何の因果か高級フランス料理店でフルコースを食べることになった。フルコースといえば吉野家で牛丼にサラダと半熟玉子をつけて食べることだと思っている僕には重すぎる話だ。精神的に重いが懐にも重い。
さらにお店がただのフランス料理ではない。三ツ星を受けたレストランだ。今調べたが、2006年に三ツ星を受けたレストランはたった26軒だそうだ。そんな超高級料理店なんて、大震災が起きた際に食料をかっぱらう時以外行くことなんて無いと思っていた。
今回は仲間内でフランス料理に行くことになったんだけど、このメンバーは女性の数のほうが少ないので、女性をエスコートする楽しみもない。何で行くことになったんだろう?こうなったらゲイのカップルにでもなるか。
まあでもそんなに臆することはないか。僕の取り得は映画の知識であり、映画の中にはテーブルマナーの描写も色々あった。それに僕はフランス映画が好きで、大学で第二外国語にフランス語を選んで一年間勉強したこともある。三ツ星フランス料理でも何とかなるはずだ!大体三ツ星だからって偉そうにすんな!破壊屋じゃあ三ツ星なんて普通の映画だっつーの!『イーオン・フラックス』でも三ツ星だっつーの!
高級レストランの映画と言えば、やっぱり『ブルース・ブラザーズ』だな!(『スカーフェイス』も)。ブルース・ブラザーズのレストランでの暴れっぷりは最高だ!それにウェイターがブルース・キャンベル(『スパイダーマン3』でピーターにフランス語で話しかけるオッサン)やタイラー・ダーデン(『ファイト・クラブ』で高級レストランの料理におしっこを入れている)だったら楽しいな!………ダメだ、映画の知識は役に立たない。それにフランス映画ってすげーつまらないから観なくなったんだ。今からテーブルマナーを勉強しないと。
そんでテーブルマナーに関するサイトをいくつか調べたが、どこのサイトの論調も 「そんなに緊張したり難しく考える必要はありません。お互い楽しむために相手を不愉快にさせないことが重要なのです」と書いているくせに、「あれはダメでこれはダメでこういうのが作法だ。」と細かく書かれていて大変に面倒だ。「童貞がセックスの勉強してるわけじゃねーんだよ!」とツッコミ入れたくなる。
結局サイトを調べてもテーブルマナーはよくわからん。まあソムリエに「とりあえずビール一本!」と言わなきゃ大丈夫だろう。フィンガー・ボールの水は飲んだほうが尊敬されるんだっけ?
しかしここで恐るべき自体が発生した。着ていく服が無い。
いや、当初は男友達がレストランに電話を入れて服装について質問してくれて、「穴あきジーパンとかでなければカジュアルな格好でも大丈夫」ということを確認したために、安心していた。
だけど「ちゃんとした格好で来なさい」と女性から注文があった上に、友人から「ちゃんとした格好でないと、サービスが落ちる場合もある」と脅された。ネット上を調べたが、やはりそういう事はあるらしい。ふざけんな!誰でも公平にサービスを受けられるのが、真のサービスじゃないのか!外国人客が来るとスプーンを差し出す吉野家のほうが立派なサービスじゃないのか!
そんな逆ギレを言ってもしょうがない。こうなったら普通にスーツを着ていくしか手が無いのだが、そのレストランは旅行で寄るのでわざわざスーツを持って行きたくはない。友人たちはジャケットを持っていくらしいが、僕はジャケットなんて持ってない。襟とボタンのある服なんてアロハシャツだけだよ!っていうか何でみんなジャケットを私服で持っているの?私服でジャケットなんてオシャレなゲイしかやらんだろ。もしくはヴェノムに取り付かれたピーター・パーカーくらいだ。
お手本にしているファッションがハーマイオニースタイル(ジーンズにパーカー)の僕には、長袖の服なんてパーカーしかない。しょうがないので友人にジャケットを借り、下は宝物のエビスジーンズで行くことにした。友達から服を借りる上にジーンズを合わせるなんて、映画に出てくるダメな主人公みたいで情けない。
2007/05/26|▼この記事の直リンク先