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ターミネーター3   ★★★★

    全くの予想外、めっちゃ面白かった。これは僕の個人的な意見だけどT2よりもT3のほうが好き。
    監督のジョナサン・モストゥはB級映画の快作「ブレーキ・ダウン」でデビューし、世界中の評論家や映画ファンから注目を浴びました。しかし続く「U-571」では普通のA級映画に仕上げてしまい、評価を伸ばすことが出来なかった。そしてB級映画の大傑作「ターミネーター」、A級映画の傑作「ターミネーター2」に続く「ターミネーター3」の監督に抜擢。どう仕上げるか注目されていましたが、全映画ファンが大体予想していた通りA級規模のB級映画になっていました。これが逆に好感を持てます。
    ジョナサン・モストゥのアクションには「アクションは生身の迫力」という概念はなく、特撮・特効・スタントをふんだんに使って「アクションとは物質の破壊」という点を前面に出しています。だからこそ超頑丈なのに少しずつ破壊されていくT-850と、何が起きても壊れないT-Xの迫力が生きてくるのです。
    この点がもっとも強く出ているのは中盤のカーチェイスです。車好きが喜びそうな高級車同士のスピード感溢れるカーアクションなんてとっくに見飽きている観客の意思を読み取って、「ターミネーター3」は頑丈な車同士がガツンゴツンと破壊を撒き散らしていく重量級アクションが延々と展開、ようやく破壊が終わるのかと思ったら[今度はクレーン車対消防車という超重量級カーアクション]が始まります。
    演出やプロットはT1、T2と全く同じ手法を取りながら細かい部分で外しまくり。また脚本も「ターミネーターとは命令を遂行することだけが目的の抹殺者」という基本設定を見直して構成。T2ではクライマックスで「ターミネーターが感情を学習したのでは?」と観客に思わせてそれが感動になるのに、T3では[感情ではなくて命令]だという事を観客に強く認識させ、それがクライマックスの重みを深めていく。しかし「どうしてターミネーターの外見がシュワなのか?」にもきちんと説明つけるとは思わなかった(裏設定で”T-800シリーズはシュワ”というのはある)。さらに「映画は2時間以内であるべき」という世界中の映画作家達に見習って欲しいポリシーを元に、ジョナサン・モストゥはかったるいシーンを大幅に省略。普通だったら怒りたくなるけど、モストゥのゴリゴリの演出のおかげで小気味良い感じになっています。
    またT-Xがカワイイんだよこれが。もちろんT-Xは暗殺専門ターミネーターで鋼鉄のような無表情で破壊と恐怖を振りまいてるのですが、ジョン・コナーを見つけたときのちょっと嬉しそうな表情や、取り逃したときのちょっと悔しそうな表情が見え隠れしてて本当にカワイイ。これは僕の個人的な意見だけど、「初恋の来た道」の恋心に溢れる美少女:チャン・ツィーイーがギョーザを持って追いかけてくれるよりも、殺意しかないターミネーター:T-Xがプラズマ砲持って追いかけてくれるほうが嬉しいなぁ。
    「ターミネーター3」で衝撃的なのがオープニング。このオープニングでは物語の核となる4人が紹介されます。
    ジョン・コナー。彼の悲壮なナレーションと共に、[いきなり核爆発、そして抵抗軍を導くジョン・コナーが出てきて]、壮大な物語が始まるかと思えば再びナレーションで[「こうなるはずだったんだけど、回避したんだよね。だから僕は今住所不定のフリーター。誰にも知られずに逃げながら生きてます。」と日雇い労働者やってる]ジョン・コナーが登場。肉体労働の後にバドワイザーを飲んでたそがれている。
    未来から過去にやってきた新人派遣OLのT-X。ウィンドウ・ショッピングしていた彼女は
「私もこれから現場に派遣されるんだから、こんな露出の高い格好じゃダメだわ。どこかにブランド物のスーツないかしら。それにパーマかけた髪形じゃOLに見られないからストレートにしないと。」
「私って仕事に一生懸命だけど、どうやったら男を惹きつけられるかよくわかってるわ、勉強したもの。この間なんてちょっと信号無視して警官に捕まったけど、セクシーなポーズをとるだけでお咎め無しだったわ。本気になればすぐにセクシーモードになるのよ。でもたまには膝下まであるスカートのOL制服を着たりするもの楽しいかもしれないわ。」
「そんなことより仕事にかからないとね。私は古臭くて、頭の固いオッサン達とは違ってスタイリッシュに仕事をこなすのよ。まずはケータイのiモードで情報収集ね、電話帳なんて使っていたドイツ野郎はどこのどいつかしら? 早速お仕事ごーまるごーまるごーまるごー!」
   クレア・デーンズ演じるケイト・ブリュースターが登場。ジュリエット役で世界的女優になったクレア・デーンズがジュリエット・ビノシュ化していた。
   最後にT-850型が登場、全身にパウダー塗るなりして衰えを隠したに違いない筋肉美を披露。そしてT-850は今まで通り酒場に向かって歩き始めて・・・。
   発泡酒のCMで全裸のターミネーターが酒場で男相手に大暴れしているのがありますが、あれ嘘です。本編ではここでターミネーター・シリーズの常識を覆す衝撃の展開が起きます。ターミネーターにとって最大級の危機が訪れることに・・・(このシーンを鑑賞するときはみんな腕を交互に上下させましょう)。
    観る前に知っておくと良いかも
● あのお医者さんはシルバーマンといって、T1ではカイルの精神鑑定を、T2ではサラ・コナーの主治医だった人。
● ジョン・コナーに車をぶつけられて怒っている人は、シュワのボディ・ダブル(代役)でシュワの親友。
● 関係ない話だけどドイツだとサブタイトルは「リベリオン・デァ・マシーネン」らしい。ちょっとカッコいい。
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注意

