清々しいまでのバカ映画だった。以下で全部解説、もちろん全てネタバレ。中盤まで状況説明ばっかりの映画なので、この文章も中盤までかっ飛ばして読んでもらって構わない。面白くなるのは中盤から。
- 映画が始まると、FBI捜査官レイが「連続殺人犯が建物内にいるから」という理由で建物に入るのをビビっている。南空ナオミ(瀬戸朝香)はそんな情けないレイを車に置き去りにする。
- 南空ナオミはいかにも治安の悪そうな所をタイトなスカートで歩き、もちろん男に絡まれる。
建物前についた南空ナオミは銃を持って一人で突入。適当に銃を発砲した後、ウインクしながら建物から出てくる。それ単なる射殺じゃん。
- Lはそんな南空ナオミを高みの見物していた。Lは「高みの見物」という言葉の意味を説明する。そのくらい中学生でもわかるよ!
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Lに言わせると南空ナオミは12秒早く建物から出てきたらしい。だからどうした。
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以上のシーンは本編と関係ない。単なる瀬戸朝香の特別出演ネタ。
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オープニング・クレジット。ペロペロキャンデーを食べる松山ケンイチがフェードアウトして『L change the WorLd』というタイトルが表示される。
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ワタリ死ぬ。Lの仲間Kが、英語でお悔やみのメールを送ってくる。両方とも日本人だけど。Kの正体は工藤夕貴のKだった(ちょっと違う)。以降、Kは工藤夕貴と表記します。
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120日後。舞台はタイの村。特殊メイクをした現地の人たちが大量に出てくる。ウイルスにやられているらしい。
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村人は全員爆弾で焼き殺される。誰がウイルスをバラ撒き、誰が爆弾を落としたのかはハッキリとわからない。
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タイの村には、Lの仲間であるFがいた。Fはウイルスに感染しないタイ人の子供(以下タイ人)を見つけた。Fはこのタイ人に「0105028147218」と電話番号を伝える。タイ人は数学の天才らしく、その番号を一瞬で覚える。そしてタイ人はジャングルの中を逃げる。
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安物のトラックで逃げるFを戦闘ヘリが追ってくる。戦闘ヘリはミサイルをバカバカ撃つ(金が勿体無いだろ)。F死亡。
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[Lがデスノートに自分の名前を書く(本名有り)]。これをきっかけに「死ぬまでに23日」というカウントダウンが始まるのだが………、映画『デスノート 後編』を観てない人には何が何だかさっぱりわからないだろコリャ。もちろん説明無し。
これ以降全編に渡って「死ぬまでにあと何日」というテロップが流れるのだが、それがサスペンスをこれっぽっちも生み出していない。映画の中で23日は結構長いしな。というかこのテロップは「日が変わった」の記号的演出みたいなもんで、まるで日めくりカレンダー。
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もうすぐ死ぬLはフランス語やスペイン語で会話しながら世界中の犯罪を暴くことにした。Lが世界規模だということをやたらアピール、鎌倉までチャリ旅行する映画のくせに。Lがひきこもりに見えるので、チャットしているようにしか思えんぞ。
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先ほどのタイ人が来日する。「ウイルスが効かないタイ人だ!」ってことで改造人間みたいに体中にコードをつけられて診断される。
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やっと解放されたタイ人がポテトチップスを食べる。Lも一緒にお菓子を食べることにした。そうすると感動的な音楽が流れてくる。あ、これ心が通じ合う感動のシーンなのか。
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アジア感染症センター(ググると検索結果が500未満、って当たり前だ)の所長は、毎週自分の娘(以下、少女)に謎の注射を打っていた。また少女は4時間毎に体温を測定していた。さらに少女に「ワタリ」という暗号を渡していた。何故自分の娘にワタリの存在を教えたのかは説明がついていない。
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所長はタイのウイルスについて調べる。タイのウイルスはエボラウイルスよりも100倍強力な殺人ウイルス兵器だった。所長はワクチンを完成させる。早っ。
- ウイルスを作ったのは環境保護団体&国際テロ組織だった。環境保護団体(ブルーシップ)は
「地球環境が悪いのは人口増加が原因だ」
ということでウイルスをバラ撒いて人口を減らそうとしていた。
ちなみに環境保護団体のメンバーを演じた佐藤めぐみは公式サイトで
「ブルーシップの活動は極端かもしれませんが、すべて間違いだとは思えませんでした。」
と言っている。こういう事を平然と言う人の頭の中には、きっとアフリカ問題は無いだろう。人口増化=地球の悪なら、日本が地球にとって善で、アフリカは悪だ。そんなはずない。
「アフリカで経済発展があると環境破壊が進むので、アフリカ人はいつまでも貧困でいてね。エイズ問題も放置ね。」
みたいな考え方の対偶だ。
でもこの佐藤めぐみのキャラは素晴らしい!今の日本映画に必要なのってこういう人だと思う。
- 環境保護団体&国際テロ組織のメンバーは全部で4人だった。しかも全員日本人。高嶋政伸とかね。でも工藤夕貴が加わったので5人になった。
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環境保護団体&国際テロ組織はアジア感染症センターを襲撃する。『ダイハード4.0』の発電所襲撃シーンに似ているが
「こんな時間に申し訳有りません。私たちはこういうものです。」
と言いながら警備員を殺すシーンは爆笑。
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環境保護団体&国際テロ組織の陰謀に気がついたアジア感染症センター所長は、この世にたった一つしかないワクチンを燃やす。その理由は、ワクチンが有ると「ウイルス=殺人ウイルス兵器」だが、ワクチンが無ければ「ウイルス=単なる殺人ウイルス」ということ。つまり兵器としては意味がなくなるからだ!
