続々WASABI

こちらはネタバレなしです



もういい加減ネタはないんですがサントラが面白いのでちょっと解説しておきます。いや、別にサントラ持ってないしMP3も持っていないしタワレコとリアル・プレイヤーで視聴しただけなんですがね。
サントラはベッソンの盟友でフランスでも最も有名な音楽家エリック・セラが製作し、実際何曲かは彼の作品です。


まず誰もが「はあっ?」と思った成田空港の「特別な駅です」(以前と文章違うのは僕が”国分寺前駅です”と聞き間違えていた為)が、これがよりによってエリック・セラ
サンプリングの出来は客観的に聞いても失敗です。


ちなみにこの曲のタイトルを訳すと
”シャコトと成田のブレイク・ダンス”
最低のタイトルセンスです

が謎なのはシャコトの意味、多分日本的な音感だということで使われているのでしょうか?
僕の”駅です”の勘違いを指摘してくださったイチローさんは”車庫”と予想しています。


それ以外おもしろいのはないんですがエリック・セラの共同作曲家のジュリアン・シュワルティスの曲は”トーキョー・ドライブ”、”キラー・ゴルフ”、”シューティング・ゲーム”などやっぱりタイトルが恥ずかしい
トーキョー・ドライブはワサビについて歌っていてちょっと面白いので公式サイトのフラッシュに直リン貼っておきました


さらにオープニングで使われていたペコペコなダンス・ミュージックのタイトルは”テクノ・メタル”・・・だからそのタイトル・センスは何なんだよ!これのどこがメタルなんだよ!フランス人達はマッド・カプセル・マーケッツを一億回聞きなさい。


出来の良い曲はあまり無いようですが洋楽ファンにはマッシヴ・アタックがプロデュースした女性歌手(ナディア・フォレス)の曲があることぐらいですね、注目できるのは(ショボイ・・・)。


でも僕が名曲と推すブードゥー・ピープルのリミックスは収録アルバムが廃盤になってしまったのでこのサントラでしか聞けないかも。




それとパンフレットにあった映画ライターの滝本誠氏の評論がおもしろいです。普通は試映会を開けばどんなに酷い映画でも一人くらいは誉める映画評論家がいるもんで、常識的にパンフレットの文章は映画をベタ誉めにします。しかしこの映画はその一人すらいなかったようです。
滝本氏の文章はつまらない「WASABI」を一生懸命誉めているのです。


まずタイトルは
ヒロスエに驚嘆!彼女の動きは音楽的で素晴らしい!
演技について誉めてない。

文章の出だしは
最初、だれだって不安になるだろう。ヒロスエに。という挑戦的な出だし。

(中略)ヒロスエ演技の開始である。やや、力みが見え、目線の緊張が分かる。彼女が緊張しているというより、われわれ観客の緊張が頂点に達するときだ。大丈夫か?しかし最初の一瞬が過ぎ、 ヒロスエの口からフランス語が発せられた途端にヒロスエの演技は安定し、実に自然にのびやかになるという奇妙な事が起こる。ヒロスエのフランス語がいいのだ。

コレ、本当なんです。劇中のヒロスエのフランス語の発音があまりにも上手いのは有名ですが、上手すぎて日本語の演技が下手なのにフランス語のほうが上手く見えるという奇妙な現象が起きるのです。
このあと滝本氏はヒロスエのフランス語を誉めヒロスエの動きのラインが映画の見ものとし、


(中略)日本語をのせると単に切れた演技、とかなるのだが、フランス語だと演技に隙間がなくなり、きれいに演技が流れるのである。ヒロスエの動きが音楽的なので、エリック・セラの音楽がほとんど目立たなくなったほどである。

この人はさっきからヒロスエの演技を”音楽的”、”安定”とかいう言葉を使って決して正面から誉めないのだがその気持ちはよくわかる
あとエリック・セラの音楽は駄作だと言いたいのも読み取れる。実際そうだし。


ストーリーとかはリュック・ベッソン・プロデュース作品が示すとおり、「レオン」の設定をいじり、フランスと日本が舞台ということで、ありそうで全く無い設定でスクリプトを書いたと思え、そこをつっこんでも意味は無いだろう。

