2005年は最後までベスト1を何にするか相当迷ってました。思い切ってベスト1は無しにしようかと思っていましたが、それほど期待していなかった『キング・コング』が激燃えの傑作。2004年の『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』に引き続きピーター・ジャクソン監督作品が2年連続でべスト1という結果になりました。(しかし映画評論家の石上三登志氏は4年連続ピーター・ジャクソン監督作品がベスト1です。僕はまだ甘い)。
劇中「怪獣映画なんてB級だ!」という自虐的な台詞がありますが、とんでもない!映画とは本来見世物です。怪獣だろうがUFOだろうがプレデターだろうがヴァンダムだろうが最高の見世物を作って観客を楽しませることが映画の本質なのです。そして「世界第8番目の不思議」と呼ばれたキング・コングこそがその最高の見世物なのです。
懸念事項だった「21世紀にゴリラと美女のラブストーリーは無理があるのでわ?」という点も、コングとアンの関係が”恋愛”ではなくて”無償で想いを相手に注ぐ”という意味でのラブストーリーになっていたのが良かったです。つまりコングとヒロインの関係が、ザンパノとジェルソミーナになっていたわけですね。ええもちろんコングがジェルソミーナです
(ザンパノとジェルソミーナ:映画史に残る名作『道』の主人公達。粗野で暴力的になザンパノに無垢で純粋な愛を注ぐジェルソミーナ、しかし本当に哀れなのは…)。
いや確かに途中まではコングとアンの関係が、
「どうしてよ!どうしてアナタのことをバカにしていたワタシを助けたのよ!」
チンピラに刺された傷の痛みを堪えながら、悲しい顔をするヤクザ。
「アンタはオレが惚れた女だ。惚れた女を助けるのが男さ。あばよ、アンタは堅気の世界に戻りな」
ヤクザは夕日に向かって歩き出す。
「待ってー!アナタのことを誤解していたわ!私も連れてってー」
というような任侠モノ風の関係になっているのですが(いやマジでこんなシーンがあるんだって!台詞は僕が勝手に付けたしたけど)、後半になるとその関係がまさにザンパノとジェルソミーナになります。コングが無垢で純粋な想いを美女に注ぎ、美女はそれを知っていてながら彼を彼を破滅へと導く…
…いや、はっきり言って美女とコングの物語なんてどうでもいい。船員たちの描写も結構おざなりだった。人間主人公のエイドリアン・ブロディも意外とマッチョな動きをしていたがそれもどーでもいい。『キング・コング』が傑作たる理由はコレ↓だ!
主人公は時々突然ブラックアウトしてその時の記憶が無くなってしまう病気の持ち主だった。そこで主人公は毎日日記を書くことにした。主人公の周囲の人々は皆廃れていたので、色々と事件の多い青春時代を過ごす。やがて主人公は都会に引越し、記憶喪失の癖もなくなりボンクラ大学生になった。そんなある日主人公は久し振りに自分の日記を読んで、青春時代を思い出そうとするのだが………。
実は父親も同じ病気だった。そして父親は無くした記憶を取り戻す方法を知っていたが、その後精神病院に入院した。つまり主人公が記憶を思い出そうとすると、精神に大ダメージを喰らう程のトンでもない現象が起きる!そして観客もその現象を一緒に体験するのだ!
