死ぬまでの暁にしたい10のこと
1:スポーツをする
2:映画を観る
3:自転車に乗って遊ぶ
4:ファッションを楽しむ
5:知らない人とコミュニケーションをとる
6:ゲームして遊ぶ
7:お酒を飲む
8:エッチする
9:そこらへんのムカつく奴(顔とかが)をぶっ殺す
10:女の子に「好きだ」と言う
いやー日々の生活って大切なんですね。「ドーン・オブ・ザ・デッド」にそんなこと教えてもらいましたよ。さすが「死ぬまでにしたい10のこと」のサラ・ポーリー主演の映画です。
「ドーン・オブ・ザ・デッド」は「ゾンビ」のリメイクですが、これが
おもしれー!!とにかく呆気にとられたのは最初の5分、
最初の5分で世界が崩壊します。政治家が核ミサイルのスイッチを押して地球上でドカーンと爆発が一杯起き、ナレーションで「こうして世界は崩壊した」というわけじゃない。地球規模の天災が発生してニュースキャスターが「もう終わりだ~」と叫びながら都市が木っ端微塵になるわけでもない。
ある日突然自分の家で少女が壊れた、愛する人も壊れた。ビックリして外へ出るとそこらじゅうで同じことが起きていた。自分の生活が無くなる事、自分が
見知っていた世界が無くなっている事、もう2度と元通りになれない事。世界が崩壊するっていうのはそういう事なんだ。そして
本当の恐怖とは世界が崩壊したのに、自分は残っていることだ!「ドーン・オブ・ザ・デッド」はそれを
たったの5分で描きます。まるで
映画のお手本のようで素晴らしい。
そして衝撃のオープニングが終わると世界中の人々がゾンビになってしまって世界で、わずかに残ってしまった人間達の物語が始まります。でも「ドーン・オブ・ザ・デッド」は世界規模の物語じゃない。残った人間達はショッピング・モールに集まる。建物は残っている、食料だってある、電気もある、娯楽だってある。でも世界はもう終わってしまっている。それでも残ってしまった人々の物語。これぞ映画です。ゾンビが襲ってくるだけだったら単なるホラー映画です。
「ドーン・オブ・ザ・デッド」は演出の変化球の投げ方が上手い。観客の予想を裏切るべきシーンは裏切るし、観客の期待を裏切ってはいけないシーンは裏切らない。一番感心したのは[
デブのババアがゾンビになる]シーン。下手糞なホラー映画だったら観客が一番ビクッとなるタイミングでゾンビが登場するんだけど、「ドーン・オブ・ザ・デッド」はなんと
観客が一番怖くないタイミングでゾンビが登場する。「え?」と肩透かしを喰らった思いきや、その直後のゾンビの迫り来る動きが超怖い!「驚かす」じゃなくてちゃんと「怖がらせる」のです。
さらに登場人物がどのような状況にいるのか、ちゃんと常に観客が把握できるようになっているので、「いつゾンビが来るかわからない」という登場人物の状況になりきって映画が楽しめる。
また物語の展開も上手い。生き残った人々には様々な事情や特徴があってそれが大量の伏線になるんだけど、次々に貼られる伏線は順番に
丁寧に回収されていく。秀逸なのはショッピング・モール外にいるアンディという男の存在です。「ドーン・オブ・ザ・デッド」はショッピング・モール内の物語ですから、ショッピング・モールの外にいる
アンディは絶対にアンディの視点で描かれない。ショッピング・モールからの視点でのみ描かれるのです。つまり映画としてルールをちゃんと守っている。
「恋人はスナイパー 劇場版」とか「CASSHERN」とか
そういった事がまるで出来ていない作品を観た直後なんで余計に強く感じました。
もちろん「ドーン・オブ・ザ・デッド」は高尚な映画ではなくバリバリのホラー映画なので、車でガッツンガッツン突っ込んで、爆発があって、頭が吹き飛んで、チェーンソーで[
ゾンビや美女]をぶった切って、
オッパイがあったりするので最高だぞ!!
しかし愛ばっかり強調される日本映画界において、愛がアッサリと壊れるこの映画は貴重でしょう。世界の中心?世界はもう無いんだよ!いくら叫んだって叫び声は聞こえないんだ!