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トランスフォーマーVS原発

日曜日, 9月 4th, 2011

トランスフォーマー

『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』には原発ネタが二つ出てくる。両方とも序盤の状況説明のシーンだ。

一つはチェルノブイリで、オートボット(正義のトランスフォーマー)たちとアメリカ軍はチェルノブイリに行く。人が住めなくなった死の街の描き方はだいぶ大げさだが、彼らを案内するウクライナの役人が言うセリフ「私はここで家族を亡くした、私も被ばくしている、もう手遅れなのでマスクはしない」というセリフが重い。チェルノブイリ内で登場人物たちは事故とロボット生命体の間に隠されていた真実を知るという展開になっている。アメリカ人は「歴史的モニュメントに隠された秘密」「あの事件の真相は!」といった陰謀めいた話が大好きだけれど、チェルノブイリ原発を使うのは珍しいね。

だけどもう一つの原発の描き方は衝撃的だ。オートボットが原発をガンガン攻撃しているのだ。オートボットが攻撃する理由は「そこが違法な原子力施設(Illegal Nuclear Site)」だからだ。何だって!正義のロボットたちは違法な原子力施設を攻撃するのか!日本なんてヤバいじゃん、どこが狙われるんだ?2007年まで臨界事故を隠した志賀か?「検査のための調整運転中」と嘘つきながらちゃっかり稼働させていた泊や大飯か?立地が激ヤバの浜岡か?被ばくしやすい未成年を働かせていた高浜か?放射性物質を外部に放出しながら稼働する六ヶ所村か?住民投票を潰した柏崎か?隠ぺいやデータの改ざんや説明会のヤラセなんてどこの原発でもやってるぞ。こりゃあオートボットと日本の全面戦争だぜ!って冗談を書いたのは最後の太文字の部分だけであり、実際はオートボットが日本の原発を攻めることはない。

『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』でオートボットが攻撃している原発は「中東」と書いてあるけど、これがイランの原発なのは明らかだ。イランの原子力開発については国連が4回の経済制裁を行い、欧米は追加制裁も行っている。厳しい制裁を受けてまでイランや北朝鮮が原子力開発を続けるのは、以下の画像のような理由である。

原子力ポスターコンクール

ってのはもちろん嘘で、核兵器開発につなげるためだ。だからこそ国連や欧米社会が彼らの原子力開発を許さない。IAEAも全会一致でイランに対する非難決議をしている。以下はWikipediaのIAEAを説明する最初の一文だ

国際原子力機関(こくさいげんしりょくきかん、英: International Atomic Energy Agency:略称:IAEA)は原子力の平和利用を促進し、軍事転用されないための保障措置の実施をする国際機関である。

つまり『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』で正義のトランスフォーマーたちが攻撃しているのは軍事転用が目的の原発だ。日本が攻められることはない…はずだった。しかし石破茂が核抑止力としての原発開発を支持し、読売新聞も日本の原子力技術を「潜在的な核抑止力」としているのを読んでいると、日本もオートボットに攻められるんじゃないの?と思ってしまう。俺は子供のころデストロン(オートボットの敵、ディセプティコンのこと)が好きだったので、それでもいいけどね!

ところでオートボットとディセプティコンが戦っているそもそもの理由ってエネルギー問題なんだよね。

神様が祝福してくれた広島と長崎と福島

土曜日, 5月 28th, 2011

広島の司祭

以下の歌詞はロックバンド:レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの名曲『スリープ・ナウ・イン・ザ・ファイアー』のサビだ。

But I am the Nina, the Pinta, the Santa Maria
The noose and the rapist, the fields overseer
The agents of orange, the Priests of Hiroshima
The cost of my desire, sleep now in the fire

我は、ニーナ号、ピンタ号、サンタマリア号
絞首刑の縄、強姦者、奴隷監視人
エージェント・オレンジ、ヒロシマの司祭
我が欲望の代償は火の中で眠れ

「ニーナ号、ピンタ号、サンタマリア号」はコロンブスが乗っていた船で、ネイティブ・アメリカン虐殺のきっかけとなった。エージェント・オレンジはベトナムで使われた枯葉剤のことだ。「the Priests of Hiroshima」を「ヒロシマの僧侶」と訳しているサイトも多いけど、これは「司祭」が正しいと思う。日本に落とされた原爆は飛び立つ前に司祭の祝福を受けている。