2005年もっとも「この映画のどこが面白いんだよ!」と周囲やら掲示板で突っ込まれた映画であります。ホラーなのかコメディなのかラブストーリーなのかSFなのかさっぱりわからない強引な展開で精密さに欠ける脚本の映画ですが、伏線マニアの僕にはたまらない。むしろ伏線さえ貼ってあれば何をやってもいいとも思っているので、この強引さが逆にたまらない。無理矢理スティグマ(聖痕)を作るシーンとか最高に面白いと思う。
この映画はSFとして言われているけど、それは少し違うと思う(差し替えられたという真のラストシーンは確かにSFだが)。僕は『バタフライ・エフェクト』のSFは、藤子・F・不二雄が提唱したSF(すこし、ふしぎ)だと思います。ですからこれは[タイムマシン]の映画じゃなくて[タマシイムマシン]の映画になっているというわけ。ハリウッドの実写映画でここまで『ドラえもん』魂を感じさせる映画は無かったです。
スペインの人情コメディ映画…と簡単には括れない作品。息子の死によって家族と断絶したスタントマンのおじいちゃん。おじいちゃんは映画撮影用のウェスタン村「テキサス・ハリウッド」で観光客相手にスタントショーをやって細々と稼いでいた。しかしある日テキサス・ハリウッドに何も知らない孫がやってきて…。
どう考えても孫によって断絶した関係が修復される筋書きにしか思えないのですが、そーいう展開にはならない。これは映画村という虚構の世界で生きるアウトロー達の生き様を、愛情と笑いをタップリに描いた作品です。
しかし物語は後半で大きく変わっていきます。虚構のアウトローだった彼らが本物のアウトローになる時がくる。800発の銃弾の意味がわかる大騒ぎのクライマックスは、映画の中の彼らも観ている僕達も映画バカだからこそ最高に楽しい。
「この映画は右翼でも左翼でも無い!」という意見があるけど、これは『スターシップ・トゥルーパーズ』と同じ右翼ギャグの映画だと思います。『チーム★アメリカ/ワールドポリス』はバカ映画と呼んで済ます事ができないほどあまりにも右翼ネタをやり過ぎている。だからこそ面白い。この映画のアラブ人差別や反戦運動を踏みにじる行為は全く笑えないのに、それをやってしまっている事自体が面白い。異様に長いゲロのシーンが異様に長かったり、人形たちのセックスの体位が豊富すぎたりするのもそれと同じ。やり過ぎているからこそ面白い。
「これって笑っていいのだろうか?」と不安になりつつもとりあえず笑い続けるしかない。悪意がタップリなのはわかるがその悪意を論じてもしょーがない。恐るべき映画です。
でもうちの国だって『愛国戦隊大日本』ってあったよな。
またブラッカイマー映画の文法を再現するとそれだけでギャグになるという、当たり前のようでありながら誰もやろうとはしなかったアンチテーゼを含んだ作品でもあります。
2004年は『シルミド』『殺人の追憶』『オールドボーイ』『ブラザーフッド』などといった、物騒かつ死人が一杯出る韓国映画が多くて充実していたんですが…。2005年最高の韓国映画は真っ直ぐな感動作でした。
評論化筋では2005年最高の韓国映画は『大統領の理髪師』という事になっているようです。確かに『大統領の理髪師』も優れた作品ですし、韓国でしか成し得ない作品になっています。対して『マラソン』はどこの国でも同じような映画が作れそうです。でもやたら大げさな感動を押し付けてくる最近の風潮の中では、『マラソン』の持つ小さな感動のほうがずっと光っています。
この映画は知的障害者は心が純粋な人として描き、クライマックスでは彼の純粋な心から[ファンタジー]が生まれるくる。時代遅れのような映画ですがそうじゃない。心が純粋という事が社会に馴染めず周囲に迷惑をかけていく様子も描いていく。綺麗事や戯言を排し、知的障害者を家族に持つという事に向き合う映画の姿勢が実に素晴らしい。その厳しさから逃げなかったからこそ、クライマックスで[ファンタジー]の世界が展開することが許される。
まあ多くの人が今「何で宇宙戦争がベストなんだよ!」と憤っているでしょう。思いっきりボコボコに批判されている映画です。絶賛しているのはいくつかの秘宝読者系のサイトのみでした。映画秘宝でも『宇宙戦争』がベスト二位とワースト二位の両方を取るという快挙を成し遂げています。もし映画秘宝ベスト一位(キング・コング)と、ワースト一位(戦国自衛隊1549)が無かったら、ベストとワースト同時獲得という偉業(?)を成し遂げていた所でした。そこまで決定的に評価が分かれている…というよりも一部の人(オレだよオレ)が熱狂的に褒めている作品です。
