1975年に作られた「ローラーボール」をリメイクしたアクション映画。 リメイク元が企業が世界支配する時代に生み出された殺人ゲーム、という壮大な設定なのに対して、近作は中央アジアの辺りでやってる過激スポーツの視聴率騒動、と激しくパワーダウン 監督はB級映画の傑作「プレデター」とアクション映画の新時代を切り開いた大傑作「ダイ・ハード」以外は失敗作が多いジョン・マクティアナン、主演はセックス・アピールのないキアヌ・リーヴス:クリス・クライン、ラッパーだけど映画ファンには「ディープ・ブルー」の黒人と言ったほうがわかりやすいLLクールJ、「WASABI」の主人公ジャン・レノに「X-MEN」でミスティーク役だったレベッカ・ローミン=ステイモス。という割と豪華なキャストだけどスケジュールが合わなかったのか、お互いが画面に映らなかったり、ボディ・ダブル(代役)をフル活用しています。 本来2001年5月公開だったのですが、相当に悪い出来だったらしく再編集を命じられました(映画通じゃないとわかりにくいかもしれないけど再編集は結構大事なんです)。さらに公開延期中に911が起きるなど悲惨な目に会い、ようやく公開されても悪評だらけで全くヒットせず。 再編集してもストーリー、アクション共にマトモに繋がっていません。 |
近未来(を匂わす描写は無いが)、サンフランシスコの坂道で車に微妙に轢かれたり、ムカツク相手を事故らせながらリュージュをやっているジョナサン・クロス(クリス・クライン)、実は彼はNHL(全米ホッケー)のドラフト一位選手だった。 ジョナサンの元に友人のマーカス(LLクールJ)が訪ねてきて「ローラーボールやってみようぜ!」と誘う。しかしジョナサンはそれを断り、家に帰ると警察がアパートを調査していた。困った顔して道端にしゃがむジョナサン。次のシーンで舞台は4ヵ月後のカザフスタンになり、ジョナサンはローラーボールの英雄になっていた。 ちなみに字幕では”中央アジア某国”となっていますが、画面にはハッキリ何度も”カザフスタン”と出ます。 |
いつの間にかスーパースターになっていたジョナサンのチーム名は赤い騎兵隊、最強のライバルチームは黄金の遊牧民、魁!男塾的なネーミングセンスです。ちなみにローラーボールのルールはピンボールゲームみたいな舞台を、バイクやインラインスケートでクルクル回ってボールを的に当てるスポーツです。さらに選手の装甲デザインは学芸会程度、バイクに至っては珍走団のバイクがハーレーに見えるほどのカッコ悪さ。みんなマスクを被っているけど主人公だけプロテクター着けないでTシャツ着ている(死ぬんとちゃう?)のでわかりやすいです。この時点で「相当つまらない映画見せられるな」と覚悟できました。 ちなみにルール解説は超大雑把です。解説者達も、ロシア語読めないのでルールわからないアメリカ人や、絶叫する日本人(これは正しい描写か)や、ルール解説にペッサリーを持ち出す奴とかで、もうわけわからん。 とにかく麗しのGOTH娘オーロラ(レベッカ・ローミン=ステイモス)がバイクで暴れるのが唯二つの見所ですね(もう一つはスリップノット)、ああ惹かれたい、っていうかむしろ轢かれてもいい。 |
試合の最中にジョナサンのチームメイトで、役立たずのデブのヘルメットが突然外れた!そして「黄金の遊牧民」に思いっきり殴られるデブ、観客もチームメイトも悲鳴に包まれる。しかし視聴率急上昇。 ちなみにこのシーンは悲劇のように演出されるが、直前までお互いボコボコにしていた上に「赤い騎士団」はバイクで敵を轢いたりしているので、殴られたくらいで何を今さら。 試合が終了し、勝利した「赤い騎士団」はデブの事をスッカリ忘れてハシャギながらクラブへGO。そこで炭鉱出身のチームメイトから、デブのヘルメットの紐がナイフで切られていたことが判明。ジョナサンはオーナーでカザフスタンの大金持ち(に全然見えない)ペドロビッチ(ジャン・レノ)の元へ調査を依頼する。 しかし実は今回の事故はペドロビッチが視聴率を上げるために仕組んだモノだったのだ! |
ロッカールームに戻ったジョナサンは、何故かさっきからずっとヌードのオーロラと一言も交わさずにラブシーンに突入。直後で二人は愛し合っていたことが判明するが、ここだけ観ると唐突すぎてまるで動物の交尾だ。 そこでジョナサンはオーロラから、試合の事故が意図的に仕組まれていた事を教えられる、事故の瞬間を全てのほとんどのカメラが狙っていたのだ!犯人はペドロビッチだ! 二人は事実を知るというカメラマンに会いに行く、途中全く意味のない暴動に巻き込まれつつも(観た人ならわかると思いますがこのシーン、本当に意味がないんです)がそのカメラマンは居なかった。っていうか殺されていたが、一回も登場しない人物なので全く感情移入できない。 疑惑を感じながらトルコ、アゼルバイジャン、モンゴルと転戦する、ただしセットはどう見ても1種類しか使ってないしロケもないので転戦の意味ナシ、トルコではチャンネルをORIGAMIに取られる始末。 赤い騎士団は毎回不自然な事故に見舞われながら連勝するが、遂にリドリーが重傷を負って入院する。 「やっぱりアメリカに帰ろう!」というジョナサンとリドリーはチームメイトの協力でロシアに脱出を図る。 この後突然撮影が暗視カメラ風になって延々と映画の色調が緑になります。 |
