トップページ | サイトマップ(全コンテンツ一覧) | 映画の壺 | マッド・シネマ



戦争のはじめかた   ★★★★

    ホントは2001年の映画なんだけど、9.11が起きてしまい公開延期。その後も公開のタイミングが上手く掴めず、5回の公開発表と延期を繰り返した。アメリカが一致団結して戦争起こそうとしているときに「冷戦のときは東西の対立構造も知らないでラリってました。」という映画は確かにマズい気がする。

    1989年 ベルリンの壁崩壊直前の西ドイツ。東と西の対立は激しいけど実際の戦闘は起きていない。西ドイツに駐留しているアメリカ軍補給部隊の事務官である主人公(ホアキン・フェニックス)は、かなりの悪党だった。遊んでいる最中に友人が事故死したら死因を偽装。大佐(「ザ・ロック」とは対照的なエド・ハリス!)の奥さんとは浮気。基地内の備品を過剰に購入して闇市場に横流し。トルコ人から買ったヘロインを精製して基地内で売り捌く。もうけた金でベンツを買って贅沢な暮らしをしていた。
   ある日主人公はアメリカ軍の兵器を盗んで、その兵器をマフィアに渡して膨大なヘロインを手に入れようとする。ところが主人公の新しい上官に鬼軍曹(スコット・グレン)がやってくる。鬼軍曹はすぐに主人公の副業に気がついた。主人公は買収しようとするが、鬼軍曹にはそんなもの通用しない。さらに鬼軍曹はベトナムでも活躍した歴戦の戦士で、将軍からの信頼も厚い男だったのだ。さあ、どうやって主人公は副業を続けるのか・・・。


    この映画は一見主人公のほうが悪人に見える。[だけど主人公と鬼軍曹どっちが悪人かというと、鬼軍曹のはずなんです。主人公は確かに悪党だけど、誰も殺していない。ところが鬼軍曹は戦争で人を殺している。僕が「鬼軍曹のほうが”悪”じゃん!」って明確に気が付いたのはクライマックスになってから。]普通の犯罪と戦争だったら戦争のほうが圧倒的に”悪”なはずなのに、意外と自分はそのことを理解していない。
    「戦争のはじめかた」は少女の肌が焼かれていたり(ベトナム戦争のナパーム)、ベルリンの壁崩壊の最中だったり、”落ちる”が重要な要素になったりしていて、メタファーが色々あるので難しく深読みに陥ってしまいそう。だけど序盤の戦車暴走シーンの無責任なまでの楽しさが、難しさを吹き飛ばす。「戦争のはじめかた」には明確な反戦メッセージも反軍事メッセージも存在していない。だからそーいった政治性を抜きに「あれ?軍隊って平和のために存在しているんだっけ?戦争のために存在しているんだっけ?」と基本的なことを考えることができる。

    ちなみにこの映画は[プロローグとエピローグが同じ状況]という、優れたギャグマンガと同じ構造をしている(冷戦のときも湾岸のときも軍隊のボンクラっぷりは同じってこと?)。[主人公も元気そうで良かった]。
破壊屋TOPページに戻る 全てのコンテンツ 映画の壺 マッド・シネマ 一つ上に戻る