いつもは大学の友人たちと上野公園行ってスパイダーマンの格好するんだけど、今年は僕の都合がつかなかったんで、別の日に一人で行ってきた。

例によってテレビの取材を受けた後上野公園を歩いていたら、突然ガタイのいい男に捕まって
「ちょっとあんたさぁ。盛り上げてもらいたいんだけど、いくらで来てくれる？」て
「いや、俺素人なんだけど」
「お金払うから、いいから来てよ」
「いやちょっと…」
というわけで男に体を押えられて連れてかれました。そこではレベルの高そうな男女たちが飲み会をやっていた。

今までスパイダーマンの格好してタチ悪そうなガキどもや、屈強な外国人たちに絡まれることも何度かあったが、「別に殴られることも無いだろ」という考えが常にあったので「怖い」とは思わなかった。しかし彼らには何かパワー（権力）を感じた。ついでに言うと一人あからさまにヤクザ顔の男がいたので、それも怖かった。
話を聞いてみると、彼らは六本木で男女ニューハーフ混合のショーパブを経営している人たちのようだ。

その場には僕の他にもプロの芸人が３人いた。
「じゃあスパイダーマン盛り上げてくれよ！」
「はぁ」
「お金払うからさ！」
「いや、僕は素人なんでお金はいらないです。」
「いやいや、何か悪いから渡すよ！」
「プロじゃないんで受け取るわけにはいきません」
「気にするなって、おい！弾持ってきて！」
と彼は部下に命じた。 「弾って万券のことだよなぁ」 と思っていたら、確かに1万円を渡された。スパイダーマンを始めて5年にして初収入だ。

他の芸人たちが歌い始めたが、僕は歌謡曲がさっぱりわからない。以前「流行の曲って聴いているの？」って聞かれて「もちろん流行りの曲を聴いてるよ！ラムシュタインとかシステム・オブ・ア・ダウンとか」と答えたことがあるくらいだ。しょうがなくポーズを取っているだけだったが、芸人さんがイーグルスの『ホテル・カルフォルニア』を歌い始めた。これならわかる！とエアギターとエアボーカルを始めて、何とか仕事をした。

僕の激しい動きを見て、彼らは口々に
「このスパイダーマン、ホントはプロなんじゃない？」
「いや（トークに対する）反応は素人丸出しだ！」
とか言っている。実際僕はルパンネタのギャグで滑って場を凍りつかせて、他の芸人から
「お前、やり直してこいよ」
と説教喰らった。芸のプロの世界って厳しいなぁ。って僕は芸人じゃない！

さらに彼らは「マジックのトリックを明かしたら50万円！」とかやっていた。当てた人はいなかったがまるで『バブルへGO！』の広末涼子を見ているようだった（劇中、賞金が200万円のビンゴに参加するシーンがある）。

あとヤクザ顔の人は、よく見れば男前だったので
「あの顔はVシネ系だ！Vシネのスターだ！俺は世界的に人気のある大スター・スパイダーマンだけど、Vシネもチェックしているんだよ！」
と言っておいた。

何だかんだで僕も楽しめて良かった。お金も頂けて、ありがとうございました。

2007/04/28｜▼この記事の直リンク先