修正して再掲です。
H.G.ウェルズの小説『タイムマシン』をドリーム・ワークスが映画化。監督はH.G.ウェルズの曾孫だったが、途中で病気降板して別の人が仕上げた。
80万年を旅する主人公を演じるのは10分前の出来事も忘れるガイ・ピアース。
演出、脚本共に酷い出来。監督降板の他にも、公開前に同時多発テロが起きて、NY関連のシーンをカットせざるをえないゴタゴタがあった。
タイムマシンの映画ではあるが、タイムパラドックス系のネタとかはほとんど無い。上映時間の3分の2は80万年後の原始世界で戦うという出来損ないのファンタジー映画。
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1899年のニューヨーク。本編と関係ない脇役助教授の主観視点から映画が始まる。 何故ならこの脇役助教授が映画のオチをつけるから。
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アレクサンダー準教授(ガイ・ピアース)は、ドイツ人の事務員とペンフレンドになる(アインシュタインのこと)。
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研究バカのアレクサンダーは、恋人のエマに今日プロポーズするということすら忘れていたが、何とか彼女にプロポーズ!した直後に強盗に襲われエマ死亡。
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次のシーンは4年後かつタイムマシン完成。タイムマシンの製作に着手するシーンすら無くて、本当にイキナリ完成。もの凄い駆け足映画だ。
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アレクサンダーはタイムマシンでエマが死んだ日に戻って、自分がプロポーズする前(エマが死ぬ直前)の彼女に出会って、彼女を別の場所へ連れて行く。しかし連れて行った先で彼女は事故死する。
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過去を変えられないことを知ったアレクサンダーは未来に行くことにする。何で未来へ行くのかサッパリわからない。
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ちなみにこれ以降エマへの想いは一切語られない。
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どうして未来に行くかというと
「未来になら答えがあるかもしれない。」
からだ。ねえよ。
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アレクサンダーはタイムマシンで2030年に行く。このシーンのタイムスリップ描写は素晴らしい。
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2030年のNYの路地裏に着いたアレクサンダー。未来人はタイムマシンをカプチーノマシンと勘違いする。アレクサンダーはとりあえず図書館に行く。図書館には人類全てのデータが詰まったプログラム:ボックスがいた。ちなみにボックスは黒人で、すげえウザい。アレクサンダーがボックスにタイムトラベルについて質問すると、ボックスはミュージカルのタイムマシンをコーラスで歌いだす。
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ボックスのウザさに怒り出して路地裏に帰るアレクサンダー。再びタイムマシンに乗るが数年経っただけで大きな振動が起きて、思わずタイムマシンを止めてしまう。そこは2037年だった。2037年、人類は月に内部空洞を作るために爆破計画を立てたのだが失敗。月は崩壊してしまい、月の破片が地球上に降り注ぎNYが壊滅するのだ!というシーンがあったはずなんだが、映画の公開前に同時多発テロが起きたために、NY壊滅のシーンがNGになった。そのためほぼ全部がカット。
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ちなみに未来社会が描かれるのは先ほどの路地裏と図書館のみ。
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壊滅したNYを見て、アレクサンダーはパニックになってタイムマシンに逃げ込む。しかしアレクサンダーはタイムマシン内で気絶してしまう。そしてどんどんタイムスリップして、途中氷河期を迎えて氷の中に閉ざされる。アレクサンダーも氷つくが気絶しているので関係ないらしい。そして遂には80万年後の世界へ行ってしまう。この時点で映画は半分も終わってないが、タイムスリップものとしては終了。あとは80万年後の原始社会が舞台の凡庸ファンタジー。
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80万年後の世界では人間の文明は壊滅している。しかし地上には人間と同じエロイ族というもの達が僅かに生息していた。彼らは切り立った崖に村を作り生活している。
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エロイ族の少女マーラに介抱してもらったアレクサンダー。アレクサンダーは遥か過去からタイムマシンでやってきたと説明するが、当然理解されてもらえないので
「僕はニューヨーカーです。」
と適当な自己紹介。 -
アレクサンダーはマーラの弟のケイレンと仲良くなり、ケイレンに自分の懐中時計をプレゼントする。しかしケイレンの懐中時計は何者かに盗まれる。
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その夜、アレクサンダーは恐怖の夢を見る。不思議なことにエロイ族みんなが同じ夢を見ていた。
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エロイの村には中年以上の大人がいない。この理由を尋ねると
マーラ「旅立ったのよ」
アレクサンダー「死ぬことか?」
マーラ「そうよ」
アレクサンダー「何故大人が死ぬのか?」
マーラ「知らないほうがいいわ」
実はみんな食われていた。 -
アレクサンダーはやっぱりタイムマシンの場所へ戻る。そのとき異変が起きる。凶暴なゴリラのような人種、モーロックが襲いかかってきたのだ!逃げ惑うエロイ族達!アレクサンダーはモーロック族と戦う。アレクサンダーは4年間外出もせず人にも会わない引き篭もりという設定なので、すげえ不自然。
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マーラがモーロックに連れ去られてしまう。 モーロックに襲撃されても一切反撃しないエロイ族に怒り出すアレクサンダー。だがエロイ族達はそれを運命と割り切っていた。
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マーラを助ける決意をしたアレクサンダーは、ケイレンにモーロックの事を教えるように頼む。ケイレンは「幽霊が出る場所」を案内する。幽霊とはあの人類の知識が詰まったプログラム:ボックスのことだった。
友達がいなくて寂しい(プログラムのくせに!)ボックスからほとんど役に立たない情報を手に入れたアレクサンダーはモーロックの住処へ向かう。 ボックスは単なるギャグ要員だった。 -
アレクサンダーはロッククライミング(引き篭もりの科学者には無理だろ)でモーロックの住処に潜入するが、そこは遊園地のお化け屋敷程度のセットの場所だった。人肉解体所を見つけたアレクサンダーは、モーロックたちがエロイ族を食料としていることを知る。
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アレクサンダーは『カリオストロの城』の地下水路みたいなところでモーロックに捕まってしまう。アレクサンダーはモーロックの王の元へ連れて行かれる。
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食べられたと思われていたマーラは頭がいいので、繁殖用にするために檻に閉じ込められていた。
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モーロックの王は、アレクサンダーが何処から来たのか、どうやってタイムスリップしてきたのか、なぜタイム・マシンを作ったのか。その全てを知っていた。 何故ならモーロックの王は超能力で人の思考を読むことができるのだ!
