Archive for the ‘映画ネタ’ Category

『そして父になる』のSFコメディ版?『もしも昨日が選べたら』

日曜日, 1月 12th, 2014

そして父になる1

『そして父になる』は良作だった。辛い題材でも観客のストレスにならないように細心の注意を払って演出されている。

ところで『そして父になる』と2006年のアメリカのSFコメディ映画『もしも昨日が選べたら』は似ている作品だ。題材も雰囲気もまったく違う両作だけど共通点がやたら多い。

今回のエントリは『そして父になる』と『もしも昨日が選べたら』の同時ネタバレという酷いエントリなので注意。まずは『そして父になる』から。


『そして父になる』のオープニングはお受験の面接から始まる。福山雅治演じる父親:野々宮と6歳に面接官が尋ねる。
「お父さんはどんな人?」
「夏にいっしょにキャンプしました」

お受験面接が終わり、野々宮は息子に尋ねる。
「キャンプ行ってないよな?」
「だって塾の先生がそう言ったほうがいいって教えてくれた」
「へーそんなことまで教えてくれるんだ」

野々宮は、息子に一流の道を歩ませようと教育熱心だ。といっても実際の教育は母親に任せきり。本人は土日も仕事を入れている。

『そして父になる』は富裕層である野々宮と子供の取り違い先である低所得層の家族との対比描写が濃厚で、そこが見どころだ。低所得者層の父親を演じるのはリリー・フランキーだ。彼は社会人としてはイマイチな男だけど、少なくとも子供と本気で向き合っている。


ここからガチのネタバレ


二つの家族は中盤で子供を交換する。ここで野々宮は最大の難関にブチ当たる。血が繋がっているだけで実際は他人同然の子供に父親として接する必要があるのだ。野々宮は土日は休むことにして「どうやって父親として接すればいいのだろう?」と考えるようになる。この問題は時間が解決してくれた。交換した息子が野々宮にジャレつこうと遊びかかってくるのだ。

さらに野々宮は家族を結びつけるためにテントを購入し、キャンプの練習をする。そこで気が付くのだ。交換した今までの子供に対して自分が父親でなかったことを。そして父親になるために、野々宮は今までの子供に会いに行く。これが『そして父になる』のクライマックスだ。


もしも昨日が選べたら [DVD]

話は変わって、『もしも昨日が選べたら』は自分の生活が魔法のリモコンで操作できるようになるSFコメディ映画だ。

もしも昨日がえらべたら1

魔法のリモコンを使って自分の人生を振り返るシーン。コメント機能をONにするとジェームズ・アール・ジョーンズ(ダースベイダーの声優)が自分の人生を解説してくれる。

主人公はアダム・サンドラー演じる男で、彼は父親が低所得者(というかヒッピー)だったことがコンプレックスになっている。特にトラウマとなっているのはキャンプだ。子供のころのサマーキャンプでテントを使っているのは自分の家族だけ。他はテレビ付きのキャンピングカーで夏を満喫している。

もしも昨日がえらべたら4

魔法のリモコンのチャプター機能を使って、子供のころにキャンピングカーじゃなくてテントだった悲しい思い出を観るシーン。

アダム・サンドラー演じる主人公には二人の子供がいるが、彼は仕事を進めるために土日を犠牲にする。だから妻や子供たちとのコミュニケーションに時間を取ることができない。

もしも昨日がえらべたら8

もしも昨日がえらべたら7

子供をおざなりにしている主人公は、自分の子供と間違えてアジア人の子供に声をかけてしまう。大沢樹生騒動的な意味で泣き出すアジア人の子供。

そんな彼の目の前に、自分の人生をDVD化するドラえもんの秘密道具のようなリモコンが現れる。ちなみにドラえもんにあたるキャラを演じているのは名優のクリストファー・ウォーケンだ。

彼はリモコンを駆使して、自分の人生の面倒くさい部分を全てすっ飛ばすことにした。ところがこのリモコンには恐ろしい副作用があって…。

もしも昨日がえらべたら2

妻との口げんかが面倒なので、魔法のリモコンの機能を使って松井の試合を観るシーン………これ、いいな。仕事上の無駄話とかの時に使いたい。

『もしも昨日が選べたら』と『そして父になる』には共通点が多い。野々宮もアダム・サンドラー演じる主人公も高給取りで、仕事のために妻や子供とコミュニケーションがとれていない。さらに本人は父親との間に確執があって、それを乗り越えないと自分の子供とも向き合えない。野々宮もアダム・サンドラーも建築関係の仕事という妙な一致もある。何よりも大きな共通点は家族を象徴するモチーフがテントというところだ。

