トリプルX


    世界でもっとも稼げるシリーズに「007」というものがある(ゼロゼロセブンじゃないよ、それはサイボーグ。こっちはダブルオーセブン)。この映画シリーズには一定のパターンがある。ハンサムでキザの凄腕スパイ、ジェームズ・ボンドが黒いスニーキング・スーツを着て、敵を倒し、小道具を使い鮮やかに敵地に潜入。そこは大金持ちや美女達が豪華なパーティを開いている。スニーキング・スーツを脱いで高級なタキシードを着たジェームズ・ボンドはそこへ溶け込み、お洒落な会話を交わしながら情報を入手していく・・・。     21世紀のスパイ映画「トリプルX」のオープニングも全く同じだ。スパイが鮮やかに敵地に潜入してタキシードに着替えて・・・、しかしここからが違う。潜入先は高級パーティー会場ではない。大金持ちも、ドレスを着た美女も、カクテルを運ぶウェイターもいない。そこはラムシュタイン(ドイツの変態ヘヴィ・メタル・バンド)のライブ会場だった。モッシュしまくりのメタル野郎達の中でタキシードを着たお洒落スパイは目立ちまくり


敵「あ、あそこにいました」
敵のボス「よし撃ち殺せ」



バキューン!


お洒落スパイいきなり死亡。しかもオーディエンス達は落ちてきたスパイの死体をダイブと間違えてサーフさせる。


潜入作戦が失敗したことを知ったNSA本部では、ボスのギボンス(サミュエル・L・ジャクソン)が新たな手段を考えた。
「敵は元軍人だ。スパイを送っても見抜かれる。








よし!チンピラを送ろう!」







本編の前に映画の解説


    「スパイダーマン」はダメ人間が突然スーパー・ヒーロー(ただしダメ人間のまま)に変身する過程を描き成功しました。「トリプルX」もそれと近い方法をとっています。チンピラが突然スーパー・スパイ(もちろんチンピラのまんま)になって大活躍!映画自体はつまらないのかもしれないけど、とにかく楽しめる内容になっていてオススメできます。
   主人公のトリプルX役はヴィン・ディーゼル、本編にはほとんど関係無いギボンズ役にはサミュエル・L・ジャクソン。ほかの男性キャストも含めて、全員ブサイク顔だらけの中アーシア・アルジェントが美しすぎます。例え父親がダリオ・アルジェントだとしても。




警告:以下は映画の内容を詳しく解説しています。
まだご覧になっていない方は読まないことをオススメします。


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ザンダー登場


    無職のチンピラ、ザンダー(主人公)の口癖は「ザンダー・ゾーンへようこそ!(Welcome to the Xander Zone)」。どういう意味なのかサッパリわからない。
さらに語尾に「チ○コ」をつける癖もある。例:いいかよく聞け、チ○コ!ざまあみやがれ、チ○コ!



    今日もラップ禁止、TVゲーム禁止を公約にする議員のコルベットを盗み逃亡。さらにコルベットにビデオ・カメラを取り付け暴走しながら演説を録画。
「ラップ禁止だと?あれぞ音楽だ!チ○コ!
TVゲームは若者の思考力を低下させるだと?

TVゲームこそが教育だ!
チ○コ!

(注:映画秘宝のギンティ小林氏の記事で気がつきましたが、チ○コは口癖ではなくて議員につけた仇名とのことです。僕が間違えてました。でもメンドイので文章は直しません、チ○コ!)

    そして橋にさしかかると、橋からコルベットごと落下!しかしザンダーはパラシュートで脱出。この様子もカメラで録画して、インターネットで販売して生計を立てているのだ。警察から逃れて自宅で友人のチンピラ達と音楽をガンガンかけながらパーティを始めるザンダー。そこへ特殊部隊が襲撃してきた!
ザンダー
「わかったよ、ボリュームは落とすよ」
と言った瞬間。麻酔銃で撃たれる・・・。

    目覚めるとそこは何故か普通の喫茶店、しかも突然強盗が襲ってくる。ザンダーは見事に観察力と機転を利かせて強盗を退治する。実はこれはギボンズが企んだチンピラスパイ計画の第一段階テストだったのだ。強盗を倒し試験を見抜いたザンダーは第一のテストに合格する。ザンダーは第二のテストを受けるのを拒むが、また麻酔銃で撃たれて強制的に第二段階のテストに突入。内容は飛行機からコロンビアに落とされ生還すること。一緒に落とされた他の試験者(やっぱりチンピラ)は
「やった!コロンビアだ!」
と大麻畑で大喜びで大麻を集めている。






ザンダースパイに!


