
三連休の中日の新宿の映画館。『フライング☆ラビッツ』は公開二日目なのにありえないほどガラガラだった。

隣でやっている『SEX AND THE CITY』には行列が出来ていたけど。
映画『フライング☆ラビッツ』は今年もっとも企画そのものを疑ってしまう映画である。とにかく企画にツッコミどころが多い。
- 合気道の達人の女の子がバスケをやるってそれじゃあ
『少林少女』と同じだろ!
- 映画のキャッチコピーの「キャビンアテンダントがバスケ!?」ってそんなに変なことじゃないだろ(現実でも有名なチームらしい)。「シュワちゃんが妊娠!?」なら変だけど。
- 原作者が『スチュワーデス物語』の人だ。
- そして原作のタイトルが『新世紀スチュワーデス物語』。
- 脚本家のフィルモグラフィーを調べると『鉄腕!DASH!』『行列のできる法律相談所』。ってそれは映画じゃない。(ただし放送作家が脚本を担当した『おくりびと』はかなり良い映画だった。)
- 民放各局が映画製作を行って大ヒットを飛ばす昨今だが、『フライング☆ラビッツ』はテレビ東京製作!
- 『フライング☆ラビッツ』とは『青春燃焼系☆Girlsプロジェクト』だったりする。『青春燃焼系☆Girlsプロジェクト』とは『フライング☆ラビッツ』と『ウォーキン☆バタフライ』が劇中相互リンクするという連動型企画だ。関係者以外で両方観ている人っているのか?
うんでこの映画は電通フルスロットルのCM映画なのだ!スポンサー企業のCMみたいなシーンがてんこもり。この映画ってスポンサー企業の税金対策で作られたんじゃないの?と勘ぐってしまうほどだ。福本次郎さんもタイアップを非難したいのなら電通に噛み付きなよ。ちゃんと商品が劇中に出てくる映画を指摘しなよ。
映画自体がJALの宣伝になっているのは、JALが全面協力だから当然だ。問題なのは他の企業だ。スポンサー企業の一つとしてTOKYO TOWERがあるんだけど、劇中合コンをする場所が東京タワーだったりする。男のグループと女のグループが普通に東京タワーの中でつっ立ったまんま自己紹介しているのだ。ありえねー。
またアミノバリューがスポンサーなので、登場人物たちがアミノバリューを飲んでいる。これは別に構わない。しかしエンドクレジットではアミノバリューの効果の説明まで出てくるのだ。またDoCoMoもスポンサーなので、DoCoMoのケータイが不自然にアップになるシーンがあって笑ってしまう。
観ていてダメージが大きい要素として音が酷い。聞き取れない台詞が一杯あって字幕が欲しいくらい。演出はまあまあで、きちんと画面が作られている。演技も大丈夫だった。監督や俳優が頑張っても企画そのものがダメで脚本が最悪という典型的なダメ邦画だ。
うんでまあ映画の内容だが前半が壊滅的。後半は持ち直してくるので意外と面白いが、前半の酷さは『少林少女』に匹敵する。以下ストーリー解説。
- 新人CA(キャビンアテンダント)の石原さとみがJALの寮に行く。
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石原さとみはなぜかJALの女子バスケチーム「フライング☆ラビッツ」のメンバーと一緒にバスケットボールをやることになる。何故だよ?
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それは「石原さとみと同姓同名の選手がいたから間違えられた」というオチなのだが、そもそも間違えるシーンが無い。
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ある日、石原さとみは路上で謎の韓国人とぶつかりそうになる。この韓国人が実はフライング☆ラビッツのコーチだった。このシーンは「コーチが石原さとみの運動神経に気がつく」という超重要シーンなんだが、100人がこのシーンを観て、意味に気が付くのは30人もいないんじゃないの?って思うほど撮り方が変。
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ちなみに謎の韓国人を演じるのは高田純次。コーチの設定を韓国人にしたのなら例えば「韓国リーグで事件を起こしてしまい、それがトラウマになって日本に逃げてきた」とかいう設定があるはずなのにそれがない。高田純次が韓国人を演じる意味が一切ない。
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高田純次にバスケをやるように命令される石原さとみ。本人は嫌だけど、会社がやれって言うので仕方なくやる。
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当然素人の石原さとみはバスケなんて出来ない。しかし何故か高田純次の命令で試合に出場させられる。
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石原さとみも含めて全員が「何で素人を試合に出すんですか!」と高田純次に当たり前の猛反対。しかし高田純次は「勘だ!」で押し切る。
ここ数年、こういう日本映画が多い。「勘」じゃなくてちゃんと心理の動機付けを行ってほしい。
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しかし石原さとみはシュートを打てない。何故なら石原さとみにとってはシュートを打つのが恐怖だからだ。うぉおおーい!「シュートを打つのが恐怖」ってなんだよ!ふざけんな!
