発電所で地震が起きる映画『HINOKIO』のスポンサーは東京電力

HINOKIO
HINOKIO(ヒノキオ)

東北大震災&原発爆発後の更新ということで、東京電力がスポンサーの映画『HINOKIO』を取り上げる。空想的な設定に子ども同士の純粋なラブストーリーをうまく組み合わせていて、俺は好きな映画だ。でもこういう事態になってしまった以上、ちょっと心苦しいけど『HINOKIO』をネタにする意図で紹介する。

東京電力の提供でお送りします

どういう映画なのかは東京電力のサイトに載っているプレスリリースがわかりやすい。『HINOKIO』が東京電力のコマーシャル的な映画だということがよくわかる。

劇場用映画「HINOKIO(ヒノキオ)」製作への出資、参画について

平成16年4月28日

東京電力株式会社

当社はこのたび、平成17年初夏に公開予定の劇場用映画「HINOKIO(ヒノキオ)」(松竹配給)の製作に出資、参画することにいたしました。

本作品は、明日というイメージの近未来を舞台に、母親の死をきっかけに「ひきこもり」になってしまった少年が、科学者である父から贈られた「HINOKIO」という名の遠隔制御の介護ロボットを通じて、現実の社会に適応し、家族愛や友情、初恋に目覚めていくという感動的な物語です。

当社は、本作品のテーマである「社会とのつながりや人間同士のコミュニケーションの大切さ」という普遍的なテーマに共感するとともに、作品中で描かれるIHクッキングヒーターやバリアフリー住宅、高速インターネットなど近未来の生活シーンの「電化イメージ美術設計コンサルティング」として映画製作をサポートすることにより、オール電化の魅力や情報化されたクリーンで快適な暮らしをPRできることから、出資、参画を決定した次第です。

原発の未来

「IHクッキングヒーター」「バリアフリー住宅」「高速インターネット」が「明日という近未来」だとしているが………これらの要素は『HINOKIO』が公開された2005年でもそんなに近未来的な要素じゃないと思う。そしてオール電化やクリーンで快適な暮らしとあるが、現実の近未来である2011年は原発が爆発して放射能汚染が始まった。多くの人が予想していなかった未来だ。それでは映画の内容を紹介しよう。

以下の文章にはネタバレと不謹慎な東京電力&原発ネタが多く含まれています。


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映画のファーストカット。映画が始まった瞬間にスポンサー企業の名前がズラズラと出てくる公共事業的感覚が日本映画の特徴だ。東京電力の名前もある。

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映画の次のカット。原発政策を推進していた経済産業省もこの映画に関わっている。

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主人公は交通事故で母親を亡くしてひきこもりとなった小学6年生のサトル。サトルはヒノキオ(檜を使ったピノキオ)というロボットで小学校生活を送ることになった。燃料は電気である。

ヒノキオのVFXは不自然さが一切無いように作られていて、日本映画としてはかなりの高レベルだ。

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ヒノキオのクラスには委員長的存在の優等生メガネがいた。この子はどんどんマニアックな設定が後付けされていくので面白い。だがこの子が正式ヒロインではない。

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ヒノキオは同じクラスのワルガキたちに目をつけられていじめられる。野球帽を被っているのがワルガキのリーダーのジュンだ。だがヒノキオはジュンたちと仲良くなりたいと思っている。

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ワルガキたちが廃工場でテレビを見ていると、ヒノキオがやってくる。テレビのニュースでは与野党の混戦と大震災予知の話をしている。映画館で観たときは「ナンじゃこりゃ」としか思わなかったが、東電映画として観るとものすごく緊張感があるシーンだ。この震災予知がクライマックスの伏線となっている。

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ワルガキたちのパシリとなってアビるヒノキオ。っつーか窃盗じゃん。
(アビる:ダンボール箱ごと商品を盗むこと 用例「災害で壊滅した地域ではアビる人が出没する」)。

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ヒノキオは体育の授業で美少女に恋する。演じるのは堀北真希だが、この子も正式ヒロインじゃない。右側に「REC」とあることからわかるように、これは録画モードになっている。っつーか盗撮じゃん。

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サトル(ヒノキオ)の自宅のキッチン。東京電力がスポンサーなので、オール電化キッチンをアピールするCMみたいなシーンがある。

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サトルの父親である中村雅俊が引きこもりのサトルに声をかけるシーン。手すりからわかるように、この自宅はバリアフリーになっている。自宅内に段差がないため車イスがすいすい動くシーンもある。

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釣りを通じてヒノキオとジュンは仲良くなっていく。海から巨大魚が出てくるシーンがあるんだけど、間違いなく放射能の影響。

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ヒノキオとジュンは不良中学生に絡まれる。多重下請け構造で安全軽視したり、被爆する作業を外国人労働者たちにやらせていた東電さんには叶わないっスよ!不良中学生と戦うヒノキオのシーンはかなり楽しい。

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不良中学生たちの親玉はなんとメガネ美少女だった!なぜ彼女がヒノキオを狙うのだろうか?

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ヒノキオとジュンは死について語り合う。ヒノキオの答えは「死ぬと煉獄に行く」というものだった。そしてヒノキオは「煉獄の塔」について語りだす。煉獄の塔とは……衝撃の結論が!

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煉獄の塔とはなんと東京電力の発電所の煙突だった!そりゃまさに地獄を越えた煉獄だよな。

ちなみにこの煙突の火力発電所はとっくの昔に取り壊されているので、川崎の火力発電所とのCG合成かもしれない。

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釣りの最中にジュンは海に落ちてしまう。ジュンは服をかわかすのだが、ヒノキオはジュンの胸をアップにする………うん?ううん?あれ?

