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4分間のピアニスト   ★★★★

刑務所の天才女性ピアニストを描いたドイツ映画。登場人物に共感できない映画なのでオススメは出来ないけど、僕はすっかりハマってしまい、Youtubeでこの映画の動画を何度も繰り返し見ている。

「女子刑務所でピアノを教える老婆。ある日老婆は受刑者の中から女性ピアニストのジェニーを見つける。幼い頃のジェニーは天才ピアニストだったのだが、殺人犯となってしまった。そして今や誰の手にも負えない凶暴な存在。老婆はジェニーに何とかピアノを弾かせようとするのだが………」

というストーリーで、サブプロットとしてナチス時代の老婆の物語が展開する。
”老人と若者”と”戦争の思い出”という点で『ゴッド・アンド・モンスター』に似ている映画でもある。『ゴッド・アンド・モンスター』は人間の内面に怪物を見出す映画だけど、『4分間のピアニスト』は内面どころかジェニーが既に怪物と化してしまっている。しかしジェニーにピアノを弾かせればあまりにも美しい。老婆はジェニーに「美を生み出す」力を見出し、ジェニーに「美を生み出すのが使命」であると命令する。しかしジェニーは………

映画本編では老婆とピアニストの心のぶつかり合いを描かれている。ピアニストは悲惨な人生を歩んできて、その結果凶暴な存在となってしまった。老婆は美しい芸術にしか興味がなく、自分の意にそぐわない者には冷たい態度を取る。そんな二人のぶつかり合いが緊張感を生み出す。この映画が素晴らしいのは全編に緊張感が張り詰めていることだ。特にクライマックスの4分間に至る緊張感が素晴らしい。いたずらに観客を煽るわけではなく、ピアノ演奏という「美」に向き合う緊張感を観客にも体験させる。そして4分間で何かが起こる。何が起きるかは書けないが極端に驚くことが起きるわけではない。ただ老婆が強く想った「美」への思いに、怪物ジェニーが生み出すピアノ演奏が真っ向からぶつかるのだ。この映画は結論が出る類の作品ではなく、ぶつかり合いの緊張感そのものが目的の映画だ。


2007-11-19

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