この曲はキリスト教の元に行われた犯罪を意味している。うーん素晴らしい歌詞だ。アメリカのバンドがこんな歌詞の曲を作っているというのが凄い。社会問題を歌詞にする事自体をバカにしている「いきものがかり」とかいうヘタレに1万回くらい聴かせてあげたい名曲です。マイケル・ムーアが監督したゲリラライブのPVも最高にカッコいい。

長崎の鐘

戦後ベストセラーとなった『長崎の鐘』という小説がある。この小説はカトリック信徒の日本人によって書かれており「原爆は神の恵み」として表現されている。GHQにこの表現が気に入れられてGHQの検閲を通ったというエピソードもある。西日本新聞の検証記事から引用する。

「長崎の鐘」は原爆の惨状を克明に描き日本人の米国への反感をあおる恐れがあった。しかし、GHQにとって発禁にするには惜しい内容だった。なぜか。カトリック信徒永井の原爆観が対日政策上、極めて都合の良いものだったからだ。永井は「原子爆弾が浦上に落ちたのは大きな御摂理である。神の恵みである。浦上は神に感謝をささげねばならぬ」と書いている。GHQ検閲官の報告書には「長崎の鐘は原爆を地震や噴火といった天災のように描き、政治問題ととらえていない」とある。

このGHQの報告書から戦後のプロパガンダ事情がよくわかる。

福島の神

戦後から60年以上経った今、日本で同じようなことが行われている。経済財政担当相が神様を持ち出してきたのだ。時事通信の記事から引用する。

与謝野馨経済財政担当相は20日の閣議後会見で、東京電力福島第1原発事故は「神様の仕業としか説明できない」と述べた。同原発の津波対策に関しても「人間としては最高の知恵を働かせたと思っている」と語り、東電に事故の賠償責任を負わせるのは不当だとの考えを重ねて強調した。

おいおいおい。人間として最高の知恵を働かせた結果が「津波の指摘を無視した」とか「非常用電源は全部海側にあった」とかになるのか。原発の事故情報を隠ぺいするのは確かに人間の知恵だけどね。

酷い事態になると神や宗教を使って正当化しようとするヤツらが出てくる。別に宗教が悪いわけじゃない。信仰心が被災者を救う場面はこれからどんどん出てくるはず。冒頭に貼った震災の地で祈る僧侶の写真は世界中で感動を呼んだ。俺が怒りたくなるのは神を利用してまで事実から目を背けさせようとするヤツらと、そこまでして隠したい事実に対してだ。福島の悲劇が神の仕業だというなら、その神をチェーンソーでぶっ殺してやる!!

レスト・ウィ・フォーゲット。マリリン・マンソンの『ファイト・ソング』も神を利用する体制との闘争を煽る名曲。

バトル・オブ・ロサンゼルス。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンはとりあえずこれがおススメです。

Sa・Ga 全曲集神をチェーンソーでぶっ殺すゲーム。

笑える福島第一原発のニュース ベスト5

月曜日, 4月 25th, 2011

原発爆発


震災以降、原発関連のニュースばっかり積極的に読んでいる。

  • プルトニウムが再び検出された
  • 20キロ圏内は立ち入り禁止
  • 一日150兆ベクレル漏れている
  • 一番危険な4号機、そのプールは余震や水圧に耐えられないかもしれない

これはほんの一例。日本の絶望の未来を意味するニュースが毎日毎日流れてきて、気分が落ち込んでくる。でもごくたまに酷すぎて笑ってしまうニュースがあったりするので、俺が笑ってしまった原発ニュースベスト5を紹介します。

第5位 燃料棒の溶融を今さら認める

このニュースの見出しを読んだときは吹き出してしまった。燃料棒が溶融しているなんてみんな知ってるよ!

