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アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子

土曜日, 8月 27th, 2011

アウトバーン

『アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』を読んだ。かなり面白かった。『アウトバーン』は文庫書き下ろしのシリーズ第一作ということで、深町秋生の他の作品よりもグッと気楽に読める痛快さを持っている。だから
「深町秋生の小説って暴力的で暗くて嫌い。やっぱり東野圭吾のほうがいい」
とか言っている俺の母親にも自信を持っておススメできる。暴力的なところはいつも通りだけど。

深町秋生作品の魅力と言えば、小説内の事件が現実の事件とどことなく繋がっていく感覚だ。傑作『果てしなき渇き』は八王子スーパー3人射殺事件やプチエンジェル事件(高校生や中学生とセックスできる売春クラブ)を思わせ、『ヒステリック・サバイバー』はコロンバイン銃撃事件と宮崎勉事件が背景にある。『東京デッドクルージング』に出てくる日本のテロ組織は「日本に国産テロ組織なんて…」と思ってしまうが、読み進めていくと連合赤軍やオウム真理教のサリン部隊を連想させられて納得する。

最新作『アウトバーン』では美人女子大生の殺人事件が起きるんだけど、これが女学生が殺されるたんびに人間関係がマスコミを賑わす現実を連想させる。舞鶴の殺人や千葉の放火殺人とかね。舞鶴も千葉も被害者の交友関係が疑われたけれど、両方とも被害者とは無関係のおっさんが逮捕されている。そういった現実の事件があったからこそ、『アウトバーン』を読んでいると妙な緊張感が湧いてくる。
また『アウトバーン』のクライマックスでは日本中が大騒ぎになったあの不気味な殺人事件がモチーフになっている。リンク先に事件について書かれているWikiを載せておく、ネタバレじゃないけど出来れば『アウトバーン』を読んでからアクセスして欲しい。この事件が頭の中に浮かんでくるからこそ、嫌な緊張感を持ったクライマックスになるのだ。

アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子

そして『アウトバーン』の最大の魅力はタガが外れたように危険なヒロイン:八神瑛子だ。毎度恒例になっているけれどネタバレ無しの人物相関図作った、この人物相関図でも八神瑛子の危険さがよくわかると思う。

ダブル|俺の友人でこの小説にハマりすぎて脚本まで作った男がいる。

深町秋生『ダブル』人物相関図

月曜日, 10月 11th, 2010

深町秋生の新作小説『ダブル』を読み終わった。素晴らしい作品だった。例によってネタバレ無しの『ダブル』人物相関図を作成したので、参考にしてください。

ダブル

『ダブル』人物相関図

濃厚な香港ノワールのような物語が、日本を舞台に展開する!という点が読みどころで、ネット上でもその辺りが絶賛されているけど、俺はそれよりも「情報流出と戦う巨大組織」という点が抜群に面白いと思った。「誰が裏切っているのか?なぜ裏切っているのか?」というトリックがきちんと伏線を提示しながらも、つねに読者を引っ掛ける形で真実が暴露される。ミステリー小説としても最高だ。そしてもう一つ、教祖のようなカリスマを持つ神宮が、主人公の刈田に惹かれているような描写もいい。神宮への忠誠心が強く情報流出元をしつこく探す阪本を含めると、三角関係を築いているように思える。


人物相関図にも出てくるけれど、暴力団系の企業って怖いよね…。知らない間に入社しちゃったりして。「ブラック企業=労働条件がヤバい企業or自己啓発で社員を奴隷化する企業」って意味だけど、数年前までは「ブラック企業=暴力団系or新興宗教系」って意味が強かった。

人物相関図に誤りが。「誤:重火器に詳しい」⇒「正:銃火器に詳しい」です。