戦場に5人の死刑囚が集まった。彼らの目的はただ一つ・・・愛の映画「ロング・エンゲージメント」のオープニングが、
最強格闘漫画「バキ」のオープニングと同じ・・・なのは置いといて
映画の舞台は第一次世界大戦中のフランスの戦場ビンゴ。そしてビンゴには5人の死刑囚がいた。彼らは皆戦争が嫌なので、自分で自分の手を撃ち抜いたりしてしまったのだ。そうすれば負傷兵として帰還できると考えたから。でも軍法会議にかけられて全員「故意に負傷した」ということで死刑判決を下された。
その死刑の方法とはフランス軍とドイツ軍のど真ん中に追放されることだった。そして5人は追放された。
5人の死刑囚のうち、一番若いマネクには故郷に婚約者マチルダがいた。マチルダはマルクの死の証拠が手に入らない限り、決してマルクの死を信じない。マチルダは今回の事件の全貌を調べることにした。
手がかりはいくつか残っている。死刑囚達が残したとされる遺品だ。遺品の中にはいくつか意味不明なものもある。ここに何か謎があるのでは?
また当時ビンゴにいたフランス軍の人達と会えば、色々目撃証言が集まるはずだ。特に死刑囚達と優しく接してくれた調達屋は色々知っている。
こうしてマチルダの長い冒険が始まった。
「アメリ」以来となる鬼才(というほど鬼でもない)ジャン=ピエール・ジュネの新作。ヒロインはもちろんアメリ女で、他にジュネ組からドミニク・ピヨンその他が出ている。あとはよくフランス映画で見かける面々が出ているけど、名前までは覚えていない。劇中
ジョディー・フォスターにそっくりなフランス女が激しいラブシーンを見せるので、気になって調べてみたらホントにジョディー・フォスターだった。
この映画は第一次世界大戦の世界をリアルに再現した戦争映画でもあり、また戦場に追放されて消えていった5人の最期の謎を解くミステリーでもあり、そして全ての原動力が愛になっているラブストーリーでもあります。
ミステリー映画ではあるんだけどトリックとかは無い。最近のハリウッドの風潮からミステリー映画には驚きのトリックが必要!という流れになっているけど、ミステリーってのは本来は
謎のこと。「ロング・エンゲージメント」は、
謎の女殺し屋、
遺品に込められた謎、
複数の目撃証言から真相を解き明かす羅生門形式など古臭い要素をきちんとミステリー映画に仕上げている。そして「ロング・エンゲージメント」の
最大の謎は”愛する人がどうなったかわからない”というマチルダの想い。その謎を解き明かすのが映画の目的になっている。
ドラマ自体はそんなに複雑じゃないんだけど、ただでさえ多い登場人物がほとんど全員重要人物で、それぞれに細かいドラマが展開する。(昔)フランス映画好きの僕でも、
登場人物の名前の整理が頭の中で追いつかなかった。ただ全てのドラマがきちんと機能しているし、ヒロインが愛を以って行動するという基本形は絶対に崩れないので、映画の内容に追いつけなくなること無いです。
複雑に展開するドラマを観ているうちに
「これじゃあハッピーエンドにしろ、ブラックエンドにしろ、大袈裟なことになってしまうのでは?」と思っていましたが、映画は驚くほどこじんまりとエンディングを迎えます。アメリ女にとって、そして
人間にとって一番幸せなことって、[
好きな人と一緒にいられることなんだよ]という点に物語が着地して上手く終わった。
・・・でもこの映画の展開って
「キャンディキャンディ」に似ているなぁ。
オマケネタ
● MMM
両側の「M」はマネクとマチルダのことなんだけど、真中の「M」は「愛」って意味。フランス語の「愛」は「AIME」と綴るんだけど、この発音が「エイム」なので「M」の発音に近いというネタから来ている。ちなみに英語字幕だと真中の「M」は「Marrying(結婚する)」に差し替えてあるらしい。
● 羅生門
目撃した人の証言ごとに事実が違うことの例え。海外でも使われている言葉らしい・・・。ってことはを日本語に訳すと「藪の中」になるのか?