デアデビル


    ハリウッド映画にはもうネタが無い、現在ハリウッドは深刻なネタ不足に陥っている。そのためかデアデビルなんて地味なアメコミまでもが映画化される事になった。
   デアデビル、それは幼い頃に産業廃棄物の毒液を被って目が見えなくなった主人公が、弱者を守るために悪と戦うという「悪魔の毒々モンスター」と似ているスーパーヒーロー。しかし彼は本当のスーパーヒーローではない。何故なら超人的なのは感覚だけで、戦闘はボクシングと東洋武術が人より強いだけ、別にX-MENのような戦闘能力を持っているわけではないのだ。だから彼は悪を退治するときもボコボコにやられて鎮痛剤を飲まないと眠れなくなる。さらに情けないことにデアデビルはコスチュームがダサい。宣伝ではデザインと製作に8ヶ月かけた、闇の正義を示す深紅のコスチュームとあるが、実際にはこげ茶のスタントスーツにしか見えない。そんな最高に地味なデアデビルの前に恐るべき敵が現れた。投てき(物を投げて攻撃する)の天才ブルズアイだ!ブルズアイも別に超人ではないただの殺し屋だけど、物を投げたら世界一(例:鉛筆)
   そう、映画「デアデビル」は目が見えないけど喧嘩の強いデアデビルガラスの破片を投げまくるブルズアイという、恐ろしく地味なスーパーヒーロー映画なのだ!


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デアデビルの誕生


    映画が始まった瞬間最低映画の「ジャッジ・ドレッド」と同じオープニングで、映画の出来が不安になった観客に、さらにカッコ悪いタイトルバックが流れてくる。それが終わると既に瀕死のデアデビルが教会の中に落ちて、いきなり素顔が見える。さらに彼は今わの際に人生の走馬灯を見る。
「死ぬ直前に人生を思い出すって本当だったんだ。」
   もはや不安しかない観客を他所にデアデビルの少年期が語られる。
12歳の頃のデアデビル(マードック)はいじめられっ子だった。何故ならボクサー崩れの父親が暴力団の手下をやっているという噂があるからだ。自宅に帰ったマードックは人生を捨ててしまった父親に問いかける。
「父さん、暴力団って本当なの?」
「おいおい、それはウソだ。暴力団なんてやってたら俺達は金に苦労していないだろう。」
と言いつつも実は暴力団だった父親。ある日マードックは父親が恐喝のお仕事をしている所を見つけてしまい、ショックを受けてオールAの成績表をわざとらしく落としながら(後で弁護士になれる伏線のつもりだろうか)逃げる。しかしその際に毒液を目に浴びて失明してしまう。失明したマードックは「別にいいさ」と父親を許し、二人で再起を誓う。こうしてマードックは苦学、父親は40過ぎでボクシング界に復帰というヘレン・ケラーの「奇跡の人」とガッツ石松の「カンバック」の世界が同時に展開する。ちなみに感覚と肉体が強くなったマードックはいじめっ子達を盲人用ステッキでボコボコに殴ったりもしている。
   スーパーヒーローものと言えば「スパイダーマン」の遺伝子操作のクモに咬まれて遺伝子に変化が起きたとか「X-MEN」の新人類としてのミュータント達が生まれてくる、のようにちゃんと特殊能力に説明がつくのだが、「デアデビル」は「視覚が無くなった代わりに他の4感覚が研ぎ澄まされた、私は感覚と肉体を鍛えた。」というナレーションだけで終わる。



    ボクシング界に復帰した父親。しかし彼は暴力団から八百長を求められる。そして八百長を断った父親は暴力団に殺される。父親の死体の横で泣き崩れるマードックは決意をする。
「僕は弱者の正義のために戦うぞ!どんな手段を使っても悪を裁く!」


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デアデビルの弁護活動


    成長して弁護士になったマードック。彼はレイプ事件を担当していた。被害者のために容疑者を断罪しようと意気込むマードックは
「みなさん正義(ジャスティス)は盲目です。しかし声は聞こえます。みなさんに正義の声を聞かせましょう」
なんてカッコいいこと言いながら速攻で裁判に負けて容疑者が無罪放免になってしまう。しかし容疑者の心音から彼が犯人だと確信したマードックは
「犯罪を認めないとジャスティスがお前のところにやってくるぜ」