『そして父になる』は子供の取り違い騒動を経て、『もしも昨日が選べたら』はリモコンの副作用を経て、主人公が本当に父親になる姿を描く。

『もしも昨日が選べたら』はコメディアンのアダム・サンドラーが主演なので白人男性向けの内容になっている。エロネタ、人種ネタがやたら多い(特に日本人が標的になっている)。そんな作品が繊細の極みのような作品である『そして父になる』と同じことを描いているのが面白い。


オマケで、リンク先に『もしも昨日が選べたら』のラストシーンの画像を貼っておく。あまりにもサラっとしたセリフなので意味を逃しがちだけど、このセリフでアダム・サンドラーが自分の父親へのテントの恨みが感謝へ転じていることがわかる。『そして父になる』だとこういう感動シーンをサラっとではなく仰々しく描く。

テントが家族のモチーフになるのはありがちなパターンなんだけど、『もしも昨日がえらべたら』はキャンピングカーと対比、『そして父になる』は高級タワーマンションと組み合わせることで、ありがちなパターンからうまく脱却していた。

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テントと家族ネタで俺が好きなのは映画『ホリデイ』。キャメロン・ディアズ演じる未婚の女性が子供たちと一緒にテントの中に入るシーンが好き。

破壊屋のSF映画ベストテン

日曜日, 12月 15th, 2013

ワッシュさんの男の魂に火をつけろ! SF映画ベストテンに参加します。まずはワッシュさんのコピペ用のためにもベスト10並べます。シリーズものは全部第一作です。

  1. AKIRA
  2. 機動警察パトレイバー 劇場版
  3. マトリックス
  4. バック・トゥ・ザ・フューチャー
  5. 2001年 宇宙の旅
  6. スターシップ・トゥルーパーズ
  7. トゥモローワールド
  8. スター・ウォーズ
  9. 第9地区
  10. パシフィック・リム
1位:AKIRA
AKIRA 〈Blu-ray〉

ミレニアム・ファルコン?スピナー?デロリアン?パワーローダー?何言ってるんだよ!SF史上最高の乗り物は金田スペシャル(画像のバイク)に決まっているだろうが!

2位:機動警察パトレイバー 劇場版
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エヴァンゲリオン?ガンダム?マクロス?ヤマト?何言ってるんだよ!SFアニメとはパトレイバーに決まっているだろ!

3位:マトリックス
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ずーっと映画ファンやっているので何度も「映像革命」に遭遇してきたけれど、俺には『マトリックス』の衝撃が一番でかかった。

4位:バック・トゥ・ザ・フューチャー
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俺はSF=タイムスリップという認識があるんだけど、子供の頃に観たこれの影響のせい。

5位:2001年 宇宙の旅
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「長い旅の果てに死を乗り越えることで神に触れる」。文字にするとこれだけだけど、毎年1、2本くらいは『2001年 宇宙の旅』と同じ話!と分類できる作品に遭遇する。

6位:スターシップ・トゥルーパーズ
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もう最高!としか言いようがない作品なのでそれしか言わない。

7位:トゥモローワールド
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公開当時は「ハリポタの監督の最新作!」と宣伝されたために観客をガッカリさせた。が、同監督の『ゼロ・グラビティ』が高い評価を受ける現在、再評価されれるといいな。21世紀のSF映画の頂点。

8位:スター・ウォーズ
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『ドラえもん のび太の宇宙小戦争』とどっちにしようか悩んだけど、やっぱりここはパロディよりも元ネタを取り上げる。

9位:第9地区
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ゲームと映画って相互に良い影響を与え合っているんだけど、これはそんな一本。

10位:パシフィック・リム
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ロボットものならマイケル・ベイの『トランスフォーマー』も良いんだけど、『パシフィック・リム』のほうが泥臭いカッコよさを最新映像で描くことに成功しているので。

俺にとってSFって小説じゃなくて、マンガとかアニメとか映画なんだなー。

『かぐや姫の物語』のバア様は時速何キロで走っているのか?

