情報に強い人

『マイマイ新子と千年の魔法』という質の高いアニメ映画がある。去年の映画だ。公開当時はまったくの不入りだったのですぐに打ち切られる予定だったが、公開終了直前に質の高さがネット上の話題になった。しかしネットで話題になったから公開を拡大しようとしても、上映作品のスケジュールはビッチリ決められているので急に拡大公開することはできない。そのため『マイマイ新子と千年の魔法』はレイトショーやモーニングショーで上映を続けた。

去年『マイマイ新子と千年の魔法』のモーニングショーを観たんだけど、その客層に驚いた。アラサー&アラフォーのオッサンたちだらけなのだ!もちろん俺もその中の一人だ。『マイマイ新子と千年の魔法』は客層をオタクに絞ったアニメではないので、かなり異様な光景だった。2人ほどいた女性客が客層にドン引きしていたのも印象的だった。しかもオッサンたちはみんな単独客らしく、上映終了後には満席なのに会話が一切発生していなかった。そりゃそうだ、土日の朝9時から一緒にアニメを観に行く友達なんてそうそういない。もちろん俺も独りだった。

観客たちはネット上で「打ち切り寸前の面白い映画がある!」という情報を見つけて『マイマイ新子と千年の魔法』を観に来たのだろう。ネット上では情報に疎い人たちを「情弱」とバカにする傾向がある。「情弱」は本来の情報弱者とは違う意味で使われており、蔑称として定着している。『マイマイ新子と千年の魔法』の観客たちがアニメ、映画、ネット全般、どれの情報に強かったかは分からない。でも映画の情報に強い俺は土日の朝9時から一人でアニメ映画の『マイマイ新子と千年の魔法』を観ていたのである。『マイマイ新子と千年の魔法』を観て以来、俺は「情弱」という単語をネット上で見かけるたんびにあの映画館の異様な客層&自分が思い浮かんでくる。いかにも情報に強そうなオッサンたちの光景。蔑称として「情弱」を使っている人って、現実だとどうなんだろう?

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