ケータイは僕たちの生活を便利にしただけではない。悪しき文化も色々生み出した。ケータイマナーの問題、ケータイを使ったイジメと犯罪、そしてケータイ小説。映画館で映画を観ると必ず「ケータイの使用は禁止です!」ってCMが流れるけど、そんなCM流すより「ケータイ小説の映画化は禁止です!」というCMを流したほうがよっぽど映画界のためだろう。
しかし僕は『恋空』に『未来予想図』みたいな破壊力を期待したので観に行った。確かに破壊力はあったが爆笑するほどでもないのでイマイチ。掲示板で常連さんが「薄っぺらな作品だ(ケータイだけに)。」と上手いこと書いているが、この映画の薄っぺらさに比べたら薄型ケータイもまだまだ厚いだろう。
例によって内容を解説する。全部バラしているんで『恋空』に泣こうとしない1200万人以外のマトモな人が読んでください。というわけで以下ネタバレ。
「てめえ!何で『三丁目の夕日』行かないで、『恋空』観に行ってるんだよ!」と怒られそうだが、いや僕は『三丁目の夕日』は面白い映画だと思うけど、あの世界観が苦手なんだよ…。
- 映画が始まると、女子高生のヒロイン:美嘉が過去の自分を回想する。どうして回想するのか説明がない。普通現在の物語からきっかけが発生して、そこから過去を回想するだろ?物語の文法を知らんのか?
- 回想が始まると美嘉がご飯を食べる前にグロスを塗っている。グロスを塗ることで恋への気持ちを表現しているんだが、何故ご飯の前に?この映画ダメだ。リアリティがまるで無し。
- 美嘉が家族揃ってからあげを食べている。何気ないシーンだがこれがラストの伏線になっているので覚えてて欲しいが、くだらない伏線なのでやっぱり忘れて欲しい。
- 美嘉は図書館で携帯を無くす。ストーカーが携帯を拾って携帯のデータを勝手に全部消す。何故消すのかと言うと、ケータイとは相手から連絡が来るものだからデータを消しても大丈夫なのだ!何それ?
- 美嘉はストーカーが誰かを知らない。ストーカーは毎日美嘉に電話をかけてくるので、めっちゃキモい。だがストーカーとの電話の最中に花火があがると美嘉は会ったこともないストーカーに恋をする。花火すげえ!『未来予想図』でも花火には抜群の破壊力があったな。映画をブチ壊す破壊力が。BGMはドリカムじゃなくてミスチルだけどまあ似たようなもんだ。
- 美嘉が金髪ストーカーに恋した理由は、ストーカーが優しいからだ(電話だけで何故そうわかるのかは不明)。
- ケータイを落としてから一月半たったある日、美嘉はストーカーと始めて出会う。ストーカーは金髪だった(以下金髪)。金髪は美嘉の誕生日プレゼントとして花を摘んでくる。だがこれが地雷だった。何故なら美嘉にとって花を摘むのは優しくない行為だからだ。美嘉は怒って逃げる。
- しょうがないので金髪は摘んだ花を植える。それを見た美嘉は金髪の優しさに気がついたので二人は付き合うことにした。金髪は誕生日プレゼントとして空気中の虹をプレゼント。
- 金髪は「川のような人」らしい。川っぽいところを全く演技演出できてないこの映画が凄いが、そもそも「川っぽい」が何なのか意味不明なのでそりゃ無理か。「川の流れのような人」ならまだわかるが「川のような人」って言われても………川つったってアマゾン川からめだかの学校まで色々あるんだよ!
僕も「川のような人」について考えたが、リバー・フェニックスくらいしか思いつかん。
- 金髪は美嘉に缶ジュースのお茶もプレゼント。
- 美嘉は学校抜け出して金髪とセックスする。といってもこの映画にセックスシーンは無い。さらに始まる前も終わった後も必ず服を着ている。終わっても服を着ているのは笑い所。
- 次のシーンはデートシーンだが美嘉が車で男たちに誘拐される。すごい展開の映画だ。
- 美嘉は誘拐犯たちの車から逃げ出す。どうやって逃げ出すのかというと普通にガチャって車から逃げ出す。っていうか車で誘拐する場合は被害者を真ん中に置いて誘拐犯で挟みませんか?
- 戦慄の強姦シーンのはずだが場所が花咲き乱れるお花畑なので、美嘉が「いやーん」とお花畑を逃げて強姦魔たちがお花畑で「待てえ」と追いかけるかなり強烈な絵面である。っていうかこの監督はバカか?
- こうして美嘉は犯される。さっきも書いたがレイプされても服は脱がされていない。下着すら見えない。プラトニックなレイプだね。
- 犯された美嘉の元に金髪がやってくる。誘拐されて連れて行かれた場所を金髪が何故知っているのかはこの映画最大の謎。こういう演出の場合ハリウッド映画だったら確実に金髪がレイプを計画した主犯である!しかし金髪は「おまえの場所がわかるのは愛の力だ!」と言わなきゃ言わないで済む言い訳を言う。
- 次のシーンで金髪はレイプの実行犯たちに会っている!何で会えるんだよ!やっぱ主犯じゃないの?
- レイプの主犯は金髪の元カノだった。金髪の姉が元カノの髪を切って制裁。五社英雄の映画みたいでここは面白い。
- 学校内で美嘉に対する謎の嫌がらせが猛烈に始まる。美嘉をヤラせる女として侮辱する内容だったが、あまりにも残酷すぎる嫌がらせの数分後には学校の図書室で美嘉と金髪がセックスしている。そんなことしてりゃ嫌がらせもされるって!