    以下はネタバレに触れています。映画本編を観ていない人は絶対に読まないでください。
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ターミネーター3のキャラネタ

● T-850
ガーゴイルのサングラスで世界を震え上がらせたのも昔の話、今作ではパーティ・メガネにコンビニで万引きしたグラサンと激しくパワーダウン。

● ジョン・コナー
今、世界でもっとものび太に近い男。未来の世界からやって来たシュワ型ロボットと楽しい子供時代を過ごしたが、彼はジョン太の前から姿を消し、そのショックで元通りダメ人間になった。あまりの役立たずっぷりに静香ちゃんに「あなた一人だと私不安だわ、結婚してあげる」と言われてゴールイン。

● T-X
胸キュンメカ。ってみんな知らないか。キャラ設定の「10億の兵器を内蔵するターミネーター」を知ったとき「そんなアホな」と思ったけど、やっぱりこの設定は無かったことになっていた。でも「口でDNA判定」は本当だった。

● ケイト・ブリュースター
T-850が彼女の食料を調達するシーンでお菓子ばっかり集めてくるのは、やはり彼女がご主人様だから?

● スカイネット
スカイネットの正体って10年前だったら観客は理解出来なかっただろうな。

● ロバート・ブリュースター
T3のダイソンな人、いや大損な人。(ネタ元:渡 富士夫さん)

● サイバーダイン社
潰れてました。復活したカロルコを見習えよ。

● 酒場のおっさん
「楽屋へ回れ」の意味がわからなかったけど、そういうことだったのね。

● 酒場の客達
あの後、筋肉隆々の男が無理やりオカマを脱がすシーンが見れて大喜びだったに違いない?

● 暗殺リストの人たち
「マシーンに勇敢に立ち向かい戦死」「最後まで仲間をかばい死す」と書かれるはずだったなのに、「深夜バイト中、フリーター殺される」「学生殺害事件、親も知らなかったパーティ中に」と新聞で書かれる羽目になった。(嘘、いや本当かも)

● ニック・スタール
「僕はエドワード・ファーロング降板の理由なんて知らないさ」白々しい大嘘をこいている。しかし来日した際に「(僕が子役の頃)ハリウッドには関わりたくないって言ってたけど、単に仕事の依頼が来なかっただけなんだよね。」と熱い真実を語ってくれた。

● クレア・デーンズ
新人女優がケイト役で既に撮影が始まっていたが、唐突にクビになってクレア・デーンズが登板。何かハリウッドの裏を知った気分になるが、スタジオ側の言い訳「新人女優は若く見えすぎる」はニック・スタールとクレア・デーンズの老け顔を見れば納得できる。

● エドワード・ファーロング
ジャンキーだったローティーン時代を過ごし更正することなく成長、挙句の果てに交通違反を連続で起こして内定が決まっていたT3を降板。これってダメ人間になってしまい、交通事故を起こし、ジャンキー扱いされたジョン・コナーそのまんまじゃん。

● T-Xの服
「あの服も液体金属なら裸の意味無いじゃん。」と誰もツッコミ入れないあたり、世界中の観客はわかっていますね。まあ「裸の王様」にツッコミ入れる小僧はいても、「裸のお姫様」だったらツッコミ入れずに黙ってるよな。


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パラドックスネタについて

    僕が結構本気で予想していた「T-X=スカイネットのイヴ説」が大はずれで、ギャグのつもりで書いた「棺おけに機関銃」が当たってました(「続・荒野の用心棒」という映画で棺おけの中に機関銃を入れているから)。さらにいうと僕はパラドックスが収拾つくどころではなく、増えるのでは?と心配しましたが、いらぬ世話でした。「審判の日は不可避」だったのです。これならパラドックスにも収拾がつきます。
    以前僕は「T1の物語の起点は何?」と書きましたが、T3のパンフレットでは永野寿彦氏が「審判の日を回避したらカイルが来ないのでジョンが消える可能性がある。」とごもっともな指摘をしていました。確かに審判の日を回避してもジョンが誕生するには、
「よおジョン、何だよそれは」
「やあ、カイル。これはタイムマシンだよ。」
「面白そうだな、俺を実験に使ってくれよ。白血病で亡くなったお前の母親に会ってやるよ」
こうして80年代に向かったカイル、そこでサラ・コーナーと出会い恋に落ちて・・・とバック・トゥ・ザ・フューチャーをやらなきゃダメです。
    だからといって「審判の日は延期でーす、でも3時間後でーす」という小学校の運動会みたいな扱いは、T2の重厚なストーリーに喧嘩売ってるような気もします。でも「審判の日は不可避」とすることで「T1の物語の起点」は生まれる(どんな形でもスカイネットは発生する)し、ジョン・コナーの使命と人類の運命がハッキリと浮き出るし、パラドックスを気にせずに続編作れるし、T3を観終わったあとだと納得できます。っていうかお見事!
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