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ボディ・ジャックの真実   

前回のストーリー解説では省いたが、映画『ボディ・ジャック』はラブストーリーになっていて上手いオチがつく。低予算映画であの出来なら十分だと思う。むしろ立派な作品かもしれない。そう思ったのは鑑賞後にヤバすぎる原作を読んだからだ。原作である小説『ボディ・ジャック』は幕末と学生運動と現代社会と心霊現象と信仰心と仏様が同時に描かれているフルスロットル小説なのだ。

小説『ボディ・ジャック』はユートピア文学賞を受賞している。「ユートピア文学賞」とはずいぶんと怪しい名前だが、これは幸福の科学が主催している賞だ。もちろん原作を出版しているのも幸福の科学出版だ。だから『ボディ・ジャック』は幸福の科学的な思想にもとづいている。「悪霊に憑かれている」というのは、幸福の科学において重要な考え方なのだ。

『ボディ・ジャック』は主人公=作者(光岡史朗)という形を取っている。光岡史朗も学生時代に学生運動をしていたが、内ゲバなどをきっかけに運動をやめてコピーライターになり、その後作家に転向している。つまり『ボディ・ジャック』の主人公と全く同じように革命に目覚めているのだ。これぞ人間革命!それは違う宗教か。


まず、これが原作の表紙と帯だ。

これが秋葉原事件の真相だ! 多発する無差別殺傷事件・親殺し・子殺し・一家惨殺など不可解な猟奇的殺人の原因を追究した問題作!

と帯に書いてある。また光岡史朗は秋葉原連続殺傷事件を秋葉原ボディ・ジャック事件と呼んでいる。小説『ボディ・ジャック』が発行されたのは2006年で、秋葉原連続殺傷事件は起きていない。そもそも小説の時代設定も1994年になっている。では「秋葉原事件の真相」という言葉はどういう意味なのか?

光岡史朗は

マイナス思考の人間は何者かにボディ・ジャックされてしまうという恐ろしい事実を今の日本人に知ってほしい

と訴えている。そして小説でも映画でも『ボディ・ジャック』は「猟奇事件はボディ・ジャックされた人間の仕業だ!」と主張している。これは設定の話ではない。光岡史朗はリアルで訴えているのだ。もちろん秋葉原連続殺傷事件もボディ・ジャック事件だと訴えている。だから本の帯に「秋葉原事件の真相だ!」と書くのである。


小説内では様々なボディ・ジャックが描かれている。1994年が舞台のため、秋葉原連続殺傷事件ではなくて新幹線のぞみの殺傷事件(シャブ中が犯人)と信金OL誘拐殺人事件が「ボディ・ジャックによる犯罪」になっている。また電車の中とかでブツブツ喋っている人「独り言人間」と呼んで、「ボディ・ジャックだ」と断定している。「レゲエの兄さん」(←本当にこういう表現を使っている)もボディ・ジャックされているらしい。
さらに「警察の取り調べで自供したあと、裁判で自供を否定する」もボディ・ジャックとのこと。自供だけが証拠の場合、冤罪の可能性があるんだけどね。こんな思想を持った人たちが裁判員に参加したらますます冤罪が増えるよ!

そしてここ数年、日本でボディ・ジャックが増えているのは「颯爽とした日本人の美しき心根は失われた」「正しい信仰が失われているから」が原因であり、「独り言を呟く人は信仰を失った人」らしい。そして無宗教的な思想を批判し、「今の日本人の半数以上は地獄に堕ちる」と主張している。僕としては、日本人のほとんどが天上界に行ける幸福の科学が望むような日本こそが地獄だよ!


小説『ボディ・ジャック』にはボディ・ジャックネタ以外にも色々な幸福の科学的な思想が描かれている。幸福の科学が批判する思想(唯物史観とか)も小説内で批判されている。

幸福の科学の教えでは、天上界は階層構造になっており立派な人ほど上の階層に行けることになっている。『ボディ・ジャック』では「人間は平等なはずなのに、なぜあの世でランク付けがあるのか?」という疑問に対して「人間の大きさが違う。器が違う。修行のレベルが違う。」というあんまりな答えを出している。

以前も破壊屋に書いたが幸福の科学はなぜか佐々木小次郎を極悪人として非難しており、『ボディ・ジャック』でも佐々木小次郎が地獄の鬼よりもヤバい存在として登場してくる。

そして『ボディ・ジャック』では「正義とは何か?」という疑問に対して明確な答えが書いてある。正義とは神様や仏様のことなのだとハッキリ答えている。そして

人格を無限に向上させてゆくことが、人間にとって真の喜びなのだ。

↑これが「この世の真実」で、これを否定することは地獄的らしい。『ボディ・ジャック』のラストシーンでは主人公(光岡史朗)が革命を定義して、革命を決意する。

世の人々がこの真実に目覚めたときが、ほんとうの革命なのだ。

↑これは『マトリックス』のラストシーンに似ているのが面白い。

ちなみに『ボディ・ジャック』のクライマックスは映画と同じく坂本龍馬の降臨なわけだが、坂本龍馬は主人公をボディ・ジャックする。つまり主人公はそんだけ立派な人だということだ。そのとき主人公は左手を懐手に入れるという描写があったので、読みながら笑ってしまった。


最後に、秋葉原連続殺傷事件はなぜボディ・ジャックだと断定できるのか?光岡史朗が行った分析を以下にまとめる。

  1. 加藤智大は後半の4人を殺したときの記憶がない。
  2. 4人を殺したとき、加藤智大は殺人剣の極意を使っていた。
  3. 殺人剣の極意は現代の人間ではできるはずのないワザだ。
  4. だから加藤智大何者かにボディ・ジャックされていたのだ。

殺人剣の極意ってマンガかよ。


今回は『ボディ・ジャック』の内容を紹介した。「めちゃくちゃな考え方だなぁ」と思う人も多いだろう。確かにこれらの考え方は極端すぎて受け入れがたい。

しかし………幸福の科学は保守寄りの思想で自民党の支持団体だ。そして幸福の科学は前回の選挙で丸川珠代の応援を行い、丸川珠代は当選した。次の選挙でも幸福の科学は自民党議員の応援を行う。幸福の科学の政治的影響力は議員数人の選挙に及ぼすが、これが創価学会だったら政局を左右するレベルだ。
幸福の科学が発行している雑誌では様々な政治的意見が書かれている。そして自分たちの政治的意見の正しさを示すために「チャネリングした政治家の守護霊の意見」まで掲載している。また「政治家には偉い守護霊がついていて立派な前世がある」という分析も自民・民主問わずやっている。これも「インチキだ!」の一言で片付けたい。でも幸福の科学とは関係ないが、守護霊や前世を分析するインチキ野郎の江原啓之が多くの支持を集めているのも現実だ。
『ボディ・ジャック』は極端な例なので笑い飛ばすことができるが、僕たちの社会や生活は極端じゃないレベルだったら、そういった要素に囲まれているのだ。「やつらにボディ・ジャックされるな!」という点でのみ小説『ボディ・ジャック』に共感できる。

ちなみにamazoneでは『ボディ・ジャック』は大絶賛である。今回の更新で色々な人たちが激怒するかもしれないが、そんなの僕の知ったこっちゃ………………………………


うわああああああ!なんだ今回の更新わ!!こんなの書いた覚えは全然ないぞ!絶対に僕の意思じゃないぞ!これはボディ・ジャックされたに違いない!だからみなさん怒らないで。あ、ボディ・ジッャクされるほうが悪いんだっけ。

2008-11-19

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