トランスポーター


    リュック・ベッソンというフランス人がいます。彼はアメリカB級映画と香港映画をパクりまくって、フランスで縮小再生産なおかつぬるま湯のようなコメディにした映画を連発する製作者兼脚本家です。 みなさんは彼が90年代映画界においてQ.タランティーノの次に時代の寵児となったことを覚えているでしょうか?今の彼の姿からは想像も出来ません。
    彼が製作脚本(この時点で駄作決定)を担当した新作「トランスポーター」はプロの運び屋が主人公という、流石ベッソン21世紀の映画とは思えないです。これでは古臭いアメリカB級映画から進歩ないです。大体運び屋とは「多くの悪党が狙っている大量の現金を無事輸送する」「警察の目をかいくぐり、違法入手した宝石を届ける」「人類滅亡クラスの危険な細菌をどうやって運ぶ?」というプロットだからこそ面白いのに、「依頼品、開けちゃいけないけど開けたら美女だった、彼女を守ろう」ってベッソンは相変わらずバカですね。運び屋ものの最高傑作にして映画史に残る不朽の名作「恐怖の報酬」(今観ても面白いのでお薦め)を作ったフランス人だとは思えません。


っていうかさ・・・

「レオン」
孤独な殺し屋が、美少女と出会い、彼女と恋愛感情を持つ仲になり、悪徳刑事から彼女を守るために戦う


「フィフス・エレメント」
元軍人のタクシー運転車の車に、美女が空から降ってきて、彼女と愛し合い、悪の組織から彼女を守るために戦う


「WASABI」
昔愛した女性を忘れられない孤高の刑事に、実の娘のコギャルがいたので、親子として愛し合い、ヤクザから彼女を守るために戦う


「トランスポーター」
やっぱり元軍人の運び屋、依頼品がたまたま美女だったので愛し合う、そして人身売買組織から彼女を守るために戦う




ベッソン、お前は何回同じプロットを使い回しているんじゃ。







すいません、もうちょっと前置きさせて


    この映画の宣伝では「運び屋には3つのルールがある。」と煽ってます。その内容は
1:質問はしない
2:依頼品は開けない
3:その2つのルールを破ったときは



私はこのキャッチコピーを見た時質問しただけで殺されるのかよとツッコミ入れました、ゴルゴ13より怖えよ。案の上この3つのルールは大嘘で、正確には
1:契約変更はしない
2:名は伏せる
3:依頼品は開けない

   というものです。でもベッソン、この場合は「依頼品は開けない」ではなくて「依頼品は詮索しない」が正しいと思いますがね。さらに言うと本当の運び屋だったら依頼品は把握すると思いますが。薬品なのか、危険物なのか、麻薬なのか、武器なのか、人間なのか、警察から逃げる危険な仕事なのか、警察に怪しまれないようにする安全運転の仕事なのか。
   そしてプロの運び屋フランクは愛車のBMWを駆って危険な依頼品を正確に運送するのです。でも警察に追われるのに同じ車を使い続けていたら簡単に捕まると思いますがね。現実の運び屋だったらアシがつかないように依頼人が適当な車を用意するでしょうに。まあハリウッドよりもご都合主義を尊重するベッソンの映画ですから。

   と鑑賞する前からツッコミどころ満載ですが、本編はもっと滅茶苦茶でした。流石に「WASABI」よりはマシでしたが。




警告:というわけで以下では映画を詳しく
解説していますが、アクションシーン以外
は見所が何も無い映画なので読んじゃって
構わないかも。


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本編の説明です


    プロの運び屋フランクは地下駐車場で準備をしていた。今回の依頼は武装強盗を逃がすこと。彼が地下駐車場から遠く離れた銀行に向かうと、時間通りに銀行強盗達がやって来る(ベッソン、強盗が始まる時間は正確に判明しても強盗が終わる時間は不正確だと思いますが)。鳴り響く警報の中、フランクのBMWに逃げ込む4人の強盗達。
強盗「さあ、早く俺達を逃がしてくれ!」
フランク「嫌だ」
強盗「何でだよ!」
フランク「依頼時は合計体重254キロって聞いてたのに、一人増えて重くなっているじゃないか」
強盗「いいから出せよ!」
フランク「車が重いからサスの調子が悪くなって逃げ切れる自信が無い」