土曜日, 12月 7th, 2013

予告や本編を観た人ならわかると思うけど、バア様が走り出す演出は確実にビックリするシーンだ。

かぐや姫の物語1

かぐや姫の物語2

かぐや姫の物語3

かぐや姫の物語4

おおよその値だけど柱から軒先の約4メートルを0.5秒で通過している。これは時速28.8キロ。100メートル走だったら12.5秒なので、女子高校100メートルのトップクラスだ。正座の体制から走り出しているので、クラウチングスタートを習得すればジョイナー級のアスリートになれると思われる。

映画のタイトルには意味がある

日曜日, 12月 1st, 2013
映画のタイトルの意味

週刊SPA!には「映画のタイトルに騙される」というテーマで書いたけど、その逆のお話。

俺は映画のラストシーンでタイトルの意味がわかるタイプの作品が大好きだ。今年の映画だと『そして父になる』がそうだった。そんな作品はたくさんあるけどお気に入りの作品と『死ぬまでにしたい10のこと』について書く。

八日目の蝉

八日目の蝉 通常版 [DVD]

『八日目の蝉』では中盤で「八日目の蝉」の意味とは「一週間を超えて一日だけ余分に景色を見ることができる幸運な蝉」と説明される。じゃあその「八日目の蝉」とは一体誰のことなのだろう?それはリンク先ネタバレ。劇中でその意味が解説されることはないけど、上映後に「そういえばタイトルの意味って何だっけ?」と考えると気が付くのが面白い。

青いソラ白い雲

青いソラ白い雲 [DVD]

『青いソラ白い雲』は東日本大震災の影響で貧乏になってしまい、人気モデルから落ちぶれるヒロインの物語だ。劇中に、どん底から立ち直ることができるという謎の歌が出てくる。その歌の正体はヒロインがラストシーンで歌い出すことで判明する。謎の歌とはリンク先ネタバレだ。

日本に帰国して金も仕事も無くしたヒロインの決意として実にピッタリだ。有名な歌なのに、あまりにも一般的な言葉なので知っている観客でもネタバレに気が付かないというのがポイント。

死ぬまでにしたい10のこと

死ぬまでにしたい10のこと [DVD]

SPA!のタイトルに騙されるネタでは『あなたになら言える秘密のこと』を取り上げた。この映画の監督イザベル・コイシェとヒロインのサラ・ポーリーコンビが2003年に作った『死ぬまでにしたい10のこと』は日本で大ヒットしたので、観た人も多いだろう。この映画がヒットしたのは間違いなく邦題の力だ。映画をヒットさせる素晴らしい邦題のつけ方だと思う。当時の日本は難病映画ブームだった。

でも原題の『My Life Without Me(私のいない私の人生)』も映画の内容をよく表現しているタイトルなのだ。ここからは『死ぬまでにしたい10のこと』の解説になる。

自分の人生ではない自分の人生

サラ・ポーリー演じるアンは、23歳の2児の母親。ある日体調悪くなって病院に行き、自分が癌で余命2か月程度だということを知る。そこで、アンはノートに死ぬまでにしたい10のことを書き出す。

死ぬまでにしたい10のこと1

死ぬまでにしたい10のこと2

死ぬまでにしたい10のこと3

「死ぬまでにしたい10のこと」は最初こそは娘たちを想った内容だけど、だんだんと個人的な欲求になっていく。なぜなのか?

劇中判明するけど、『My Life Without Me』のタイトルのごとくアンは自分の人生を生きてなかった。17歳のときに初めて彼氏が出来て、17歳と19歳のときに子供を出産。夫となった彼氏は良い人で家事も育児もこなすが仕事に恵まれない。だからアンが働くことで家計を支えている。アンの母親は娘に毒を吐き続け、父親は刑務所にいる。アンは家事・育児・仕事・両親に追われたまま23歳になり、そこでガンが判明した。だからアンは自分の人生を生きようとする。その結果が「死ぬまでにしたい10のこと」なのだ。

ここからネタバレ

映画のラストシーンを隠していないので注意!

最後の死ぬまでにしたいこと

映画のクライマックス、『死ぬまでにしたい10のこと』の一つである「夫と娘たちのために新しいママを見つける」が叶う。

ヒロインのアンは、出産恐怖症だけど子供好きのアン(たまたま同じ名前)という女性に自分の子供を預けていた。そして同じ名前のアンを自分の家に誘うが、具合が悪くなったヒロインのアンは倒れてしまう(医者以外は病気を知らない)。

死ぬまでにしたい10のこと4

ヒロインのアンは、自分の代わりに家族の世話をして夫や子供たちに好かれるもう一人のアンをカーテン越しに見る。夫や娘たちが「アン」と呼ぶのは別の女性。ベッドで寝込むアンは、カーテンの向こう側に自分が死んでも幸せに生きていける家族の人生を見て満足する。それが『My Life Without Me(私のいない私の人生)』の正体だったのだ。

おわり

というように一人の女性の究極の優しさが描かれた映画だ。ちなみに英語だとアンは自分のことを「You(あなた)」と呼ぶので、観客がさらに感情移入しやすくなっている………と思う(俺も最近知った)。

病気で倒れるシーンや死ぬシーンをアクション映画のようにド派手に描く日本の難病映画と違って、何もかもを淡々と描く良作だ。

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今回のエントリを書いたキッカケはSPA!で『あなたになら言える秘密のこと』をネタにして申し訳なく感じたから。

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タイトルの意味が一番すごい映画はこれ。ポーカーを知らないご婦人がテキサスの5人のギャンブラーに戦いを挑むんだけど…。

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大傑作小説。文中に「渇き」という言葉は一切出ない。本の最後だけを読んでも意味がわからない。『果てしなき渇き』の意味は最初から最後まで読まないとわからない。2014年に『渇き。』のタイトルで映画化。

『あまちゃん』が東日本大震災を描いたけれど、阪神淡路大震災の時はどうだった?

