以下はネタバレを隠していません
このシリーズは「続編になる度に面白くなる」という珍しいパターンですね。ヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカーが主役を張った1はあんまし面白くなかった。でもヴィン・ディーゼルが降板した2はそれなりに面白かった。さらにポール・ウォーカーが降板して主役がいなくなった3が『ワイルド・スピード』シリーズ中最高傑作。
潜入捜査官VS組織強盗&マフィアという派手、かつありがちなプロットを持つシリーズでしたが、本作は舞台を日本に移したうえに主人公は初登場の高校生。話の規模がとことんスケールダウンした上に、登場人物全員が性格に二面性というものを持っていないため極めて薄ぺっらい物語になっています。しかしそのショボさと薄さが、トーキョーでガイジンたちがクルマに乗って暴れまくるというこの映画唯一のテーマを際立たせています。
以下ストーリー解説。
- アメリカでストリート・レーシングをやってた主人公。このシリーズの主人公の割には運転が下手なのでいきなり事故!
- 主人公はこの手の事件は既に3度も起こしていた。事故を起こすたびに住んでいる州を変えて少年院から逃げていた。だが今回は母親が
「もうあなたのために生活を変えたくないわ」
とごもっともな判断をしてしまった。そこで主人公は少年院から逃れるために日本へ。
- 日本に到着した主人公、在日米軍の軍人である父親の元へ行く。しかし父親は息子を放っておいて日本の風俗を堪能していた。
- 父親と同居することになった主人公。ここで映画は東京の住宅の狭さをひたすらアピール。隣の家のテレビの音が聞こえたり、部屋がやたら小さかったり、家に廊下が無かったり。うんざりする主人公。
- 実は高校生だった主人公。日本の学校は制服を着なきゃいけないことにうんざり。
- 「学校へは7時の電車に乗れ」
と父親は適当なアドバイス。東京の路線事情でそんな台詞はありえん!
- 何とか学校に着いた主人公。日本の学校はスリッポン(上履き)を履かなきゃいけないことに驚く。
「UWABAKI!UWABAKI!」
- 高校のお昼はアメリカと同じ学食制度だった!豪華絢爛な日本料理が出てくるが
「材料が何なのかは知るな」
とアドバイスされる。どーいう意味だよ。
- 同じ高校に通う黒人のダチが出来る主人公。ダチと一緒に日本名物式駐車場へ!ダチの車のセンスの悪さに唖然とする主人公。僕はカッコイイと思ったんですけど。
- 主人公とダチは早速立体駐車場へ。そこでは大量の日本のギャルたちが露出の高い格好で集まっていた。初めて「日本に来て良かった」という笑顔を見せる主人公。
- 立体駐車場で、D.K.という日本人と出会う主人公。早速D.K.と喧嘩になる。ガイジンへの偏見剥き出しのD.K.に、主人公は
「レースになら勝てるぜ!」
と気を吐く。お前日本に来たばっかだから車持ってないだろう。 - しかし何故かD.K.の配下であるハンという男が車を貸してくれた。いや「ハン」ってお前日本人じゃないだろ!でも劇中映画のキャラとして成立しているのはこのハンだけ、ハンさんかっけーよ!
- ダチ「お前あいつが何でD.K.って呼ばれるか知らないだろ?」
主人公「ドンキー・コング?」
ダチ「ドリフト・キングだよ!」
主人公「ドリフトって何?」 - レースが始まる。スタートの合図は妻夫木聡で役名はExceedingly Handsome Guy(究極の男前)!すごい名前だ!ついでにBGMはアタリ・ティーンエイジ・ライオット。
- ドリフトを知らない主人公は最初のカーブでいきなり事故!
- 主人公のボロ負けでレースは終わった。ハンから借りた車もボロボロになった。主人公は弁償のためハンの舎弟になることに。
- ハンの命令で借金の取り立てをすることになった主人公だが、取り立ての相手はKONISHIKIだった。当然返り討ちにあう。
- 散々な目に遭いながらハンのアジトに向かった主人公。ハンのアジトは美女が一杯。主人公は「舎弟で良かった」というような笑顔を見せる。
- 美女だらけのアジトにはダチもいた。ダチは
「日本の男は美女に声をかけないから楽勝だぜ」
と豪語する。どーでもいいけど、こういうギャグでイチイチ「国辱だ!」って怒りだす心が狭い人っているよね。
- ダチはチョコレートを配って日本の女を釣ろうとする。国辱だ!戦後じゃないんだぞ!
- ちなみにアジトの美女たちの寝床はカプセルホテルのベッドだった。日本狭すぎ!
- ハンの狙いは調子こいてるD.K.に一泡吹かすことだった。そのためにハンは主人公にドリフトを教え込む。主人公はマッド・カプセル・マーケッツを流しながらひたすら練習。
- 車の改造には金が必要、というわけで主人公とダチは日本の路上でモノ売りしてお金を稼ぐ。
- ハンは主人公と一緒に、D.K.に上納金を支払いに行く。D.K.やその配下の悪役たちは鋭い眼光で主人公を睨みつける。しかし舞台が日本ということで、悪役は日本茶を飲んでいるのでイマイチ迫力に欠ける。
- その悪役の一人、モリモトは主人公と同じ高校に通う高校生だった。
- 主人公の父親は、日本で生きるコツを主人公に伝える。「日本の諺にデルクイワウタレルというのがあってな…」
- 主人公が学校に登校するとモリモトがダチをボコボコにしていた。どうやらダチがモリモトに売ったiPODが壊れてしまったようだ。
デルクイワウタレルということで主人公は自分のiPODをモリモトに渡し「これで勘弁」とその場を収める。弱いぞ主人公!これ本当にワイルド・スピード・シリーズなの?