映画作家に対する認識の違いをこれほど感じた作品は久しぶりです。まあ単に「有名なスピルバーグなら愛や興奮とか感動が詰まった凄い娯楽映画を作るはずだ!」と思っていた人たちと、「俺たちのスピルバーグなら死や死とか死が詰まった凄い地獄映画を作るはずだ!」と思っていた人たちの差なんですけどね。さらに言うと後者がストーリーに全く文句をつけないのも大きな認識の差を生んでます。
僕にとっての『宇宙戦争』は何といってもスピルバーグの演出テクニックが際立っていて最高!『激突!』と『ジョーズ』を大傑作だと思いながらも、この2作を映画館で観ていない(生まれていない)僕には『宇宙戦争』が映画館で観れるというだけでも重要です。
宇宙人の侵攻により完全に日常が崩壊した地上をただひたすらアテをあてにして逃げまくるだけの父娘。車、飛行機、船、電車とありとあらゆる日常の乗り物が、非日常の光景となっていく。行く先々で地獄絵図が繰り返され、その中で家族愛が特に育まれるわけでもなくダメな父親振りを露呈していくのみ。『ランド・オブ・ザ・デッド』に代わり、非日常の恐怖を、そして世界が変わってしまった恐怖を描いた作品です。
この映画を非難する映画批評家の前田有一氏に反論したところ、大変多くの応援を受けたのと同時にネット右翼たちに叩かれる羽目になりました。最初に「朝鮮人が日本人をボコボコに…」と書いてもそんなに問題なかったので「よし、みんな冷静だな」と思っていたのですが…、あの時は前田有一氏が右翼憂国系の評論家だったとは知らなかったんです。おかげで「左翼サイトだ!」「反日だ!」「この映画の朝鮮人の陰謀を知らんとは無知め!」とか色々叩かれました。「管理人は朝鮮人?」と掲示板に書かれたので「いやー実は小学校の時に日本人に帰化したんですよー」と気の効いていない冗談でも書こうと思ったんですが、収集つかなくなりそうなんでヤメました。まあでもこんだけ多くの応援受けたのも初めての事だったので結果的には非常に嬉しかったです。
ところで僕は別にあの映画批評家の政治的態度を非難するつもりは全くありませんし、政治的態度が間違ってるとも思っていません。掲示板やメールでもそういった抗議を否定しませんでしたし、むしろ肯定もしました。僕が『パッチギ!』に対して政治的な見解を出さなかったのが評価されていましたが、ネット右翼たちのように『パッチギ!』を観て政治的な意図などを読み取るのも正しい評価だと思っています。僕が前田有一氏に反論したのは前田有一氏が映画を観るプロとして失格だと思ったからです。
しかし反論後、掲示板に常連さんが「国家を背負った人たちがやってきますよ」とカキコした通り、しばらくの間はヘンな状態になりました。(余談ですが、そんな危うい状況の中「スパイダーマンの格好してイベント行くので見かけたらよろしく!」と書いた、僕の状況に対する認識の異様な甘さが一部友人の間で大ウケでした。)
ある女性の「付き合っている人が在日だったので悲しい思いをしました」というカキコに対して、朝鮮人の極悪犯罪者の残虐な犯罪手口を詳細に書いたレスをして「僕はこの問題について意見を交換したいのです!」って書いてきた人もいました。
そういえば韓国系日本人の映画評論家の町山さんのサイトでは、童貞の話題をしていたら何故か反日や韓国人に怒る人の猛攻撃コメントが来て収集がつかなくなり一時閉鎖しました。うちでも阪神が優勝した話題が何故か反日中国人の話題になりました。
こんな感じでどんな話題でも朝鮮人の悪口にしたがる人たちに目をつけられる羽目になりました。
また東京にいた頃の仕事でたまたま韓国の人たちと仲良くなったので、韓国人関連のネタを何度か破壊屋に書いたらそれだけで抗議がありました(沼津の事ならいくら書いても抗議なんてなかったのに!)。僕は別に破壊屋に本気の政治的意見なんて書いていないし、たいした事も書いていない。でも韓国映画を誉めたから反日(これが一番驚いた抗議だった)、朝鮮半島の人と仲良くしたから反日、井筒の映画を誉めたから反日、前田有一氏に反論したから反日、そういった風に叩かれました。個人的には中国の反日運動より、こっちの反日運動のほうが迷惑でした(抗議自体はOKです、ただ抗議の視点がちょっと…)。「一度目をつけられるとこうなるのか」とドンドン右傾化している日本のネット社会を強く感じた一年でした。いや、でも僕は本当に大それたことは何もしてないはずなんだが…。
