やさしい嘘 ★★★
息子からの手紙を生きがいにしているおばあちゃん。しかしある日息子は事故で死んでしまう。そこで母と孫娘は、息子が生きていると思わせるために、息子の手紙を偽造しておばあちゃんに渡し続ける事に・・・。
という基本プロットだと優しい映画のように思えるけど、実は「やさしい嘘」は移民映画の変型版。
映画の登場人物達はグルジア国民。長い間ロシアの支配下にあったグルジアは閉塞しきっている。だけどおばあちゃんはロシアの恩恵を受けていたので、スターリンを尊敬している。50代と思われる母は夫をアフガン戦争で亡くし、停電・断水・借金などグルジアの現状で苦しんでいる。娘はフランス語を学んでいる。つまりおばあちゃんが過去のグルジア、母が現在のグルジア、娘が未来のグルジアなんです。三世代の女性を通じて、ある国の過去、現状、未来を描く。
そして[普通の移民映画が、主人公がオープニングで移民になるのに対して、この映画はエンディングで移民になっている。移民が生まれる事情を描いた映画なのです。]
クライマックス、[おばあちゃんは家のフランス語の蔵書を全て売り払い、移民としてフランスに入国してそのまま不法滞在していた息子(死んだとは知らない)のいるフランスへ向かう。そこでおばあちゃんは自分一人で息子は死んでいたという事実に辿り着く。
事実を知ったおばあちゃんは、母と娘に「息子はまた別の国の移民となった」という嘘をつく。これがおばあちゃんの出した結論だった。それを知った孫娘は移民になることを決意して、フランスに残る。孫娘の決意は希望に溢れているわけでもない。だけど移民にならないとグルジアの未来は切り開けない。]移民という存在から程遠い日本人にも、移民の存在を考えさせられる映画です。