    大麻畑でウロチョロしている間に麻薬組織に包囲されるザンダー達、「これもどうせテストなんだろ」と思ったザンダー達はテストがメンドくさくなったので、あっさり捕獲されアジトに監禁される。麻薬組織も喫茶店強盗と同じトリックだと思ったザンダーは麻薬組織に悪口言いまくり。しかし拷問部屋にあった器具にホンモノの血がついていることで、麻薬組織はトリックじゃないことを知って慌てて脱出。丁度そこにコロンビア政府軍が突入してきて麻薬組織と戦闘開始!コロンビア政府軍と麻薬組織の両方から狙われる羽目になったザンダー。しかし彼は仲間のチンピラを助けるために、集中攻撃から逃げずにバイクでピョンピョン跳ねて攻撃を避ける!(注:この映画はバイクは空を飛ぶものとして描かれる。)
目の前に柵があった!
バイクでピョーンと跳ねる!

敵がマシンガンで乱射してきた!
バイクでピョーンと避ける!

櫓に敵が!
バイクが飛んで敵を倒す!

武装ヘリの集中砲火!
これもバイクで飛べば避けれる!


バイク・スタントの方達はこんなアホな演出のために、きっと何度も死にそうになっただろうな。


麻薬組織は全滅した。廃墟となったアジトにギボンズがやってくる。
ギボンス「お前は仲間を救った、合格だ。スパイとなって働け」
ザンダー「嫌だね、お国のために働いて傷がつくなんてやってらんねぇ」
かなり強気のザンダー。そこでギボンズはザンダーの首にあるトリプルX(Xには興奮、危険という意味がある)のタトゥーを指し、
ギボンズ「お前には3つのXがある。車泥棒、盗んだ車で暴走、そのまま橋から飛び降りた。この3つの罪で刑務所にぶちこんでやる。」




どれも大した犯罪じゃないよ。と誰もが思うかもしれない、しかしギボンズはさらに恐るべき脅迫の言葉を吐いた!






「刑務所にはスノボもサーフィンも無いぞ」


ザンダーとっさに「何で俺がこんな目に遭うんだ!」いきなり弱気に。
結局上手く言いくるめられたザンダーはスパイになる決心をする。






ザンダー初仕事


    試験合格したザンダーはそのままチェコに飛ばされる。ザンダーの任務は世界の破滅をたくらむ悪の組織「アナーキー99」に潜入する・・・って何だよその恥ずかしい組織は!(ザンダーも「それ族か?」と聞く)。まあとにかくチェコの秘密警察官と協力して「アナーキー99」が遊んでいるクラブに潜入することになったザンダー。秘密警察官はアメリカ人丸出しのザンダーを見てあらかじめ死体袋を用意する。
    クラブに潜入したザンダーは秘密警察官のアナーキー99の情報を聞かずに、いきなりアナーキー99の溜まり場に突入。ボスのヨーギに直談判!
ザンダー「ヨゥ!パクった車、俺に売ってくれよ!」
ヨーギ「てめえ!警官か!?」
ザンダー「違うよ、俺じゃなくてあそこにいる男が秘密警察官さ」
といきなり協力者を裏切る。


ヨーギ「お前はどうして教えてくれたんだ?」
ザンダー「だって俺達警官嫌いだろ?」
ヨーギ「だよな!」
と結局はチンピラ同士なのでもうダチ感覚。さらにヨーギの弟がザンダーのホームページの客だったために、ザンダーはヨーギの弟と飲みダチになって情報を手に入れる。        っていうかさ







スパイがホームページやるなよ。



とにかくザンダーは潜入成功した。早速商談に入る。

ヨーギ「どういう車が欲しいんだ?」
ザンダー「イタ車のフェラーリだ」
ヨーギ「お前車に詳しいな」
とチンピラ独特の会話をこなしつつ、アナーキー99との取引が成立する。




すんません、ここまで書いていてどうしてもわからない疑問があるんですけど。 どうして外国語喋れないザンダーが外国でスパイやってるんですか?

