破壊屋2007200620052004旧映画の感想

交渉人 真下正義   ★★

今まで数多くのパクリ映画を観てきたけどこれはちょっとパクリ過ぎだろ…。

破壊屋2003年ワースト映画『踊る大捜査線2 the MOVIE レインボーブリッジを封鎖せよ!』が『機動警察パトレイバー2 the MOVIE』のパクリだったのに対して、『交渉人 真下正義』は『機動警察パトレイバー 劇場版』のパクリだった。僕は『機動警察パトレイバー 劇場版』を20回位観たけど、この映画のスタッフは多分それ以上観ているんじゃないかな?

序文でこんなこと書いたけど僕はパクリ容認派。さらに『機動警察パトレイバー 劇場版』は僕の映画人生ベスト10に入る作品なので、パクリたくなる気持ちは良くわかる。むしろパクってくれて嬉しい気持ちもある。『機動警察パトレイバー 劇場版』はミステリー映画として非常に優れているのに、この作品を真似するフォロワーが出てこないのを残念に思っていたくらいです。ただ『交渉人 真下正義』はパクリ方が良くない。表面的な部分だけパクっている上に、中身がまるで追いついてない。


『交渉人 真下正義』のアイデアは面白いと思ってます。複雑な東京の地下鉄網を特殊車両が暴走するという設定は良い。実際駅に突っ込んできたクモが脱線気味にホームと接触するシーンはかなりの迫力。このシーンは特に元ネタが思いつかないんだけど、オリジナル演出だよね?やれば出来るじゃん!希望を込めて本来星一つの映画だけど、星二つにした。クモに絡む演出はどれもかっこ良かったし、CGも正しく使っている。神出鬼没の暴走列車という難しいアイデアに良くぞ挑戦してくれた!だからクモに焦点を当てた映画だったらもっともっと面白くなったはずなのに…

実際の映画本編は出来そこないの娯楽映画。クモのマトモな活躍も前半くらいなもんです。だいたい地下鉄を特殊車両が暴走するという大嘘のアイデアをリアルに見せていない。『踊る大捜査線2』のマッドシネマの時も解説したけど、『踊る大捜査線2』はお台場封鎖というアホらしい展開の映画。でも元ネタの『機動警察パトレイバー2 the MOVIE』は東京封鎖というもっとアホらしい展開だった。しかし押井守はアニメだからと手を抜かず、徹底してマニアックな描写と橋にこだわって東京封鎖を現実にした。

そして『交渉人 真下正義』は特殊車両が暴走して東京の地下鉄網大ピンチっていうバカバカしい設定の映画。でも元ネタの『機動警察パトレイバー 劇場版』は○○○○が暴走して関東圏内全てが大ピンチというもっとバカな設定だった。しかし押井守は犯人の特異性を徹底して描き(犯人を登場させずに!)、さらに聖書を巧みに引用してバカな設定を恐るべき現実としてに観客に突きつけた。だけど『交渉人 真下正義』はそういった努力をせずに「どっかの電車が1台止まっただけで東京の地下鉄中で衝突が起きるよ」とかいうふざけた台詞だけで済ます。


何か『機動警察パトレイバー 劇場版』の話ばっかりになっているけど、本当にとことんパクっているし他の過去の名作も色々かつそのままパクっている。クリスマスイヴにテロ事件が起きて、途中でベートーヴェンが流れて最後はもちろんクリスマスソングというのはアレだし。SATが出てきたときに絶対に[『ガントレット』]パクると思ったけど、やっぱりパクった。これらもパクってくれて嬉しいネタなんだけど、何か微妙なんだよ。どんなにリアルじゃなくても、どんなにパクリだらけでも映画が面白ければそれで良いはず(破壊屋2003年ベスト映画の『リベリオン』が僕限定でそれを証明してくれた)。『交渉人 真下正義』はあんだけパクっても面白くならなかった。


地下鉄アクション映画といえば、韓国が今年『TUBE』を日本公開していました。『TUBE』もつまらん映画なので観た時は「こりゃ地下鉄映画対決は日本が勝つかな?」と思ったけど、結果は日本の負けです。『シルミド』や『オールドボーイ』や『殺人の追憶』などといった優れた映画に負けるのは全然構わないけど、低レベルな娯楽映画対決で負けるのはなんか悔しいぞ!『TUBE』も色んな映画の設定をとことんパクった映画だけど、『TUBE』は自分風味に仕上げるのに躍起になっていたし、人間ドラマもきちんと展開していた。『交渉人 真下正義』にはそれも無かった。

