映画ファンにとって一番楽しみなベストの時期が近づいてきました。映画ベストは「映画評論家や映画ライターといった映画の専門家たちの投票の合計点によって決めている」というものが一般的で、僕はこれがもっとも信頼のおける方法だと思っています。1位から10位までを選定して1位が10点、2位が9点…10位が1点という持ち点制の映画ベストが「キネ旬方式」と呼ばれてます(ホントかよ)。
今回は2005年のベストを振り返ってみます。まずはアカデミー賞よりも権威があるとも言われている映画賞で、少なくとも日本国内においてはもっとも権威があるキネ旬から。
11位は『埋もれ木』。
壮絶な失敗作である『TAKESHIS'』(僕は好きだが)が14位なのはやはりキネ旬色が出てる。
15位には意外と高評価の『NANA』と『交渉人 真下正義』。しかも『交渉人 真下正義』の15位は読者ベストよりも高い評価です。ええー。
11位に『ヴェラ・ドレイク』と『シンデレラマン』。
『ミリオンダラー・ベイビー』の完全な圧勝。2位と3位の得票を全部足しても『ミリオンダラー・ベイビー』には及ばない!
『宇宙戦争』はなんと47位で、44位の『皇帝ペンギン』よりも低い!僕が高い評価をした『マラソン』には1票も入ってないのに、何故か『バンジージャンプする』が49位に入っている。
11位には『NANA』がランクインしている。
評論家ベストとは違い、読者ベストでは『ALWAYS 三丁目の夕日』と『パッチギ!』が逆転している。『亡国のイージス』が『男たちの大和/YAMATO』よりも高いのはちょっと意外。『男たちの大和/YAMATO』の公開時期が投票締め切り直前だったのが原因か。
よく映画ファンの間には「一番信用できる映画ベストはキネ旬読者ベストだ!」っていう意見があるけど、僕はキネ旬読者ベストは好きじゃない。
11位に『キング・コング』。
『シンデレラマン』の評価が非常に高いのが特徴です。
2006/12/11|▼この記事の直リンク先
日本の映画ベストの中でも特異な異彩を放つのが秘宝ベスト。そして僕がもっとも信頼を置いているベストです。
映画秘宝ベストは投票対象に制約がないために未公開作品がランクインします。4位と5位の『デヴィルズ・リジェクツ』『トム・ヤン・クン!』は投票時点では日本未公開作品です(2006年に公開された)。映画祭で上映した『トム・ヤン・クン!』はともかく、海外で観るかDVDを輸入するしかない『デヴィルズ・リジェクツ』が4位なのは驚異的。今年も『デヴィルズ・リジェクツ』に投票が集まると思うので、2年連続ランクインがあるかも?
『宇宙戦争』が2位に入っているのは偉いぞ映画秘宝!
邦画は一本のみで、やはり『パッチギ!』。
ベスト10圏外には13位に『ミリオンダラー・ベイビー』がある。秘宝ベストでは健闘したほうか。
15位には『ナポレオン・ダイナマイト(邦題:バス男)』。ふざけた邦題をつけずに劇場公開していればベスト10入りしていたかも。
ちなみに映画秘宝で一番評価が高い韓国映画は22位の『マルチェク青春通り』!流石だ。他のメディアが選ぶ作品(『私の頭の中の消しゴム』か『大統領の理髪師』)とは全く違う。
『戦国自衛隊1549』は僕は未見なので、ノーコメント。観に行かないで良かった。
『宇宙戦争』はベスト&ワースト共に高順位という怪挙を成し遂げている。
『エターネル・サンシャイン』がランクインしているのも特徴的。
余談ながら、映画秘宝は「映画界で死んで欲しい人間」というトンデモないのも集計しているんですが、2004年にもっとも死んで欲しい人に選ばれた人が2005年に本当に死んでしまうという事件が起きました。
1位はなんと『バットマン・ビギンズ』!秘宝ベストに入っていない作品が秘宝読者ベスト一位になるのは稀な現象だと思う。『バットマン・ビギンズ』は海外の雑誌でも一位を獲得している作品で、『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』や『宇宙戦争』の陰に隠れているけど、賛否両論の激しかった映画です。僕はどっちつかず。
