一枚のハガキ

2011年のべスト日本映画

一枚のハガキ【DVD】

俺の2011年のベスト日本映画は『一枚のハガキ』なんだけど、キネマ旬報のベスト日本映画でも『一枚のハガキ』が選ばれて嬉しかったので、それを記念して今回はこの映画について書きます。

映画の内容

いきなり何だけどあんまりオススメできる映画でもない。映画の設定は陳腐で…

主人公(豊川悦司)が戦友(六平直政)から預かったハガキを、未亡人となってしまった彼の妻(大竹しのぶ)に届ける

というもの。映画の内容はいかにもキネ旬が大好きそうな映画で、上映時間の半分は農村にある寂れた家の会話のみ。『美しい夏キリシマ』とか『キャタピラー』みたいな農民目線の反戦映画ってキネ旬大好きだよねぇ。まあそれでも俺が『一枚のハガキ』を高く評価する理由はたくさんある。

笑える悲劇

劇中で夫の戦死を「滑稽なこと」として演出しているのに感心した。村人たちの万歳三唱と共に戦地へ行った夫が、次の瞬間骨壺になって帰ってくる編集は吹き出しそうになった(その後骨壺ですらなかったことが判明する)。奇跡的に生き延びたトヨエツが悲劇の里帰りをするのも笑ったし、日本軍の兵士たちが死地に赴く前に昭和天皇から承ったイカゲソをかじっているのもおかしくてしょうがない。

これらは実際に戦友を奪われていった新藤兼人監督だからこそできる荒業だよね。戦後生まれの映画監督たちが日本軍の悲劇をギャグとして描けるとは思えない。

一枚のハガキ

『一枚のハガキ』は反戦映画だけど鑑賞会には今上天皇も参加している。さすが平和を愛するリベラル天皇だ。

以下ネタバレ

日本への不信感

この映画の後半でポイントなるのは日本への不信感だ。大竹しのぶの2人の夫は日本軍のメチャクチャな方針の犠牲となった。トヨエツも戦友がみな死んで、故郷に居場所も無くなった。

2人とも生粋の日本人で日本での生き方以外が考えられないのに、もう日本が信用できなくなってしまった。戦後の2人の姿は現代の日本人にも通じる。

農村について

貧しい農村の描き方も怖い。長男の嫁に頼らざるを得ない両親(柄本明・倍賞美津子)は、長男が戦死すると嫁に土下座して家に残らせる。そして次男と結婚させる。このときの柄本明の土下座しながらほくそ笑む表情が怖い。家に取り憑く不幸という概念も上手く脚本にいかされている。

ちなみに出演者全員の演技が素晴らしい映画で、特に倍賞美津子と大竹しのぶは最高だ。こういう映画観てしまうとアイドル映画がキツくなってしまう。アイドルたちだって映画ではちゃんと演技してたりするんだけどね、やっぱり本物たちに比べると差がデカすぎる。

映画のオチについて

映画のオチはひねりが一切ない上に、ポスターやらジャケットやら公式サイトのTOP画像で完全にネタバレしている。

映画のオチは日本が嫌いになりブラジルへ移住しようとした2人が、それでも日本に残って麦農家を始めるというもの。麦は踏めば踏むほど強くなる。ボロボロになっても多くの死に遭遇しても、日本で生きていくことを選んだ二人の姿は震災後の日本の状況にも重ねることができて味わい深い………けど今の日本はその農地の汚染が問題になっているんだけどね。

新藤兼人監督

俺はこの映画の前情報を何も持ってなくて「新藤兼人の遺作も同然だから観に行くか!(注:新藤兼人は死んでません)」程度の気持ちで観に行ったら、そのパワフルさに驚かされた。99歳にもなってこんな映画が撮れる新藤兼人に感服です。撮影現場では新藤兼人本人じゃなくて孫娘さん(この人も監督)が頑張っていた、という真相を知ったときはショックだったけど、もう映画が撮れなくなる新藤兼人よりも新しい才能が残ったということを歓迎したい。新藤兼人監督、今まで数々の傑作をありがとうございます!お元気で!例えあの世に行っても!

午後の遺言状 [DVD]新藤兼人の映画は北野武以上に世界的知名度が高い名監督なんだけど、国内では一般的には知られていない。新藤兼人作品にチャレンジしたい人はこの作品が比較的万人向けでオススメ。

原爆の子 [DVD]原爆が落とされても見事に復興した広島だが……。『一枚のハガキ』とは打って変わって今の日本人が観ると暗い気持ちになる。

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