燃料棒の溶融、保安院が初めて認める 内閣府に報告(朝日新聞 4月18日)

福島第一原発1~3号機の原子炉内にある燃料棒は一部が溶けて形が崩れている、との見解を経済産業省原子力安全・保安院が示した。18日に開かれた内閣府の原子力安全委員会に初めて報告した。

保安院が燃料棒の溶融を認めたのはなんと4月18日。保安院の「現実を認めない」方針は酷いものがあるが、ここまでくると「現実がわかってない」のでは?と疑ってしまう。しかし保安院よりも酷い組織があるのだ………。

第4位 それでも燃料棒は溶融していない

その組織とはもちろん東電。東電が溶融を認めたのは保安院よりもさらに遅れて4月20日。しかも2号機と3号機についてはまだ認めていない。

【放射能漏れ】東電、1号機の燃料溶融の可能性認める 「炉心がドロドロに溶けた状態」 – MSN産経ニュース

福島第1原発事故で、東京電力の松本純一原子力・立地本部長代理は、1号機の燃料溶融について「炉心の状態が確認できないが、決して溶融していないと断定して申し上げているわけではない」と燃料溶融の可能性を認めた。20日の記者会見で話した。

「決して溶融していないと断定して申し上げているわけではない」という表現に笑ってしまった。政治家の答弁よりも複雑な表現だ。どんなにデータがある事象でも、不都合なことは絶対に認めようとしない東電の姿勢には見上げたものがある。圧力容器や格納容器が壊れていることを認めようとえせずに、「健全性が保たれている状態」「穴が開いているイメージ」とかずっと言い張ってたしね。

第3位 ベストを尽くした

無計画停電と計画入院と揶揄された東電の清水正孝社長だけど、4月13日に復帰して記者会見を行った。最悪の公害企業となってしまった反省が語られると思いきや…「ベストを尽くした」を連発したのであった。わはは、さすが東電の社長である。

東京電力社長「ベストを尽くした」強気の記者会見 – 法と経済のジャーナル Asahi Judiciary – WEBマガジン – 朝日新聞社(Astand)

東電の初動の意思決定の遅れを指摘されて↓

これは私の不在時でも適切に連携をとりながら進めてきておりましたので、ベストを尽くした対応をしてきたというふうに考えております。

ベストを尽くして爆発?とツッコミを受けたので、ベストで反論した↓

全力でベストを尽くしてきたと認識いたしております。

東京電力の落ち度について聞かれて↓

それが私どものオペレーション上のミスうんぬんという点については、私どもはこれまでもベストを尽くしてきて、また、現在もベストを尽くしつつある、このように考えております。

「3号機爆発を防ぐ」と発表しながら、実際は何もしていなかったことをつっこまれて↓

一つひとつの事象に対する対応はそのときどきのベストを尽くしてきていると申し上げておりますし

取締役としての原発事故の責任について↓

これまでの実際に対応してきた個々の手立て、これは私どもとしては、ベストを尽くしてきたと、このように考えております。

スポーツ選手じゃあるまいし、なんだこのやり取り。でも俺も仕事ミスったときは、この手でいこう。

第2位 福島第一原発の被ばくはノーカウント

世界が注目する福島第一原発の作業員たち。ところが彼らの待遇があまりにも酷いことは有名だ。最近だと時給1900円(しかも実働時間のみで拘束時間は払われない)の作業員が週刊誌で話題になった。

そして何よりも心配なのは彼らの被ばく線量。健康被害はもちろんのこと雇用問題もある。100ミリシーベルト以上被ばくすると5年間は放射線業務ができない、つまり原発での仕事ができなくなる。原発作業員にとっては失業どころでは済まない問題だ。しかし彼らを救う想定外な手段があった!

