破壊屋 | マッドシネマ

ザ・マシーン/私のなかの殺人者

導入部分

  1. 脳外科医のマルコは脳の手術をしていくうちに、脳に異様にハマっていた。マルコは脳を研究したいと思い、殺人者の心を解明しようと思った。それは精神科医とかの仕事だと思うが。
  2. さらに脳にハマったマルコは、人格を交換する装置を開発しようとした。開発した場所はマルコの生家で相当なお屋敷。ちなみにマルコの現在暮らしている家も豪邸。一体マルコはどんだけ金持ちなんだよ
  3. マルコは10年かけて人格交換装置(以下:マシーン)を完成させた。それはパーマをかけるヤツみたいなデザインだった。それにしても大学や国の研究とかいう設定ならわかるけど個人でかよ
  4. マルコはマシーンを「相手の心がわかる装置だ」と言うが、人格を入れ替えるんだから相手の心はわからないままじゃないのか?
  5. マルコはマシーンがどうやって脳を転送するのか説明するが、
    「第一段階:脳の分子濃度を分析し、反応速度を測定する。
    第二段階:脳を転送する。」

    って説明省略しすぎ!

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殺人犯にとってこんなにおいしすぎる話はない

マルコは精神病院(普通の建物で撮影しているが)でジト(以下:殺人鬼)という4人の女性を殺害した男をカウンセリングするようになった。その殺人鬼は女性憎悪とセックス恐怖症から殺人を重ねた男だった。
マルコはマシーンの人体実験に殺人鬼を選んだ。病院から無許可で殺人鬼を連れ出し、マシーンのところまで連れて行った。
マルコが考えた計画はこうだ。

  1. 殺人鬼をマシーンにセットする。
  2. 自分(マルコ)をマシーンにセットする。
  3. マルコが手元の装置でマシーンを動作させて人格を交換する。
  4. 人格交換が成功する。これでマルコと殺人鬼が入れ替わる。そのため装置は殺人鬼の手元にある
  5. 殺人鬼が手元の装置でマシーンを動作させて人格を元に戻す。

おいおいおいおいおい!新しい体を入手した殺人鬼が、自分から元に戻るわけねーだろ! この計画は映画を観た人間全員が予想した通り5番目のところで破綻した。マルコの体を入手した殺人鬼が元に戻ることを拒んだのだ。当たり前だ。
っていうか被験者を二人選んで、マルコは検証と操作をしていろよ。


こうしてマルコの体を入手した殺人鬼はマルコを精神病院まで連れていって閉じ込めてしまった。
晴れて自由の身となった殺人鬼はマルコの家に帰り、マルコの妻と息子と会う。妻と息子はマルコが殺人鬼と一緒に行動していた事を知って
「パパ、なんであんなプッツン男と?」
「あなた、殺人鬼と一緒に行動するなんて」

と言う。それを言われた殺人鬼(体はマルコ)はキレる。キレるが、妻と息子は何も気づいていない。

殺人鬼は精神病院にいるマルコ(体は殺人鬼)の元へ面会に行った。
殺人鬼「これから生活するんだからお前の身の回りの事を色々教えろ」
マルコ「オレの体には腫瘍が出来ていた。もうすぐ死ぬ。」
殺人鬼は意外な返答にショックを受ける。


マルコは精神病院で部屋に入ってきた看護人を殴って脱走した。すごいザルな警備の病院だ。病院を脱走したマルコはテレカとタクシーを使って愛人の元へ行く………なんでマルコが財布とテレカを持っているんだよ(マルコが看護人から奪った財布とテレカを確認するシーンが無い)。
マルコは実は妻の友人を愛人にして浮気していたのだ。そして妻も自分の友人と夫(マルコ)が通じていることを知っていた。マルコは妻にマシーンのことは秘密にしていたが、愛人には事前に全て説明していた。愛人はマルコをかくまう。
っていうかさ、愛人を通じてマシーンを警察に教えろよ。自分の体を入手した殺人鬼が妻や息子と暮らしているんだろ!それに比べてマルコの罪は殺人犯を使って勝手に人体実験やったことくらいだろ。なのにマルコは
「警察はマズイ」
と言って自分だけで事態を収拾しようとする。

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何、この展開?

愛人は妻の所へ行って
「あなたの夫は別人よ!本当の夫は私の家にいるわ。今の夫から離れなさい!」
と言う。自分の夫と浮気している愛人がいきなりそんなこと言い出すので、妻は怒り出す(当たり前だ)。そして殺人鬼もその場にやってきたので、殺人鬼はマルコが精神病院を抜け出して愛人の家にいることに気が付いてしまう。
上手くいかなかった愛人は泣きながらその場を去る。


殺人鬼と妻は一緒にブルジョワの友人の家まで遊びに行くが、殺人鬼は犬にほえられる。
「変ね、なついているはずなのに」
(注:映画には”犬は悪人に吠える”というクリシェがある。)
ブルジョワの家でチェスに誘われたが、殺人鬼はチェスが出来ないのでピンボールゲームで遊んでいる。だが殺人鬼は腫瘍の影響が出てきてめまいが酷くなってきた。


