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ステマでよさこいソーランを踊る『魔法遣いに大切なこと』

いきなりだが『こち亀』のステマネタの画像を見てほしい。

こち亀01
こち亀02

『こち亀』の109巻「ハイテクベーゴマ大ブーム!?」より。

両さんがハイパーベーゴマをゴーリキのようにゴリ押しで各メディアに売り出すというエピソードだけど、これをガチでやっている映画があった。デートでよさこいソーランを踊る『魔法遣いに大切なこと』だ。

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『魔法遣いに大切なこと』そのものについては2008年の「この映画はいったい誰が観に行くんだ 大賞」のアッシュさんのコメントがわかりやすく表現している。

五年も前に一度テレビアニメ化して(声優・宮崎あおい!)たいしたヒットもせず、今年もう一度アニメ化してもやはりぱっとせず、にもかかわらずとどめに実写映画化される作品

これの企画者は、いったいどんな超能力を持っているのか教えてください。

調べてみると、『魔法遣いに大切なこと』アニメ版は設定の矛盾などをツッコミ入れられていた。

実写版のヒロインは山下リオで、相手役は岡田将生。この世には魔法使いが実在して、魔法使いたちは日本の公務員として人々のために働いているという設定だ。以下ネタバレ。

魔法遣いに大切なこと1

魔法使いである山下リオと岡田将生は中盤のクライマックスで、座礁したイルカたちを魔法を使って助ける。そこで仲良くなった二人は食事をする。

魔法遣いに大切なこと2

そして二人はよさこいソーランの練習を観に行く。何でだよ!

魔法遣いに大切なこと3

ヒロインがいきなりよさこいソーランを踊り出す。

魔法遣いに大切なこと4

結局みんなで踊り出す。この後、よさこいソーランを踊った二人は急接近するのであった。

ググってネット上の感想を調べるとみんな戸惑っていた。実際このシーンは観るのも辛い珍シーンだった。

このシーンには大きな問題がいくつかある。

  • よさこいソーランに関する伏線が全くないし、このあと二度と出てこない。
  • 魔法使いという映画の世界観をよさこいソーランが完全にぶっ壊してしまった。
  • 二人が急接近するシーンなのに、映画とまったく関係のないよさこいソーランを使った。二人が仲良くなるきっかけはストーリーに関係のあることにすべきだった。おかげで二人が好きになった理由がよさこいソーラン以外に存在していない。

Wikipediaで調べてみると、二人をよさこいソーランに誘ったキャラは原作だと下北沢のストリートミュージシャンだった。なぜそれがよこさいソーランに変わったのか?そして何故主役たちが踊るのか?

調べてみたけれど、ちょっとわからなかった。よさこいソーランは北海道の夏の観光資源で(数年前やたらプッシュしてたね)『魔法遣いに大切なこと』は北海道も舞台なので、そこらへんの関係かもしれない。もしかしたらステマじゃなくて、単によさこいソーランを使いたかっただけかもしれんけど。


こういうステマチックな珍展開は日本映画でよくある。とくにメジャーなタレントを使った低予算映画がやりがちだ。パッと思いついた所だと

  • ファミマのチキンを褒めながら食べる榮倉奈々の『阿波DANCE』
  • バレエの映画なのに東方神起のライブでダンスの勉強をする黒木メイサの『スバル』。
  • 全編に渡ってスポンサーの商品が出てくる石原さとみの『フライング・ラビッツ』

プロデューサーがスポンサーに金を出させるときに「あのタレントに劇中ステマやらせますから!脚本で勝手にシーンを追加するので大丈夫です!」というコントみたいな展開があるのだろう。

何度か破壊屋に書いているけど、こういうのは「ステマ」じゃなくて「プロダクト・プレイスメント」と呼ばれていて、アメリカ映画でもガンガン使われている。しかし日本映画のやり方はセンスが悪い上に、スポンサーの都合で作品が壊されているので、「ステマ」という蔑称ちっくな言葉を使いたい。

なぜ日本映画のステマはこんなに酷いのかちょっと考えてみた。芸能事務所にとってタレントとは俳優というよりもスポンサーをつけて金を稼ぐ商品という側面が強い。さらに事務所にとってお客さんはファンじゃなくてスポンサーの企業たちだ。だから作品の質が軽んじられるだろう。特に原作ファンの想いなんて作り手にとっては邪魔なだけかもしれない。