福島第1原発:作業員の被ばく線量 管理手帳に記載せず – 毎日jp(毎日新聞)

一方、作業員の被ばく線量を一括管理する財団法人・放射線影響協会の放射線従事者中央登録センターは「250ミリシーベルト浴びた労働者に通常規則を当てはめてしまうと、相当年数、就業の機会を奪うことになる。全く別扱いで管理する」と説明。
(中略)
復旧作業にあたる2次下請け会社の男性作業員(30)は3月下旬、現場で元請け会社の社員から「今回浴びた線量は手帳に載らない」と説明された。「250ミリシーベルト浴びて、新潟県の東電柏崎刈羽原発で働くことになっても250ミリシーベルトは免除される」と言われたという。

被ばくノーカンという発想も酷いが、これが普通に報道されているという現状も狂っている。そして「250ミリシーベルトは免除される」この一文を読んで笑い出してしまった俺も狂っている。免除されるってなんだよ。

作業員の現状の悪さは本当に酷い。週刊誌の報道によると、下請け作業員たちは東電側から「福島第一原発の被ばくとガンの関係性は証明できない」と説明を受けているとのこと。国難に立ち向かう彼らがそんなこと言われているんだから、数年後に被ばく者への健康被害でも東電が同じ説明で逃げるのはもう目に見えている。

第1位 ガスボンベが爆発

世界が震撼した2011年3月12日の福島第一原発一号機の爆発。ところが東電の説明は「建屋から煙が出ている」「ガスボンベが爆発した可能性」だった!この記事を読んだときは「ワハハ!」と声をあげて笑ってしまったよ。

検証・大震災:原発事故2日間(6)初動遅れ連鎖 現実直視できず – 毎日jp(毎日新聞)

与野党党首会談を終えた菅首相は執務室に戻ったが、東電からも保安院からも情報は入っておらず、問い合わせにも東電は「建屋から煙が出ている」というだけだった。首相は「なぜ官邸にすぐに報告できない。こんなことをしていたら東電はつぶれる」と、東電から派遣された幹部を怒鳴りつけた。幹部は「タービン建屋に保管しているガスボンベが爆発した可能性もあります」と説明したが、テレビ映像を見た首相には、小さなトラブルには思えなかった

全世界が大きなトラブルだと思ったよ!東電と保安院のグダグダな初期対応と情報隠しに菅首相はカンカンに激怒して、いわゆる「東電を恫喝」して問題になったわけだが、そりゃまあ怒るよなぁとしか言えない。

ガスボンベが爆発して煙が出る動画はこちらで見れます。

特別賞 「爆破弁」を使ってガス抜きしました

3月11日~20日のニュースを今見ると、能天気な報道もあって笑ってしまう。中でも凄いのは「爆破弁」だ。画像は【2ch】ニュー速クオリティ:福島原子炉 1号から爆発音のものを使わせてもらった。

爆破弁

テレビ局が原発の爆発を流しながら「あくまでも爆破弁を使ってガスを抜くような作業です」と解説している。動画はここで見れる。俺は最近この動画を知ったので大笑いしながら見たけど、リアルタイムで見てたら笑わなかった。なお「爆破弁」を主張した有冨教授は内閣官房参与になりました。


国が嘘を言い、企業が嘘を言い、メディアが嘘を言っている。それでも俺は彼らの発信するニュースを聞いて生活している。原発が爆発しても『マッド・マックス』や『北斗の拳』みたいな世紀末の時代は来なかった。国民が電気のために管理される『マトリックス』のような状態が明らかになっただけかも?

最後にお約束の一言を。これは笑いごとじゃないんだよ!

追加特別賞 大きな音とともに白煙が発生

色んな人から「他にも笑えるニュースあるよ!」って意見を頂きますが、@kmaebashiさんから教わった「東電用語」情報で笑ったのでご紹介します。この画像は福島第一原発三号機の爆発。

原発爆発

福島第一原発の三号機爆発の動画はこちら。かなりショッキングな映像だし、茫然とするキャスターの顔が印象的。でもこれが東電用語になると……

【PDFファイル】福島第一原子力発電所プラント状況等のお知らせ(4月25日 午後3時00分現在)