- 主人公とハンには奇妙な絆が生まれていた。主人公はハンに聞く。「どうしてドリフトをやるんだ?」。そこでハンは若い女性の乗った車を見つけ、その車の周りでドリフトをキメる。10周くらい。ドリフトというかスピンに見える。そうすると若い女性は紙に書いた電話番号を渡してくれるのだ。思わず納得してしまう主人公。でも紙に書いた電話番号ってところがアメリカ映画らしい。今の日本じゃ考えられんが。
- 上記のシーンはパンフレットでも解説がある。
「ギャルのクルマにブツけず途中でスピンせず、電話番号がもらえるくらいカンペキにキメるには熟練が必要だね。」
月刊「ドリフト天国」編集長(この文章は書いた人のギャグです)
- 渋谷東急ビルの屋上で、主人公はハンに
「どうしてこの街にいるのか?」
とたずねる。ハンは
「オレがこの街にいるのは、アメリカの犯罪者がメキシコへ逃げるのと同じだ」
と説明する。よくわからねえよ!
- 主人公は同じ高校に通うオーストラリア人のナタリーをディナーデートに誘う。ディナーは自動販売機からファーストフードが出てくるヤツ。
-
話がそれますが、本作がデビューのナタリー役の女優、インタビューで
「私は娯楽映画じゃなくて社会派映画に出たいです。昔から『ホテル・ルワンダ』や『スタンドアップ』に興味がありました」
と言ってるが、両方とも最近の映画じゃん。
-
主人公は
「ほらオレ、ファーストフードにケチャップをかけないぜ。これならガイジンっぽくないだろ!」
とギャグを飛ばすが、ナタリーに
「私、子供の頃日本人にガイジンって苛められたわ」
と言われて気まずい雰囲気に。
- さらにナタリーは幼い頃に母親と一緒に日本に来たこと、母親は自分を育てるために歌舞伎町で身を削って働いて死んだことなどを話す。
- それを聞いた主人公は
「オレも母親と一緒に住所変えてばっかりだったよ…」
それはお前が悪いからだろう。一緒にするな。
- ヤクザの親分がD.K.に会いに来る。ヤクザの親分の正体とは…千葉真一だった!今まで調子こいていたD.K.もビビリまくり。
- 日本人キャラも英語を喋りまくるこの映画において、千葉真一だけはベラベラと日本語で説教!そのあまりの迫力にD.K.は泣き出してしまう。
- 千葉真一は何故かようわからんが、ハンが売上金をくすねている事を見抜いていた。怒ったD.K.はハンの元に行き、事実を問いただすとハンはあっさりと認める。
「オレがいなきゃD.K.、お前は喫茶店のシノギ代しか稼げないんだぜ!」
- ハンと主人公はそれぞれ車に乗ってD.K.から逃げようとするが、主人公のクルマの前にモリモトが立ちはだかる、が主人公はそのままクルマでモリモトを跳ねる。
- まだ生きていたモリモト、彼もクルマに乗ってハンと主人公を追いかける。その結果主人公の危険運転の甲斐もあってモリモト事故死。お前ら同じ学校の生徒なのに…
- D.K.はまだハンと主人公を追いかけてくる。高速度でかっとばす3名3車だが、目の前には人がごった返す渋谷駅前のスクランブル交差点!主人公、ハン、D.K.はドリフト走行で人の波かき分けスクランブル交差点を突破する!!(このシーンが最初のクライマックス)
- しかしD.K.の攻撃によりハン爆死
- 散々な目に遭った主人公は電車と徒歩で家に帰ることにした。だが家の前には銃を持ったD.K.が!
- でも主人公のお父さんも銃を持っていたのでその場は何とか収まった。何とかじゃねえよ、ここは日本だよ!
- 事故を起こした上にヤクザと揉め事を起こした主人公は、もう日本にいられなくなる。
- 主人公は歌舞伎町の風俗街に行く。そこには特攻服を着込んだ暴走族がたむろしていた!誰もバイク持ってないけど。
- 主人公の目的はヤクザの千葉真一に会うことだった。主人公はハンが形見で残してくれた200万円をヤクザに渡してしまう。
- 主人公は
「D.K.とレースさせてください!負けたほうが街を出る!」
色々あったけど、レースに勝てれば全て解決するらしい。
- どう考えても主人公に有利で、D.K.に不利なレース話だが、千葉真一の鶴の一声でレースをすることが決まった。
- しかしハンのクルマは全て押収された。残っているのは事故車だけ。主人公にはクルマが無い。
- そこで主人公はアメリカ軍基地に置いてあったボロボロのムスタングを用意する。そしてムスタングの中身に事故車の日産シルビアのエンジンを載せる!こうして主人公のクルマ完成!ところでこのとんでもないシルビアムスタングについて、誰も言及していないのは何故なんでしょう?
- 最後のバトルは峠の下りレースだった。ギャラリーたちはみんな携帯電話の動画でレースを見守る。
- 主人公とD.K.は最初こそはドリフトの腕を競っていたが、途中からお互いクルマをガンガンぶつける普通のカーアクションに。その結果D.K.のクルマが崖から落ちて主人公の勝利が決定。
- 千葉真一が
「お前は自由だ」
と宣言する。
- 再び立体駐車場。主人公に新たなる挑戦者が現れた。挑戦者はアジア最強のドライバーらしい。最初は対決に乗り気ではなかった主人公だが、挑戦者がハンの大切な仲間だったと知って、挑戦者と勝負する決意をする。その挑戦者の正体とは…なんと[ヴィン・ディーゼル]だった!
- レースの開始と共に主人公と挑戦者のマシンが走り出す…
「この映画に出てくるドライビングは決してマネしないでください。」
という字幕が流れて映画は終わる。
2006/09/29|▼この記事の直リンク先