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さらにモーロックの王はエロイ族達が反乱しないように、テレパシーで怖い夢を見させていたのだ!
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ブチキレたアレクサンダーはモーロックの王に
「エロイ族を食べるなんて間違っている!自然の摂理に反している!」
と説教する。 -
モーロックの王が言い返す。
「タイムスリップしているお前が何言うとんじゃ」
どう考えても当然の説教をくらい反省するアレクサンダー。 -
モーロックの王の説教が延々と続く。しまいにモーロックの王は
「誰もが心の中にタイムマシンを持っているんだよ。
過去に戻るタイムマシンとは記憶だ。
未来に旅するタイムマシンとは夢だ。」
と人食い王のくせにロマンチックなことまでほざき始める。 -
長かった説教も終わり、モーロックの王がアレクサンダーのタイムマシンを持ってきてくれた。
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アレクサンダーは、マーラを檻に置き去りにして過去に帰ることにした。
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帰り際にアレクサンダーはモーロックの王に
「時計返せよ」
「ああ、わかった」
実は時計を盗んだのはモーロックの王だったのだ。 -
何故盗んだのか?どうやって盗んだのか?そもそも崖に住むエロイ族の村に、モーロックは入れないのではないか? 全ての謎は一切説明されずに笑いながらアッサリ時計を返してくれるモーロックの王。
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しかしそれはアレクサンダーの罠だった。 アレクサンダーは時計の鎖をモーロックの王の腕にかけてタイムマシンの中に引きずり込む!
モーロックの王は超能力で思考が読めるはずじゃないのか? -
まあとにかく、タイムマシン上で6億年を超える戦いがスタート!モーロックの王 VS 引き篭もり王アレクサンダーの格闘戦は、アレクサンダーがモーロックの王をタイムマシンの外に追い出して勝利。モーロックの王は2,3億年くらいぶら下っていたが白骨化して敗北。アレクサンダーだけが、6億年後に到着。
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6億年後の世界ではモーロックが地球を支配していた。 6億年間進化していない生物というのも凄いな。
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慌てて80万年の世界に帰ったアレクサンダー。
「未来を変えてやる!」
ということでモーロックを皆殺しにすることを決意。 -
とタイムマシンを作動させたまま、懐中時計を使ってタイムマシンを破壊する。タイムスリップ光線が溢れだして、触れたモーロック達はみんなあっという間に時が過ぎて次々に白骨化する。このシーンの特撮は凄いんだけど、バカバカしい。爆発で全てを解決するハリウッド映画の悪いクセ。
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アレクサンダーはマーラを助け、突如現れたエロイ族と合流。みんなでカッコよくジャンプすると、その背景でタイムスリップ光線が最後の大爆発する。戦隊モノと全く同じクライマックスじゃん。
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タイムマシンが壊れて過去に帰れなくなったアレクサンダーは、マーラと一緒に暮らすことを決意する。もうエマのことは観客も忘れている。っていうかエマって誰だっけ?
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ボックスは英語の教師として再就職した。
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アレクサンダーは自分の家があった場所辺りにマーラを連れて行く、そうすると1899年時代の脇役助教授が合成で登場。
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脇役助教授が
「アレクサンダーは大丈夫だ、きっと自分の家を見つけたに違いない!」
と無理やりハッピーエンドにして映画は終わる。
ちなみに原作の『タイムマシン』ではモーロックとエロイ族の関係は、資本家と労働者という関係になっていて、イギリスの階級社会を風刺している。でも映画版は単なるファンタジー世界の悪役と村人の関係。
マッドシネマ
2008-03-24
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