凄まじくバカげた理由により人類のたった一つの希望が消え、この世には殺人ウイルスだけが残った。
人類はウイルス兵器に脅える必要はなく、純粋にウイルスの危険に晒されることになった。プラマイゼロ、むしろマイ。
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その後、アジア感染症センター所長は自分にウイルスを打って死ぬ。このシーンは『グリーン・マイル』の死刑シーンみたいで、しつこくて長くて面白い。
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父親(アジア感染症センター所長)の死を目撃した少女は、田中要次と一緒にワタリの元へ行く(ワタリは死んでいるのでL)。このLと田中要次の会話がちょっと変。
田中要次「(所長が残したLのマークを出しながら)心当たりありませんか?」
L「知りません。」(Lは警戒している)
田中要次「いやー困った。クマのぬいぐるみを持った少女に連れ回されているんですがねぇ」
L「その少女を中に連れて来て下さい。」
実際はクマのぬいぐるみに反応しているんだが、クマのぬいぐるみには何のトリックもなかった。少女に反応して「家に入れろ」と言い出す、珍チーンだ。
- その頃、工藤夕貴も暗号を解いていた。
ちなみにこの映画には暗号が2回出てくるが、両方とも「数字=アルファベットの文字順番」という超シンプルな暗号。「01=A,02=B,...,11=K,」ということ。
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Lの隠れ家に環境保護団体&国際テロ組織&工藤夕貴がやってくる。工藤夕貴もLと同じワタリの仲間だったので、場所を知っているのだ。
少女は彼らに囲まれたので、ブチ切れて殺人ウイルスを自分に打つ。どうして娘が殺人ウイルスを持っているのかというと、父親に渡されていたから。どうして殺人ウイルスを打っても死なないかというと、ウイルスを打つとウイルスがスリープ状態になる体質だから。どういう体質かというと低血糖症。
ウイルスが効かない少年と、ウイルスが眠る少女。物語的にはこういうキャラって一人で十分ですよ。
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Lは少女を助けるためにショットガンを持ったテロリストに立ち向かう。Lが勝つ。
- 何故かLはウイルスキャリアの少女に接触しまくり。僕はてっきり「少女はハッタリで偽のウイルスを注射⇒L、それを見破っているので少女がキャリアじゃないと知っている」の伏線だと思った。しかし少女はめっちゃウイルスに感染していた…。このシーンはすげえおかしい。
- 環境保護団体&国際テロ組織のメンバーは全員、目の前で逃亡するLと少女とタイ人を見送る。彼らは動けないらしい。
- ここから映画はとんでもないことになる(今までのシーンも十分とんでもないが)。暴走する映画は何本も観てきたが、暴投する映画は珍しい。
- 「俺はFBIだ!」
と南原清隆(以下:ナンチャン)がボケながら登場。
諏訪太朗が
「どこがFBIやねん、日本人じゃないか!」
とツッコミ入れる。
- Lとナンちゃんと少女とタイ人は、Lの緊急時専用車両(指令機能付き)に乗って逃走する。が、その車はクレープ屋さんの車だった。もうバラエティのノリ。
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「環境保護団体&国際テロ組織」VS「クレープ屋さんの車」の時速10キロアンダーのカーチェイスが始まる。テロ組織に追われているんだから、警察呼べばいいような気もするが。
- 逃れたLはナンチャンと別れてアキバへ行く。そしてLは飛行機を墜落させる装置を作る。そんな装置の存在も凄いが、何でクライマックスの舞台が飛行機だという脚本家しか知らないことをLが知ってるんだ?「環境保護団体&国際テロ組織」が海外に逃亡することをLが先読みしたらしいが、だからといって墜落は飛躍しすぎ。
この装置にUSB端子があるのも謎(BY まどぎわ通信さん)。
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タイ人はアキバにあったロボットのおもちゃが気に入る。何気ないシーンだが、これがラストの伏線になっているので覚えてて欲しい。この伏線にはからあげ並の破壊力があるが、原作『デスノート』ファンにしかわからないのが残念。
- Lと少女とタイ人はメイド喫茶やネットカフェなどを周ることにした。これじゃあL、単なるオタクじゃん。
- 以前Lがアジア感染症センター所長の著書を読んでいた時に、著書欄のところに共著の研究者がいた。Lは少女とタイ人を連れてこの研究者の自宅がある鎌倉に電車で行くことにした。しかし今から移動するってことは………。
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世界を破滅させる殺人ウイルスのキャリアである少女を電車で連れ回すということだ!