えー、また長々&大文字書いてしまったんで色々叩かれ始めると思いますが(もう一度書きますが抗議するのは全然OKですよ)、こんな現状だからこそその状況にパッチギをカマしてくれるこの映画が面白いんだと思います。いやそれも違うかもしれない。僕はこの映画で、暴徒と化した朝鮮人達がバスをひっくり返したり、日本人が朝鮮人をコンクリ漬けにしたり、朝鮮人がドロップキックを放ったり、日本人が朝鮮語を学んで[「やらせてくれ!」とお願いしたりする]ところが面白かったんだ!朝鮮人がドロップキックする映画にハズレなし!(例:『GO』『パッチギ!』『殺人の追憶』『美しき野獣』)
ずっと家庭で教育を受けてきて学園生活なんて体験したことのないヒロインが、高校に入学したら何故か学園内で最強を誇る女王様グループの一員となってしまい…。
日本ではマトモに公開されないハリウッドのティーンエイジャー向けの映画です。ミーン・ガールズ(意地悪な女の子たち)の学園生活を面白可笑しく描いていてサイコー!とか思っていたら、後半できちんと女の子同士の友情の難しさと、それにどうやって向き合えばいいのかまで言及するのに驚いた。男の映画だとこうはいきませんね。
また元数学科の僕としては、数学科でリンジー・ローハンのような女の子が活躍するという展開は非常に嬉しいものがあります(注:アメリカの学園映画は数学が出来る人間を変人扱いします。注意して見ると結構面白いですよ)。
『エターナル・サンシャイン』『ロング・エンゲージメント』『君に読む物語(未見)』などが評判良かった2005年でしたが、僕にとって2005年最高の恋愛映画は『50回目のファーストキス』です。
映画の内容は何も知らないで「ドリューが見たいんだよ!」という理由だけで映画館に入って、大嫌いなアダム・サンドラーに拒否反応出していたのですが…、映画の中盤ではもうアダムに対して「アダム、お前は優しい男の鑑だよ」とリスペクト状態に。悲劇のはずの物語を楽しく飾りつけてくれた優しい恋愛映画です。
アダム・サンドラー演じるハワイのプレイ・ボーイが、レストランでドリュー・バリモアと出会って早速いい感じに。でも次の日に彼女と出会うと何と彼女は………。彼女の悲しい秘密を知ってしまったアダム・サンドラー。それでもアダム・サンドラーはドリュー・バリモアのことが好きで好きで仕方ない。好きで仕方ないんだよ!毎回出会いが必要だって?やったろうじゃん!
というここ数年突発的に流行っている「記憶忘却系」の映画の一つで、もちろん悲しい設定の映画のはずなんですが、しょうもないギャグの連発でとことん笑わせてくれる(毎日『シックス・センス』を観るとか)。しかし中盤になると映画の登場人物は悲しくて辛くて残酷な現実を突きつけられる。それでもギャグの勢いは落ちずにまだまだ笑わせてくれる(ダン・エイクロイドが出てくるとか)。そして後半で…。
常夏のハワイを舞台にした明るいデートシーン(原題は50回のファーストデート)に、色鮮やかなアロハシャツ、夏にピッタシのビーチ・ボーイズや311のBGM。これらが全て素敵なラストへの[対比になっていました]。
文句無しに2005年最高の人間ドラマのはずなんですが…随分と順位が低くなってしまった。「三十路を過ぎてからプロボクサーを目指し、100万ドルの価値がある戦いに挑むの女の物語」という題材なんで、女性映画好きとしてはそーいうのを期待して観に行ったら違った。ボクシングの映画というわけでもなかった。涙を流す映画でもなかった。カタルシスに溢れた勝利の映画でもなければ、辛酸に満ちた敗北の映画でもない。クリント・イーストウッド自身は「父と娘のラブストーリー」と説明しているけど、それもややわかりにくい。
いや確かに「父と娘のラブストーリー」なんです。ただそれを「老人はその女性を自分の娘のように愛した」という風には描かない。映画の後半で老人がただひたすらにミリオンダラー・ベイビーを慈しみ、彼女の背負った罪を贖なおうとする(注:彼女は何も悪いことはしていない、運命として背負った罪という意味です)。そこまでしてただひたすらにミリオンダラー・ベイビーを慈しむ姿を描いたラブストーリーなのです。
一位:キング・コング
二位:バタフライ・エフェクト
三位:マカロニ・ウェスタン 800発の銃弾
四位:チーム★アメリカ/ワールドポリス
五位:マラソン
六位:宇宙戦争
七位:パッチギ!
八位:ミーン・ガールズ
九位:50回目のファーストキス
十位:ミリオンダラー・ベイビー
「映画を観に行く本数を減らしたい」と去年書いたのに、逆に本数が増える結果になってしまいました。上位3本以外は順位が無くても構いません。10本中7本がアメリカ映画で相変わらずアメリカ映画重視。まあ観ている映画の7割がアメリカ映画なんで当然の結果なんですが、ちょっとカッコ悪いなー。