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8Mile   ★★

    8Mileロード。その周辺はデトロイトにある荒んだ地域。普通に生活している中流階級は皆無。この町を我が物顔にしているチンピラ達はみんな親と同居中。あまりにもチンピラだらけなので、どちらかというと学歴が無い人間のほうが優遇されている世界。ここに住んでいる人達に怒られそうな事を書いてしまいましたが、映画で判断する限りその通りなので仕方が無い。
    8Mileではサタデー・ナイト・フィーバーの代わりにラップバトルが繰り広げられています。ラップバトルとはワックをディスりまくったリリックをライムとフロウに乗せてドープなラップを決めることですが意味がわからない人は、 厨房の揚げ足とりまくったカキコを色んなテクニックで煽って掲示板を荒らすことと同じ事だと思ってください。っていうか谷川俊太郎の詩のボクシングで雰囲気が荒れた時と全く同じだと思ってください。
    映画「8Mile」は青春映画です。学校を中退した男が、友情、恋、家族関係、慣れない仕事、将来に悩みながら、自分の力で自らのアイデンティティを肯定していくのは青春映画の構造です。ただこの映画が通常とは違うのは、監督がカーティス・ハンソンであるという事と、主役がスーパースターのエミネムであり彼の自伝的な映画だということです。しかも職人監督のカーティス・ハンソンはエミネムの物語がサクセス・ストーリーだということを否定して、負け犬がさらに負け続けてもラップを武器に闘争していく重量級の青春映画に仕上げました。
    世間ではかなりの高評価を得ている8Mileですが、僕は2つ星で評価が低いです。残念ながら「自分の置かれている状況への怒りをHIP-HOPというスタイルに変換してラップとして吐き出す!」には見えなくて、単に悪口の言い合いに思えてしまったからです。他人を否定するスタイルのラップが、クライマックスで[逆説的になってそれが自分を肯定]する構造もあまり面白みを感じませんでした。
エミネムを知らない人のためにちょっと解説:
    普通の人はHIP-HOPと聞くと、あなたの最寄駅の前できっとたむろしているB-BOYSなんかを連想するかもしれませんが、彼らが聞くのはキングギドラとかなので大丈夫(←何が)。僕はラウドミュージック(マトリックスのエンディングにかかる類の曲ね)のファンで、その延長でエミネムも聞きます。エミネムは白人でありながらHIP-HOPの寵児とも言うべき存在で、映画では怒りや復讐がエミネムのスタイルのように思えますが、実際のエミネムはポップ・アイドルでもあります。大ヒット曲の「マイネーム・イズ」や「リアル・スリム・シェイディ」はかなりポップな曲調です。エミネムの恐ろしいところは意図的にポップ・アイドル化しているのに、そのスタイルが超攻撃的なところです。一般的には他のアーティストへの罵詈雑言が有名ですが、実際のエミネムは同性愛者への攻撃や、女性蔑視を「正当な権利」として主張するとんでもない悪童です(傑作と名高いザ・マーシャル・マザーズLPには聞いてて鬱になるような曲がいくつかある)。
オマケネタ1
    劇中に「このナチ野郎!」「俺はナチじゃねえよ!」という罵り合いがあったのですが、英文を読んでみてビックリ。ナチという言葉は使っておらず、実際は「このドイツ人!」「俺はドイツ人じゃねえよ!」でした。ドイツ人ってそれだけで悪口になっているんだ。日本人もなっているけどね。
オマケネタ2
    エミネムがプレス工場で働いているって、あれ「ダンサー・イン・ザ・ダーク」に関するギャグですか?プレス音がビートにならないかと不安だったぞ。
オマケネタ3
    パンフレットの出来が悪いです、特に日本のアーティストの映画評が。パンフレットに載せる映画評で10行しかないやつなんて始めて読んだよ。それにこの「8Mile」はカーティス・ハンソンの新作なのに映画評論家の解説が一行も無いのも納得いかない。
オマケネタ4
    パンフレットにも書いてあるし、世間でも何度も言われていることですし、ザンダー兄貴も「ラップこそが音楽だ」と言ってます。
   「ラップが暴力や銃や麻薬を性差別を表現しているからといって、ラップを聴いているファン達も同じわけではない」 全くもってその通りです。マンソンやプロディジーを聞く僕も同じ思いをしていきました。でもラップを聴いている人たちではなくて、歌っている人たちはソッチ系の事件が非常に多いのですが・・・。
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