チェスのようなカーチェイス:ドライヴ

ドライヴ

俺はこの映画を観たときファーストカットで「あ、この映画ダメだな」と思ってしまった。ファーストカットはホテルの一室を写し出していて、サソリ柄のジャケットを着た主人公の背中が出てくる。カメラはそのままホテルの一室を舐めまわし、窓に向かうと夜の都会の光景が………って古すぎるんだよ!80年代の映画か?と思った。黒地に紫の筆記体フォントもこれまた古い。

けれど次に出てくる車の修理工場内のシーンで、逃し屋の主人公が仕事用の車を調達するので緊張が貼りつめてくる。そして強盗を乗せた主人公が警察から逃れるために車を発進させるんだけど、いやもう凄まじい緊張感のカーチェイスを堪能した。派手なぶつけ合いは一切なしで、車を何度も停止させながらゆっくり冷静に警察の包囲から逃れていく。『ワイルドスピード』や『トランスポーター』のような手に汗を握ることがまったく無いストレス解消用のカーチェイスとは全く違った、制限速度内のカーチェイスだ。いや、もちろん要所ではスピード上げまくるけど。

『ドライヴ』の監督はオープニングのカーチェイス(のBGM)にチェスをイメージしていたらしいけど、相手(警察)の出方を伺いながら車の停止と加速を繰り返していく様子はまさにチェスの駒のよう。

しかし映画の本筋も古臭かった。昼は映画のカースタントマンで夜は逃し屋の主人公は、無口で感情を表に出さない。そんな彼が子持ちの人妻に惚れる。そして人妻の夫が犯罪計画に巻き込まれたと知ったとき………って時代設定は一応現在だけどストーリーには現代らしさをまるで感じない。

でもこの映画は全体を古臭い演出で統一しておきながら、要所で斬新な演出を挿入してくる。特にヴァイオレンスシーンの直接的な表現はまさに現代映画。俺が観た時は観客から悲鳴が上がってた。中盤のカーチェイスも緩急のつけ方がうまい。

『ドライヴ』は演技陣に存在感ありすぎでそこも大きな見どころ。ここ数年絶好調のライアン・ゴズリングの無口演技が一番凄い。ライアン・ゴズリングは人妻とその子供に対しては優しい表情を見せるんだけど、ひとたびブチ切れると女の顔に正拳突きを打ちこみかねない殺気を出し始める。幼い人妻を演じるキャリー・マリガンと、強盗仲間となるクリスティナ・ヘンドリックスも魅力的。犯罪者のボスのロン・パールマンは似合いすぎていて怖い。

そういえばスットコ部長ことakiraさんがこの映画の主人公を

(タクシー・ドライバーの)トラヴィス・ビックルの草食系みたいなピュアで胡散臭い純愛野郎

って評していて爆笑した。

だいぶ変わった作品でもあるので、観た人によって評価が大きく割れそうな作品でもある。あとこの映画の監督が運転免許を持っていないというのは驚いた。そういえばバイク映画『トルク』の監督もバイクの免許持っていなかったな。

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