アイドル全盛の時代なのでアイドルを主役にした映画も多いんだけど、どれも超マイナーな作品ばっかり。だれ映集計作業中に聞いたこともない映画のタイトルがたくさんあったんだけど、ググるとたいていはアイドル映画だった。でもアイドルを主役にした映画は多いのに、アイドルそのものを描いた映画はほとんどない。ロックバンドの苦悩を描いた映画だとすごく一杯あるのに。
アイドルの苦悩を描いた映画だとAKB48のドキュメンタリーと、元アイドルのその後を描いた『パーフェクト・ブルー』くらいしか思いつかない。でも2006年の映画『バックダンサーズ!』はアイドルじゃないけど解散の危機にあるグループの舞台裏の描き方がけっこう面白くて好きな映画だ。『バックダンサーズ!』のモデルとなっているのは間違いなくMAX。
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高校時代からの親友同士だった(左から)hiroと平山あやはクラブでダンスを踊って補導されて退学となってしまう。2人は美人な女子高生ジュリ(右端)を加えて3人でダンスをする。ジュリを演じるのは長谷部優、調べてみたらエイベックスのdreamというグループのセンターだった。
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2年後にジュリはスカウトされてアイドルとしてデビューするがまったく売れなかった。しかしジュリは浜崎あゆみみたいなアーティスト路線にイメチェンしてブレイクする。
これは2006年の映画だけど今だったら逆だよな、「浜崎あゆみや宇多田ヒカルみたいな歌手路線でデビューしたけど、失敗したので握手会アイドルでブレイクする」とか。
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そしてレコード会社の意向でジュリにダンサーをつけることになった。hiroと、平山あやと、
元キャバ嬢のソニンと、オーディションに補欠合格したソロアイドルデビュー志望のサエコの4人だ。そしてジュリ with バックダンサーズというグループを結成する。
モデルは明らかに安室奈美恵 with SUPER MONKEY’S。 -
だけどジュリはIT社長と熱愛して引退騒ぎを起こす。ジュリに振り回されるレコード会社とバックダンサーズ。現実のhiroも恋愛騒動のあげくSPEEDを解散させているので、ちょっときわどい展開。どうでもいいがこのシーンのジュリはガンズのTシャツを着ている。
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ジュリはライブの最中に勝手に引退宣言する。現実ではこの2年後に
リア・ディゾンがライブの最中に妊娠4か月を宣言する。この後のレコード会社幹部が言うセリフ「引退しても必ず戻ってくる!男に入れあげて引退して本当に戻って来なかったのは山口百恵だけなんだよ!」が面白い。
またレコード会社幹部のやりとりで「ジュリのベストアルバムを出しましょう!」「2枚しかアルバムないのにベスト出せるか!」ってのがあるんだけど、現実でのhiroはこの映画が公開された年にアルバム2枚の状態でベストを出している。
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ジュリが引退して宙に浮いたバックダンサーズ。彼女たちはサマンサ・タバサのパーティに客として呼ばれたと思ってベロンベロンに酔っぱらう。だけど実はダンスの仕事で呼ばれたのであった。酔っぱらった彼女たちは「UFO」や「変なおじさん」を踊ってスキャンダルになる。
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同じレコード会社に70年代ロックバンドのスティール・クレイジー(
スティル・クレイジーのモジリになっている
)がいて、バックダンサーズは彼らのドサ周りツアーの前座までに落ちぶれる。写真からはわからないだろうけど、スティール・クレイジーのメンバーは陣内孝則(ボーカル)につのだ☆ひろ(ドラマー)。 -
楽屋でのスティール・クレイジー。彼らのおっさん臭さを演出するために陣内が頭を叩いているが、「頭を叩く=おっさん」という演出を思いつくこと自体がすでにおっさんだ。若い人にはわからないんじゃない?(頭を叩いて血行を良くしてハゲを治すという民間療法)
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ドサ周りの奮闘虚しくバックダンサーズは解散させられる。原因はスーパータイガース(スーパーモンキーズのもじり)というダンスユニットが売れっ子になったからだ。
バックダンサーズの経歴がソロデビューに傷つくと考えているサエコは、一人だけ25歳と年上のソニンに対して「一人でメンバーの平均年齢上げてんじゃねぇババア!」と罵ってしまう。
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バックダンサーズ解散後、ソニンはキャバ嬢に戻る。実は子持ちのソニンは実家に預けている子どもに仕送りする必要があるのだ。どうでもいいが左の男は酔っ払いの目の演技が良い。またhiroは解散の原因となったスーパータイガースに引き抜かれる。
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ソロデビューに憧れるサエコは田中要次からグラビアの仕事を引き受けるが、ヌードグラビアだと知って逃げ出してしまう。しかしこのエマニエル夫人風の椅子も古い演出だなー。エイベックスの最先端映画なのに、やたら70年代をリスペクトしているのがこの映画の特徴。この映画に出てくる若者たちは70年代マニアという設定になっている。
現実のサエコはダルビッシュ有とダルビッシュ翔とダルビッシュ紗栄子というダルビッシュグループからのソロデビューに成功している。
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まあ色々あってバックダンサーズは復活、サマンサ・タバサをスポンサーにして、大型ステージを設営して、チケットを売り切れさせる。が、実はゲリラライブだった!というすごいクライマックスが待っている。どういうゲリラライブだよ。ちなみにG-SHOCKはこの映画のスポンサー。
売れないグループの奮闘記という点ではすごく面白いんだけど、肝心の「ダンスに賭ける想い」「父と娘の物語」「恋愛モノ」がイマイチ。エイベックスらしさ全開のダンスシーンが延々と続く中盤のダンスバトルとクライマックスはかなり興味が削がれる。キスをすると雪が降りだす恋愛シーンは出来の悪い韓流ドラマを見ているみたい。でもバックダンサーズに音楽的影響を与えるスティール・クレイジーという存在の使い方がうまい。
過去のロックバンド:スティール・クレイジーがツアーに回るという展開はクドカンの『少年メリケンサック(2009)』に似ている。『バックダンサーズ!』の脚本家の衛藤凛は女クドカンとも呼ばれている理由にちょっと納得。
クライマックスはみんなで力を合わせてイベントを成功させる!っていう展開なんだけど、スポンサーが全面に出ている若者向けの日本映画はこんな感じの展開が多いような気がする。俺はこういう展開を「文化祭オチ」って呼んでいる。
パーフェクトブルー【初回限定版】 [Blu-ray]『ブラックスワン』の元ネタ。
AUDIO GALAXY-RAM RIDER vs STARS!!!-『バックダンサーズ!』のサントラはRAM RIDERが関わっている。