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タイムライン   ★★

    これぞ中世ファンタジー!大迫力!余りにも素晴らしすぎる映像の数々は、現代社会に生きる者達を中世社会へとタイムスリップさせる!絶対に映画館で観るべきですよ、「王の帰還」の予告編は。(アレはネタバレしているんだが)
    物語に出てくるタイムマシンはよく乗り物の形をしています。それは僕達に勘違いをさせるためです。乗り物に乗れば長い距離を移動できるわけですが、タイムマシンも乗り物の形をしていれば何となく時間も移動できるような気がするのです。この勘違いによってタイムマシンという空想の産物に説得力が感じられるようになる。例えば「ドラえもん」のタイムマシンも、当初のコンセプトは「勉強机から未来がやってくる」でしたがその後ちゃんと乗り物として描かれました。もしのび太が机に入っただけで、いきなり未来や過去があっても説得力は弱い。乗り物に乗るからこそのび太達が時間移動するという説得力が生まれるのです。
    しかし映画「タイムライン」はもっと現実的で、タイムマシンの装置をFAXとして捉えます。つまり量子力学を応用した物質転送です。超高性能マシンを使い人間を量子レベルに変換、その量子を送信装置を使い転送しワームホールに入ることで1357年のフランスにタイムスリップ・・・って受信装置はどうするの?FAXも電話もメールも送信したら受信しなきゃダメじゃん。量子を送っても到着するのは量子だよ。これじゃあ電子メール送ったら1357年の家に手紙が到着するようなもんだよ。案の定本編では送信シーン(タイムスリップする瞬間)は大袈裟に描いていたのに、受信シーン(1357年に到着)は存在しませんでした。
    もちろん物語に出てくるタイムマシンというものは現実には不可能なので、細かい所はどうでもいいはず。映画として重要なのはタイムマシンやタイムスリップ描写の正しさじゃなくて、タイムスリップすることの面白さです。ここら辺は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」がいい例ですね。あの映画もタイムマシン描写が滅茶苦茶なのですが、最初のデロリアンの実験シーンが最高に面白いので全く気にならない。ところが「タイムライン」はそれもダメだった。
    「タイムライン」のストーリーは100年戦争真っ最中のフランスに行って考古学の教授を助けに行くというものです。助けるべき人が自分の愛した人とか、国にとっての超重要人物とか、「教授が戻らないとタイムマシンの研究が進まない」ならまだわかりますが、過去を観に行った教授が戻らないだけなんですよ。それなのに大挙して助けに行って、合戦に巻き込まれて次々に[死んでいく]。もしいきなりどっかの大企業の人間がやって来て「あなたの大学の教授がタイムマシンで過去へ行って戻って来ない。行き先は三国時代の赤壁の戦いだけど、教授を探して来てくれないか?それと何も持たないで行ってくれ、警察にも内緒だ。現在への戻り方も教えない。中国語がわからないだろうけど頑張れ」て言われて誰が行くんだよ!過去に行く方法に矛盾があったってそれはしょうがない、でも過去に行く意義が無いのは映画として問題でしょう。
    タイムスリップした後は「タイムマシン」より10倍位は面白い中世ファンタジー映画になって、「二つの塔」の100分の1位は面白い攻城戦が展開します。戦闘シーンは純粋に楽しめるので良かった。だから星は二つにしておきました。
    登場人物の内、教授、助教授、女学者はもちろん歴史に対して深い見識がある人物なんですが、この3人がタイムスリップして[人を殺す殺す]。特にひどいのは教授で、[中世のイギリス人達に殺されそうになったので「特殊な火薬作るから助けて」と言って窮地を逃れるのです。しかも本当に作ってあげるし]。
    クライマックスの教授と助教授の会話なんかすごいですよ。
教授「これでは歴史が変わってしまう」
助教授「私も変えてしまいました。[フランス軍が勝つきっかけを奪ってしまった]のです」
教授「それではもうどうにもならない
    ということで[二人で火薬を作って、当然その火薬がクライマックスで大爆発して何もかも吹っ飛びます。]
    「タイムライン」では二つのラブストーリーが描かれるのですが、こんだけの内容タップリの映画で二つのラブストーリーが展開するのは当然不可能でした。
    一つは助教授とフランス女とのラブストーリーです。これは男が命を賭けて女を助けるという類のロマンスなのですが、その起点である、男が女に惚れるというシーンが無いし、男が女を想うシーンも無いし、その逆も無い。少なくともお互い惹かれ始めた助教授とフランス女が「あなたと一緒に暮らしたいわ」「それは駄目なんだ。僕は君とは違う世界の人間なんだ」「違う世界ってどこ?」「それは言えない・・・」というように二人が恋をしているシーンを入れるべきでしょう。ラブストーリーなのに恋しているシーンが無いってどういう事?キスをしてお互い照れるというシーンが10秒位あって、それだけで[「歴史を変えてでも彼女を助ける!」]というクライマックスになだれ込むのです。だから全然盛り上がらない。
    もっと酷いのは主人公と女学者のラブストーリーで、特に書くことが無いほど何も描けてません。
    最後にもう一つ、序盤で助教授が[「石棺の男女は誰?」]っていう伏線を貼ります。そしてクライマックスで助教授は[「あれは自分(と姫)だった!」]という事を知る。でも[元の歴史だと姫は城壁に吊るされて死んだんですよね?だとしたら石棺の女は誰なんでしょうか?]
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