映画『かぞくのくに』。一番左が妹で、その隣が北朝鮮から帰ってきた兄。
2012年のキネ旬ベスト邦画が『かぞくのくに』になった。ヤン・ヨンヒ監督の自伝的映画で、北朝鮮から病気の治療のために日本にやってきた兄との物語だ。
この映画で意味がわからなかったシーンがあった。兄を監視するために北朝鮮の怖い監視員がついて来るんだけど、その監視員が妹が働いている喫茶店でコーヒーにクリームと砂糖をガバガバ入れる。俺はこれを「北朝鮮ではクリームと砂糖が高級品なのかな?」と考えた………けど何か違うと思った。で、ツイッター上でヤン・ヨンヒ監督に質問したら答えてくれたことがある。元ツイートは中盤のシーンの詳細が「ネタバレ」として書いてあるけど、たいしたことないので読んでも大丈夫です。
@hakaiya 『かぞくのくに』。ブラックで飲める美味しい珈琲って”先進国”での事で。イクチュン演じたヤン同志は珈琲を飲む習慣が無い人というキャラクター設定。でも珈琲屋の家で出された珈琲を一生懸命飲んでしまう、というお茶目なシーン。威圧されてるリエとの力関係が揺れる瞬間。
— ヤンヨンヒさん (@yangyonghi) 8月 31, 2012
ヤン・ヨンヒ監督が言うには「ブラックで飲める美味しい珈琲って”先進国”での事」ということだった。なるほど面白いシーンだと思った。北朝鮮の監視員はブラックコーヒーの味の良さがわからない、それでもミルクと砂糖を使って一生懸命にコーヒーを飲もうとする。可笑しくて面白いシーンだ。後半になると愛国心と使命感溢れる北朝鮮の監視員が○○○するシーンがあって、それには可笑しな哀しさを感じさせる。
いい酒飲ませてやったのに、マズいと言うジャスティン・ティンバーレイク。
味がわかる人=裕福、味がわからない人=貧しいというのはよくある描き方で、嗜好品であるお酒が一番よく使われる。2012年のジャスティン・ティンバーレイクのSF映画『TIME』でもそんなシーンがあった。貧困層のジャスティン・ティンバーレイクが富裕層の酔っ払いをギャングから助けて廃ビルに逃げ込む。潜伏中に富裕層の男は身に着けていたスキットル(携帯用のウイスキーボトル)でジャスティン・ティンバーレイクにお酒を飲ませてあげるんだけど、ジャスティン・ティンバーレイクはそれを飲んで思わず「マズッ」と言ってしまう。二人の収入の違いを表現しているシーンだ。
俺はせっかく食べ物がおいしい日本に生まれたのに、味の違いがあまりわからない人間だ。ネスカフェのキャッチコピーは「違いがわかる男」だけど、俺は珈琲の味の良さがわからずブラックコーヒーなんて飲めない。でも『かぞくのくに』を観て以来ブラックコーヒーを飲むようにした。違いはまだわからないけど。
大沢たかおは違いがわかる
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コーヒーを使って富裕層を描くのは『最高の人生の見つけ方』もやっていた。大金持ちのジャック・ニコルソンが上手そうに飲む高級コーヒーを、庶民だけど知識溢れるモーガン・フリーマンがツッコミ入れる。
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2012年最高の日本映画に選ばれた『かぞくのくに』。
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北朝鮮から逃げた軍人が、食糧不足の祖国を思い出しながら日本のファミレスでがっつくシーンがある。