3月14日午前11時1分頃、1号機同様大きな音とともに白煙が発生したことから、水素爆発を起こした可能性が考えられます。。

ぶわははは!「白煙が発生」ってそういう問題じゃないだろ。色も黒じゃねーか。しかもこの「白煙が発生」が過去の話じゃなくて、現在の東電の認識というのが酷い。今後ネットで犯罪予告したい人は東電用語を使うといいよ。爆発騒ぎは「お前の会社で白煙が発生するぜ」で、毒物混入は「スーパーの食品に直ちに健康に影響が無いもの入れといたぜ」って言うの。

ちなみに1号機の内容はもっと酷くて

3月12日午後3時36分頃、直下型の大きな揺れが発生し、1号機付近で大きな音があり白煙が発生しました。水素爆発を起こした可能性が考えられます。

ってあるんだけど、その時間帯に地震なんて無かった。15時40分に地震あったけど震度1だった。じゃあその直下型の大きな揺れって何なの?どうしても地震のせいにしたいのだろうか?

東京原発 [DVD]すげえ面白かった。

高山正之にとっての非国民

土曜日, 4月 23rd, 2011

週刊新潮4月21日号で高山正之が最低の記事を書いた。今回の震災関連で色々と酷いコラムがあるが、その中でも最低のモノだ。引用する。

今回の震災にはもう一つ別の意味で恥しい記事があった。岩手、宮城の震災被害者が現地で苦しんでいる中、いち早く首都圏に避難してきた福島県民だ。

避難先で天皇陛下のご訪問を受けたいわき市民の何人かは跪座される陛下に胡坐(あぐら)で応じた。

地元は電源交付金に加え、町財政の9割を東電に負担させ、さらに現地で使う備品は鉛筆1本まで地元が独占納入してきた。共存関係にありながら、口を開けばさあ、どうしてくれる。

最初の一行が酷い。武道館に避難した人たちは福島第一原発から逃れてきた人たちで、そんな人たちの避難を非難するとは何事だ。ダジャレを書いといてなんだけど、雑誌のコラムを読んでここまで怒りが込み上げてきたのも始めてのことだ。

この週刊新潮4月21日号は宮内庁の「被災者のあぐら」についての見解発表後に発売されている。宮内庁の見解を引用しておく。

週刊新潮4月14日号に「両陛下『お見舞い』に胡坐で応じた避難者に誰か礼儀を」との見出しの記事があり,「男性の被災者で何人かが,両陛下を前に胡坐をかいて言葉を交わしていたのです。いずれも比較的若年層の人々でしたが,陛下が膝を折ってお話になっているにもかかわらず,そのままの姿勢でした」と述べられています。

天皇皇后両陛下は日頃から側近に対し,身体の不自由な人,あるいは何等かの事情により正座のしづらい人には決して無理をさせないようにとおっしゃっています。

また,ここに掲載されている写真の一つの人は,日本で勉学中のネパール人であったと聞いています。避難中というつらい状況下,また外国人の習慣の違い等を考えれば,両陛下も無理して正座をしなくてはいけないとはお考えにならないのではないかと思料します。

大戦中の天皇プロパガンダに憧れているタイプの愛国主義者と、時代に即した考え方を持つ今上天皇との間にずいぶんと差が出てきてしまったことがよくわかる。

高山正之は東電擁護の人で、もんじゅの担当者が自殺したことを引き合いに出して、東電を追究するメディアも批判している。また「福島の原発はアメリカのGE製なのに、アメリカに文句を言わないのが日本人の品格」といった意見も書いている。

ちなみに宮内庁は3/24に那須御用邸の風呂を避難者に解放した。この決定は天皇皇后のご意向とのこと。だけど東電は大量の避難者を生み出しておきながら日本中にある東電の保養所や寮を提供しなかった。激しい非難を受けても東電はなかなか動かず、東電がようやく避難者の受け入れを始めたのは震災から一か月近く経った4/8だ。愛国的な観点からすれば非難されるべきなのは福島県民じゃなくて東電だよ。

発電所で地震が起きる映画『HINOKIO』のスポンサーは東京電力

日曜日, 4月 3rd, 2011

HINOKIO

HINOKIO(ヒノキオ)

