『マスク』は確か僕が中学生だった頃に公開された映画です。弟と一緒に『マスク』を観て「ハリウッドはジョジョの実写化に成功した!」と喜んでいた記憶があります。その後弟とは『マトリックス』の時でも全く同じ会話をしたけど。『マスク』が大ヒットするのと同時にジム・キャリーが大ブレイクしたものですが、『エース・ベンチェラ』(アメリカでのブレイク作)が日本では完全無視されていたのもよく覚えています。
『マスク』以降数年間の間は「マスク2作るぞ!」のニュースが何度か流れたけど結局毎回お流れ。10年以上経ってキャストもスタッフもほぼ全員降板して続編の『マスク2』が作られました。
何も心躍らない予告編を観るたんびに異様なまでのつまらなさを感じていたので、まあきっと一生観ることの無い映画だろうと思っていました。しかし何気なくIMDBを見ていたら…『マスク2』が映画史上のワースト10に入っている!『トルク』『ローラーボール』『バトルフィールド・アース』といった数々の伝説を『マスク2』が超越していた。さらに海外サイトを調べてみると、映画の評価は悪口というよりも、何かこう殺気めいた雰囲気になっている。この殺気は去年アレで感じた空気と同じ…そう『デビルマン』公開時の雰囲気と一緒だ!これは僕が目撃せねば!
ということで観に行ったんですけど、観終わって実際困ってしまった。つまらない映画を『ここがつまらなかった』と笑い飛ばすのは簡単なんだけど、笑えない映画を『ここが笑えなかった』と笑い飛ばすのは難しいんだよ。
『マスク2』の原題は『Son of the Mask』で『マスクの息子』という意味。ストーリーはこんな感じ。アニメーター学院を卒業してアニメ会社に就職したはいいがアニメを製作する仕事には就けず、着ぐるみを着て会社内をうろつくバイト君のような存在になってしまった主人公。結婚はしているが子供は欲っしておらず、それが原因で妻と意見が食い違ってしまう。
しかしある日犬が拾ってきたマスクを被り超人に変身。普段は避妊をしていたがマスクをハメたまま妻とハメて中出しすると精子が緑になった。妻は寝ぼけていたので主人公がマスクになったことを知らずにヤラせていて、主人公も中出しを覚えていなかった(ちょっとこれは問題では?)。その結果妻は子宮内でマラカスを振っているフリークスな胎児を受胎。出産した赤ん坊は超人的な力を秘めているマスクの息子となった。ちなみに主人公はマスクを既に無くしているので、今後はマスクを被った犬とマスクの能力を持った赤ん坊の殺し合いが展開する。
『マスク2』の欠点の一つとしてマスクの設定を間違えているというのがあります。「1だとマスクは夜しか効果が無い設定だったのに、2だとマスクはいつでも効果がある!」というのは映画の壺のネタか。『マスク2』が本当の意味で間違えているのは、「マスクを被ればその人の性格が変わって大暴れ、何もかもがパーティ状態になってしまう」という設定をヤメてしまった所にある。その結果CGで動く不気味な赤ちゃんとそれにビビる父親のコメディという、特に『マスク』である必然性を感じない物語になってしまった。
また『マスク2』は美術と撮影とCGのセンスが非常に悪い。セットはまるで三流遊園地。プラスチックや発泡スチロールなどといった素材の要素がそのまま伝わってくる小道具の数々は、東急ハンズのパーティーグッズコーナーと全く同レベル。赤ちゃんの手や足や首や耳がミョンミョン延びる特撮は観ていて気持ち悪い。また撮影はコメディ映画とは思えないほど画面に影が多く常に暗い。カメラの動きも意味不明だし、台詞を喋っている俳優の顔は必ずドアップにする。
劇中パロディネタがあるんだけどそれもつまらない。パロディってのはピクサーの映画のように、元ネタ知らない人でも『何か面白いことやってるな』って思わせるくらいの事やって欲しいんですが、『マスク2』だとこんなシーンになっている。
自分の子供が異常な力を持っていることに気づいた主人公が「今から小児科に連れて行く、それがダメなら悪魔祓い(エクソシスト)だ!」と言うと、赤ん坊の首がグルグル回りだす!いや、それ確かにネタとしては面白いけど、女性観客は悲鳴を挙げていたぞ!あ、でも赤ん坊抹殺計画の決め台詞が「ハスタラビスタ・ベイビー」(あばよの意味、シュワちゃんの決め台詞)なのが劇中唯一ウケたギャグだ。
脚本や演技も全然ダメ。主人公の[「最初はダメな夫だったけど子育てを通じて立派な父親になる」]というプロセスがまるで表現されていないし、それが神の力を[普通に手で止める]シーンに繋がる意味もわからん。[「宇宙で一番大事なのは家族の絆」]などという保守的な戯言が出てきて無理矢理映画をまとめるのも不愉快だし、マスクの息子が[モーションキャプチャー用の俳優になるというオチ]もつまらん。
そして『マスク2』の最大の欠点は全く笑えないという点にあります。『マスク2』のギャグは、マスクの力でおしっこが洪水のように出るとか、鼻水が洪水のように出るとか、ゲロが洪水のように出るといった幼稚園児レベルのギャグ。ギャグがつまらないだけじゃない、コメディセンスというものが存在していない。だから主人公が妻を怪人と間違えてしまい、妻に襲いかかるシーンは本当のドメスティック・バイオレンスに見える。マスクを被った主人公が会社のパーティでエルビス・プレスリーのを歌うシーンが、スパイダーマンになった破壊屋管理人が上野公園の花見でレギュラーのあるある探検隊をやるのと同レベルに見えてしまう。爆発すると髪の毛にパーマがかかるとか、雷が落ちると骨が透けて見えるなどというマンガ描写が臆面もなく登場し、それを観た観客達のテンションがどんどん下がっていく雰囲気は、まるで寒いギャグで凍りつくというマンガ描写を見ているようだった。
2005/04/17|▼この記事の直リンク先