ちなみに『魔法遣いに大切なこと』のラストは、ヒロインは魔法使い特有の難病でもうすぐ死ぬ。だから死んだお父さんのお墓にいって、魔法の力を使って死んだお父さんを蘇らせて結婚の御挨拶をしたら、ヒロインも死んじゃって残されたお母さん(永作博美)が号泣。しかも花婿はいなかった。という凄いオチだった。


エイベックスの映画なので東方神起が出てくる。

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アシンメトリーの映画『コズモポリス』

デヴィッド・クローネンバーグ監督の最新作:『コズモポリス』を観た。主演は『トワイライト』シリーズを通じて顔色が悪い人を演じたロバート・パティンソン。映画の設定は、成功した投資家エリックを演じるロバート・パティンソンがリムジンに乗って、金融パニックが起きているマンハッタンを移動するというもの。

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顔色が悪いロバート・パティンソン。

エリックは行く先々で色んな人と会うが、一度会った登場人物の多くが二度と出てこない。劇中のエリックは彼らと哲学的な会話を重ねる。残念ながら会話の内容を追うのはかなり難しく退屈だ。一番印象的なのは年上の愛人演じるジュリエット・ビノシュ(もう50歳近い!)とのラブシーン。

投資によって世界の金をかき集めるエリックだけど、彼自身の世界はおそろしく狭い。立ち上がることすらできないリムジンの中で完結している。トイレすらもリムジンだ。


以降:ネタバレ


この映画は後半になると非対称(アシンメトリー)のモノが多く出てくる。エリックは体内に非対称を持ち、顔半分だけクリームがついたままにする。またエリックの周囲にも非対称の顔を持つ男がいる。逆にエリックの失敗の原因となったのは対称性のある市場理論だった。

エリックがリムジンから解放されたとき、クライマックスとして究極の非対称が出てくる。イケメン金持ちであるエリックの非対称、それは無職のポール・ジアマッティだ。ポール・ジアマッティ演じるベノはエリックを殺そうとするが、エリックはベノを殺そうとしない。エリックにとってベノは非対称の自分だから。そして俺にはこの映画の結論がわからなかった。だって終わり方が…。

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放射能とレディ・ガガ 東日本大震災コメディ映画『青いソラ白い雲』

青いソラ白い雲

遂に東日本大震災を題材にしたコメディ映画が生まれた。早っ!といっても直接的にネタにしたわけでもないし、被災地を題材にしたわけでもない。ネタになっているのは震災後の滑稽な東京の姿だ。

今から映画の序盤のストーリーを解説します、序盤の展開のみネタバレとなっています。

映画のストーリー(震災前)

物語のヒロインは、ちょっとしたセレブ人生を歩んでいる女子高生リエだ。リエのお父さんは旅行会社を経営している結構な金持ちなので、リエは苦労知らず。さらにリエは美貌と美脚の持ち主なので、女子高生たちに大人気の読者モデルとしても活躍している。

2011年3月10日、リエは友人たちと集まって談笑する。リエは間近に迫った卒業式には出ないでロサンジェルスへ留学してしまう。卒業式に出ない理由はロサンジェルスでレディ・ガガのライブを観るためだ。リエの友人で歌手デビューが決まっているアズサは
レディ・ガガなんてマドンナのパクリ
と一刀両断するけど。

リエの元カレもやってきた。元カレはイケメンだけど、あまりにも頼りがいの無いナヨナヨした男なのでリエにフラれたのだ。そのとき地震が起きる(3月10日の前震)。元カレはニュージーランドのクライストチャーチ地震を引き合いに出して
「海外は危険、ロサンジェルスに行かないで安全な日本にいて」
とリエに頼むが、リエは
「ニュージーランドに近いのはロサンジェルスよりも日本よ」
と呆れる。

こうしてリエはロサンジェルスへ旅立った。次の日、東日本に大地震が発生した。東北地方は津波に襲われ、原発はメルトダウンした。

映画のストーリー(震災後)

2011年3月22日、リエは日本がどうなったのだろうと確認するためにガイガーカウンター持参で東京の自宅に戻ってきた。

リエが自宅前にいると、例の元カレがやってきた。元カレは被災地で震災ボランティアと活躍していて見違えるように男らしくなっていた。元カレは飼い主が津波で死亡した被災犬をリエに預けると、救援物資を抱えてまた被災地へ戻って行った。