東北大震災&原発爆発後の更新ということで、東京電力がスポンサーの映画『HINOKIO』を取り上げる。空想的な設定に子ども同士の純粋なラブストーリーをうまく組み合わせていて、俺は好きな映画だ。でもこういう事態になってしまった以上、ちょっと心苦しいけど『HINOKIO』をネタにする意図で紹介する。

東京電力の提供でお送りします

どういう映画なのかは東京電力のサイトに載っているプレスリリースがわかりやすい。『HINOKIO』が東京電力のコマーシャル的な映画だということがよくわかる。

劇場用映画「HINOKIO(ヒノキオ)」製作への出資、参画について

平成16年4月28日

東京電力株式会社

当社はこのたび、平成17年初夏に公開予定の劇場用映画「HINOKIO(ヒノキオ)」(松竹配給)の製作に出資、参画することにいたしました。

本作品は、明日というイメージの近未来を舞台に、母親の死をきっかけに「ひきこもり」になってしまった少年が、科学者である父から贈られた「HINOKIO」という名の遠隔制御の介護ロボットを通じて、現実の社会に適応し、家族愛や友情、初恋に目覚めていくという感動的な物語です。

当社は、本作品のテーマである「社会とのつながりや人間同士のコミュニケーションの大切さ」という普遍的なテーマに共感するとともに、作品中で描かれるIHクッキングヒーターやバリアフリー住宅、高速インターネットなど近未来の生活シーンの「電化イメージ美術設計コンサルティング」として映画製作をサポートすることにより、オール電化の魅力や情報化されたクリーンで快適な暮らしをPRできることから、出資、参画を決定した次第です。

原発の未来

「IHクッキングヒーター」「バリアフリー住宅」「高速インターネット」が「明日という近未来」だとしているが………これらの要素は『HINOKIO』が公開された2005年でもそんなに近未来的な要素じゃないと思う。そしてオール電化やクリーンで快適な暮らしとあるが、現実の近未来である2011年は原発が爆発して放射能汚染が始まった。多くの人が予想していなかった未来だ。それでは映画の内容を紹介しよう。

以下の文章にはネタバレと不謹慎な東京電力&原発ネタが多く含まれています。


HINOKIO

映画のファーストカット。映画が始まった瞬間にスポンサー企業の名前がズラズラと出てくる公共事業的感覚が日本映画の特徴だ。東京電力の名前もある。

HINOKIO

映画の次のカット。原発政策を推進していた経済産業省もこの映画に関わっている。

HINOKIO

主人公は交通事故で母親を亡くしてひきこもりとなった小学6年生のサトル。サトルはヒノキオ(檜を使ったピノキオ)というロボットで小学校生活を送ることになった。燃料は電気である。

ヒノキオのVFXは不自然さが一切無いように作られていて、日本映画としてはかなりの高レベルだ。

HINOKIO

ヒノキオのクラスには委員長的存在の優等生メガネがいた。この子はどんどんマニアックな設定が後付けされていくので面白い。だがこの子が正式ヒロインではない。

HINOKIO
HINOKIO

ヒノキオは同じクラスのワルガキたちに目をつけられていじめられる。野球帽を被っているのがワルガキのリーダーのジュンだ。だがヒノキオはジュンたちと仲良くなりたいと思っている。

HINOKIO
HINOKIO
HINOKIO

ワルガキたちが廃工場でテレビを見ていると、ヒノキオがやってくる。テレビのニュースでは与野党の混戦と大震災予知の話をしている。映画館で観たときは「ナンじゃこりゃ」としか思わなかったが、東電映画として観るとものすごく緊張感があるシーンだ。この震災予知がクライマックスの伏線となっている。

HINOKIO

ワルガキたちのパシリとなってアビるヒノキオ。っつーか窃盗じゃん。
(アビる:ダンボール箱ごと商品を盗むこと 用例「災害で壊滅した地域ではアビる人が出没する」)。

HINOKIO

ヒノキオは体育の授業で美少女に恋する。演じるのは堀北真希だが、この子も正式ヒロインじゃない。右側に「REC」とあることからわかるように、これは録画モードになっている。っつーか盗撮じゃん。