    オープニングからして、一体お前のどこがプロの運び屋なの?と映画の設定が崩壊していることが判明。いつまで経っても銀行の前から逃げようとしないフランク。遂には人も集まってきたので、強盗は仕方なく仲間を一人撃ち殺して車載重量を減らす。フランクはようやく逃亡開始。しかし銀行の前でぐづついていたので警察にも簡単に追い付かれる。追い詰められたフランクはBMWを橋からジャンプさせて(どうやってBMWをジャンプさせたのかは不明)、トレーラーの上にBMWを着地させる、そして何とかパトカーを振り切る。後ろからは警察官が「待てー」と走りながら叫んでる、ほとんど銭型じゃん。こうしてフランクは武装強盗を無事逃がした。フランクに正義感無し。






バカ出陣


    仕事を終えたフランクはニースにある自宅へ戻る。自宅でくつろぐフランクの元に地元警察の警部がやってくる。
警部「強盗のニュースを見ただろ?犯人は99年型のBMW735だ。それにニースでBMWを乗るのは、隣に若い女を乗せたイタリアンマフィアくらいだ。でもお前はBMWを持っているのにそういう奴でもない。・・・・・・・・・・・・・・・まあでもナンバープレートが違うからお前は犯人じゃないか。」
お前警部やめちまえ。っていうか警部が単独で聞き込みっておかしくないですか?ハリウッド映画好きの観客ならここで"警部が怪しい"と疑うぞ。 さらに
警部「俺は人間の元の職業に興味がある。」
フランク「俺は元軍人だ。」
という不自然な会話でフランクの過去がわかる。
    警部が去ると新たなる依頼の電話がフランクにかかってくる。フランクはバーでマフィアから仕事の打ち合わせをする。マフィアからの依頼内容は
マフィア「荷物は縦150センチ、横50センチ、重量50キロ未満、受取人は・・・」
フランク「言うな!ルールだ!名は伏せろ!」


名前伏せるのはお前だけじゃなくて受取人もかよ! それじゃ運び屋出来ないじゃん! 受取人が偽者だったらどうするんだよ! しかも今回は自宅に届けるので名前伏せる意味一切無し。フランクはペリカン便よりもクロネコヤマトよりも劣る運び屋であることが判明。
    とにかく熱心に依頼内容をメモにとっていくフランク、メモをとり終わると「俺は仕事が緻密だから」とメモを燃やす。だったらメモるなよ


    こうしてフランクはどう見ても中身は人間の荷物を受け取りGO!、「運び屋だから法廷速度は守る」としつつも途中万引き。道交法守ってても、万引きで捕まったら運び屋失格だと思いますがね。




うんでもって依頼品いきなり開ける。これじゃあ郵便局のほうがよっぽど安全だ。






どこがプロの運び屋だ


    依頼品の中身は拘束された美女(こいつがヒロイン)だった。ヒロインはギャーギャー騒ぐだけの女で、「トイレ行きたい」と言い出すとフランクはヒロインの首に縄をかけて「さあ小便して来い!1分以内だ!55、54、53・・・」
私はリュック・ベッソン独特のこのような女性の描き方(扱い方)が大嫌いだ。この直後にも水着を着た女性が髪の毛捕まれ振り回される意味の無いシーン有り。


    当然ヒロインには逃げられるフランク、崖から落ちたヒロインを無理やり捕まえてBMWに戻ると、交通機動隊2名がBMWを不審者として調査していた。だからフランクは運び屋辞めろって!
    とりあえずフランクはヒロインを投げて交通起動隊員2名を倒す。倒した起動隊員とヒロインをトランクに詰めて(入るのか?)目的地にたどり着く。っていうか何故起動隊員を誘拐するの?警官誘拐って大事件じゃん。
   マフィアのボスの自宅に着いたフランクは、暴れる人間一人が入っているバッグを片手で持って受取人のマフィアのボス(ボスの名前はウォール街)に引き渡す。ウォール街はフランクが依頼品を開けた事を察知して「信用できない」として車に爆弾を仕掛ける。ってそんな派手な方法を使わずにその場で殺せよ。爆殺だと足取りつくし、報酬の2万ドルも消えちゃうだろ!それとニースなんだからドルじゃなくてフランかユーロなのでは?
    BMWに爆弾を仕掛けられたことに気が付かずに運転するフランク、たまたま喫茶店で休憩をとっていた時にBMW大爆破。怒りに燃えるフランクはウォール街の自宅に戻り(車を無くしたフランクがどうやって戻れたのかは不明。)、インターフォンを鳴らした後にドアを蹴りでぶち壊す(意味なし)。 フランクはウォール街の子分を次々に殺していく、ちなみにマフィアは銃ではなくて斧で反撃してくる、その斧はベニヤ版に色塗ったようなものなので笑えます。
   その頃イスに手足をしばりつけられていたヒロインは、その格好のままメルセデスベンツの中に逃げる。



手足をイスに縛られている人がどうして車のドアを開け閉めできるんですか?