『キング・コング』がランクインしていないけど、これは『キング・コング』が年末公開だったために、投票に間に合わなかったため。もし『キング・コング』が年末公開じゃなかったら、『キング・コング』がベスト3位以内に入っているのは間違いない。
秘宝はベストも読者ベストも『パッチギ!』が10位ギリギリで引っ掛かっている。もし『パッチギ!』が無ければ邦画が一本もランクインしていない状態になってしまうところだった。世間が騒ぐ「邦画ブーム」は秘宝には届いていない。
最悪映画には『宇宙戦争』。うーん秘宝読者なら理解できる人が多いと思ったんですが。
2006/12/13|▼この記事の直リンク先
『リンダ リンダ リンダ』が一位。これは他の映画ベストには無い傾向です。映画芸術はベストの得点からワーストの得点を引くという方法を取っており、『パッチギ!』はたった一人がワーストにもランクインさせています。もしワーストの得点を引かなかった場合は『パッチギ!』が一位な上に、『ALWAYS 三丁目の夕日』もランクインしてました。
得点の詳細を見ると、『リンダ リンダ リンダ』と『パッチギ!』の2本が得票を稼ぎまくって、三位以下に50点近く差をつけての圧勝。
『ALWAYS 三丁目の夕日』がワースト一位!ワースト発表時には映画芸術の掲示板に
「こんなに素晴らしい映画を貶すな!」
「『ALWAYS 三丁目の夕日』公式サイトの掲示板読め!」
「雑誌の宣伝のために『ALWAYS 三丁目の夕日』を貶しているでしょ」
といった抗議を、普段あんまり映画を観ない人たちが書き込んだために荒れていました。
他のワーストも納得なんですが、原一男監督作品の『またの日の知華』が入っているのが意外です。
得票方式の映画ベストでもう一つ有名なのがヨコハマ映画祭ベスト。特徴的なのは『NANA』が高く評価されていることですね。
映画芸術の荒井晴彦氏が2005ベストの際に、ヨコハマ映画祭のベストを批判しましたが、後でそれが勘違いからきていた批判だったことが判明。荒井晴彦氏が映画芸術誌面で謝罪するということがありました。
2006/12/14|▼この記事の直リンク先
今回は映画アイドル雑誌的なスクリーンとロードショーのベスト。アイドル雑誌的とは言え、執筆陣には名うての映画評論家たちもいるので、ベストのラインナップは納得。しかし読者ベストになると両誌共にとんでもないことに。
次点は『サイドウェイ』と『イン・ハー・シューズ』。
キネ旬の読者洋画ベストに近い。『アビエイター』がランクインしているのはスコセッシ好きが多いからかな?
スクリーンは俳優も得票をとります。もっとも得票の多い男優はジョニー・デップ、女優はヒラリー・スワンクが圧勝。ヒラリー・スワンクは2位のアンジェリーナ・ジョリーの3倍以上の票を得てます。
次点は『アビエイター』
選者のメンツが似ているのでスクリーン・ベストとあんまし変わらない。アメリカで高い評価を受けている『エターナル・サンシャイン』『サイドウェイ』がロードショー・ベストでも高評価。僕が好きな『そして、ひと粒のひかり』もランクインしている。
韓流があるかないかの違いだけじゃん。
2006/12/16|▼この記事の直リンク先
海外の最強映画情報サイト:IMDBのベストです。今は順位が変わっているかもしれません。
ハリポが一位。ダメだこりゃ。
第五位の『セレニティ』は日本未公開のSF映画。僕も観ましたが面白い映画です。破壊屋でも取り上げたい。
なんと『カンフー・ハッスル』が一位!でも『皇帝ペンギン』が三位っつーのはなぁ。
あれ?『SAYURI』が外国語映画としてランクインしているぞ?日本語のほうが少ない気がしたが。
『Paradise Now』は自爆テロを題材にした映画。アラビア語の作品としては珍しくアメリカで公開された。
まったくもって納得いかないのが中国映画の『2046』の高評果。『オールドボーイ』よりも高いってのはどういうことよ?