もう書かなくてもわかると思うが、このセックスシーンも着衣のまま。ここまで徹底していると笑える。
- この時点で上映時間40分なのにセックスとレイプシーンが3回もあるやる気マンマンな展開。この映画面白いかもしれない。
- 美嘉が妊娠する。受精したきっかけにちなんで子供の名前は図書室に由来する名前にしようと相談する。図書室以外でセックスしたことなかったのかよ!意外と回数少ないのね、前言の「やる気マンマン」は撤回します。
- 美嘉は家族の前でつわりになる。高橋ジョージ(父親)が「よし!俺が病院連れてってやるぜ」って行き先が産婦人科だったのでジョージがショックを受けて「ガーン」という表情になる。この編集の仕方だとギャグだよ!
- 出産を決意した美嘉は金髪に妊娠を伝える。美嘉と金髪は大声で喜びあう。レストランで高校生同士が妊娠を大喜びしているので周囲の客ドン引き。しかもBGMが『きよしこの夜』。さらに妊娠のお祝いがお菓子袋。ほとんどコメディ映画。
- お互いの親の承諾も取れた。しかし例の元カノが美嘉を階段から突き落として流産。この時点で二人はまだ高校一年生。
- 金髪は赤ちゃんに手袋をプレゼントする。金髪は映画の中で何度もプレゼントしているけど、どれも1000円未満だな。
- 金髪ガンになる。
- 金髪は美嘉が悲しむのでガンのことは内緒で別れることにした。どうやって別れるのかというと、美嘉を自分の家に呼んで他の女とキスして、その後二人の思い出の場所で指輪を投げつけて別れる。やりすぎ。
- 美嘉は友達の家で大学生たちとパーティーすることにした。パーティーの内容はジェンガ。
- この年のクリスマスはホワイトクリスマスだった。
- 美嘉はパーティーで出会った優しい男と付き合うことにした。
- 次の年のクリスマスもホワイトクリスマスだった。
- 美嘉の両親に離婚問題が持ちあがる。理由は高橋ジョージが自宅を会社の抵当にいれるというジェームズ・キャメロンみたいなことやろうとしたから。
- 離婚問題が悲しくてたまらないので、美嘉は優しい男の家に逃げ込む。次の日の朝優しい男は美嘉の両親の元へ行き、自己紹介の後に「彼女は朝まで僕の家にいました!」と元気良く暴言。これは「美嘉は離婚問題が嫌で家から逃げていたんですよ。」という意味だが、両親はそう受け取らないだろうよ。
- 美嘉と優しい男は昔の家族写真を取り出して高橋ジョージに離婚を思いとどまるように説得する。その写真を見て高橋ジョージと奥さんは幸せだった過去を思い出す。
- 高橋ジョージが「何でもないような事が幸せだったと思う」と言いだして離婚は取りやめになった。
- すいません↑の一行は嘘です。ホントは「(あの頃の俺達は)笑っているな」です。
- 高橋ジョージは家族を守るために自分の会社を潰す。こうして父さんの会社が倒産した。なんちゃって。
- 家族の今夜の夕飯はからあげだ。美嘉にとってからあげが幸せのメタファーなのだ。
- 次の年のクリスマスもやっぱりホワイトクリスマスだった。場所は九州なのにすげえなこの映画。繰返しギャグみたいで面白い。
- 優しい男は美嘉の流産のことも知っていたが、そんなことは全く気にしていない。美嘉を真に愛しているからだ。優しい男は美嘉への愛を示すために誓いの指輪をプレゼントする。美嘉もその誓いを受ける。その一時間後に美嘉は金髪がガンであることを知ったので「わたし!やっぱり金髪のところへ行く!あの人が好きだから」と言いだす。優しい男は当然止めるが美嘉は1時間前に貰った指輪を落とす。それを見て優しい男はもうなんか諦めて指輪を遠くへぶん投げる。こうして優しい男は映画から消える。
- 美嘉は入院中の金髪の元へ行く。そして大学を休学して金髪の介護をする決意をする。介護といっても編み物を編む程度の描写で実にウソ臭い。介護の辛さが全く描かれない。
- 金髪は薬の副作用で頭髪が抜けているはずなんだが、常に帽子を被っているのでそれがわからない。例え死ぬときでも帽子を被っている!
- ここでちょっと真面目に怒らせてもらうが、ラブシーンを描く時に服を脱ごうともしない女芸能人。副作用で髪の毛が抜ける闘病を描く時に髪の毛を剃らない男芸能人。そんな奴らで感動大作を撮らないで欲しい。演技のためなら何でもやる俳優たちはいくらでもいるはず。ちゃんとした俳優を使ってくれ。亀田大毅ですら頭丸めたぞ!
- 美嘉は自分のレイプを計画し赤ちゃんを殺した元カノと和解する。和解した理由は元カノが妊娠していたから。
- 金髪と美嘉は川原へ行って花を摘んで二人きりの結婚式をあげることにした。
- 金髪は「俺は死んだら空になる。」と言いだす。『俺の空』か。
- 金髪死にそうになる。美嘉は走りだしてもちろん転ぶ。
- 金髪死ぬ。
- 美嘉は川原へ行って自殺しようとする。しかしその瞬間ジョン・ウーの映画のごとく白いハトが出てきたので美嘉は自殺を止めた。そういや意味の無いスローモーションもあったから、そこもジョン・ウーっぽいな。どうしてハトが出てくるのかは、伏線が全く貼ってないのでさっぱりわからない。
そして空が光りだす。ラブファンタジーじゃなくて現実的な映画なのに愛を光で表現するとは凄いな。
- 美嘉は家族のもとへ帰る。ラストシーンのセリフは「今夜はからあげよ」。
- エンドクレジットに「原作:美嘉」と書いてあったのでのけぞった。ええええっ!これって自伝だったの?トリック映画のドンデン返しよりも強烈な落ちだぜ。
2007-11-11
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