HINOKIO

サトル(ヒノキオ)の自宅のキッチン。東京電力がスポンサーなので、オール電化キッチンをアピールするCMみたいなシーンがある。

HINOKIO

サトルの父親である中村雅俊が引きこもりのサトルに声をかけるシーン。手すりからわかるように、この自宅はバリアフリーになっている。自宅内に段差がないため車イスがすいすい動くシーンもある。

HINOKIO

釣りを通じてヒノキオとジュンは仲良くなっていく。海から巨大魚が出てくるシーンがあるんだけど、間違いなく放射能の影響。

HINOKIO

HINOKIO

ヒノキオとジュンは不良中学生に絡まれる。多重下請け構造で安全軽視したり、被爆する作業を外国人労働者たちにやらせていた東電さんには叶わないっスよ!不良中学生と戦うヒノキオのシーンはかなり楽しい。

HINOKIO

不良中学生たちの親玉はなんとメガネ美少女だった!なぜ彼女がヒノキオを狙うのだろうか?

HINOKIO

ヒノキオとジュンは死について語り合う。ヒノキオの答えは「死ぬと煉獄に行く」というものだった。そしてヒノキオは「煉獄の塔」について語りだす。煉獄の塔とは……衝撃の結論が!

HINOKIO

煉獄の塔とはなんと東京電力の発電所の煙突だった!そりゃまさに地獄を越えた煉獄だよな。

ちなみにこの煙突の火力発電所はとっくの昔に取り壊されているので、川崎の火力発電所とのCG合成かもしれない。

HINOKIO

釣りの最中にジュンは海に落ちてしまう。ジュンは服をかわかすのだが、ヒノキオはジュンの胸をアップにする………うん?ううん?あれ?

HINOKIO

実はジュンは女の子!この映画はヒノキオとジュンのラブストーリーだったのだ。俺もまったく気がつかなかったので、映画館で観たときは本当にビックリした。ここから映画はどんどんマニアックな方向に向かう。

HINOKIO

ジュンを演じるのは今や有名女優となった多部未華子。この映画は多部未華子の長編デビュー作でもある。『HINOKIO』での多部未華子の演技は素晴らしい。

HINOKIO

ジュンの体は汚いらしい。ちょっとくらい放射能を浴びても除染すれば平気だよ!じゃなくて、ジュンは性的虐待を受けていたのだ。このことは大人の観客だけが気がつくように細心の注意を払って演出されている。

HINOKIO

メガネ美少女がヒノキオを攻撃した理由が判明する。メガネ美少女はジュンのことが百合的な意味で好きだったのだ。だから誰もいない教室でこっそりジュンの笛を吹く。ちなみに堀北真希もジュンと特別な関係があることが、後々判明する。すごい展開だ!

HINOKIO

ジュンと仲が良いヒノキオに嫉妬するメガネ美少女はヒノキオが戦闘用ロボットだという疑惑を見つける。原発作業用のロボット持っていなくて、今になって外国から借りている東電がそんなロボット持ってるわけないじゃん!(注:ヒノキオを作ったのは東電ではありません)

HINOKIO

メガネ美少女は「危ない物が学校に来ているのは問題だと思います」と告発する。いやいや原発の危なさに比べたら全然大丈夫ッスよ!映画の中では彼女は間違っているが、現実では福島原発の問題点を告発した意見のほうが正しかった。だが俺も含めた大勢の日本人がガン無視、あまりにも壮大すぎる後の祭りとなった。

HINOKIO

いろいろ辛いことがあってヒノキオ(サトル)は電車に飛び込み自殺する。いやロボットじゃん、とツッコミたいところだがヒノキオが大ダメージを受けるとサトルも死ぬというマトリックス設定なのだ。そしてサトルは危篤状態となる。天国へと向かうサトルくんのショタヌードをお楽しみください。このあとカメラはぐるんぐるん回って、後ろから前からローアングルとなります。こういう画像をアップするとアグネスに怒られそうだが被災者支援(と折鶴)に忙しいらしいので大丈夫だろう。