日本映画は『ハウルの動く城』のみで、韓国映画や中国映画よりも低いランク。実はここ数年、IMDB上でも韓国映画と中国映画が高い評価を受けている。IMDBのTOP250なんかその風潮が顕著です。欧米人の評論家の間でも一時期流行った日本映画研究が廃れ、韓国中国映画のほうが盛んに研究されるらしい。ちょっとちょっとぉ!こういう所ではもっと頑張ってよ日本映画!えーと今年輸出が話題になった日本映画ってゲド戦記にブレイブストーリーにUDONにデスノート。ダメじゃん。
『宇宙戦争』がワースト一位。
二位の『アローン・イン・ザ・ダーク』は日本での2006年ワースト洋画候補の一本。
『The Dukes of Hazzard』はテレビの『爆発! デューク』のリメイク。知らん。
『Deuce Bigalow European Gigolo』は『デュース・ビガロウ、激安ジゴロ』の続編。だから知らんて。
2006/12/18|▼この記事の直リンク先
2005年もっとも優れた洋画はキネマ旬報、スクリーン、ロードショーの三誌で一位を獲得するという快挙を成し遂げた『ミリオンダラー・ベイビー』で確実ですね。どの雑誌でも圧勝です。
2005年もっとも優れた邦画はキネマ旬報、映画秘宝、映画芸術という編集方針が違う三誌全てにランクインするという邦画グランドスラム(僕が勝手にそう呼んでいる)を成し遂げた『パッチギ!』ですかね。
ちなみに2004年のグランドスラムは『下妻物語』でした。2006年のグランドスラム候補は『時をかける少女』かな。
2番目に優れた洋画邦画ですが、これが難しい。各誌とも混沌としていて決定打がありません。
そして2005年でもう一つ驚異的な現象はもちろん『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』でした。映画評論家選出も読者選出も海外も国内もベストもワーストも全てにランクインしているという奇跡を成し遂げています。2005年映画界最大の事件はスター・ウォーズの完結であったと言えるでしょう。
ちなみにアメリカだと2005年もっとも高い評価を得ているのは『バットマン・ビギンズ』と『サイドウェイ』です(『ミリオンダラー・ベイビー』はアメリカでは2004年公開)。『サイドウェイ』はアメリカでベタ誉め状態だったのに、日本の評論家筋からはそこまでの反応が無かったですね。僕も『サイドウェイ』公開当時にこの温度差は気になっていました。人生をワインに例えるというヨーロッパ映画っぽい内容を、アメリカ産のワインでやっているのがウケたのでしょうか。
手前ミソながら各媒体のベストを破壊屋ベストと比較をすると、僕がベタ褒めした『バタフライ・エフェクト』『マカロニ・ウェスタン 800発の銃弾』『マラソン』はいずれのベストでも無視されている。『マラソン』は別にどうでもいいし、安易さがちょっと痛い『バタフライ・エフェクト』が評論家筋に嫌われるのはよくわかるんですが、『マカロニ・ウェスタン 800発の銃弾』がほとんど評価されていないのは不思議。僕の巡回サイトじゃどこも大絶賛の映画だったのに。
今回挙げた各媒体選定のベストに納得いかない人は、ぴあやオリコンとかが作るどーでもいいベストを参考にしましょう。
2006/12/19|▼この記事の直リンク先
2006年の各誌ベストを予想してみました。高順位が1位から5位で、低順位が6位から10位です。
イーストウッド三年連続ベスト1は起きないはず。その代わりイーストウッドの連作が両方ともランクインするかも。このベストは全部僕が鑑賞した作品なので、未見の映画でベストクラスの作品があるかも。特にシネフィル関係に。
『ミュンヘン』がどういう扱いになるか全く予想つきません…。
2006/12/21|▼この記事の直リンク先
気が早すぎるけど、2007年の自分ベストを予想しました。
『DOA デッド・オア・アライブ』、ゲームは知らんが予告編は傑作だ!自分を襲ってきた敵にブラのホックを留めさせるとこなんて最高!映画の出来自体はリュック・ベッソン作品とおそらく全く同じで、観るときっと失望するだろうが、本編なんてどーでもいいんだよ!こういう映画ってのは観る前にあれやこれやと期待している時が一番楽しい。
『グラインドハウス』はタランティーノとロドリゲスの共作。ロドリゲスが監督した部分の『プラネット・テラー』のポスターは超カッコイイ!すごく古い映画に見えるけど、よく見ると「2007」って書いてある。予告編ではこの足が大暴れするぞ!
『スパイダーマン』が童貞の物語で、『スパイダーマン2』がEDの物語だった。『スパイダーマン3』は一体何の物語になるんだ?『シュレック』『パイレーツ・オブ・カリビアン』『スパイダーマン』の2007年三大三作目作品対決の本命です。『バイオハザード』も3か。
『ブラックブック』はポール・ヴァーホーベン先生の新作。普通に面白いらしい。
『ボラット 栄光ある国家カザフスタンに利益を得るためのアメリカ文化学習』は各種メディアにも取り上げられているので、もう知っている人も多いかな?IMDBでは傑作扱いで2006年のベスト1になりそうな勢いです。
2006/12/25|▼この記事の直リンク先