破壊屋2007200620052004旧映画の感想

エターナル・サンシャイン   ★★★★

彼女とケンカ別れしてしばらく経ったらこんな手紙が来た。「あなたの彼女は我が社の記憶除去装置を使って、あなたとの思い出を全て消しました。今後彼女には接触しないようお願い致します。」ふざけんな!その会社へ行ってオレもお前の記憶を全部消してやるもんね!っていう映画。

『エターナル・サンシャイン』のアヴァン・タイトル(冒頭)は何と20分もあります。映画が始まって20分経過してから今さらのようにオープニングクレジットが流れ始める。アヴァン・タイトルの内容は[「主人公は何も覚えていないけど、何かあったらしい。」と「主人公とヒロインがモントレークで出会って恋に落ちる」]というもの。つまり[お互いの記憶を忘れても再び結ばれる]という映画のクライマックスからラストシーンをそのまんまオープニングに持ってきています。映画のオチは全て最初で説明されてしまう。


映画本編は主人公の記憶が消えていくプロセスを追っかける。この過程はPVで鳴らしたミシェル・ゴンドリーの腕が炸裂します。とはいえ『エターナル・サンシャイン』は意外と低予算映画なので、ローテクを駆使。主人公が子供になるシーンは、『ロード・オブ・ザ・リング』でも出てきた画面手前に大きいものを置けば奥のものが小さく見えるという遠近法で撮影。CGは使い方が面白いだけであって、技術的に凄いことはやっていない。ミシェル・ゴンドリーも「撮影機材が古かった」と言っていた。一番ショボいのは劇中出てくる記憶除去の会社で、単なる町の診療所にしか見えない。さらにゲリラ撮影もやっていたらしく、主人公役のジム・キャリーは「撮影中声かけられたり、パパラッチに追われたり大変だったよー」とか言っている。逆に言えば日本のテレビ番組とかでも、このレベルの映像作品を作り出せる可能性があるということですね。


演技陣では主人公役にジム・キャリー。表情を動かさなければかなりハンサムと言われ続けたジム・キャリーのハンサム顔がじっくり見れる。 他に指輪の魔力と戦ったフロドが、女や下着の魔力にあっさり屈するゴクリ並に卑怯な男を演じる。また中途半端に仕事が出来る男をマーク・ラファロが好演。

ヒロイン組では『タイタニック』のデブと『スパイダーマン』のブスが大健闘。演技だけじゃなくて露出でも頑張ってます。(注:僕個人の意見としては『タイタニック』のケイト・ウィンスレットはデブじゃないし、『スパイダーマン』のキルスティン・ダンストは美人なのですが、世間の意見を考慮した結果この表現となりました。)


ちなみにケイト・ウィンスレットの髪の色が緑→オレンジ→赤→青っていう風に派手に変わるんだけど、髪の色はケイト・ウィンスレットとジム・キャリーの好きだという感情のメタファーにもなっていて、「ジム・キャリーと出会った時が緑」→「ジム・キャリーと熱愛中がオレンジ」→「ジム・キャリーとさらに熱愛中&記憶の中だと赤」→「ジム・キャリーと別れると青」という風になっている。この映画は時間軸と記憶が入り混じっているので、観客は髪の色を見て現状を判断することになる。


主人公の記憶が全て消え、[映画のクライマックスがオープニングと繋がった時。『エターナル・サンシャイン」は、「痴話喧嘩したカップルが結局元に戻る」というオチに落ち着くのですが]…映画のラストはそれよりももうちょっと深い意味合いを持っている。

というか『エターナル・サンシャイン』のオチだと、別の疑問が出てきます。それは[主人公とヒロインはお互いの記憶を消さなければ再び結ばれることは無かったのか?ということです。この二人はお互いの記憶を消しても結ばれる仲だけど、お互いの記憶を消さずに喧嘩別れしただけなら、どうなったのだろうか?]

[これは僕の考えだけど、記憶を消さなかったら二人は別れたまんまだと思う。]『エターナル・サンシャイン』というタイトルの元ネタになっているアレクサンダー・ポープの詩(劇中にも出てくる)にはこうある。

真の幸福は罪なき者に宿る。忘却は許すこと。太陽の光に導かれ、無垢な祈りは神に受け入れられる。

[あそこまで正反対のカップルはいつか必ずケンカする。だから全てを忘れなければ二人は幸せな恋人にはなれなかった。全てを忘れた彼等はテープを聞いてしまった。だけど全てを忘れているので相手を許した。]

2005/04/03|▼この記事の直リンク先

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