日曜日, 9月 8th, 2013

『あまちゃん』が東日本大震災を描いて大きな話題になった。震災の回はかなりの緊張感を持って迎えられていたね。作品の中で東日本大震災と向き合うというのはまだまだ難しいんだなと感じる一方で、これで「あまちゃん以降」という区切りが生まれたので今後は色々な作品の中で東日本大震災が描かれることになると思う。

ところで阪神淡路大震災はどうやって映画の中で描かれたのだろうか。俺が印象に残っている3本の映画を取り上げます。寅さん以外の2本は両方とも関西映画で日本映画史に残るレベルの大傑作です。

第48作 男はつらいよ 寅次郎紅の花 HDリマスター版 [DVD]

寅さんシリーズの最終作。

まずは阪神淡路大震災と同じ1995年に公開された『男はつらいよ 寅次郎紅の花』から。阪神淡路大震災は1月に起きて、『寅次郎紅の花』は12月に公開された。本作が阪神淡路大震災を取り上げたことは公開大きな話題になった。

男はつらいよ01

劇中の時期は1995年の夏の終り。オープニングは寅さんへの連絡を乞う新聞広告から始まる。寅さんが1995年の1月に神戸に行ってからというのも、連絡が途絶えていた。神戸では震災が起きたのでみんな心配しているのだ。

男はつらいよ02

寅さんの妹たちは震災当時を振り返るニュース映像を見る。「ボランティア元年」は実際にある言葉で1995年を意味する。

男はつらいよ10

倒壊する家屋のシーンで顔を背ける妹のさくら。

男はつらいよ12

当時をリアルタイムで知っている人は、避難所を訪問する村山首相が印象に残っているであろう。しかしそのとき…。

男はつらいよ03

村山首相の隣でやたら偉そうな男が…。寅さんだ!

男はつらいよ04

「テレビを見ていると寅さんが出てくる」というのはこのシリーズが何度かやっている定番ギャグなんだけど、村山首相に馴れ馴れしい態度をとるギャグは破壊的に面白い。

男はつらいよ05

っていうか首相と知り合いになっているのかよ寅さん!

男はつらいよ06

こうして寅さんは震災でも死んでいなかったことが判明するのだ。

男はつらいよ08

映画のラストシーンは1996年の正月。寅さんはボランティアとして活動していた神戸の長田区に再び向かう。長田区は壊滅的な打撃を受けた場所で一部更地になっている。また長田区は在日コリアンの多い街なので、このシーンはずっと朝鮮舞踊が写っている。

男はつらいよ09

復興を象徴する神戸のパン屋の夫婦を演じるのは宮川大助・花子。

男はつらいよ13

これはシリーズ全体のネタバレになるので画像を小さくしておきます(クリックすれば大きくなります)。

本来はこのあとに2本作って寅さんシリーズは完結する予定だったが、渥美清は1996年にガンで死去。これが寅さんと渥美清の最後のセリフとなった。それを踏まえると渥美清の笑顔とセリフだけで泣けてくる。まさに「ご苦労様」である。

撮影中の渥美清には肝臓と肺にガンが転移しており、画像からもわかるようにガンの症状で顔がむくんでいる。顔がデカいことで有名な宮川大助と同じくらいの大きさになっている。

渥美清はとてもじゃないけど撮影できる状態ではなかったとのこと。実際、寅さんの登場シーンはだいぶ少なくなっているけど、それでも寅さんらしさを失わないように脚本でかなり工夫している作品だ。

男はつらいよ14

これが『男はつらいよ』全48作の最終シーン(クリックすれば大きくなります)。50作で完結予定だったので物語的には中途半端な状態で終わってしまった。しかし阪神淡路大震災後の更地と仮設住宅を写しながら、復興に向けた正月を写しながら終わるというのは正月映画『男はつらいよ』の最期に相応しい。


