以下はネタバレを隠していません
いつも映画に関する貴重な情報を教えてくれる常連さんが教えてくれたトンデモ映画。ネタにするつもりで観に行ったら想像以上のトンデモっぷり。
『ストーン・カウンシル』はフランス映画で、ジャンルはミステリー。出演しているのはモニカ・ベルッチとカトリーヌ・ドヌーヴ。フランスの新旧大物女優が対決しているんだから、フランス国内ではそれなりの大作である。この映画はフランス映画祭に出品された以外、マスコミ試写も行われなかったらしい。公式サイトも無いし、宣伝を見た事も無い。僕は公開初日に鑑賞したが、映画館はガラガラだった。
『ストーン・カウンシル』の致命的な欠点として、演出と脚本と編集がメッチャ下手糞というのがある。よく映画ファンが「編集がダメ」とか評しているけど、まあ普通の人には「編集がダメ」というものがどういう事なのかよくわからないと思う。でも『ストーン・カウンシル』を観てもらえば「編集がダメ」というのがよくわかる。「ヒロインの周囲には、ヒロインに惹かれる男と、同居人の女性がいて、ヒロインの元夫は時々復縁を迫ってくる」←という特に複雑でもない基本設定が、グダグダの脚本と編集のせいで、まるで観客に伝わって来ない。
また超自然現象を扱っているのに、そっち系の描写に工夫が全く無いのも酷い。神秘的な設定に説得力を持たすために、神秘的な映像を作るみたいな努力を一切していない
これより下でラストシーンまで全部解説。
- 物語のヒロインはお母さん(モニカ・ベルッチ)。お母さんは不妊症だったが、捨てられたモンゴル系の赤ちゃんを養子にして息子とし、その息子を深く愛していた。
- 息子が7歳に成長したある日、お母さんは車を運転中鷲に襲われて事故を起こしてしまう(この事故は車がガンガン跳ねているのに、車の中のカットでは全然揺れていないので笑えるシーン)。
- 息子は瀕死の重傷を負うが次の日には直っていた。さらに息子は謎の言語で喋るようになっていた。お母さんはその言葉をアジアの言語だと思い、アジア系の学者に調べてもらったりしていた(アジアっつったって広大で多様なんだよ!とツッコミを入れざるを得ない)。
- そうこうしている内に、息子が誘拐されてしまった。実は息子は特別な存在で(←台詞でしか説明が無い)、息子を殺した者は不死の存在になれるのだ(←これも台詞でしか説明がない)。
- 息子を誘拐したのは秘密組織「ストーン・カウンシル」だった。ストーン・カウンシルのメンバーは、お母さんの主治医、同居人女性、元恋人、養子縁組してくれたおばさん等などだった。つまりお母さんの周辺人物はみんな敵だったのだ!
- お母さんは警察に行く。そこでは息子の情報は入手できなかったが、お母さんは警察署に置いてあったモンゴルの伝説のナイフを盗む。
- ストーン・カウンシルの偉い人であるカトリーヌ・ドヌーヴは、不死の命を狙っていて、そのために息子を誘拐したのだった。
- カトリーヌ・ドヌーヴが言うには、人間の魂は動物になれるらしい。何故なら科学と矛盾することは現実に起こるからだ。それが一体何の説明になっているんだ?魂という抽象的な存在がどうして動物という具体的な現象になれるんだ?『未来少年コナン』の最終回か?どにかく交通事故を起こした鷲もカトリーヌ・ドヌーヴだったわけだ。
- 息子にまつわる衝撃の事実にお母さんは深く悲しむ。だがお母さんは、息子が捨てられた頃から持っていたアクセサリーが、ロシアとモンゴルの間にある湖の形と同じである事に気がつく。お母さんは、パリで誘拐された息子がその湖に連れて行かれたと推測したので、その地に赴くことにした。
- 湖周辺の地域はロシアの核事故で放射能汚染された場所だった。お母さんはロシアの軍事施設に侵入するが、ストーン・カウンシルに捕まって施設内に幽閉されてしまう。しかし軍事施設はあまりにもボロボロ過ぎて、女の力でも叩いて壊れるような場所だった。お母さんはコンクリートを素手で壊して軍事施設を脱出した。お母さんは漫画『バキ』に出てくるキャラか?(←でもモニカ・ベルッチの必死の演技もあって微妙に感動できるシーン)。ついでにお母さんは、見張りをしていたモンゴル人をブッ殺した。このシーンは「ヒロインが人殺してもどーせ相手はアジア人だから」的な製作者側の計算が働いていて怖い。
- 何とか息子を救出したお母さんだが、カトリーヌ・ドヌーヴが熊に変身して襲ってきた。ドヌーヴ・熊には銃弾すら効かない。そこでお母さんはモンゴル族の伝説のナイフで熊と戦って熊を倒す。こうして息子は助かった。しかしお母さんは具合が悪くなって倒れてしまう。何故具合が悪いかというと軍事施設内でお母さんは被爆したからだ。
- その時画面が切り替わり全裸のお母さん(ボカシ尽き)と全裸のモンゴルのおじいちゃんが出てくる。おじいちゃんが何か呪文を唱えると、全裸のお母さんの体がビクビクっとなって放射能は消えた。
- こうしてお母さんも助かったが、例のモンゴルのおじいちゃんが実は30年前に死んでいたという台詞がでてきて、わけわからん。この現象は一応伏線が貼ってあったんだが、余計に混乱する伏線だった。
- ラストシーン。モンゴルの大地にさらにストーン・カウンシルのメンバーが集まって、息子が「怖いよー」と怯えて終わる。ブラックエンドかよ!(続編への伏線のつもりらしいが、普通そこで終わらせるか?)
雑誌「ぴあ」の『ストーン・カウンシル』レビューで「音響が凄くて響いた」と書いてあったけど、それは映画じゃなくて映画館の仕様だ。『ストーン・カウンシル』を上映した地下映画館の銀座シネパトスは、近くを通る地下鉄の音と震動が響いてくる。サスペンス映画だとかなり怖い。
2007/07/31|▼この記事の直リンク先