今年の洋画の中でも最大級の珍作『ファウンテン 永遠につづく愛』の珍クライマックスがYoutubeにあったので、それを解説する。このクライマックスは永遠の愛を手に入れようとするカップルを描いており、そして大失敗している。と言っても僕はYoutubeで繰り返して見ている程好きなシーンだが………
『ファウンテン 永遠につづく愛』は宗教的観念から愛を描いた意欲作だが、その宗教的観念とは仏教とキリスト教とマヤ文明をこじつけている。西洋人にはかなり評判が良い映画だが、東洋人の目から見るとかなり変テコである。
『ファウンテン 永遠につづく愛』の本編はどういうストーリーかというと
「現実世界の主人公がいる。彼の奥さんは不治の病にかかっていた。医者である主人公は奥さんを治そうとするが間に合わない。奥さんのほうは自分の運命を受け入れており、スペイン人の小説を執筆していた。その小説の登場人物は主人公だった。
同時に主人公は宇宙空間を漂い太極拳を練習していた。何故なら主人公は26世紀の宇宙飛行士で、マヤ文明の冥界:シバルバーに向かおうとしていたからだ。宇宙船は木であり、木は奥さんだった。」
↑というストーリーである。「これって何か違うんじゃねえの?特に木が違うんじゃねえの?っていうか気違ってるんじゃねえの?」と思ってしまうが、いやマジでこういう映画なのだ。
では以下よりYoutubeの動画を解説する。もちろんネタバレなのでそれは覚悟するように。ちなみに主人公を演じているのがヒュー・ジャックマンで、奥さんがレイチェル・ワイズ。
- 例:動画の再生時間(再生時間がマイナス表示になっている場合は、表示部分をクリックすると経過時間になる)
- 例:僕の解説(僕個人の解釈を元にしている)
- 0:00
- 奥さんを亡くしてしまう主人公が描かれる。彼は現実世界の主人公だ。
(取り押さえられているのが主人公、ベッドにいるのが奥さん)
- 0:30
- 突然ハゲた主人公が出てくるが、これが宇宙飛行士の主人公である。
主人公が喜びに満ちた表情で何か言っているが、これは「死んでしまった愛する人と一緒になるためには、僕が死ねばいいんだ!やった永遠だ!」というあんまりな結論に達しているところ。実は奥さんであり宇宙船でもある木が、この直前に枯れてしまったのだ。
彼は26世紀の宇宙飛行士なんだが、そうだとすると現実世界との繋がりが描かれておらず解釈しきれないので、以降は精神世界の主人公と表記する。
- 0:35
- 奥さんの顔が突然別メイクになるが、これは奥さんはスペインの女王でもあるから。なんじゃそりゃ。
- 0:40
- 何か木が見えるが、この木が宇宙船である。映画本編を観るとこの宇宙船が漂っているシーンが延々と見せられる。
- 1:10
- 木(奥さん)に話しかけると「完成させて(Finish it)」という奥さんの声が聞こえてくる。「OK」と答えるとクライマックスの音楽が流れ始める!さあ始まるぞ!
「完成させて」というのは、奥さんの描いたスペイン人の物語のことだった。
- 1:25
- 突然現代アメリカに舞台が戻る。現実世界の主人公は奥さんに散歩に誘われるが断ってしまう。医者である主人公は奥さんの難病を治すために仕事に没頭しているが、奥さんはそんなことよりも残された時間を二人で過ごしたいのだ。
見ればわかるが、自宅のシーンと職場のシーンがごっちゃになっている。
- 2:15
- 奥さんを追う主人公の映像から精神世界の映像に流れていく。そして木に登る主人公。つまり上の冥界シバルバーに到達すると奥さんに会えるのだ。
- 2:30
- 木の頂点まで登ると座禅を組む主人公。主人公は座禅で宇宙空間へ飛び出す!その姿は麻原ショーコーっぽい。
- 3:00
- 舞台は何故かマヤのピラミッドになる。そこではスペインの騎士になった主人公がマヤの司祭と対決していた。なおスペインの騎士が空想世界の主人公である。
- 3:20
- 空想世界の主人公が殺される………
- 3:30
- 奥さんから再び「完成させて(Finish it)」という声が!ああっ!殺されたらマズい!完成できない!というわけで精神世界の主人公はスペインの物語を自由に書き換える能力を発動させる。
- 3:45
- 衝撃のシーン!殺される直前に空想世界の主人公がトランスフォーム!