「ウイルスがスリープ状態なので大丈夫」という大丈夫じゃない説明があった。
- でも電車の中はもちろん大パニックに。駅も大騒ぎでメタミドホス入りのギョーザがあった生協みたいな状態になる。もっと凄いか。
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L「もう公共の機関はダメですね」
ということで御一向はブラリ途中下車。Lは自転車で鎌倉を目指すことにした。こうしてLと少女とタイ人のチャリンコ・ロードー・ムービーに映画のジャンルがチェンジ。週刊少年ジャンプに連載中の『デスノート』を読んでいる時も驚愕の連続だったが、これほどじゃあ無かった。
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ちなみにチャリンコのシーンはスローモーションなので大爆笑できる(注:『恋空』と違ってちゃんとウケるように撮ってある)。
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Lと少女とタイ人は鎌倉までひたすら自転車を漕ぐ!漕ぐ!漕ぐ!ウイルスが注射されている少女は弱ってきた。
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Lと少女とタイ人は鎌倉の研究者の自宅に到着する。
「人ごみの中を連れ回すなよ!みんなに感染したらどうするんじゃい!」
と当然の説教を喰らいながらLは研究者にどつかれる。そりゃそうだ、連絡すりゃ迎えに行っただろうに。
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少女を助けるためにはワクチンを作るしかない。しかし研究者は副作用で人を死なせたトラウマがあってワクチンを作るのを嫌がる。が、結局研究者はワクチンを作ることにした(トラウマの意味がない)。
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しかしワクチンの開発は難しかった。L、少女、タイ人、研究者は無駄な時間を過ごす。前述の伏線「毎週謎の注射」も「4時間毎に体温を測定」もあんまり意味がなかった。死んだ所長が残した暗号も解いてみたが、ワクチン開発の決定打にはならなかった。ちなみにこの暗号は13:11なのでMKってこと。
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しかしだ!何と直後の会話一発でワクチン開発に成功する!↓
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L 「このタイ人、ウイルスが効きませんよ」
研究者「それだ!抗体が作れる!」
観客「最初にそれ言えよ!」
- こうしてワクチンの開発に成功した。Lと少女とタイ人はパーティーを開く。
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もう観客もすっかりその存在を忘れていた「環境保護団体&国際テロ組織」が、少女に「一人で来い」と連絡すると少女は一人で行った。そのまま拉致される。
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観客がそれ以上に存在を忘れていたナンチャンはクレープを焼いて食べていた。この映画は英語・フランス語・タイ語を使用して世界規模をアピールしているくせに、ナンチャンがFBIと相談するシーンは思いっ切り日本語。上司のFBIも日本語。
- ナンチャン
「伝説のLの指揮で動けて光栄です。」
とか言っている。でも映画を観た人ならわかると思うが、Lがナンチャンに対して行った指示は全部パシリだ。
- 「環境保護団体&国際テロ組織」の最終計画はこうだった。
ウイルスに感染した少女と一緒に飛行機に乗って国外に脱出する。
もう言うまでも無いが、環境保護団体&国際テロ組織&乗務員&乗客、全てがウイルスに感染して飛行機内は超パニックになる。
しかも飛行機が離陸する前じゃなくて、滑走路に入るときには既に全員感染。何考えていたんだ?
- そこにクレープ屋さんの車に乗ってLが登場!滑走路上を加速する飛行機の元へ走る。飛行機はテロリストが勝手に動かしたため、飛行機のドアが閉まってないので、『ダイハード2』のジョン・マクレーン刑事みたいにLがジャンプして飛行機内に飛び込む。
- 阿鼻叫喚の機内で、Lはアキバで作った装置と、カバン一杯の注射器(ワクチン)を出して
「ワクチンはもうあります!飛行機が離陸してもこの装置で墜落させます!あなたは生きてください。」
と工藤夕貴に説教。工藤夕貴泣く。
- こうして飛行機は離陸前に止まった。Lが操縦して止めたのだ。ワクチンのおかげでみんな助かった。敵も含めて誰も死ななかった。死んだのはアジア感染症センター所長とオープニングのタイ人たちだけだった。
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ラストシーン。めずらしくLが背筋を伸ばす。ポキポキと効果音が入る。Lはワタリの写真を見ながら死を迎える。
- エンドクレジットを読んでいたら、[脚本協力に知り合いがいたので]のけぞった。「今村昌平」っていうスタッフがいるのも笑った。
えーと、ここからは原作デスノートファンにしかわからない、衝撃のオチ。
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映画のラストシーン、Lはタイ人をワイミーズ・ハウスに連れて行く。
「あなたの名前は二アです。」
二ア、タイ人だった。二アの手元にはロボットのおもちゃがあった。
マッドシネマ
2008-02-15
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