まあ敵も全員英語喋ってるからいいけど。






ザンダーばれる


    ザンダーは一旦チェコの警察に帰る。そこでスーパースパイに憧れて警察に入ったのに機械工作ばっかりやっている大卒のオタクに懐かれる。
オタク「僕はスパイに憧れているんだ!君はいつからスパイやっているのかい?」
ザンダー「2日目だ。」
オタク「銃の使い方はどうやって覚えたの?」
ザンダー「シューティング・ゲームだ。」


    ザンダーはオタクから数々の秘密武器と透視カメラ(もちろん女性で試す)をもらって再びアナーキー99の元へ。ヨーギからボアンティックGTOも奮発してもらい、ますます上機嫌。一緒にオービタルがDJやっているクラブへ遊びに行き、そこでザンダーとヨーギはパンクの趣味も同じことが判明する(っていうかほんとチンピラ同士の展開だな)。ますますザンダーの事が気に入ったヨーギはザンダーをアナーキー99のアジトに招待する。そこは趣ある古城を改造したアジトで、中庭の噴水には水着のネーちゃん達が遊んでて次々にアンちゃん達がお持ち帰り(いくらお湯だからってここはチェコでしょ、風邪ひきませんか?)。さらに寝室はロウソクだらけ、オマケに紐パンツの女性がベッドバーに絡み付いていて”したい”放題。僕はこういったアメリカ人の低俗な女性観と歪んだ北欧感にとてつもなく憧憬を抱いてしまいます。


    翌日、ザンダーはアジトの調査を始めようとする。そこでヨーギの愛人のマレーナ(アーシア・アルジェント)もアナーキー99を裏切ろうとしているのを発見。ザンダーはマレーナをランチに誘い、真実を告白する。
ザンダー「実は俺スパイなんだ!」
   マレーナ爆笑

    しかしヨーギがようやくザンダーがスパイだと知り、マレーナに「ザンダーを殺せ」と指示したために、マレーナはザンダーを信じる。既にザンダーは狙撃者に狙われていたが、機転を働かせウェイターの銀盆を奪い、銀盆を狙撃者に向けて太陽光をチラチラ反射させながら逃げる。さらに銀盆を抱えてダッシュし、今度は銀盆をボード代わりにして階段を滑り降りる。それは機転じゃなくて頓知のような気もするが・・・。




警告:以下は宣伝の内容を超えるネタばれです。
まだご覧になっていない方は読まないことをオススメします。


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ザンダー忍び込む


    上手く狙撃者から逃れたザンダーだが、今度は何者かにあっという間に捕まり覆面を被らされる。連れて行かれた先はオペラ・ハウスだった(オペラ・ハウスなんて情報誌読めばすぐ判るから、覆面被せる必要は全くないと思うのだが)。オペラ・ハウスではギボンズが待ち構えていた。
ギボンズ「よくやってくれた。君はクビだ。後は我々にまかせて君はアメリカに帰れ。」
ザンダー「マレーナはどうする?」
ギボンス「我々には関係ない。」
このままギボンズ達が突撃したらマレーナが危ない、ザンダーは単独でマレーナを救う決意をする。

    このところアメリカ映画ではやっているロック・クライミングをこなしつつザンダーはアナーキー99のアジトに忍び込む。そこではアナーキー99が秘密兵器のエイハブと毒ガスの開発に成功したところだった。エイハブとは最新鋭の潜水艇のことで、毒ガスは水を通せば無害だが大気中では超有毒というもの。ヨーギはこの毒ガスをエイハブにとりつけ、毒ガスをバラまきながら世界中の都市を走らせるつもりだったのだ!
   ・・・ってことは川を走らせるんでしょ?簡単に止められるんじゃ・・・まあいいや。


ヨーギは開発に協力してくれた科学者達を抹殺し演説する。




ヨーギ「この攻撃なら敵は誰だか不明だ!
だからみんな互いに戦争を始める!
そして世界は滅ぶ」





今どき日本のテレビアニメだって、もうちょっと真面目なプロット立てるぞ!!






ザンダー一世一代の大馬鹿


    敵に見つかりつつも、再びバイクで空を飛んでアジトから脱出するザンダー、一旦ピンチに陥るがマレーナに救われる。実はマレーナはアナーキー99を内偵していたロシアのスパイだったのだ。マレーナはアメリカへの亡命を条件にザンダーに協力する。ちなみにザンダーは「条件に海辺の別荘と金持ちの男つける?」と聞くがマレーナは「自分で見つけるわ」。カッコいいッス!

