凄い映画を観た!凄すぎる!こんな映画が公開中だったなんて!
その映画とは『ボディ・ジャック』という日本映画だ。誰も知らないだろう。そういう僕も先日まで知らなかった。『ボディ・ジャック』の存在はid:tada-woさんと飲んだ時に初めて聞いて観に行った。柳下毅一郎さんもブログで『 ボディ・ジャック』を取り上げている。
『ボディ・ジャック』とはどういう映画なのか?以下が映画のキャッチコピーだ。
「ミドルエイジの再出発 感動のスピリチュアルなストーリー」
なんか危ない匂いが漂ってくる。
映画の内容を一行で表すと
「1960年代の全共闘運動の闘士がサラリーマンになったが、幕末の志士の霊に憑依されて連続殺傷事件を調査する。」
というものだ。たった一行にも関わらず狂いまくっている映画だということがよくわかる。
以下ストーリー解説でネタバレ。
- 主人公は学生運動の闘士だった。しかし学生運動では内ゲバなどが起きたため、主人公は日和ってコピーライターになる。
- 主人公が作った結婚式場のコピーがCMで流れる。
「いつの日か思い出になる恋がある。」
これ↑って結婚式場のコピーとしてはNGだろ。
- 主人公は妻と高校生の一人娘と暮らしている。しかし主人公は毎晩酒びたりなので家族関係は冷えていた。
- ある日主人公は幕末の志士の霊に憑りつかれる。その霊は主人公に何かを協力してもらいたいらしい。もちろん嫌がる主人公。しかし霊は主人公の体を乗っ取って飛び降り自殺しようとするので、主人公はあきらめて霊に協力する。
- 主人公はつぶやく。
「これじゃあまるでハイジャックじゃないか!いや………ボディ・ジャックだ!」
- 霊に憑かれたことにより、主人公はボディ・ジャックされた人間(幽霊に憑かれた人間)の見分けがつくようになった。ボディ・ジャックされた人間を見ると、青白い霊が見えるのだ。例えば情欲に支配された人間には狐の霊が憑いているのが見えるようになる。どーでもいいが情欲に支配された霊が全員女性という点がスゲーな。ちなみに女優の安藤希が情欲に支配されて狐顔になるメイクはかなり酷い。というかメイクですらなくて、東急ハンズで売ってるようなマスクを被っただけ。
- よく街中や電車でブツブツと喋っている人間がいるが、あれはボディ・ジャックされているのであった。
- 最近通り魔事件が起きるのも、もちろん犯人が人斬りの霊にボディ・ジャックされて起きる事件なのだ。みなさんこの真実を裁判員制度が始まるまでに知っておいてください。
- ということは犯人って無罪じゃないの?という当然の疑問が起こるが、そこは悪い霊にボディ・ジャックされるような人間は悪い心の持ち主だという酷すぎるフォローが入る。
- 主人公は霊と会話をしているうちに、その霊が幕末志士の「武市半平太」だと知る。武市半平太は、別の霊を100年間も探しているらしい。
- 武市半平太が探していた霊とは、ボディ・ジャックして通り魔事件を起こす霊のことだった。その霊の正体は人斬りとして名高い岡田以蔵だった。
- 主人公は会社で武市半平太に関する情報を集める。主人公と武市半平太は愛妻家という点で似ているらしい(主人公は酒ばっかり飲んでいるのに?)。
- 主人公は岡田以蔵についても調べる。岡田以蔵は武市半平太の手先となって暗殺を繰り返した挙句、武市半平太に毒殺されそうになった。だから岡田以蔵は武市半平太を酷くうらんでいた。また岡田以蔵は勝海舟から最新式のピストルを貰っていたらしい(これがクライマックスの伏線になっている)。
- 幕末の志士である武市半平太が主人公を選んで憑依したのは、主人公は心の奥底に革命の心を持っているからだった。
- 主人公の先輩が女子小学生に切りかかるという事件が起きる。先輩は警察から逃亡して主人公の元に会いに来る。先輩もボディ・ジャックされていたのだ。先輩は主人公に情報を伝えて警察に自首する。
- ある日主人公が会社で通り魔事件のニュース番組を見ていると、ニュース番組に岡田以蔵の亡霊が出てくる。ニュース番組に写っている人間に岡田以蔵が憑いているのか?そして岡田以蔵は武市半平太の「もっとも大切な人を殺す」と宣言する。しかし武市半平太の妻はとっくに死んでいる。
- 岡田以蔵が殺そうとしているのは、実は主人公の妻だった。武市半平太と主人公は関係ないのに?しかし「主人公と武市半平太は愛妻家という点で似ている」からというムチャクチャな理由がつく。
- しかし何故主人公が愛妻家だということを、岡田以蔵が知っているのか?もしかして岡田以蔵は主人公の周囲の人間に憑依しているのではないか?
