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Mrインクレディブル   ★★★★★

    世界の危機から街の治安、「うちの猫ちゃんが降りてこないの」といった問題までも救ってきたスーパー・ヒーロー達だったが、そのスーパー・パワーが問題視されて告訴連発(ウェブを発射するスパイダーマンも、絶対ビル清掃で大迷惑かけているよな)。スーパー・ヒーローとして活動することを禁じられていた。彼らはスーパー・ヒーロー保護プログラムによって、自分達の存在を隠し普通の生活をしていた・・・。

    中年太りのサラリーマンのボブはいつも会社で怒られている。 長女のヴァイオレットは恋に悩んでいて、食事も喉を通らない。 長男のダッシュはクラスの問題児で、妻のヘレンは何度も学校に呼び出されている。 そしてヘレンは末っ子ジャックの育児に夢中。
    今日も家ではヴァイオレットとダッシュが大ケンカ。ヘレンが何とか抑えるがそんな状況でもボブは全く役立たず。ボブは「ボーリングに行ってくるよ!」と家族に嘘をついて、昔の悪友と遊ぶのが唯一のストレス解消だった(あそこでマリファナ吸ってれば完璧だったな)。だがある日遊びすぎて夜遅く帰宅してきたボブにヘレンの怒りが爆発、夫婦喧嘩が始まる。さらにボブは仕事も解雇されてしまう。
    人生の危機を迎えたボブだが、上手いこと新しい仕事に就いた。仕事先では(妻と違って)ブロンドで(妻と違って)スレンダーな美女がサポートしてくれることになった。ボブは会社に行く振りをしてダイエットを始める。ボブの人生は充実してきた。ヘレンとボブは仲直りをして、毎朝「あなたを会社に行かせたくないわ!ねえちょっとだけ」とかやらかすようになった。でもそんなボブは出張と偽って、美女と食事をして口説いている、「もう噴火しそうだよ」
    しかしある日ヘレンは友人エドナの情報から、ボブの出張が嘘だという事を知ってしまう。確認のために電話をかけるヘレン、そしてボブの浮気を知ったヘレンは「私は今まで騙されていたのね!」と号泣する。しかしエドナに励まされたヘレンは決意をする。子供たちを家に置いてボブの浮気相手と決着をつける旅に出ることを・・・。



    って↑これのどこがスーパー・ヒーローの物語なんだよ!めっちゃありがちなドラマじゃないか。今までピクサーは擬人化したキャラ達に人間臭いことをやらせて物語を作ってきた。そのピクサーが初めて人間を主人公にした「Mrインクレディブル」も、やはり妙な一般的な人間臭さで笑わせる。これは徹底したステレオタイプ(型にはまる)の映画です。家族の役割、それぞれの能力、黒人の存在、どれもステレオタイプに過ぎない。ステレオタイプに陥った物語は、通常僕みたいな輩に批判される羽目になるわけだけど、「Mrインクレディブル」はそれを逆手にとって、スーパー能力を持った家族が型にはまっている姿を面白可笑しく描いている。

    物語は中盤になってヘレンが旅立ってから、新しい展開を見せる。ボブを助けるためにヘレン、ダッシュ、ヴァイオレットが次々にそのスーパー能力を開花させていき、そして遂にボブが加わり家族全員が再会した事によってインクレディブルズ結成。ここからスーパーヒーローモノになると思いきや、車を運転していてパパとママが道順巡って口喧嘩したり、子供たちがそれを聞いてふてくされてたりしていて、ステレオタイプというよりも単なる日常風景。そしてクライマックスではテレビのリモコンを巡って家族でてんやわんや
    でもインクレディブルズが揃って敵と戦うシーンの映画的興奮は、自分が子供の頃映画館で「ドラえもん」を観ていた時の感覚に近い。ピクサーの凄いところって”大人も楽しめる”じゃなくて”大人を子供の気分に戻させて楽しませる”という部分だよな。

