1997年のドイツ映画の傑作に『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』というのがある。 脳腫瘍で余命わずかのチンピラと末期ガンの普通の男が意気投合をして、病院から脱走する。その目的は「海を見ること」だった。ついでに強盗もやらかして警察やギャングに追われる羽目になる。という映画だ。
90分の短さに上手くまとまっているが、「この映画で好きなシーンは?」と言われれると、大量に思い浮かべることができるほど名シーンだらけの映画だ。僕が一番好きなのは畑に突っ込むカーチェイスのシーンだ。低予算映画でもセンスがあれば素晴らしいカーチェイスが撮れる良い見本だと思う。名曲「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」のカバーバージョンの使い方も抜群に良い。
主人公二人の関係は友情というよりも死への想いがロマンチシズムに変わって、そのロマンチシズムを二人で共有している感じ。いつ発作が起きるかわからない緊張感が全編に漂っていてそれも良い。でも悲劇の映画ではなくて、苦味をとことん強調している。映画の中で葉巻やテキーラが何度も出てくるんだけど、それらの味が映画に反映されているような感じだ。
この映画をよりによってフジテレビとジャニーズがリメイクすることになった。タイトルは『ヘブンズ・ドア』。これは観に行かないな。主演は長瀬智也で、相方は福田麻由子。男と女だと映画の意味がだいぶ変わって来る。アンジェラ・アキが歌う「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」のカバーバージョンは聞いていて頭が痛いし、脚本が大森美香というのも嫌だ(ヌルい話になってしまった映画版『デトロイト・メタル・シティ』の脚本家)。だいたい日本みたいな細長い国で「海行きたい!」と思ったら電車かタクシーで一発だろ。と思ったら「思い出の海」という設定になっていて場所が限定されているのか。
一年ほど前の飲み会で『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』のリメイクの話になった時に、深町秋生さんが
「それって難病モノだからリメイクしたんじゃない?」
とツッコミ入れたので爆笑したのを思い出した。そういえば『余命』『ヘブンズ・ドア』と余命モノが連発で公開される。GWには本命(?)の『余命一ヶ月の花嫁』も公開される。ジャンルが違うが『PVC-1 余命85分』も今年だな。
ちょっと前までは「男が病死」のパターンが多かったが、今は「女が病死」が流行っているのだろうか?
2009-02-06