ベッソンと女


    たまたまそのメルセデスベンツにフランクも逃げ込んでくる。フランクはメルセデスベンツを直結させて運転開始、木製のシャッターと木製の鉄門(意味がわからない人は本編を観てください、ちなみにシャッターも門も同じデザインです。)をぶち壊してウォール街の自宅から脱出する。


    でもどうしてドイツが生み出した世界最高の安全水準を持つ名車メルセデスベンツが直結できるのよ、しかもエアバッグついていないし。この映画の原作は特攻の拓ですか?
    逃げる途中で、後部座席にイスに縛られたままのヒロインがいる事に気が付いたフランクは、カーブの真中までヒロインを引きずって放置(轢き殺されるだろ)。しかしそれはいくら何でもと思ったのか結局ヒロインを車に乗せて自宅に連れて帰る。



何で自宅に連れて帰るの?

   助けたいのなら拘束を解いて開放すべきだし、敵の情報を知りたいわけでもないし(ヒロインが教えようとすると「ぶっ殺すぞ!」と脅す)。 何故フランクがヒロインを自宅に連れて帰るのかサッパリわかりません、監督も脚本も演技もフランクの心情変化を一切描いていません。まあリュック・ベッソンは"バカ女の扱いに困る強い男"というプロットでしか恋愛感情を描けないバカ男なので仕方ないですね。
    フランクに拘束を解かれ、フランクの自宅内で眠ることにしたヒロイン。夜中に彼女が起き出して棚を調べると(何故調べるの?)たまたま棚からフランクの軍隊時代の勲章や写真が落ちてくる。こうしたベッソンの不自然な脚本によって登場人物にもフランクの過去が伝わる。


    次の日の朝、フランクに散々ひどい目に遭わされたヒロインは何故かフランクに惚れていて「マドレーヌ作ったわよ、食べる?」「お花を摘んだわ」「私がミルク取ってきてあげる」と突然かいがいしい女に変身。
   つまりベッソンにとってのファム・ファタール形式とは「突然俺の元に美少女がやってきて、俺は困っているのに俺にベタ惚れで、俺と一緒に生活してくれる」ということ。


   はっきり言って私はこのような日本の秋葉原に生息しているオタク共と全く変わらないリュック・ベッソンのヒロイン論が大嫌いだ。






バカたちの戦い


   朝食の最中にフランクの家に再び警部がやって来る。
警部「やあ、君の車が大爆破して中から警察官の死体が2体出てきたんだ、心当たりは無いかね?」
フランク「特に無いです。車は盗まれたんです。あとで盗難届出しておきます。」
警部「そうか、じゃあな」
お前警察官辞めろ


    警部が返ったあとに、フランクの自宅内でフランクとヒロインが喋っていると、けたたましかった虫の鳴き声が止んだ。
フランク「おかしい、静かすぎる」
   そのときフランクの自宅に敵襲。どうして虫の鳴き声が止むのかは不明。そして追尾ミサイルが飛んできてフランクの自宅に着弾!ただし一体何を追尾しているのかは不明。 ちなみに予告編ではこのミサイルをお盆でかわすシーンがあったが本編ではカット、理由は不明。激しい爆発と銃撃戦の中、パニックになるフランクとヒロイン。さらに3人の男がフランクの石造りの家を狙って外からマシンガンを乱射、彼らは何がしたいのか不明。でもマシンガンは分厚い石壁を撃ち抜いてフランクとヒロインを正確に狙っている。でもどうして3階建ての窓がほとんど無い家で、人間の居場所がわかるのか不明(ミサイル撃っているから熱感知もできないはず。)。さらに敵は自宅正面から銃撃しているのに、家の中では360度から着弾しているのも不明。なぜフランクとヒロインが家の裏口から逃げ出さないのかも不明。


