アメリカの郊外の住宅街を舞台にした人間ドラマ。オススメの一本。この映画のストーリーは、非日常的な展開にはならず、日常で起こりうる物語だけが展開する。
この映画の登場人物は全員「しょうもない大人」である。観客は登場人物全員の性格に嫌な部分を見つけてしまうし、全員の境遇に感情移入してしまう。例えば主軸となるケイト・ウィンスレットの不倫の物語の場合、「不倫」が理解できない人でも、夫からの現実逃避として不倫に走るケイト・ウィンスレットの心情は誰でも理解できる。でもケイト・ウィンスレットが子供に対してぞんざいな態度を取るところを見ると眉をしかめてしまう。このバランス感覚が非常に上手い(ケイト・ウィンスレットは本作で激しいラブシーンにチャレンジしている)。
特に観客の心に強く残るのは「元・性犯罪者」のキャラである。アメリカでは性犯罪者が出所すると、その情報が地域に公表されるため、彼の情報はみんなにバレバレ。彼は地域から凄まじい嫌がらせを受けるので、彼の母親が辛い思いをしている。この「元・性犯罪者」が子供たちのいるプールに行くシーンの演出は圧巻(予告編でも観れます)。そして観客が執拗な嫌がらせを受ける彼や母親に同情すると、今度は「やはりこいつは危ない変質者だ!どうしようもない!」と思わされる。
もう一人特徴的な登場人物に、この性犯罪者に対して「ムキッー!」となって猛攻撃している人間がいる。自分勝手な正義感を振りかざし、自分が正義だと思いこんでいるため、自分の嫌がらせに何の疑問も持っていない。「ネット上ってこういう身勝手な正義ばっかりだなぁ、自分も含めて」と素晴らしい反面教師になってくれるキャラである。
こんな風に『リトル・チルドレン』は、登場人物の心情を観客に共感させながら、時おり突き放して人間の未成熟な部分を浮き彫りにする。
なおこの映画は、ほとんどのシーンでキャラとキャラの関係が1:1になっている。だからどうしたというわけでも無いんだけど、キャラを集合させないで盛り上げていく手法はやはり上手い。
「しょうもない大人たち」の中、一人だけ完璧なキャリア・ウーマンを演じるのがジェニファー・コネリーで、劇中「よくいそうな女」ケイト・ウィンスレットと「完璧な美女」ジェニファー・コネリーが比較されるシーンはかなり笑える。
ただ一つだけ気に食わない点があって、それはナレーション。ナレーションを使っている映画自体、あまり好きじゃないんだけど、この映画のナレーションの使い方はよくわからなかった。
2007/07/24|▼この記事の直リンク先