- 4:10
- マヤの司祭はその神々しい姿を見て、自分を生贄にしてもらうようにお願いする。オイ!マヤ文明と仏教は結びつかないぞ!!
- 4:20
- 空想世界の主人公は、何が起きたかわからんがとりあえずラッキーなので司祭を殺すことにした。
- 4:40
- そこには旧約聖書にも出てくる生命の樹が登場する!空想世界の主人公の目的はこれだった。
- 6:00
- 樹液を傷に塗るとあっという間に治る。さすが生命の樹だ。
- 6:40
- 樹液を飲むと不死になれるというが
- 6:45
- 飲むとスペインの騎士はラリってトリップを見る。シャブやってラリればようこそパラダイス銀河。さすが生命の樹、LSDの効果もあるらしい。
幸福の科学が作る映画のクライマックスはいつもこんな感じ。
- 7:00
- 何故か指輪が出てきて「我が女王よ!永遠に!」とか言いだす。スペインの女王は奥さんでもあるので、これは愛の誓いでもあるわけだが………
- 7:20
- こっからは『ジョジョ』にありそうな気持ち悪いシーン。バッドトリップって怖いよね。
- 7:50
- そして空想世界の主人公は死んでしまった。音楽も一端止まる。このまま愛の誓いは達成できないのか……。
- 8:00
- と思いきや精神世界の主人公が登場して、その指輪を拾ってはめる。愛の誓いが達成できた。そうすると
- 8:40
- 宇宙だ。愛は宇宙なんだよ!どうでもいいが「愛は宇宙」でググると「前田愛は宇宙的」という検索結果が出てきた。
- 8:50
- 全てが暗闇になり完全な無となる。映画館で観ると結構衝撃的。
- 9:00
- 大爆発!冥界シバルバーで何が起きるのか?
- 9:15
- 全てが光に包まれる。坂口博信(ファイナル・ファンタジー)が作る作品のクライマックスもいつもこんな感じ。
- 9:30
- 奥さんが木の実を手に入れる。
- 9:50
- その木の実を渡された主人公が雪を払いのけると、奥さんのお墓が出てくる。実は奥さんはとっくの昔に亡くなっているんだが………さっきの奥さんは何?(多分精神世界の奥さん。いやもうホントどうでもいいが。)
- 10:00
- 主人公は奥さんの墓に木の実を埋め「さようなら」と言う。こうして完成した。「何が?」と僕に聞かれても困るが、これを観てしまったあなたはもっと困っているだろう。
- 10:40
- END。
以上は僕の一方的な解説。まだ納得しない人にさらに僕なりの解釈を解説すると
- 現実世界の主人公の奥さんが死んでしまった。
- 精神世界では木が奥さんだが、それも枯れてしまった。
- 精神世界の主人公は奥さんに会うために自分も死ぬことにした。
- そのために精神世界の主人公は、木の樹液で空想世界の主人公を死なせる。
- おかげで精神世界の主人公は愛の誓いである指輪を手に入れ、冥界に到達して永遠の愛を成就する。
- 現実世界の主人公は、精神世界の奥さんから木の実を受け取る
- 現実世界の主人公は、木の実を埋めることで奥さんとの別離を受け入れることができた。
という映画なのであり、そう考えると意外とキレイに繋がっている。トゥルーラブならぬトゥリーラブ!なんちゃって。
ちなみに本作のダーレン・アロノフスキー監督が以前作った『レクイエム・フォー・ドリーム』という映画では、『ファウンテン 永遠につづく愛』と同じ演出方法でクライマックスを描いており(しかも愛じゃなくて絶望!)、そちらのほうは大成功しているので興味があったら観て欲しい。
2007-10-30
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