    そして「Mrインクレディブル」のもう一つ凄い部分は髪の毛。「Mrインクレディブル」のキャラたちは人間をデフォルメ化した漫画キャラだけど、髪の毛だけは人間と同じリアリティを持っている。特にインクレディブル夫人の濡れた髪の毛を見たとき、生まれて初めてアニメの女に実写の女と同じ感情を抱きました。何かこう、何ていうか、あのグッとくる気持ち、アレがきた
    「Mrインクレディブル」の海外掲示板を見るのがすっげー面白い、もう凄いことになっている。論議になるのはやはり性描写についてが多い。ピクサーが初めて暴力が理由でレイティングを喰らった映画なので、そっちを議論にするべきだと思うのですが、どうもみんな性描写のほうに驚いているみたい。ボブがミラージュに会いに行くと「流れる滝が割れてそこからトンネルを通るのは性描写では?」と言った意見が多い(僕はこれは深読みしすぎだとおもうが、その後の「噴火しそうだ」という台詞は浮気のメタファーだ)。それに対しては一部の映画ファンが「いや、アレはジェームズ・ボンドのパロディだろ」的確なツッコミを入れてました。
   「さらにヘレンはセクシーだ!お尻が最高だ!」「イラスティガールはホットだ!」などといった意見には「お前は変態だ!アニメキャラだぞ!」「コンピュータで作られた女に興奮するなんて異常だ!」「子供向けの映画なのに何考えているんだ?」と必ず荒れたレスがつく。えー僕上映終了後同じこと言ってたのに。それにアニメキャラに惚れたり、コンピュータで作られた女に興奮したり、子供向けのアニメを歪んだ視点で見たりとか日本人男性にはよくいるぞ。そーいうのわ。

    さらに「あの家族はクリスチャンなのか?」「ヴァイオレットのパンツの部分が写るのはモラルに反するのでは?」などと日本では考えられないことで議論になっている。ディズニーが神経質になるのもちょっと理解できた。

    他に日本との違いで言うと、みんな「ファンタスティック・フォー」(インクレディブルズの元ネタ)への言及が多いのと、エレナとシンドロームが大人気キャラになっている部分が違う。特にシンドロームの「イラスティガール!?イラスティガールと結婚したのか!そいつはすげえ!(You married ELASTIGIRL? And got BIZ-ZAY)」という台詞が何故か大ウケしているのだ。何が面白いのかさっぱりわからん。
● ヘレン
別名:イラスティガール。
戦闘キャラというわけではないが、本編を観れば誰もが「彼女こそが真の最強だ!」と思う。実際ボブと夫婦喧嘩しても物理的にも精神的にもヘレンが勝つと思われる。戦闘の際には弾力性のある体を利用して、強烈なパンチやキックを繰り出す。その威力はわざわざ本編を見なくても「ワンピース」を読めばわかってもらえると思う。

● ボブ
別名:インクレディブル
漫画「バキ」でいうところの範馬勇次郎とオリバを足して2で割らなかったようなパワーを持つ。
家族サービスで渋々映画を観に行ったお父さん全員ビックリするであろう、典型的父親キャラ。 僕は会社の上司に「この映画の主人公はあなたですよ!是非お子さんと観てください」とか言ったところ、「どーいう部分が俺なんだ?」と聞かれたので、僕としては「この映画の主人公は30代中盤から40代後半までの典型的父親像。きっと共感するはずですよ!」言いたかったのだが、つい破壊屋のノリで「頭が薄くて、中年太りで、仕事のストレス溜まりまくりのオッサンっすよ!」と言ってしまい、ちょっと怒られた(僕の上司は太っても無いし、ハゲても無い)。

● ヴァイオレット
別名:女プレデター
好きな男の子がいるのだが、その人と顔を合わすのがとても恥ずかしいので、そーいう時に透明人間になってしまう内気な女の子。男が透明人間になったら強気になって恋愛感情なんか持たないと思いますがね(実例:「インビジブル」
もう一つの特殊能力として強力なバリアを張ることもできる。中盤ではヘレンから「ジェット機をミサイルから守るくらいのバリア出さんかい」と無茶な要求を突きつけられ失敗。落ち込むが、インクレディブルズ結成のシーンでは弾丸だろうが刃物だろうが弾き返し、クライマックスでは最強戦闘ロボの猛攻も弾き返し、ラストは[墜落する飛行機すら凌ぐ程]に成長する。ヴァイオレットのバリアとダッシュが組んで、ヘレンとボブをアッサリ倒すシーンもあり。 黒いロングヘアーで顔を隠す様はゴス系を連想させるが、ラストでピンクのヘアバンドで髪をまとめるのがカワイイ。成長して[男に対して積極的になるに留まらず、デートの予定を適当に決める。]

● ダッシュ
別名:リアル8マン
こいつが8歳児だったら真のエイトマンなんだが・・・。時速300キロで走れるというありがちな能力を持っているが、その能力を使いシナンジュ(または漫画「バキ」の烈海王)のような技も見せる。
僕はエイトマンとかフラッシュとかの設定聞くといつも考えるんですが、それって凄いのは最高速度じゃなくて、一瞬でその速度に到達できる加速度ではないのでしょうか?しかもその速度を維持できたり、その速度で自分の動きを制御できたり、すぐに止まることができたり。そっちのほうがすげえよ!


