『アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子』を読んだ。かなり面白かった。『アウトバーン』は文庫書き下ろしのシリーズ第一作ということで、深町秋生の他の作品よりもグッと気楽に読める痛快さを持っている。だから
「深町秋生の小説って暴力的で暗くて嫌い。やっぱり東野圭吾のほうがいい」
とか言っている俺の母親にも自信を持っておススメできる。暴力的なところはいつも通りだけど。
深町秋生作品の魅力と言えば、小説内の事件が現実の事件とどことなく繋がっていく感覚だ。傑作『果てしなき渇き』は八王子スーパー3人射殺事件やプチエンジェル事件(高校生や中学生とセックスできる売春クラブ)を思わせ、『ヒステリック・サバイバー』はコロンバイン銃撃事件と宮崎勉事件が背景にある。『東京デッドクルージング』に出てくる日本のテロ組織は「日本に国産テロ組織なんて…」と思ってしまうが、読み進めていくと連合赤軍やオウム真理教のサリン部隊を連想させられて納得する。
最新作『アウトバーン』では美人女子大生の殺人事件が起きるんだけど、これが女学生が殺されるたんびに人間関係がマスコミを賑わす現実を連想させる。舞鶴の殺人や千葉の放火殺人とかね。舞鶴も千葉も被害者の交友関係が疑われたけれど、両方とも被害者とは無関係のおっさんが逮捕されている。そういった現実の事件があったからこそ、『アウトバーン』を読んでいると妙な緊張感が湧いてくる。
また『アウトバーン』のクライマックスでは日本中が大騒ぎになったあの不気味な殺人事件がモチーフになっている。リンク先に事件について書かれているWikiを載せておく、ネタバレじゃないけど出来れば『アウトバーン』を読んでからアクセスして欲しい。この事件が頭の中に浮かんでくるからこそ、嫌な緊張感を持ったクライマックスになるのだ。
そして『アウトバーン』の最大の魅力はタガが外れたように危険なヒロイン:八神瑛子だ。毎度恒例になっているけれどネタバレ無しの人物相関図作った、この人物相関図でも八神瑛子の危険さがよくわかると思う。
ダブル|俺の友人でこの小説にハマりすぎて脚本まで作った男がいる。