犯人達を見送る青島刑事。すげえ、この映画すげえよ!   だが勝手に駆けつけてきてくれたSATが犯人達を向こうのほうで逮捕してくれた。
   SATから通信を借りた青島刑事が「レインボーブリッジ封鎖!犯人の身柄確保!」と事件を締める。ついさっきまでレインボーブリッジ封鎖できてなかったのに突然「封鎖!」って何?と思いきやレインボーブリッジのど真ん中で記者会見を始める青島刑事。あ、このために封鎖したのか。ここで日本全国民がCMで「一体どーいう状況なんだよ?」と疑問に思っていた「湾岸署は血液を求めています」のシーンが展開、でもさ・・・


血液が欲しいのは病院と患者だろ!


何で湾岸署が欲しがるんだよ!お前ら吸血鬼か?それ以前に


そこまで現場に血は流れてねえよ!

つーかさっき病院のシーンで看護婦が血液運んでなかった?


    映画至上最も無理矢理観客に感動を強いさせている迷シーンなので半分位の観客は一斉に笑い出していました。こうしてお台場を封鎖して非難ごうごうのはずの湾岸署に多くの人たちと献血車が集まってくる。ここで連続婦女暴行犯が、警察署の前にやってきて衆人環境の中で女性を襲うという絶対有り得ない婦女暴行が起きて最期の事件も解決。


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エンディング


    恩田刑事の病室。ここで室井と青島が出会い、青島が感謝の言葉を述べる。
「シビれるような命令ありがとう」
   痺れているのは観客の脳みそだ。そして室井のキメ台詞
「責任を取るのがリーダーの仕事だ」


    違うよ!「踊る大捜査線2」のクライマックスの場合は、個人個人が自分の意思で動いているんだから、責任は各個人が自分自身で取るべきでしょ!

    そんな二人を見届けた黄色いモーガン・フリーマンが青島刑事に指導員の腕章を託す・・・。和久って定年退職して指導員になったんじゃないの?これじゃあまるで現役の青島刑事に指導員を託しているように見えるんですが・・・。つまりこのシーンは腕章を署に返すのを青島刑事に頼んだだけなのね。いきなり出署拒否するのか。


    事件は全て解決された。そして今回の事件の活躍により、室井(てきとーな指示を一回出しただけ)と青島(主人公なのに犯人一人も逮捕していない、っていうか何もしていない)が表彰されることになった。しかし青島は表彰式で名前を呼ばれても出てこない。所轄の仕事があるからだ。   草むらの中で今日も元気に仕事をしている青島を写して映画は終わる。つまり、これは青島が警察官としての初心を取り戻した事を描いているラストシーンですが、初心に戻ったのなら無断欠席するなよ。それに表彰式だって警察官にとっては立派な仕事でしょ、どうして現場は所轄の仕事しかしないんだ!


   ・・・それで青島刑事が怒りの声を挙げていた監視システムはどうなったの?


   (後で知りましたが、あの監視システムは単に映画を盛り上がる意図のみだけで、特に深い意味は無かったそうです。じゃあ怒りの声を挙げなければ映画としておかしい所はないのですが、織田裕二が脚本を変えさせたようです。そんなんだからおかしくなっちゃうんだよ。)


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