   裁判に負けたマードックを同僚が慰めようとする。
「マードック、今夜は飲みに行こうぜ」
「今夜は用事があるからダメだ」
    マードックは家に帰ってデアデビルのコスチュームを着る。さらに彼の盲人用ステッキは実はヌンチャクだったのだ!でもこのヌンチャクは本編では使いません。
   マードックはデアデビルとなり、犯人であるレイプ犯がいる酒場に忍び込んだ。次のシーンでは犯人に見つかっているが彼は「ジャスティス!」と叫びながら殴りこみ、酒場は銃撃と暴力にまみれた阿鼻叫喚の地獄絵図となる。そして犯人以外の酒場のチンピラ全員を倒したデアデビル。犯人だけまんまと地下鉄に逃げていたのだが、結局デアデビルに捕まり地下鉄のホームから線路に突き落とされる。勝ち誇るデアデビル
「あの光が見えるか?あれは天国への光ではない!地下鉄の光だ!」
犯人は電車に轢かれて真っ二つになる。そしてデアデビルは自分の派手なロゴマークを現場に残していく。


レイプ犯が死ぬのはOKだけど、映画の宣伝で「彼には見えない悪が見える」と言っているのに、裁判で負けた相手を殺しているのは弁護士としてマズイのでは?


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デアデビルの女性の捕まえ方


    正義の裁きから帰ったマードック、彼は毎晩デアデビルの格好で街に繰り出してチンピラ達を問答無用でボコボコにしているが、何だかんだいって反撃も食らってしょっちゅうケガしているので体中傷だらけな上に、痛くて眠れないので鎮痛剤を愛用。今日のレイプ犯との戦いでも歯を折られていた。満身創痍のマードックだが、さらにマードックの正体と行為を知っている神父から
「お前のやっている行為は復讐だ。そして復讐は罪だ。暴力は暴力しか生まない。


それとコスチュームがダサいぞ」
と説教を食らう。ちなみに英語では「クレイジーだ」と言っているが、字幕では日本人観客の意思を読み取ってくれたのか「ダサい」にしてくれていた。


    別の日、マードックは同僚とレストランにいた。そのレストランに美人が来る事がなんとなくわかった自称正義の弁護士マードックは早速その美人(エレクトラ)をナンパ。突然のナンパに不機嫌になって立ち去ったエレクトラをマードックは匂いを嗅いで追いかける。マードックのストーカー行為に当然怒り始めたエレクトラの腕をマードックは無理やり掴む。キレたエレクトラは公園でマードックと蹴り合い殴り合いの喧嘩を始める。子供の頃からあらゆる格闘技を学んでいたエレクトラはデアデビルを相手に奮戦・・・と言いたいところだけど、僕はこれほど下手糞な格闘映画は見たことが無い。恐ろしいほど動きが鈍かった。
   エレクトラとの戦いは引き分けに終わったマードックだが彼女の名前までは聞き出せた。


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デアデビルの優先事項


    その頃暗黒街のボス、キングピンが大金持ちであるエレクトラの父親を暗殺しようとしてブルズアイを呼んだ。
ブルズアイ、恐怖の暗殺者、投てきの天才。彼が投げればどんな些細なものでも武器になる。宿敵の登場で映画は盛り上がりそうなもんだが、恐るべき暗殺者ブルズアイが酒場でダーツ投げてお金を稼いだり、絡んできたオッサンにクリップを投げたり、うるさいババアにピーナッツを投げたりしているので全然盛り上がらない。


    街で再びエレクトラ(の匂いを嗅いで)と再会したマードック、彼は自分の家にエレクトラを誘う。そのとき雨が降ってきた。マードックは雨の音の反射でエレクトラの顔を認識する。雨にうたれながら熱いキスを交わすマードックとエレクトラ。そのときマードックの聴覚に
「てめえ!切り刻んでやる!」
と何者かが襲われているのを聴きつける。しかしマードックがデアデビルだと知っているのは神父だけ。マードックは決意する。
「ゴメン!俺いかなきゃ!」
「何言ってるのよ、私達これからよ」

というわけでマードックは襲われている人を見捨ててそのままキスを続けた挙句、エレクトラと暖炉の前でセックスを始める。





デアデビル!ふざけんな!