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当然チームはボロ負け。石原さとみは退部届けを作る。
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しかし石原さとみは写経して心を落ちつかせたので、退部するのはやめることにした。いやーすげーなぁこのシーン。映画ブロガーたちと一緒に観賞していたんだけど、みんなでヒヤヒヤしたよ。
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石原さとみは同じ新人アテンダントの真木よう子と仲良くなった。彼女もフライング☆ラビッツのメンバーだ。真木よう子はダンクシュートに憧れてバスケを始めた。しかし女子バスケで過去にダンクシュートが決まったことは一度もない。
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そのために石原さとみと真木よう子は、石原さとみの体を踏み台にして真木よう子が空中を飛んでダンクシュートを決めるというスカイラブハリケーンのようなトンデモ技の練習をする。そんなことより石原さとみはシュートを普通に打てるようになれよ!
以下ネタバレ
ストーリーを解説するのも疲れたのでツッコミどころをいくつか。
- 劇中海岸で人生を語るという超ありがちなシーンがあるんだけど、場所が羽田だけにすげー汚い海岸線である。
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実は寮母がフライング☆ラビッツの元メンバーだったということが明らかになるのだが、それが何の効果にもなってない。ただし寮母はスポンサー商品のアミノバリューを飲む人だ。
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石原さとみは合気道の練習をしている。合気道をしているとシュートを打つ恐怖は消えた。何じゃそりゃ。
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石原さとみが写経するシーンはまた出てくる。いや、石原さとみの彼氏が坊主という設定なので変ではない。あ、でも彼氏が坊主という設定は珍しいな。
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これは観た人にしかわからないが、高田純次がボールを受け取る練習でギャグをかますのだが、絶望的につまらないギャグである。
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石原さとみが彼氏に会いに行くために仕事(キャビンアテンダント)をすっぽかすという凄いシーン有り。
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当然大問題になる。石原さとみに与えられたペナルティはジャンボ旅客機の機体丸ごとを一人で掃除すること。
うんで、まあ映画のクライマックスである。映画のクライマックスはこんな感じ。
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フライング☆ラビッツと宿命のライバルチームとの対決。フライング☆ラビッツは2点差で負けている。
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新人の石原さとみや真木よう子たちが何故試合に出れるのか観客にはサッパリわからない。高田純次が暴走しているようにしか見えない。
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石原さとみを応援するために、石原さとみの彼氏がギターを持って登場してアンパンマンのテーマを熱唱する(注:試合中)。タイトルは伏せるがこれと似たシーンがある日本映画が今年公開された[『神様のパズル』]。もうこういうのやめてくれよ。
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石原さとみと真木よう子はあの必殺踏み台ダンクシュートを成功させる!
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必殺踏み台ダンクシュートは勿論反則だった。まあ反則だってのはわかっていたんだけど、ダンクシュートには思い入れがあるのでどうしても決めたかったのだ。
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この試合で引退するフライング☆ラビッツの先輩が、最後の力を振り絞って相手チームからボールを奪う。
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石原さとみはシュートの「恐怖」を乗り越えていた。ボールを引き継いだ石原さとみは試合終了直前に3ポイントシュートを放つ。
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しかしシュートは外れてしまう。結局フライング☆ラビッツは2点差で負けてしまった。
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でもフライング☆ラビッツのメンバーは会場から暖かい拍手をもらった。完。
一緒に映画を鑑賞していたacidtankさんが上映終了後に一言。
「あのダンクシュートをやらなければ
フライング☆ラビッツは負けなかったんじゃないの?」
と後半の展開全てを否定するツッコミを入れたのでみんなで大爆笑。
2008-09-15
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