さらにギボンズからも連絡が入る
ギボンズ「お前はそういう奴だと思ってた。例えばビルから飛び降りるなと命令したら?」
ザンダー「飛び降りるぜ!」


アナーキー99をぶっ潰すことを腹に決めたザンダーは再びチェコ警察へ。女の子を口説こうとしているオタクの元へ行く。
オタク「みんな僕のことオタクって呼ぶけど、僕は普通の男さ」
ザンダー「おいオタク野郎!俺の車に秘密兵器つけとけよ!」
オタク、パシリに格下げ。



さらにザンダーはチェコ警察を集めて作戦を指示する(どうしてアメリカのスパイが外国の治安組織を動かせるのかはともかく)。
ザンダー「まずは山中にある敵の通信施設を破壊する!」
チェコ警察「無理ですよ!」
ザンダー「俺に作戦がある。」


実はザンダーの作戦とは雪崩を起こさせて通信施設を破壊することだったのだ。


   これはまあいいんですがね。何故かザンダー、わざわざパラシュートを使ってスノーボード持って山中へ。自分の立っている場所に爆弾を投げ捨てて雪崩を起こし雪崩からスノーボードで逃げるザンダー!時速150キロを超えるという表層雪崩と同スピードで滑走するザンダー!


自分の立っている場所よりも下に爆弾を投げていれば雪崩から逃げる必要は全く無いのはさておき、スノーボードで敵の通信施設まで近づくとジャンプで通信施設の屋根にあるアンテナに捕まる。通信施設を壊すのが目的の雪崩だったので、ザンダーは当然雪崩に埋もれる。だがザンダーは無事に雪崩の中からズボッと出てきて


「新雪ってサイコー!」







クライマックス


    しかし敵の通信基地を破壊するのに、敵の通信基地から逃げずにスノボで突っ込むという大馬鹿やったために、ザンダーはあっさりとアナーキー99に捕まる。さらに裏切りがバレたマレーナも捕まり、絶体絶命のピンチに。だがチェコ警察が突入してきたおかげでザンダーとマレーナは反撃、アナーキー99との壮絶な銃撃戦が始まる。さらにこのクライマックスの時点でザンダーが銃の扱い方を知らなかったことが判明(リボルバーは構造が単純だから扱えた)。
    途中強敵の狙撃者が待ち受けるが、ザンダーが「狙撃者はタバコ好きだから熱感知ミサイルで倒せるはずだ」と機転を利かせる(だからそれは頓知だろ)。本当にミサイルをぶっ放して狙撃者を倒すザンダー。


その勢いでヨーギも倒したザンダー、アナーキー99は壊滅した。しかしアナーキー99の秘密兵器エイハブは既に動き出していた!このままでは世界は滅んでしまう!!
ちなみにエイハブとは・・・





トリプルX


何だよ、この潜水艇版先行者みたいなデザインは!!
学研の雑誌の未来特集とかに出てきそうだな。




   こんな秘密兵器に世界を滅ぼされたらたまったもんじゃない。そのときタイミングよくパシリがスーパーカーを運んできた。ありったけの破壊兵器を積んだ武装車と化していたが、全く役には立たないスーパーカー。途中事故った馬車をミサイルで吹き飛ばすだけ。ザンダーとマレーナは時速130キロを超えてプラハ市内の川を爆走するエイハブ(時速30キロくらいにしか見えないが)に先回りする。


   ギボンズは「世界を救うためにはプラハの街を犠牲にするしかない。」と言って空軍による爆撃を要請、あと3分以内にザンダーとマレーナが何とかしなければプラハは滅びるという「エグゼクティブ・デシジョン」や「ザ・ロック」と全く同じ展開に、しかし空軍のシーンは適当に演習シーンのフィルムを張り合わせたせいか、武装していない。ザンダーはアメリカ国旗を前面にあしらったパラセール(9.11以降、アメリカ国旗は映画でも大人気)を使ってエイハブに乗り移ることにした。しかしザンダーはこれからカッコよく世界を救うので
「シマッタ、ビデオカメラ忘れたぜ!」
と叫ぶ。


   何とかエイハブに乗り移ったザンダー
しかし何をすればいいのかわからないザンダー
そのまま2分間くらい固まるザンダー
あと十数秒で爆撃というときになってザンダーはようやく動き出す。とりあえず毒ガス装置をガコッとはずし逆にとりつける・・・・・


だったら最ッ初からはずして川の中に捨てろよ!


次にエイハブの起動ディスクを抜き取る。
そしてザンダーの決めセリフ
「ザンダーゾーンへようこそ!(Welcome to the Xander Zone)」

敵もみんな死んでいるのに誰にWelcome言っているのかはわからないが、毒ガスはエイハブとともに川に沈み世界は救われた。

北欧の寒さにもうこりごりのザンダーはマレーナと共に南の島にバカンス。
そしてギボンズがザンダーを正式採用するという2への伏線をガッチリ作っておきながら映画は終わる。



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