憧れの女性に告白されても、あえて断った童貞のスパイダーマンを見習えよ!


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デアデビルの大失敗


    夜になったマードックは再びデアデビルになって、パトロール。
「私は悪人じゃない!」
と言いながら今日も街のチンピラをボコボコにして、街の子供を震え上がらせる。


    エレクトラと父親は一緒に車に乗っていた。そこへブルズアイが手裏剣で暗殺にやってくる。危険を察知したデアデビルも現場へ到着、ブルズアイは百発百中の手裏剣をデアデビルに投げるが避けられる。ブルズアイはデアデビルの盲人用ステッキを奪い、エレクトラの父親に投げつけ刺し殺す。父親の死体に突き刺さったデアデビルのステッキを見てブチ切れたエレクトラは、銃を拾ってデアデビルに連射、慌てて逃げ出すデアデビル。神父の元に帰ったデアデビルは今まで勝手に処刑していた事を反省する。
    依頼人であるキングピンの元に戻ったブルズアイ、そこで彼はキングピンから新たにエレクトラ暗殺の依頼を受ける。依頼は引き受けたが、百発百中の投てきを避けられてプライドを傷つけられたブルズアイは
「あのデアデビルも必ず殺してやる!




それと俺もコスチュームが欲しい!」



    エレクトラの父親の葬式、マードックは父の復讐を考えるエレクトラに
「復讐はやめるんだ、僕と一緒に暮らそう」


裁判に負けるとブチ切れて相手を殺す一晩共にしただけの男にそんなこと言われたくねーよとベン・アフレックに詰め寄りたいところだが、案の定エレクトラはその申し出を断る。


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警告:以下は宣伝を超える内容のネタバレです。
本編を楽しみにしている方は読まないように。


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デアデビルの最終手段


    父親を殺されたエレクトラは得意の武術でデアデビルに復讐を誓う。エレクトラは正義と勝利と力を意味する「強勝」というコスチュームを身につけ戦闘訓練をする。


そんな言葉ねえよ!


    エレクトラは彼女を保護しようとノコノコとやってきたデアデビルを見つけ、バトル開始。エレクトラに誤解を解こうとしてもらうデアデビルだが、隙をつかれてサイ(古代の武器)でエレクトラにグッサリと刺されて倒される。もしかしてデアデビルって弱い?
   挙句の果てにマスクまでとられるデアデビル。エレクトラは素顔のマードックを見て自分の誤解に気が付き、真の敵がブルズアイだと知る。そのときちょうど上手い具合にブルズアイが襲ってきた!
デアデビル「君は逃げるんだ、僕に君を見つけることは出来ない」
エレクトラ「私があなたを見つけるわ」
状況と一致していない愛の会話をする二人。エレクトラはブルズアイと戦うが適わずに殺される。そこへ警察が駆けつけてきたのでデアデビルもブルズアイも現場から離れる。


警察から何とか逃れて教会に辿り着いたデアデビル、


しかし瀕死の彼は力尽きて教会から落ちてしまう。


こうしてオープニングのシーンと物語は繋がった。


人生の走馬灯を全て見終わったデアデビル。





神父に抱きかかえられもはや最後か・・・


だがそこへ再びブルズアイ襲来!


絶体絶命のピンチに遂にデアデビルは最後の手段を使う!!








「神父さん、警察呼んでください!」



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デアデビルの一難去ってまた一難


    ヒーローとして超えてはいけない一線を超えたような気もするデアデビル。 だがさっきまで走馬灯を見ていたデアデビルは突然元気になって、ブルズアイと教会で最終決戦!ブルズアイが次々と投げつける灰皿や手裏剣やガラスの破片(最終決戦の割にはしょぼい)を鮮やかにかわすデアデビル。だがブルズアイはデアデビルが音に敏感すぎることに気が付き、一生懸命教会の鐘を突いたり、パイプオルガンを響かせたりする。再び互角の状況になるデアデビルとブルズアイだが、そのとき神父さんが呼んできてくれた警察のスナイパーが二人を狙撃!弾丸を察知したデアデビルはかわせるが、ブルズアイは何よりも大切な手のひらを打ち抜かれる。
「うぎゃー俺の手がー!助けてくれー」
と泣き叫ぶブルズアイをデアデビルは「よっしゃチャンスだ」とばかりに引きずって行き、教会の屋根から突き落として下を走っている車にぶつける。ブルズアイを殺すつもりだったのか?