HINOKIO

ヒノキオを救うためには煉獄の塔に行くしかない!ジュンはそう決意して、東電の発電所に向かう。しかし発電所の煙突に登りきったとき地震が起きて……ストーリーのネタバレはここまでにしておく。

HINOKIO

オマケ1:ヒノキオを製作しているスタッフの女性を演じるのは牧瀬里穂。

HINOKIO

オマケ2:サトルの母親を演じるのは原田美枝子。熟女マニア的にはこれくらいがちょうどいい。

HINOKIO

オマケ3:煉獄の塔周辺の光景。煉獄の塔とは東京電力の発電所のことなので、原発周辺も将来こんな感じになるのであろう。画面の女性の声優は林原めぐみ。

監督の意図

『HINOKIO』のネタ的な部分ばかりを抜き出してしまったけど、映画本編はもっと良い内容だ。監督&脚本&VFXの秋山貴彦がこの映画で描きたかったのは「コミュニケーション」で、登場人物たちはヒノキオを通じて本音でコミュニケーションをとっていく。ロボットを通じたコミュニケーションというアイデアは監督が80年代から考えていたらしいが、この映画が公開されたのは2005年。当時はケータイを使った新しいコミュニケーションが社会現象になっていた時期であり、相手の顔が見えなくても人と人が深く繋がるのはSFじゃなくて日常だった。時代が進んで『HINOKIO』のアイデアから新鮮さが失われてしまった。それでも俺はこの映画を心に傷を負った子供同士のファンタジーラブストーリーとして高く評価している。

東京電力がスポンサーになったことは、この映画にとって不幸だったと思う。監督は昭和的な世界観とSFを融合させたかったらしく、細かい小道具や演出はアナログ要素をうまく使っている。ところが東電の意図が働いているであろう最新の電化製品ネタが世界観とマッチしていない。

HINOKIOの本当の不幸

ちなみに『HINOKIO』は記録的な不入り映画でもあった。なんせ2005年の夏といえば『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』と『宇宙戦争』が公開されていた。だから『HINOKIO』はSFファンから無視された。運の悪いことにポケモンの新作とも公開時期が被っていたので子供の観客も来なかった。トドメを刺すように『バットマン・ビギンズ』も公開されていた。

『HINOKIO』はヒットしなかったし、俺みたいな一部の人間が支持しただけで世間からの評価も低い。原発が爆発し東電の管理体制や原発政策の問題点が次々に明らかになっている現状では、『HINOKIO』には「東電映画」という見方も出来るようになってしまった。とりあえず『HINOKIO』がテレビで流れることは二度と無いだろう。つくづく不幸な映画である。

ラストシーン

本当のネタバレになってしまうが、この映画のクライマックスでは危篤になったサトルは煉獄に向かう。そこには部屋があって死んだ母親と再会する。この展開は同じピノキオを題材にした某映画と同じだけど、『HINOKIO』が面白いのはジュンの存在だ。煉獄でサトルが母親と再会するためには、ジュンが煉獄の塔で笛を吹く必要がある。ジュンが煉獄の塔(煙突)を登るのは試練であり、塔から落ちるのは死(生まれ変わり)を意味する。母に会いたいサトルと、サトルを助けたいジュンの強い想いが現実となり、それぞれが成長していくクライマックスなのだ。

とあるジャーナリストの『HINOKIO』評論で「ジュンが男装するのは父親と同一化しているから」ってあったけど、全然違うよ!ジュンがボーイッシュなのは性的虐待を受けて女性としての自分が嫌いになったからだよ。だから映画のラストシーンでスカートを穿いたジュンが出てくるのは、性的虐待を乗り越えたことを意味するんだよ。

飛露喜 特別純米 無濾過生原酒 1800ml 2011年2月製造分 要冷蔵商品日本酒は苦手なんだけど、支援するつもりで福島のお酒飲んでみるか。