    意味不明だらけの銃撃戦の中、敵はさらにミサイルを撃ち込んできた。フランクとヒロインは家の中から海につながる水路に飛び込む、水路を潜った奥深くには酸素ボンベが置いてあり(酸素ボンベは水路の入り口に置くもんでしょうが!)、とどめのミサイルが飛んできたときにフランクとヒロインは水路から海に脱出。そのままフランクの別荘へ逃げる。ダイビングで泳げる位近い距離に何故別荘があるのかは不明、ちなみに私服だったフランクとヒロインは別荘に着く頃には何故かダイバースーツを着ています。フランクとヒロインは別荘でダイバースーツを脱ぎながら、服まで脱いでそのままSEX。私はリュック・ベッソンほど男と女が描けない映画人を見たことがありません。




    その頃、ウォール街は病院へ忍び込んで、フランクの手から唯一生き残った部下の治療室に向かう。そして部下から事情を聞いたあとに、口封じのために重症で動けない部下の口に、無理やりハンカチを突っ込んで窒息させる。抵抗する部下、しかしウォール街は冷静に心電図を見ている。ピッ・ピッ・ピッ・ピーーーーー。そして遂に部下は窒息死して心停止する。



心停止したらナースセンターにコールが入って看護婦か看護士が飛んでくると思いますが?

いや、一応劇中で説明はつきますが無理です。




警告:以下は宣伝を超える内容のネタバレです。

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バカの考えたビジネス


    フランクとヒロインは警察署に出頭する。でもそこらへんのアパートをロケして警察署と言い張ってるだけですが。
警部「お前の家が焼かれ、6000発の薬きょうが落ちていた。それでも心当たり無いのか?」
フランク「ああ、無い。散歩していたからな。」
警部「誰も見ていないところで?
フランク「ああ」
警部「じゃあ別にいいや。家が無くて困るだろう、ホテルを用意してやるよ。」
お前警察学校からやり直せ

    警部が一瞬席を離れた隙に、ヒロインは警部のデスクトップから警察のデータベースにハッキング、ウォール街の個人情報を入手する。フランクとヒロインは警察署から出るが、フランクはこの事件から手を引こうとする、そんなフランクにヒロインは協力を求める。
ヒロイン「コンテナに400人の中国人が閉じ込められているの、その中には私の姉妹達もいるわ。コンテナの番号を知っているのは私だけ。あなたは軍人だったのでしょう、彼らを助けて」
フランク「もうごめんだ。俺は過去を捨てた。必至に戦っても政治の都合で利用されるだけだ。」
ヒロイン「でも今は違うわ、私がいるわ」
噛み合わない会話によって説得されたフランクは、ウォール街のオフィスに忍び込む。その頃警察署ではヒロインがハッキングしたときのウィンドウを消していなかったので警察にハッキングがばれる。


    ウォール街のオフィスで、ウォール街を拘束して拳銃で脅してコンテナの場所を探ろうとするフランクとヒロイン。そこへヒロインの父親が現れて事件の全容がわかる。中国人であるヒロインの父親は、中国人400人をコンテナに詰めフランスへ送り、人身売買組織のウォール街に売り飛ばすのだ。そしてヒロインは彼らを救出しようとしていた。


    リュック・ベッソンは人身売買と密入国がごっちゃになっていますね、400人をコンテナに詰めて中国からフランスへ船旅させて売り飛ばすなんて出来るわけ無いじゃん。日本でよく起こる事件は彼らが日本に密入国を望んでいるから可能なのですし、例え彼らが望んでも400人は絶対に無理です。そもそもフランスにどういう需要があって中国人400人が売れるのですか?そんなプロットが成り立つほどフランスは病んでいるのですか?

っていうか父親はヒロイン以外の自分の娘を全部売り飛ばすのですか?







ヒロインも事件を解決したいのなら警察に通報しろよ



    まあリュック・ベッソンのプロットが崩壊しているのはいつもの事ですが。






バカ達の決戦


    ウォール街のオフィスでヒロインは父親に捕まり、フランクはあっさりやられ、そこへたまたまやってきた武装した警官隊(何故?警部は調べに来ただけでは?)にフランクは逮捕される。
留置所で目覚めたフランクの元に警部がやってくる。
フランク「400人の中国人が閉じ込められているんだ。俺を逃がしてくれ、彼らを 助けるには俺しかいない!俺なら数時間で解決できる!」
警部「じゃあ好きに逃げろ」
お前人を疑うことを覚えろよ。