実はニュース番組に岡田以蔵の亡霊が写っていたのではない!テレビを見ている主人公の後ろに岡田以蔵の亡霊がいて、それがブラウン管に反射したのだ!すげーなー、ブラウン管に反射する亡霊って。
- まあとにかく、岡田以蔵の亡霊が社内の誰かをボディ・ジャックしていたのだ。失恋でショックを受けるとボディ・ジャックされやすいらしいので、「一体誰が失恋して憑依されたのか?」というミステリーになる。一見くだらないが、このミステリーにはトリックや伏線やミス・ディレクションをちゃんと仕込んであって良い。
- オマケ話。主人公の妻を演じる女優の実年齢は42歳で、劇中の設定年齢も同じくらいだ。そして過去を回想するシーンでは、主人公の妻の女子高生時代が描かれるのだが、それも同じ女優が演じているのだ。42歳のセーラー服!さらに言うと女子高生時代のお姉ちゃん役を演じる重泉充香は26歳。42歳のお姉ちゃん役を26歳が演じるとは…。
- さあこっから↓がクライマックスだ!!凄いぞ!
- 主人公が家に帰ると、岡田以蔵に憑依された人間(最近失恋した人)が主人公の妻の喉元にカッターを突きつけていた。復讐に燃える岡田以蔵。何も出来ない主人公と武市半平太の霊。
- そのとき主人公の娘は何をしていたのかというと、ストーカーに追われて逃げていた。
- ストーカーを恐れて娘は家に逃げかえる!
- ストーカーも家に乗り込んでくる!
- 娘はなぜか主人公にタックルをかます!(わからん)
- なぜか岡田以蔵に憑依された人間がふっとぶ!(さっぱりわからん)
- 妻の喉元にあったカッターがストーカーに向かって飛んでいく!
- カッターはストーカーに刺さらなかったが、ストーカーはビックリして頭をぶつけて気絶する!(笑いたくても笑えない)
- そして武市半平太の霊と岡田以蔵の霊が壮絶な刀の戦いを繰り広げる!低予算映画らしいチャンバラだが、出来がすごく良い(アクション監督は別の人)。お互いの繰り出した突きがお互いの鍔に刺さるというアイデアもナイス。
- 武市半平太は岡田以蔵に競り勝った。武市半平太は倒れこんだ岡田以蔵を説得しようとするが………
- 岡田以蔵は勝海舟に貰ったピストルを取り出して武市半平太に突きつける!幽霊がピストル?
- 死を覚悟した武市半平太………幽霊が死を覚悟?
- 「バキューン!」という音がした。しかしピストルで撃たれて倒れたのは岡田以蔵だった。一体だれがピストルを撃ったのか?
- それは坂本龍馬だった!もう何でもアリだな。
- 坂本龍馬は岡田以蔵を諭して成仏させる。坂本龍馬と武市半平太も天上界に赴くことにした。
- 坂本龍馬は主人公も諭す。
「おんし(お前)の仕事は革命やろうが。剣をペンに持ち替えて革命じゃろうが。困ったことがあったら、ワシの名ぁ呼べ。すぐに駆けつける。」
- こうして主人公は会社をやめて革命を起こすために作家となる。
- ここで武市半平太の霊が爆弾発言をする。
[「ある子供がおんしの本を読んで、その子供が革命を起こすのじゃ」]
それってM・ナイト・シャマラン監督の『レディ・イン・ザ・ウォーター』と同じオチだろ!!というか何で幽霊が未来のことを予知するんだよ!
- エンドクレジットが流れる。ロックンローラーTOKMAが歌う『SUN CHILD』が流れる。
- 『SUN CHILD』が流れ終わると、『SUN CHILD』の生音が流れてくる。
- 場内が明るくなって後ろを見るとTOKMA本人がギターを持って、『SUN CHILD』を歌っている。
- TOKMA本人はギターを歩きながら歌い場内の最前列を目指す。最前列にはマイクスタンドが置かれている。た!たのむ!勘弁してくれ!それだけは勘弁してくれ!なぜなら………
僕は一人だけ最前列に座っているんだよ!手前に写っているのは僕の足とパンフレット。僕が超S級アリーナ席から動けないままミニライブが始まった。
『ボディ・ジャック』のミニライブは連休中だけのイベントらしい。でも映画が終わるとライブが始まるなんて、高橋ジョージ(創価学会)の『LUCKY LODESTONE』みたいだなぁ。と思っていたら『LUCKY LODESTONE』と『ボディ・ジャック』を作った映画会社は同じだった。そして『ボディ・ジャック』の原作は、実は幸福の科学絡みの小説なのだ。小説と比べると映画版は驚くほど宗教色を排除している。あのムチャクチャな小説をここまでマトモな作品にしたと感心するほどだ。次回更新では小説『ボディ・ジャック』を取り上げます。
2008-11-11
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