そんなこと書きながらこの直後の文章でつっこんでいるんですが。この人のリュック・ベッソンに対する批判も読み取れる。また「ブラック・レイン」を持ち出して

それに比べればジェン・レノとヒロスエが父娘という設定のほうがはるかに納得できる(?)というものだ。

と全然納得していない様子、僕だって「二度死ぬ」のショーン・コネリーの日本人役に比べれば納得いくもんね!
文章は劇中のワサビの大盛りのシーンをつっこみながら


(中略)しかし、そんなものは映画のキズにならないだろう。なにしろ、バンド・デシネとしての映画、フランス流の劇画世界なのだから。


僕はこの一文を読んで怒り、このページをグワッーと作り上げたのですが、滝本氏の言ってる事は正解だったんですね、キズだらけむしろケガだらけの映画だけど


最後に
繰り返すが、ヒロスエの身体の動きは素晴らしい。
僕も繰り返すけど演技は誉めてない。


ちなみにこの人の文章は映画の内容も全く誉めておらず、オカマの強盗集団が面白いと書いてあるだけである。


つまり映画の見所はヒロスエのフランス語と動きとオカマでそれ以外ナシなのです。




「WASABI」の戦犯

製作、脚本のリュック・ベッソン
監督のジェラール・クラヴジック


僕は個人的にリュック・ベッソンが大嫌いなので彼をずっと批判していた。しかし実際「WASABI」の元凶はこの監督だろう。とにかく下手な監督で何より目立つのが会話シーンの下手さ加減。この人の映画の会話シーンは役者2人の会話を撮らず、片方が喋っているだけのシーンを交互に映しているだけなのである。
これをやると役者の大アップ顔が延々と映し出されるのだ、確かにこれだと役者の目線の先にカンペを置けるので便利なんだが(地獄の黙示録のカーツ方式と僕がたった今命名)


この監督はパリを舞台に悪の忍者軍団と合版で作ったスーパーカーが戦う「TAXi2」という底抜け映画を作っていたのだが、この映画はアクション描写にカタルシスも迫力もスピード感も一切存在しないという素敵な映画だった。今回の「WASABI」は(ヌンチャクのあたりに)テンポがあってちっとは成長していたと思ってたら日本のアクションシーンは日本人監督の仕事だった。でもこの映画のアクションは”殴るカット”→”吹っ飛ぶカット”の単調な繰り返しで飽きる。

でも今回の「WASABI」は舞妓が1秒くらい映るので、ダンボール紙にゲイシャの写真貼り付けたスタンディを配置して映していた「TAXi2」よりは大きな進歩ともいえる。(アレが本当にスタンディかどうか知っている人がいたら教えてください)




またまた最後に


今回の「WASABI」レビューは2年近くHPをやっていて初めて大きな反響がありました。何よりも驚いたのはあれだけベッソンを批判したにも関わらず僕の掲示板にリュック・ベッソン好きも面白がってカキコすることでした。
”リュック・ベッソンはセンス無い!”と高校生の頃からずっと批判していましたがリュック・ベッソンのファンは結構センスがあるようです。
リュック・ベッソンよりもタチの悪いレニー・ハーリンのファンとしても嬉しいです。

またここまで一方的に書いたので反論に対する反論というのはやりません、しかし反論をネタにするのはやるかもしれません。

それにしてもハリウッド映画を批判して邦画やフランス映画(特にベッソン)を誉めていた人たちは「WASABI」をどう観るのだろうか?僕は短い期間にフランスがハリウッドに出した極上の回答である「アメリ」とフランス人の映画感覚のダメさ加減を露呈した「WASABI」を観て混乱しているんですが。



それと「よく一度観ただけで・・・」と言われますが、映画に対する集中力を高めれば出来ます。本当は「メメント」とかに使うべきですが。

ここの文章の書き方はわかる人にはわかるでしょうが映画秘宝の名著:底抜け超大作のパクリです。この本にも言えることなんですが変な映画を面白可笑しく取り上げただけなので「そんなにつまらないなら逆に面白そうジャン!」と観に行っても普通につまらないので気をつけてね。


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