デアデビル全然反省していないじゃん。


    またブルズアイのセリフから真の黒幕(そして少年時代のデアデビルの父親を殺した男)がキングピンだという事を知ったデアデビル。そして同じ頃キングピンの部下はブルズアイが倒された事を知って焦っていたがキングピンは余裕の雰囲気で
「護衛とか帰ってもいいよ。俺、実は強いから」


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デアデビルのシリーズ化への手回し


    デアデビルは決着をつけるためにキングピンのビルへ殴り込む!2連戦する体力が残っているなら恋人を見殺しにするなよ!(ネタ提供:銀幕三十郎さん)。侵入シーンはカットされていきなりデアデビル対キングピンの直接対決。結果は本当に強かったキングピンがデアデビルを倒す。そしてデアデビルはキングピンにまたマスクを剥ぎ取られる(劇中3度目)。
「ああ、お前はあの弁護士か!」(キングピンとマードックは以前パーティーで出会っている)
    ヒーローとして最悪の屈辱を受け、止めを刺されそうになったデアデビルの脳裏にエレクトラの「私があなたを見つけるわ」という言葉がよぎる。その言葉により「そういえば水が反射すれば相手の像が見えるようになるんだった」ということを思い出したデアデビルは部屋の水道管を破壊。キングピンの動きを見切ったデアデビルはあっという間に逆転勝利。
「12歳の頃からこの日を夢見ていた」
とデアデビルはキングピンを殺そうとするが、わざと攻撃をはずす。
「何故殺さない?」
「警察がお前を逮捕するから」
「デアデビルの正体をバラしてやる!」
「そんな事できないさ、だって盲人に負けたなんてバレたら刑務所で殺されるだろ。」
滅茶苦茶な理論で自分の秘密が守られる事を確信するデアデビル。

「俺の権力を使えば、俺は直ぐに刑務所から出られる。そのときこそお前を殺してやる。」
「ああ、待ってるぜ」


スイマセン、僕には
「今度は続編で合おうぜ、そのときまた戦おう。」
「ああ、お前を殺したらシリーズ化されないからな」
にしか聞こえません。


    こうしてキングピンは警察に逮捕された。
    マードックの元にはもしかしたらエレクトラが生きているかもしれません(女優のギャラが折り合えば続編で再登場するかも、あとスピンオフも進行中)という嬉しい証拠が手に入る。こうしてマードックは再びデアデビルとなって次なる戦い(続編)に向かう。


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最後に


    今回のデアデビル、散々「地味」とか「ショボい」とか馬鹿にしたけど実は製作者側はわざとやっている。もちろん製作費を抑える目的もあるのだろうが、デアデビルとはX-MENやスパイダーマンのような強力な戦闘能力を持つキャラでは無い。盲人であり、弁護士であり、自らの肉体を痛めつけ、自分の行っている正義の矛盾に苦悩しながらも戦う複雑で高度なヒーローなのだ。そしてこの映画はその辺りを描くのに完全に失敗している。ただし一番地味な設定のブルズアイがコリン・ファレルの怪演のおかげで際立っています。はっきり言って裏主人公と呼んでも過言ではありません。
    大体僕が共感できるヒーローとはバイトと学業の両立に悩みながら、人助けもヒイヒイこなしているけど、本当の悩みは惚れている女の子の事で、私生活はうだつのあがらないボンクラのスパイダーマンなのに。(ここで”達”つけんじゃねえ!とか俺は共感出来ないねとほざける人は立派です。)


    映画の演出にも疑問があがる。バンバン宣伝のネタになっている「レーダーセンス」だが、はっきりいって僕には画面にフィルタ系の特殊効果をかけただけにしか見えなかった。パンフレットには科学的かつ生理学的なアプローチで、リアルでありながらもファンタスティックに映像化と適当なことが書かれている。さらに写実的な三次元のビジュアルとも書かれているが、目が見えないのに何で写実的なんだよ!(これは海外でもつっこまれていた)
   大体日本だったら20年以上も昔に寺沢武一が「視覚と聴覚が入れ替わった戦い」を表現しているぞ。

03/04/12



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