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マシニスト   ★★★★

    マシニスト(機械工)の主人公トレバーは何故か一年間眠っていない。そんな彼の周囲には不可解な出来事が次々と・・・。 傑作「リベリオン」(破壊屋2003ベスト映画)でガン=カタで大暴れしていたクリスチャン・ベールが、脅威の激ヤセを見せます。クリス・カニンガムのPVみたいで怖い。

    「マシニスト」はミステリー調のスリラーで、劇中に出てくる様々なアイコンの意味を考えて楽しむ映画なんですが・・・。観終わった後に頭抱えたくなりました。映画の内容にではありません、一緒に観ていた観客達の態度にです。ほら映画終わった後ってみんな一斉に感想喋りだすじゃん。僕の両側に座っていた客、ロビーの中、帰りのエレベーターの中。みんなベラベラ喋っていたんだけど、その会話の内容が・・・「あの母親は何なの?」「メモは誰が貼ったの?」「一年間眠れなかったってのは本当なの?」「あの暗号簡単だよねー」「あんなお化け屋敷ありえないよねー」
    おいおい!渋谷のミニシアター系の観客達って、どーいう感覚で映画観てるんだよ!主人公がどうして一年間眠れなかったのかすらわかっていない客もいたぞ! っつーわけで感想の代わりに僕なりの解釈を載せます。
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注意

    以下物凄くネタバレ!未見の人は絶対に読まないで!映画のキーワードは全部太字にしておきました。
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マシニスト   (ネタバレ)

    一年前、マシニストのトレバーは魚釣りが大好きだった。同僚のレイノルズも一緒に魚釣りに行く。ある日トレバーはブーツを履いて、743RCN赤い車に乗って魚釣りに行こうとした。だがルート66を走行していた1時30分、トレバーはシガレットライターを使おうとしてよそ見運転してしまい、眼鏡の少年を轢いてしまう。トレバーが見た光景は、逆円錐の建物の下で少年の母親が叫んでいる光景。恐らく少年は助からないだろう。トレバーはその場から逃げた。

    トレバーは自分の赤い車を廃車にし、NCR347の白いトラックを手に入れ、「魚釣りがしたかっただけ」というステッカーを貼った。そしてトレバーは自分の轢き逃げの記憶を封じ込めた。トレバーの記憶は罪を忘れたが、トレバーの潜在意識は忘れていなかった。トレバーの肉体に罪の意識が表れた。トレバーは眠れなくなり、異様に痩せ始め、時計が指す時間がいつも1:30になり、常に漂白剤で手を洗うようになった。それはマクベス夫人のようだ(人を死なせたために、自分の手に血がついて落ちなくなる強迫観念に取り付かれる)。

    トレバーには仲の良い娼婦がいた。トレバーはいつもその娼婦とセックスしていた。娼婦はトレバーのブーツを持っていた。でもトレバーが車にぶつかって大怪我したとき娼婦はこう言った。「轢き逃げするようなやつは首吊り(ハングマン)になればいいわ」。

    トレバーの罪の意識は、彼の罪を象徴する人間を生み出した。(ドストエフスキーから)アイバン(イワン)という名前を持つ男だ。アイバンは良心の呵責に苦しんで痩せていくトレバーと正反対の肥満体で、赤い車で粗暴運転を繰り返す男だ。現実には存在しないアイバンに囚われすぎたトレバーは機械で事故を起こす。

    トレバーは罪を犯したことは忘れたが、逃亡(ESCAPE)しなきゃいけないという意識も残っていた。トレバーは毎日車で道路の分岐点へ行く。分岐点の右側へ行けば繁華街で、分岐点の左側へ行けば空港だ。トレバーはいつも分岐点の左側を選び空港のカフェで休んだ。そして空港のウェイトレスを自分が轢き殺した眼鏡の少年の母親だと思うようになった。ドストエフスキーを読んでいたトレバーはウェイトレスにマリアという設定を与えた。

    トレバーはマリアとマリアの息子ニコラスと一緒に遊園地に行く。でもそれはトレバーが幼い頃に母親と行った遊園地の記憶だった。マリアはトレバーの母と同じような柄の服を着ていた。トレバーはカメラのファインダーを通じてその記憶の光景を見る。

    ニコラスはトレバーに聞く「ママとはいつ会ったの?」「一年前だ」。ニコラスとトレバーはルート666というお化け屋敷に行く。お化け屋敷の中には首吊り死体と、娼婦とセックスする光景があった。そしてドストエフスキーの「罪と罰」もあった。お化け屋敷には分岐点があり、分岐点の右側へ行けば天国で、分岐点の左側へ行けば地獄だ。トレバーとニコラスが左に向かうと、ニコラスは白目を向いて気絶する。だってニコラスはトレバーが轢いた少年なのだから。このお化け屋敷ライドはそのまんまトレバーの一年間を表していたのだ。

    トレバーはマリアの家に行く。だがそれはトレバーの家でもあった。だからトレバーの母の形見が置いてあり、冷蔵庫にはトレバーと筆跡が同じマザーズデイ・カードが貼ってあった。

    トレバーはメモを冷蔵庫に貼る癖があった。トレバーの罪の意識は、トレバーに罪を気づかせようと黒ペンを使ってハングマンゲームを書いた。ハングマンゲームの正解はKILLER(殺人者)。自分の罪に気づいていないトレバーは、鉛筆でそのゲームを解こうとする。正解がKILLERだってすぐにわかるはずなのに、トレバーは気がつかない。KILLERとは包丁で人を刺し殺す殺人鬼とかじゃなくて、理由は何であれ人の命を奪ったものがKILLERなのに。

    トレバーはアイバンの正体を知ろうとして警察署に行く。そしてアイバンの車が以前自分の乗っていた赤い車だという事実を知る。警察署から逃げ出したトレバーは下水道へ入る。下水道には分岐点があり、分岐点の右側は明るく、分岐点の左側は暗い。トレバーは左を選んでしまう、だからトレバーはまだ自分の罪を思い出さない。

    トレバーは家賃を滞納するようなヤツじゃないが、電気料金は滞納していた。トレバーの罪の意識が電気料金を払おうとしなかったからだろうか?電気が止められ時、現象が起きる。冷蔵庫の中にあった魚が腐り始めたのだ。トレバーは自分が魚釣りが好きだったこと、冷蔵庫の中に魚を入れていたことすら記憶の中から消していた。腐った魚を見てトレバーは自分の罪を思い出す。

    罪の意識が完全に元に戻ったトレバー。トレバーは車で分岐点に向かう、分岐点の右側へ行けば警察署で、分岐点の左側へ行けば逃亡できる空港だ。トレバーは右の道を選んで自首をする。トレバーは一年ぶりに眠れる。
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