ところで犯人がアレなのや何も説明がついていない設定が多いのは、もちろんこの後に控える『容疑者 室井慎次』で全部明らかになるんだよな?『機動警察パトレイバー 劇場版』をパクるためだけに犯人をアレにしたのだったら、観客を舐め切っているぞ。もしそうだったら『交渉人 真下正義』は2005年ワースト確実だ。


ちょっと批判したが、既に書いたように『交渉人 真下正義』のアイデアは面白いし、それに付随する気合の入った演出もあった。僕は『踊る大捜査線1&2』の織田裕二といかりや長介のキャラ作り演技が嫌いなので(長さんは大好きなんだけど、和久というキャラがダメ)、あの二人が登場しないスピンオフは結構すんなり観れた。『交渉人 真下正義』が一番マズイのはそりゃあ脚本ですよ!君塚良一が脚本書かないのは残念だったけど、代わりの脚本家がこりゃまた凄い脚本やってくれました。それについては次回以降で!


オマケ:
何か今回も怒った踊るファン達から攻撃喰らいそうだ。先に謝っておきます、ごめんなさい。そういえば前回「踊る大捜査線のテレビ版を見てないヤツが映画を語るな!」と抗議が来たけど、僕はテレビを見ない人間です。だから踊る大捜査線のテレビ版なんて一秒も見たことがない。そういう人間なのである程度はあきらめてください。

2005/05/13|▼この記事の直リンク先

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交渉人 真下正義   ケータイで何でも出来る時代

クリスマスイヴの東京に恐るべきテロ事件が起きる。クリスマスのテロ事件といったら場所はナカトミビルなんだが、それは元ネタの話。今回は地下鉄が標的だサブウェイ・パニック!それも元ネタがあるか。


複数の路線が複雑に絡み合う東京地下鉄網、そこに突如謎の電車が現れた。正体不明、制御不能、一体この電車は?同じくして地下鉄運行システムが停止した。鉄道会社の会見の席で社長は「地下鉄の運行システムがダウンしても地下鉄の運行に問題はありません」と子供の嘘のような発表をした。誰だ脚本書いたのわ。

謎の電車が葛西駅周辺に近づいたとき、葛西の公園でゴミ箱が爆発する事件が起きた。駆けつけた刑事が推理した。「爆発は後2回起きるぞ!」「お前が犯人じゃないの?」と思いたくなるような台詞だがそれは違う。『交渉人 真下正義』の登場人物達は全員勘を信じて勘で動くのだ。


外部から絶対侵入不可能の警察のサイトがクラッキングされた。犯人の正体は不明だ。外部から侵入不可能と言い切るんだから内部犯のはずなんだが、この謎は『交渉人 真下正義』中では明らかにされない。だが犯人は真下正義に対する挑戦状らしき内容のメッセージを残してきた。

指揮官の室井慎次は犯人からの要求はおろか連絡も一切無いのに何故か交渉チームを用意した。さらに報道規制もかけた。この判断により地下鉄の乗客200万人の生命が危険に晒されることになった。室井慎次は目線どころか体の向きも合わせない独特の喋り方で真下正義に指示をする。真下率いる交渉チームは地下鉄の司令室に向かった。


暴走している謎の電車の正体は開発中の新型地下鉄車両:通称「クモ」だった。クモのデザインはガンダムみたいなモノアイと、弧を描くように飾られた電球が特徴で、デザインしたやつのセンスを疑ってしまう。は駅員が東陽町駅内に停止したクモの操縦席を見るとそこは無人。その代わり複数のケータイ電話が操縦席に繋げられていた。犯人は外部からケータイ電話を使用してクモを操縦していたのだ。









ケータイ電話で地下鉄電車を操縦?
それ圏外じゃないの?

東陽町駅に後続車両が向っている!このままではクモとぶつかってしまう!っつーか地下鉄の駅員達は、駅に異常事態が発生しても後続電車止めないのか。人がホームから落ちたどころの騒ぎじゃないぞ。後続車両が駅に進入してくるとクモは再び動き出す。


地下鉄運行システムが停止したために現在運行中の240台以上の電車が全て手動運転に切り替わった。このままでは乗客の生命が危ない!「現在運行中の電車を止めていけば安全じゃん」誰もがそう思うだろう、僕もそう思った。だが電車を止めることは出来ないのだ。何故なら地下鉄で手動ブレーキをかけたら240台の電車が次々に連鎖的に衝突するからだ!…ってこの説明をしているシーンで吹き出してしまった。東京の地下鉄ってそんなにヤバいの?過密ダイヤの中を日勤教育受けた新米運転手が、オーバーランして時速130キロで急カーブに侵入するよりも遥かに危険な設定だな。っつーか映画始まって3分位で「地下鉄の運行に問題はありません」と言ってたじゃないかよ。

