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ノー・カントリー・フォー・ミー   

最近は『ノーカントリー』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『ミスト』と傑作映画が連続して公開されたので、映画ファンとしてかなり幸せな日々だった。いずれの作品も鑑賞後の余韻が後を引くタイプで、演出・脚本・セリフの細かい意味を頭の中で反すうするように楽しめる。

でも気になることがある。僕はこの3本の映画を川崎まで行って観に行った。つまり横浜駅周辺では上映していなかったのだ。横浜にシネコンが出来て「やったー!JRを使わなくても観られる映画が増えた!」と喜んだのは一瞬のことだった。結局今もJRを使って映画を観に行っている。


映画興行において一番重要な時期の1つであるゴールデンウィークの興行にも気がかりな現象が起きた。洋画の低迷が決定的になったのだ。じゃあみんなは映画館へ何を観に行ったかというと『相棒 -劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン』というわけだ。『ノーカントリー』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『ミスト』のような傑作映画よりもCMでやっているわかりやすそうな映画を選ぶ。

最近はシネコンに行くたんびに、上映作品のラインナップが邦画&洋画の吹替が大半を占めていて驚く。とあるシネコンでは8スクリーン中6スクリーンが邦画だったし、ゴールデンウィーク中に行ったシネコンは日本映画のチケットのみが完売していた。

儲けの場所をテレビから映画へ移しているジャニーズの力も凄く感じる。シネコンの「上映中作品」と「上映予定作品」にジャニーズタレントがいない日のほうが珍しい。

洋画よりも邦画のほうがヒットするのは、日本の企業が今の日本人たちにウケる商品を作っているからだ。
それと若い人たちが字幕を敬遠しているのも要素だ。高校教師の友人や映画会社の人と飲んだ際に「若い人が字幕を読めない」という話になった。それだと高校のイベントで流せる最近の外国映画となると、吹替版がある『ジャンパー』『スパイダーウィック家の謎』くらいになってしまう。そして吹替の声優にもこれまたジャニーズタレントが活躍する。


最初に挙げた3本の映画は川崎まで行けば観れたのでまだマシだ。都心のミニシアターまで行かないと観れない映画、DVDでしか観れない映画、DVDですら観れない映画まである。まあとにかく日本映画が強くて外国映画が追いやられているわけだ。

僕は日本人なんだから日本映画が興行面で強くなっていることは喜ぶべきことだ。『隠し砦の三悪人』は悪い映画じゃなかった。未見だけど『相棒』も同じだと思う。ジャニーズタレントが出ている『しゃべれども しゃべれども』は良い映画だ。でもここ数年の日本の映画興行に「質の悪いモノが売れたせいで、質の良いモノが消える」という現象も確実に起きている。


(これから書くことはミニシアターの良作を無視してレニー・ハーリンやローランド・エメリッヒの作品を喜んで観ている僕が書くことじゃあないので、「破壊屋管理人=バカ」ということは一瞬でいいので忘れて、下記を読んでください。)

僕が高校生の頃はこんなこと言われていた気がする。でも今はアメリカ人のこととは思えない。「アメリカ人」を「日本人」に置き換えたほうがシックリくる。

自国映画好き=バカ、外国映画好き=頭良いということじゃあない。今の観客が映画を鑑賞して味わったり理解しようとする作業を避けているので、それが「字幕を読まない」「外国映画を観ない」という現象に結びついているんだと思う。

2008-05-15

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