● ジャック・ジャック
[実はインクレディブルズはシンドロームに対してはほぼ全敗状態なのだが、そのシンドロームに唯一勝ったキャラ。その特殊能力は生まれた直後のヘルボーイによく似ている]。

● フロゾン
もっとも氷のイメージから程遠い黒人という人種にも関わらず、冬季オリンピックに出場したらメダル4、50個取れそうな位多彩な技を見せる。
声優はサミュエル・L・ジャクソン。「Mrインクレディブル」はピクサーにしては珍しく他の映画のパロディ要素がないけど、フロゾンは「いいか、オレはてコップを撮るぜ」「ダイ・ハード3」の電話ネタのパロディをやる。マニアックなネタなのか、そうじゃないのかよくわからんな。

● ミラージュ
超スレンダー。ミラージュのウェストサイズを100倍してもボブのウェストサイズにかなわないのでは?きっとミラージュは服を着るとき頭からじゃなくて脚から着ていると思います。

● シンドローム
髪型が気になって仕方ない。
「アンブレイカブル」のサミュエル・L・ジャクソンを越える”オタク少年はロクな大人にならない”ネタ。

● スーパー・ヒーロー保護プログラム
証人保護プログラムは実際にアメリカにある制度で、これのパロディ版。

● ボム・ボヤージュ
ボン・ボヤージュではない。もちろんフランス人なので彼が喋ると英語字幕が入る。
絶対後半の伏線だと思ってんですが一発キャラだったのね。

● オムニドロイド
街を破壊しながら突き進む姿が、アイアン・ジャイアントを彷彿させる。
リモコンにセキュリティ機能が全くかかっておらず、誰でも扱えるというのは問題あると思う。
このオムニドロイドが進化していく姿は、スーパー・ヒーロー達の抹殺を意味しておりちょっと怖い。けど「ロボコップ2」でオムニ社が頑張ってロボコップ2を開発して、何度も酷い目に遭う名シーンにも似ている。

● エドナ・モード
僕はてっきりワダエミがモデルだと思ったんですが、モデルはオスカーを8回受賞したエディス・ヘッドがモデルだそうです。
マントに憧れる人々の夢を砕くマント不用論を打ち出すシーンがオタク心をくすぐる。しかもこれラストの伏線になっているし。
インクレディブルズのスーパースーツは機能性は抜群だが、赤の全身タイツに黒のパンツというのはどーかと思う。

● IG-99
劇中出てくるジェット機。元ネタはおそらく1999年公開の「アイアン・ジャイアント」でしょう。

● バウンディン
ピクサーおなじみの上映前に流れる短編映画。悪い農家に毛を刈り取られてしまった羊が、バウンディンに励まされて次の年からは農家に刈り取れれるのが楽しみになる。
ピクサーの映画って意地の悪さと、それを打ち消す優しさがあるから良い。でも毛を刈り取られてしまった羊が「こんな僕はファニーだ」と泣くけど、毛を刈り取られる前から十分ファニーだと思ったのは僕だけでしょうか。

● カーズ
「ジョジョの奇妙な冒険」に出てくる究極生命体ではない。ピクサーとディズニーが組む最終作。「Mrインクレディブル」を上映する時には必ずカーズの予告編を流さなくてはいけないという世界規模の契約があるのだ。恐るべしディズニー。のどかに飛ぶ蜂が車につぶされて死ぬというシュレックじみた部分が素敵。

● ブラッド・バード
1999年に大感動アニメ映画「アイアン・ジャイアント」を送り出した男。当時はこの監督の才能に驚いたもんだけど、「アイアン・ジャイアント」が興行的には大失敗だったので、その後の情報は全く入ってこなかった。まさかピクサーと手を組んでいたとは!
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