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実はジュンは女の子!この映画はヒノキオとジュンのラブストーリーだったのだ。俺もまったく気がつかなかったので、映画館で観たときは本当にビックリした。ここから映画はどんどんマニアックな方向に向かう。

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ジュンを演じるのは今や有名女優となった多部未華子。この映画は多部未華子の長編デビュー作でもある。『HINOKIO』での多部未華子の演技は素晴らしい。

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ジュンの体は汚いらしい。ちょっとくらい放射能を浴びても除染すれば平気だよ!じゃなくて、ジュンは性的虐待を受けていたのだ。このことは大人の観客だけが気がつくように細心の注意を払って演出されている。

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メガネ美少女がヒノキオを攻撃した理由が判明する。メガネ美少女はジュンのことが百合的な意味で好きだったのだ。だから誰もいない教室でこっそりジュンの笛を吹く。ちなみに堀北真希もジュンと特別な関係があることが、後々判明する。すごい展開だ!

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ジュンと仲が良いヒノキオに嫉妬するメガネ美少女はヒノキオが戦闘用ロボットだという疑惑を見つける。原発作業用のロボット持っていなくて、今になって外国から借りている東電がそんなロボット持ってるわけないじゃん!(注:ヒノキオを作ったのは東電ではありません)

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メガネ美少女は「危ない物が学校に来ているのは問題だと思います」と告発する。いやいや原発の危なさに比べたら全然大丈夫ッスよ!映画の中では彼女は間違っているが、現実では福島原発の問題点を告発した意見のほうが正しかった。だが俺も含めた大勢の日本人がガン無視、あまりにも壮大すぎる後の祭りとなった。

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いろいろ辛いことがあってヒノキオ(サトル)は電車に飛び込み自殺する。いやロボットじゃん、とツッコミたいところだがヒノキオが大ダメージを受けるとサトルも死ぬというマトリックス設定なのだ。そしてサトルは危篤状態となる。天国へと向かうサトルくんのショタヌードをお楽しみください。このあとカメラはぐるんぐるん回って、後ろから前からローアングルとなります。こういう画像をアップするとアグネスに怒られそうだが被災者支援(と折鶴)に忙しいらしいので大丈夫だろう。

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ヒノキオを救うためには煉獄の塔に行くしかない!ジュンはそう決意して、東電の発電所に向かう。しかし発電所の煙突に登りきったとき地震が起きて……ストーリーのネタバレはここまでにしておく。

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オマケ1:ヒノキオを製作しているスタッフの女性を演じるのは牧瀬里穂。

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オマケ2:サトルの母親を演じるのは原田美枝子。熟女マニア的にはこれくらいがちょうどいい。

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オマケ3:煉獄の塔周辺の光景。煉獄の塔とは東京電力の発電所のことなので、原発周辺も将来こんな感じになるのであろう。画面の女性の声優は林原めぐみ。

監督の意図

『HINOKIO』のネタ的な部分ばかりを抜き出してしまったけど、映画本編はもっと良い内容だ。監督&脚本&VFXの秋山貴彦がこの映画で描きたかったのは「コミュニケーション」で、登場人物たちはヒノキオを通じて本音でコミュニケーションをとっていく。ロボットを通じたコミュニケーションというアイデアは監督が80年代から考えていたらしいが、この映画が公開されたのは2005年。当時はケータイを使った新しいコミュニケーションが社会現象になっていた時期であり、相手の顔が見えなくても人と人が深く繋がるのはSFじゃなくて日常だった。時代が進んで『HINOKIO』のアイデアから新鮮さが失われてしまった。それでも俺はこの映画を心に傷を負った子供同士のファンタジーラブストーリーとして高く評価している。

東京電力がスポンサーになったことは、この映画にとって不幸だったと思う。監督は昭和的な世界観とSFを融合させたかったらしく、細かい小道具や演出はアナログ要素をうまく使っている。ところが東電の意図が働いているであろう最新の電化製品ネタが世界観とマッチしていない。

HINOKIOの本当の不幸

ちなみに『HINOKIO』は記録的な不入り映画でもあった。なんせ2005年の夏といえば『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』と『宇宙戦争』が公開されていた。だから『HINOKIO』はSFファンから無視された。運の悪いことにポケモンの新作とも公開時期が被っていたので子供の観客も来なかった。トドメを刺すように『バットマン・ビギンズ』も公開されていた。

『HINOKIO』はヒットしなかったし、俺みたいな一部の人間が支持しただけで世間からの評価も低い。原発が爆発し東電の管理体制や原発政策の問題点が次々に明らかになっている現状では、『HINOKIO』には「東電映画」という見方も出来るようになってしまった。とりあえず『HINOKIO』がテレビで流れることは二度と無いだろう。つくづく不幸な映画である。

ラストシーン

本当のネタバレになってしまうが、この映画のクライマックスでは危篤になったサトルは煉獄に向かう。そこには部屋があって死んだ母親と再会する。この展開は同じピノキオを題材にした某映画と同じだけど、『HINOKIO』が面白いのはジュンの存在だ。煉獄でサトルが母親と再会するためには、ジュンが煉獄の塔で笛を吹く必要がある。ジュンが煉獄の塔(煙突)を登るのは試練であり、塔から落ちるのは死(生まれ変わり)を意味する。母に会いたいサトルと、サトルを助けたいジュンの強い想いが現実となり、それぞれが成長していくクライマックスなのだ。

とあるジャーナリストの『HINOKIO』評論で「ジュンが男装するのは父親と同一化しているから」ってあったけど、全然違うよ!ジュンがボーイッシュなのは性的虐待を受けて女性としての自分が嫌いになったからだよ。だから映画のラストシーンでスカートを穿いたジュンが出てくるのは、性的虐待を乗り越えたことを意味するんだよ。

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