時速190キロのバイクに二人乗りでメットもゴーグルもつけずに会話する、ジョナサンとリドリー。そのときペドロビッチの飛行機が追ってきた!砂漠を走って逃げるジョナサンとリドリーだが飛行機はオフロードだったので(なんじゃそりゃ?)追い詰められてしまう、ジョナサンは諦めるがリドリーは単独で国境へ向かう、バイクで国境を突破しようとするリドリー。そんなの無理だろうと世界中の観客が思うだろうが、国境警備員は日本の領事館員並に何もしない。しかしペドロビッチ一派にバイクを狙撃され失敗、この後リドリーがどうなったかは一切説明がありません、生死も含めて。 ペドロビッチに捕まったジョナサンはどっかの砂利山に連れて行かれて 「どうだ、ここが俺様の炭鉱だ、凄いだろう」 と自慢される。そしてアメリカとの放映契約が結ばれるまで試合やろうよ、と説得・・・っていうか本当にショボイストーリーだな 「どうだ、トーナメントに出れば特別ボーナス10万ドルだ。」 スーパースターが命をかけて日本の懸賞付番組程度のボーナスかよ! 逃げられないこと、そしてオーロラが危険なことを悟った、ジョナサンは渋々引き受ける。 |
遂に最後の戦い、炭鉱出身の選手にはヘルメットを被った応援団が来てくれた。しかしそのとき恐るべき発表がされる。「この試合はルール無用だ!」 今までは違ったのか? ということで敵チームは卑怯にも(オーナーから渡された)凶器を準備してくる。そして遂に殺し合いが(ただの殴り合いにも見えるが)始まる。これには流石に両選手とも逆ギレ。もうやーめた!とみんな帰り始める。しかも観客も何故かオーナーに反乱。この時点で非暴力がテーマなのかな?と思ったらみんなでコーチやセキュリティを殴り始めて暴動が起きる。さらに主人公は何故か巻き起こる”ジョナサン”コールの中、ペドロビッチにドロップキック。逃げるペドロビッチを追い詰めて凶器でボコボコに撲殺、 さらに後継者を名乗り始めたペドロビッチの部下を銃殺! こうして戦いは終わった。 主人公はオーロラと二人でベッドインしましたとさ。 |
リドリーが事故に遭う試合の直前に突然、不気味なマスク被った集団のライブシーンが断片的に挿入されたのを覚えているでしょうか?彼らの名前はスリップノット。僕のサイトでも待受画面をフィーチャリングしています。 音楽のジャンルはヘヴィ・メタルでしょうが、ちょっと洋楽に興味がある人なら誰にでもお勧めできます。2000年にメジャー・デビューしてあっという間に頂点に達した、見かけも楽曲の良さも実績の高さも全てがモンスターバンドです。実際10数秒しか写らない彼らが目的で、わざわざ映画を観た方も多いでしょう。 ここで映画を観ていないスリップノットファンの方に解説します。 まず曲は"I AM HATED"、"IWOA"からの曲ではないのはこの映画は2001年の春頃に完成していたからです。演奏時間は2分程度ですが、実際に写るのは10数秒です、ラッパ我リヤが1秒位の登場シーンなのに対して破格の扱いですが、PiNKよりは短いかな? 彼らはとってつけたようなセットと、下手糞な”男”という漢字の前でライブしています。 映画秘宝VOL30のインタビューでコリィは 「通常のライブだったら観客は熱狂しているのに、エキストラ達は素通りで奇妙な気分だった」 また出演した動機は 「オリジナル版の大ファンだった、ジェームズ・カーンは映画史上最高のヒーローの一人だ」 とも言っています。 でも「(映画出演のオファーは)大抵は俺達を広告塔に使おうと思っている3文プロジェクトだ」ってローラーボールはまさにそれじゃん! しかしあんな国でライブやるなんて、アジアでスリップノット聞くのは日本人だけだと思うのだが。 |
この映画はいわゆるスポンサーに忠実な映画で、アルゼやセブンイレブンの広告が出てきたりもします。 暴動シーンやオーナーの陰謀の描写不足の辺りが再編集を余儀なくされたのでしょうか?”企業に立ち向かう民衆”という描写が抜け落ちています。 いわゆるハリウッドのお馬鹿娯楽映画なので、好きになってハマっている人も多そうですね、管理人は駄目でしたが。ただ強い女好きなので、その手の女性が多くて嬉しかったです、特にGOTH系のレッベカ様が。 だからオーロラが縛られて何も活躍しないクライマックスは絶対に許せん! |