っていうか調書と令状とればこの事件解決するだろ!という全世界のツッコミをものともせずにフランクは警部を人質にとって警察署を脱出(フランス映画ファンがバカにするハリウッド映画なら、この辺りの説明はきちんとつけてくれるのに・・・)。次のシーンでは警部のボロ車で警察を振り切っていた。省略し過ぎ。フランクは途中何故か聴診器を調達してくる。この聴診器はコンテナを一つ一つ調べて人が詰まっているコンテナを探すために必要だったのだ。そんなことするならやっぱり警察の手を借りろよ。
    港まで向かったフランクは港に係留してある自分の小型ボートに乗り込む。そして小型ボートに置いてあったマシンガンや爆弾で武装(絶対に錆びてるだろソレ、っていうか何故そんな都合のいいところに武器があるの?)で武装、ボートで敵の倉庫に乗り込む。そして何故か聴診器は消えてフランクは警備兵をマシンガンで銃殺。銃声を聞きつけた敵が大勢やってくる。もうフランクが人を救いたいのか、人を殺したいのかサッパリわからん。そこへウォール街がやってきてフランクとクンフーで一騎打ち、フランクはあっさり倒される。
   どうでもいいがフランクとウォール街が何故クンフーの達人なのかの説明が一切無いです。フランクは元イギリス軍特殊部隊だという説明がついていますが、イギリス軍特殊部隊ならレスリングとボクシングでは?(詳しくないけど)
    またその頃ヒロインの父親は賢明にヒロインを説得していた。
父親「お前には何10万ドルもかけて英語を学ばせたのに何故感謝してくれない!」
フランスで事業やってるんだからフランス語では?(注:フランクを演じているのはイギリス人役者で、ヒロインは元イギリス領の香港で活躍していたので仕方は無い)

    ウォール街は中国人を乗せたコンテナをトレーラーに乗せて目的地へ目指す。でも目的地がどこなのかは説明が無い。っていうか中国人400人で何がしたいんだよ!さらに父親はヒロインを車で運ぶ



じゃあ運び屋いらないじゃん。


    何とか復活したフランクはトレーラーに飛び移るが、やはり敵に追われたので橋からバスに飛び降りる。バスが倉庫に入って止まったときに、また大勢の敵がやってきたので今度は停車中のバスの中で激しく戦う。バスの運転手はどうした?多くの敵がフランクを殺そうと狙ってくるが、フランクは敵を殺さないようにクンフーで応戦、不利になったときは流石に隠し持っていたナイフを使うが、けっして致命傷を与えようとせずに、足を刺したり、わざとはずして敵の戦意を喪失させるのみ。こうして誰一人命を奪うことなくフランクはバスの戦いに勝利する。







って今までお前何人殺してるんだよ!


同じ映画で趣旨変えるなよ!


10分前に警備兵射殺してるじゃねえか!







想像を絶するほどアホなクライマックス


    バス車内の敵を全て倒したら今度は、バス倉庫に大量の敵がやってくる。大勢の敵を相手にしたフランクは機転を利かせて、倉庫内をオイルまみれにする。こうすると敵は歩けず滑って転ぶのみ。フランクは寝たままの体勢からクンフーを発揮して敵を倒す(ギャグです)。 大方の敵を倒すとまた新たにマシンガンで武装した敵がやってきた(このパターン飽きた)。敵はマシンガンをオイルまみれの床に向けて乱射するが、別にオイルは着火しない、フランクはオイルの上をスーパーマンのように滑るとその先は都合よく海(そんなところにバス倉庫はないだろ)。海に逃げこんだフランクだったが、敵は海にオイルを少し流してマシンガンを撃ち込むと今度はオイルに火が着く。別にフランクは潜ってるだけだが、敵は死体も確認せずに引き上げる。


    海から上がってきたフランクは車を手に入れて(どうやって?)、とっくの昔に出発してしまったトレーラーコンテナを猛スピードで追いかける、 どうしてフランクがコンテナの行き先を知っているの?


コンテナに追いつく直前にエンストしてしまったフランクは車を捨てて、突然空を飛んでいる飛行機を走って追いかけ始める。意味がわからない人は本編を観てください、私の書いていることは真実です。しかも飛行機よりも早く走ったりします。


    着陸した飛行機に徒歩で追いついてハイジャックしたフランクは、コンテナにも追いついて突然スカイダイビング。高速道路を高速走行しているトレーラーの上部に着陸する。しかも前からではなくて後ろからトレーラーに追いついている、時速何100キロでパラシュートしなければ不可能な芸当です。この時点で大量の力学を完全無視しています。


    トレーラーの運転席を奪って運転手を蹴落としたフランク、最後のカーチェイスが始まる。後方からヒロインの父親が銃でフランクを狙うが、後ろから狙っているので当然運転席には当たらない。ゆったりと後輪を狙えよ。


   
しかしいつの間にかウォール街が運転中のフランクの運転席に突撃してきた!