地下鉄の司令室に到着した真下達のチームは、運行システムのシステムダウンの線を調べることにする。運行システムは独立型で侵入は出来ないはず。鉄道会社と真下達のチームは、犯人はシステムの開発者の誰かだと疑う…。普通はシステムの開発者じゃなくてシステムの運用者を疑うべきだろ。っていうか犯人は少なくともセキュリティが厳重なはずの開発車両に接触し、さらに操縦席を改造したんだから、物理的な侵入者を調べるのが先では?まあ元ネタの犯人がシステムを開発したヤツなので、何も考えずにそのままパクった『交渉人 真下正義』がこういう展開になってしまうのは仕方ないか。


真下達のチームは運行システムの開発に関わった90社の社員10年分のデータを調査することにする。調査方法はデータの中を「爆弾」といった言葉で検索することだった。しかし「爆弾」で検索かけて犯人がわかるなんてどんなデータなんだろう?(『へなちょこ大作戦Z』というマンガに出てきた「インターネット刑事」みたいなものだろうか。)この映画の脚本書いた人は君塚良一に匹敵していると思う。

序盤で映画の状況が観客に説明されると同時に、『交渉人 真下正義』を映画として真面目に鑑賞してはいけない事も説明される。

2005/05/16|▼この記事の直リンク先

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交渉人 真下正義   電車男軍団

地下鉄の乗客200万人の生命が危険にさらされている状態だが、鉄道会社は乗客の安全よりも輸送を優先させ、鉄道の運行自体を止めるつもりはなかった。この会社の対応を見ているとJR西日本もマトモな会社に思えてくる。

鉄道会社の司令部は、現在運行中の電車を暴走するクモから逃すべく、電車を留置線(緊急避難や車庫代わりに使う線路)に引き込もうとする。駅員達が直接線路に向かい連結器をその場で動かし、乗客を乗せた電車がどんどん留置線内に入っていき…何で留置線に乗客を乗せた電車を引き込むんだよ?連結器を操作できるのならクモを留置線に引き込めば済む話じゃん!まあクモを留置線に引き込んでもすぐにバックで出てきてしまうと思うが、少なくともクモを特定の区間に閉じ込めることはできるし、クモの動きを大幅に制限できるだろう。何故鉄道会社の人達はクモが暴走しやすい状況をわざわざ作ってあげているのだろう?


クモの暴走により一部の駅は封鎖された。しかし報道規制されているので、乗客達は何故電車に乗れないのかわからない。怒った人々が封鎖を破って無理矢理駅の中に入る。無理矢理駅に入ったって電車が来ないんだから仕方無いと思うが。

神楽坂付近でクモがスピードをあげてきた。クモは乗客を載せた前方車両に追いつこうとする。クモは少しづつ少しづつ追いついてくる。悲鳴をあげる前方電車の乗客達。しかし本当に少しづつだ、多分速度差はあんまりない。前方電車が時速100キロで走っていて、クモが時速105キロで走っていてぶつかったとしても、それは時速5キロでぶつかるのと同じなんだから、大事故にはならんような気がする。さらにぶつかったらぶつかったで前方電車がゆっくりブレーキをかけていけば後ろのクモも止まると思う。まあ高速移動する電車だと接触の衝撃には色々あるし、悲鳴をあげる乗客達の描写が時期が時期だけにちょっと怖い。


犯人が地下鉄司令室にいる真下に電話をかけてきた。指名したとはいえ最初の電話で、どうして犯人は真下が地下鉄の司令室で指揮をとっていることを知っているのか?犯人は室井慎次じゃないのか?

犯人からの電話を受けた真下は早速交渉のテクニックを披露する。「このままじゃ電車ぶつかっちゃうよ!止めてよ!止めてくれたら話聞くからさ!」こいつ交渉人失格じゃん!いきなり犯人に主導権全部渡しちゃったよ!もちろん犯人は電車を追い詰めることを止めてくれた。そしてクモは突然地下鉄から消える。『パトレイバー2』の戦闘機のように消えたクモを見て、暗い表情をする鉄道会社の職員達。どうやら何か隠し事があるらしい。

犯人が電話をかけてきたのは秋葉原からだった。『パトレイバー2』のように首都高を走っていた刑事達は直ちに秋葉原へ向う。犯人はワゴンに乗って『パトレイバー2』のようにカラスと一緒に東京の街を移動しながら、パトレイバー2』のジャミングのように電波を発していた。刑事はまた予測する。「オレの勘だが犯人は…車に乗っている!」いや、当たってるけどさ。何で当たるの?

2005/05/19|▼この記事の直リンク先

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