顔

商品専門検索エンジンgarittoから転載させてもらった画像

次は阪神淡路大震災の5年後の2000年に公開された『顔』。内容は美人の妹(牧瀬里穂)を殺した引きこもり中年のヒロイン(藤山直美)の逃亡劇が描かれている。

顔 [DVD]

2000年最高の日本映画で、数々の映画賞を受賞している。俺もゼロ年代を象徴する日本映画だと思っている。
予告編はこちら、中村勘三郎がなんとレイプ犯を演じている。

阪神淡路大震災は映画の前半で発生する。殺人犯となった姉はラブホテルの住込み従業員として潜伏しているが、そこで大きな地震が発生する。ヒロインは地震が妹を殺した自分に対する罰だと思い「バチが当たった!バチが当たった!」と揺れの中、右往左往する。

ラブホテルの経営者(岸部一徳)が「家族連れが来たらラブホテルに入れてあげてください」と言う心優しいシーンが印象的だ。だがこのあとに衝撃的なシーンがある。

震災後にヒロインが喫茶店のテレビで阪神淡路大震災の報道映像を見ていると、謎の女(内田春菊)に声をかけられる。二人は震災について会話した後に、大震災で死んだ人のために手を合わせるのだが………。この謎の女のモデルは実在の殺人者:福田和子なのである!つまりこのシーンはヒロインと福田和子という二人の人殺しが震災で死んだ人を弔うという皮肉なのだ!


シャブ極道 [DVD]

あまりにもヤバすぎる内容な上にDVDが絶版となり、中古DVDに高額なプレミアがついている状態だった。しかし今月下旬に祝・再発売!定価で買えるチャンスだ!

全部読むには課金が必要だけど、俺の『シャブ極道』評はWeb雑誌cakesで読めます⇒表現の自由を教えてくれた映画『シャブ極道』

最後は阪神淡路大震災の1年後の1996年に公開された『シャブ極道』。この映画の阪神淡路大震災ネタを解説することは、映画の完全なネタバレになるので注意してほしい。

主人公は「シャブを売って打って売りまくって日本を幸せにするんやー」という超危険思想の暴力団組長(役所広司)。主人公は弱小暴力団の組長なのに、シャブ禁止を掲げる日本最大の広域暴力団松田組(っていうか山口組ですね)と対立する。

主人公は松田組に親友を殺されたショックとシャブの打ちすぎで発狂状態になり、松田組の組長を殺す決意をする!あまりにも無謀すぎるため主人公の妻が止めようとするが、そのとき突然何もかもが揺れ出す!シャブの症状ではない、阪神淡路大震災が起きたのだ。発狂している主人公は地震を神からの祝福と解釈し、揺れの中走り出す。妻は地震で立つことができず主人公を止めることができない。

そして神戸は大打撃を負った。松田組は阪神淡路大震災の被災者を救おうと支援活動を行っているが、主人公はその隙を狙って松田組組長を殺そうとする!

俺は高校生の頃に『シャブ極道』を映画館で観たとき、この阪神淡路大震災のシーンで全身が震え上がるほどの衝撃を受けた。起きたばっかりの震災を過激なドラマに組み込んでしまうパワーに打ちのめされた。

ちなみに『シャブ極道』は18禁なので、年をごまかして観に行った。今だったらきっと俺のツイッターは炎上しているだろう。


『顔』も『シャブ極道』も強烈な生きる力を持っている犯罪者の主人公が、震災すらもその力で突き抜けてしまう様子を描いている。

東日本大震災で同じことを描くのは難しい。東日本大震災は津波が何もかもを奪い、原発が世界を脅かし、被災地は風評被害で延々と苦しめられ、首都圏への影響も大きかった。悲劇を比べるのは愚かだけど、やはり東日本大震災のほうが傷ついた人が多い。これに取り組んだ『あまちゃん』は確かに凄いと思う一方で、6434人が亡くなった阪神淡路大震災をネタに『顔』や『シャブ極道』を生み出せる関西パワーにも圧倒される。映画だろうがドラマだろうが作品にも災害と立ち向かう力がある。

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『男はつらいよ 寅次郎紅の花』のCG合成は『フォレスト・ガンプ』の影響を受けたのだろう。

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東日本大震災を題材にしたコメディは既に2012年に公開されている!俺の映画評はこちら⇒放射能とレディ・ガガ 東日本大震災コメディ映画『青いソラ白い雲』

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阪神淡路大震災そのものを描いた作品。薬師丸ひろ子も出ている。

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2014年にはシャブい役所広司が『渇き。』で帰ってくるぞ!


こういうエントリ書くと「テレビドラマ○○が阪神大震災扱ってますよ!」っていう情報が大量に寄せられますが、そういうのはいらないです。映画限定だし、取り上げるつもりもありません。