今や映画のタイトルには「ザ・ムービー」だらけだ。ためしに2008年公開作品の中から「映画」「劇場」「MOVIE」といった言葉がつく作品をピックアップしてみた。今後はこのような言葉を「ザ・ムービー」という表現で統一する。
全部で27本!結構な量だ。ドラえもんやポケモンのように昔から「ザ・ムービー」を使っていた作品もある一方で、『ピューと吹く!ジャガー THE MOVIE』『お姉チャンバラ THE MOVIE』のように「ザ・ムービー」をつけなくても済むような作品にもついている(「ザ・ムービー」をつけないとタイトルにシマりが無いからしょうがない気もするが)。「超劇場版」「劇場BAN」「銀幕版」のように別の言葉まで生まれている。ほとんど全てが日本映画だが、唯一の例外として韓国ドラマの映画版である『ファン・ジニ 映画版』がある。でもこれは邦題で、韓国タイトルも英語タイトルも『ファン・ジニ』だ。そういえば『Xファイル・ザ・ムービー』も邦題だった。英語圏でもテレビ番組・テレビアニメの映画版に「THE MOVIE」をつけることはあるが、ここまで多くはないだろう。
去年(2007年)公開作品で「ザ・ムービー」がつく映画の数を調べてみると18本なので、「ザ・ムービー」映画は確実に増えている傾向だ。この傾向が強まったのは2003年の『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の大成功からのような気がする。2003年の日本公開作品で「ザ・ムービー」がつくのは5本しかない。
「ザ・ムービー」がタイトルにつくと普段あまり映画館に行かない元ネタファンに対して「映画館でやってるよ!」とアピールできる。しかし上記27本の映画のうち僕が観た映画は1本も無い。元ネタの作品がなんなのかわからないのも多い。僕から見ると「ザ・ムービー」がつく映画は、あからさまな商業狙いだったり、単なるお祭り騒ぎが目的の質の悪い作品に思える。「ザ・ムービー」の映画が(まじめな)映画賞や映画雑誌のベストに選ばれることは少ない。もちろん僕が好きな映画に「ザ・ムービー」がついているのもある。例えば『シンプソンズ・ザ・ムービー』『ジャッカス・ザ・ムービー』『機動警察パトレイバー 劇場版』なんかだ。上記の27本の中にもそんな良質の作品もあるかもしれない。
上記の27本のうち、半分以上がアニメ・特撮だ。そういえば昔は「まんが祭り」とかいうタイトルがよくつけられていた。だから「ザ・ムービー」現象は、僕がイチイチ気にする必要がない現象かもしれない。でもここまで「ザ・ムービー」とアピールさせられると、逆に「映画ってそんなに非日常なイベントなんだ」ということを意識させられる。映画が日常に組み込まれている僕としては、ちょっと不愉快な現象だ。
オマケ:その他の「ザ・ムービー」
2008-10-10