高速走行するトレーラーの運転席で遂に始まるクンフー最終決戦!


フランクとウォール街の壮絶な足技対決が炸裂する!





誰がアクセル踏んでいるのですか?







そして映画は終わる


    フランクはウォール街をトレーラーから蹴落とし、ウォール街はトレーラーにずたずたに轢き殺されて死亡。またヒロインの父親はヒロインを車に乗せたままフランクを銃撃していたのだが、フランクに運転手を倒されて、高速道路で事故っていた(もちろんヒロインも巻き添えに)。フランクにヒロイン助けるつもり無し。
    トレーラーを止めたフランクの元へどうやってだかは知らんが、さっき事故ったはずの父親が銃を突きつけてフランクをホールドアップする。その場でフランク殺してさっさと逃げろよという世界中の観客の声は無視され、わざわざ森の中まで連れて行く。さらに父親とフランクは歩いて崖まで行く。フランクは反撃用に石を拾うが、この石は結局使わない。私も長いこと映画ファンやっていて、"前半で張った伏線を後半で回収していない"映画は数多く観てきたが、30秒前に張った伏線を回収しないのはベッソンだけです。断崖に立たされるフランク。観客には父親がフランクを崖から突き落としたいのか、撃ち殺したいのか区別つかないので緊張感は盛り上がらない。登場人物だけが勝手に盛り上がっているうちにヒロインが父親を射殺。多分ベッソンは観客の意識を石に引き付けて、ヒロインの射殺の意外性を引き立てようとした(ミス・ディレクション技法)のでしょうが失敗ですね。そしてトレーラーの中から解放された中国人たちが出てきて映画は終わる。


   通常の映画だったらラストで例えば、
”主人公とヒロインが一緒にいるところを写して、二人が一緒になることを暗示して終わり。”
”または主人公とヒロインが自らの道を歩む決意をして、二人は一緒にならないことを暗示して終わり。”
”もしくは続編への伏線を張って終わり。”
などの映画文法として最低限常識のことをやるのだが、バカのベッソンは省略してしまった。この映画の場合、フランクを助けるために父親殺しをしたヒロインのフォローと、孤高の男だったはずなのにヒロインと愛しあったフランクのその後への暗示が絶対に必要なはずだろ!もう頼むからリュック・ベッソンは2度と脚本を書かないでくれ。



ところでヒロインってどうしてフランクの荷物だったのですか?







最後に


    今回も「WASABI」と同じでボコボコにしましたが、映画が思いっきり楽しめる分「WASABI」よりはずっとマシです。私は映画館で爆笑してきました。今まで懸命に批判してきたリュック・ベッソンが勝手に自滅してくれたばかりか、こっち側の世界にまで来てくれて嬉しいです。演技陣は全員酷いですが、ジェイソン・ステイサムも頑張ればカッコいいし(ただしあのシャツは最悪)。製作、脚本がベッソンという時点で失敗作というのは決定していますが、ベッソン組は全員映画の才能が無くて、この映画の監督と共同脚本家は一体何故映画の仕事をしているのか不明です。
    他に特筆すべきはカーアクションのショボさで、カットを短く連続して繋いで、フィルムを早回し、安物の車はチョロっとクラッシュするけど高級車は傷すらつかないという「TAXi」シリーズと同じ安っぽさで面白み無し。高級車も派手に吹っ飛び、一流のスタントマン達が決死をかけ、相当な労力をかけロケするハリウッド映画の足元程度です。
    特に高級車に対する配慮は苦笑もので、BMVは橋から落下しても傷一つつかず、メルセデスベンツが突っ込むシャッターや門は全部木製。しかも突っ込んだベンツはフロントダクトが曲がるのみ。クライマックスの制御不能となった高級車が木にぶつかって事故るシーンでは車を傷つけないように、木にぶつかるシーンと、木にぶつかって止まるシーンを省略しただけでも笑えるのに。木にぶつかって壊れた車も用意していなかったので、単に木の前で停止した車にしか見えません。
    また香港映画出身の監督を採用したクンフーシーンは確かに面白いですが、やはりジャッキーに見慣れた私達には物足りないし、銃殺したりクンフーで戦ったりで統一感無いし、何よりパクリだしね・・・(ネット上では斬新!とか誉められているが)。
    最悪映画の類ですがあまりのバカっぷりが楽しめるのでオススメです。
03/02/14




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