殺人鬼は妻のアドレス帳から愛人(妻の友人なので住所が載っている)の住所を調べる。殺人鬼が愛人の家に行くと、愛人とマルコ(体は殺人鬼)がいた。
愛人が1人になったのを見計らって殺人鬼は愛人の家に侵入し、愛人にナイフを突きつける。そして殺人鬼はマルコと愛人がセックスしていたことを感づく。つまり殺人鬼にとっては自分の体を使ってセックスされたのだ。自分はセックス恐怖症でセックスができないのに。ブチ切れた殺人鬼は怯える愛人の服をナイフをちらつかせ無理矢理脱がせ
「股にナイフを刺すぞ!」
と脅し、犯そうとするが激昂しすぎてメッタ刺しにして殺してしまう(フランス映画ってこういう不愉快な描写を平然とやるよなー)。さらに殺人鬼はマルコと連絡を取って
「お前の妻と息子も殺すぜ!」
と言い放つ。


愛人を殺されたマルコはブチ切れてブルジョワの友人の家に侵入する。ブルジョワの友人は何故か銃を持っているのだ。銃を手に入れたマルコは、まず妻と息子に会いに行く。だが体は殺人鬼のマルコを追って警察がやってくる!マルコはその場を逃げ出して、突然道に止まっていた車をガチャっと開けて勝手に中に入る。運転席には殺人鬼がいた。マルコは殺人鬼に
「妻とは連絡を取れなかった。車を出せ。」
えええええええええええ!?何でマルコと殺人鬼が一緒に行動しているの?
(これは推測だけど、”腫瘍に侵されたマルコの体を嫌がる殺人鬼が一旦マルコと手を組むことになった”という超重要なシーンが省略されているんだと思う。それでも説明がつかないが。)

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そしてラストへ

銃を持っているマルコは殺人鬼をマシーンまで連れて行き、元の体に戻ろうとするが殺人鬼はそれを拒否。マルコは殺人鬼に銃を突きつけるが、
「お前の妻と毎晩寝てるぜ!」
と言われて動揺。その間に殺人鬼はマルコに頭突きをかまして気絶させ、銃を奪う。そして殺人鬼はマルコを地下室に拘束する。

殺人鬼は一旦マルコの家に戻り何故か銃と包丁をタンスの中にしまう。ここから殺人鬼の恐るべき計画が既に始まっているのだ。殺人鬼はマルコの息子に
「パパが面白いところ連れてってやる!」
と嘘をつきマシーンにまで連れて行く。つまり殺人鬼は息子の体を手に入れようとしたのだ!この計画は成功し、殺人鬼は息子の体を入手する。息子(体はマルコ)はわけもわからないまま地下室へ監禁される。

家に戻った殺人鬼は女性が虐げられている映像をじっと見ている。妻は自分の息子が殺人鬼になったとはきづかない。そして殺人鬼は先ほどの銃と包丁を取り出し、妻に襲い掛かる。突然自分の息子(10歳位)が包丁で自分を刺してくるので妻は絶叫する。少年の体の殺人鬼は妻を何度も何度も刺して殺す。しかしその時地下室から脱出したマルコと息子が駆けつけて、殺人鬼を取り押さえる。 だが息子は自分の体が自分のお母さんを殺すところを目の辺りにしてしまい、絶望の悲鳴をあげ恐怖にとりつかれる。


マルコのナレーション
「息子とジト(殺人鬼)と私をそれぞれ元の体に戻した。その後ジトを撃ち殺した。そしてマシーンを破壊した。」
息子がどうなったのかはわからない。マルコは精神病院に収監された。

という後味が最悪のラストシーンだが、実は殺人鬼は息子かマルコの体にまだ残っているかもしれないという事を示唆して、さらに後味が悪くなったところで映画は終わる

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作品について

1996年日本公開のフランス・ドイツ合作のサイコ・スリラー。主演はフランスの名優ジェラール・ドパルデュー。ヒロイン役にナタリー・バイ。監督はフランソワ・デュペイロン。ここまで滅茶苦茶な映画なのに原作が存在する。
ジェラール・ドパルデューの狂気じみた演技以外見所無しの映画。展開がとことん陰湿な割にセンスが全く感じれず、ひたすら不愉快な作品になっている。

僕は横浜日劇でこの映画を観た(日劇は小人料金1100円で映画が3本観れた)。当時の僕は『ザ・マシーン/私のなかの殺人者』を観て
「ここまでつまらない映画があるのか!」
とトラウマになるほどの衝撃を受け、怒りすら覚えた。数年後横浜で行われたフランス映画祭に行ったときに、監督のフランソワ・デュペイロンが来日していたので、彼を見ながら
「そうか!こいつがあの映画の監督だったのか!ちくしょう!」
と思った。世界の果ての国の黄色人種のボンクラにまで恨まれるんだから、映画監督というのも因果な商売である。
ただその映画祭での彼の新作『うつくしい人生』がまあまあの出来だったのと、フランソワ・デュペイロンが僕に握手してくれた(何でかは覚えていない)ので恨みも消えた。
最近になって知ったんだけど、フランソワ・デュペイロンは『ザ・マシーン/私のなかの殺人者』を映画会社に無理矢理撮らされたらしい。確かに他の作品と作風が全く違う。

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