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セルラー   ★★★★

    ボンクラが最新のケータイを購入した。でも女の子に電話かけても出てくれない・・・のはともかくかけ直してもくれない。動画撮影機能は友達が勝手に使っている。自分も動画撮影機能使って女の子(ジェシカ・ビール!)の映像をニヤニヤ見ていると・・・。見知らぬ女性から電話かかってきて突然「助けて!私は誘拐されて監禁されているの!」と言われた・・・

    おばさんが恐ろしい悪人達に誘拐され監禁された。さらに悪人達はおばさんの息子と夫も狙っているらしい。おばさんの家族は平凡な一家で、狙われる覚えは全く無い。どうやら夫が何か秘密を持っているらしいのだが・・・。監禁された部屋にあった電話機はもちろん破壊された。でもそのおばさんは壊れた電話から何とかダイヤルを発生させた(おばさんは頭が良い)。その結果全く無関係のボンクラ(だが正義感強し)が着信。突如犯罪に巻き込まれた一家を救えるかどうかはこのボンクラにかかっている。
    だが破壊された電話機では、一度通話が切れれば連絡は誰も取れなくなる。そして悪人達もただの犯罪者ではなく、何かのプロフェッショナルのようだ。ボンクラとおばさんには勝機が無い。ボンクラに出来ることはただ一つ、悪人達よりも先回りしておばさんの家族を助けることだけだ! さあボンクラとおばさんの運命はどうなってしまうのか?

    B級映画の快作「フォーン・ブース」の別ネタ映画(ラリー・コーエンが電話ネタの映画を2つ考えた)。「フォーン・ブース」が舞台は電話ボックスのみという超限定空間で、電話を切りたくても切れない恐怖だったのに対して、「セルラー」の舞台は都市を駆け巡る開放型で、電話が切れて欲しくないのに切れそうになる恐怖が描かれる。
    でも「セルラー」は「フォーン・ブース」よりも「スピード」に近い。「スピード」はエレベーター、バス、電車と日常的な要素がスリラーになります。そして「セルラー」は”ケータイをかけてるとき回りの音がうるさい”、”ケータイの電池切れそうなのに通話が続く”、”かかってきて欲しい人からケータイがかかって来ない”という極めて日常的な事態が映画的なスリラーになっています。
    映画の序盤は圏外、電池切れ、音漏れなどといったケータイならではのサスペンスが展開。
    中盤では笑える理由で[ボンクラのケータイと車がパワーアップするので、これでケータイ関係の問題は解決]。その代わりどうして平凡な家族が狙われるのか?悪人達の目的は何なのか?といったハリウッド映画お得意のサスペンスが展開する・・・と思いきや何と[ボンクラのケータイが突如壊れてしまう!]え?それじゃあおばさん一家はもう終わりじゃないの?
    だが後半で[青年は再び自分のケータイをゲット、今度はケータイを使いこなして悪人達の喉元に切り込む!さらにおばさんもその頭の良さと行動力を駆使して、危機からの脱出を図り始める]。
    この密度の濃さにもかわらず、実質上映時間はたったの90分。優れた脚本はバッサリ省略してあるという見本ですね。またこーいう映画って、よくハラハラと同時にイライラも感じてしまうんだけど、「セルラー」は脚本も演出も編集もとことんテンポが良いからイライラ感無し。
    よくダメなアクション映画やサスペンス映画のプロットって、警察に通報するか供述すれば全て解決するもんですが、「セルラー」はそこらへんも工夫しています。恐ろしい電話を受け取ってしまってどーすればいいかわからないボンクラに、おばさんは一言「警察行ってこの通話を渡してよ」と言います。もちろんいきなり警察に頼っちゃうと映画は終わってしまうので、ちゃんと警察に頼れない状況が発生します。
    クリス・エヴァンス演じる主人公の性格設定も良いです。ホントにただのボンクラなんだけど、こいつの行動原理が「オレがやらないとヤバイことになってしまう!怖いけどやるしかないんだ!」という誰でも少し位は持っている正義感と責任感が行動原理になっている。だからこそ思いっ切り感情移入できる。 もちろんハリウッド映画なので、主人公は見事な決断力を何度も発揮してヒロイックな行動をするけど、本質はただのボンクラ。悪人と戦うときに殴られないように両手を顔の前に掲げたり、銃を撃つ時は目をつぶったりする。もちろん弱いので不意打ちしか出来ない。しかもそれでも[数秒で倒される(おばさんの方が肉弾戦に強かったりする)]。
    また誘拐監禁されたのが若い女性だと別のサスペンスが生まれてしまうのですが、「セルラー」は監禁される女性をキム・ベイジンガーという美しいおばさんにして、サスペンスの本筋に集中することができるようになっています。今おばさんと書いちゃったけど、キム・ベイジンガーはあの見返り美人役の「L.Aコンフィデンシャル」から10年も経つのか・・・
    「ボーン・スプレマシー」に続いてハリウッド映画の良い部分が全面に出たサスペンス・アクション。それにしても「オレのケータイの着歴機能な・・・」「オレのケータイは[動画撮れるよ]」といった、うちらがケータイを買い換えるたびに言ってる言葉が決め台詞になっているのが面白い。ボンクラの「電話かけてもかけ直してもくれない」が後半になってちゃんとサスペンスとして生きてくるのも面白い。
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