震災の影響で旅行業界は大打撃を受けてリエの父さんの会社は倒産した。それどころか顧客に代金を返済しなかったため、お父さんは詐欺罪で逮捕された。自宅もヤクザに差し押さられてしまった。リエのクレジットカードは使えなくなったし、どこに行くにもタクシーを使うリエの現金はあっという間に無くなった。困り果てたリエだが
こんな時だからこそ日本人同士助けあおう!
という人にロサンジェルスに帰るための航空券も盗まれたために人生終了

しかたなくリエは公園で野宿する。お巡りさんが
「こんなところで寝ると危ないよ」
と諭してくると、寝ぼけたリエは
「危ない?ここは何ミリシーベルトですか?」
と聞き返す。

映画のストーリー(本筋)

食べ物も住む処も無くなったリエは被災犬と一緒に東京を歩く、その時リエの耳にレディ・ガガのボーン・ディス・ウェイをパクったとしか思えない日本語の歌が聞こえてきた。歌声のほうを見てみると、まったく客を集めていない路上アーティストがレディ・ガガのように熱唱しながら自主制作CDを売っていた。よく見てみると路上アーティストはアズサだった。震災のせいで歌手デビューの話が消えたアズサは、自分が嫌いなレディ・ガガをパクリながら流しで活動していたのだった。

リエはアズサに生活を助けてもらうようにお願いするが、セレブ人生を歩んできたため生活力が欠落しているリエと、たくましく現実を生きるアズサとの同居生活がうまくいくはずもなく…。

不思議の国のリエ

ここまでが序盤の展開だ。このあとはプチセレブ人生から転落したリエが庶民として生きて行くカルチャーギャップコメディとなる。カリスマ読者モデルだったリエがスーパー(のチラシの)モデルまで落ちぶれるとか。演技陣ではリエ役の森星(もりひかり)とアズサ役の村田唯の二人が抜群に良い。

でもこの映画は単なるカルチャーギャップじゃあない、リエが生きて行くのは震災後の東京だ。この映画が描くカルチャーギャップには東日本大震災と原発事故で価値観が変わってしまった日本人も含まれる。震災後の日本に住む俺が、震災後の人々を描いたこの映画を観てカルチャーギャップを感じるのだから不思議なもんだ。

監督の金子修介は本作を<「不思議の国のアリス」パターン>って表現しているけど、確かにそうだ。プチセレブだったリエが震災後の東京で奮闘する姿は、異世界を冒険するアリスに重なる。

リエが出会う人々は震災後で意識が変わった人々なのだ。例えば放射能を恐れるあまりデマメールを転送する人、放射能に襲われる日本から逃げ出さない外国人(ゴジラ好きというのが皮肉)、リエの犬が被災犬というだけでやたら感動するウザい人、っていうかそのウザい人ってこの映画の本来のメインターゲットじゃねえか!

警告

ネタバレが増えていきます。

メルトダウン

この映画で特に優れていると思ったシーンは、リエの状況をメルトダウンを使って説明しているところだ。リエが周囲の人たちが嘘ついていることに気が付くシーンがあるんだけど、その時ラジオからは政府と東京電力が炉心溶融を認めるというニュースが流れてくる。

東京電力がメルトダウンをしぶしぶ認め始めたのは5月になってから。リンク先は燃料の大量溶融、東電認める 福島第一1号機という2011年5月13日の記事だけど、2号機と3号機についてはまだ大量溶融を認めていなかった。

多くの日本人は3月の時点で「いやもう溶けているだろ!」とツッコミ入れていて、本当のことを言わない政府と東電にうんざりしていたはずだ。俺は4月の時点で東電の嘘を笑うエントリを書いて、10年以上やっている破壊屋史上最高アクセス記録となった。そんな俺でも5月の大量溶融の報道は「え?そこまで酷い状況なの?」と衝撃を受けた。

嘘つかれていることにリエが衝撃を受けるシーンに、原発事故隠しという日本人がもっとも強い衝撃を受けた嘘を重ねていて面白い。

東京電力と自主規制

そしてこのメルトダウンのシーンは、監督本人が「自主規制した」と言っているところでもある。さっきの「政府と東京電力が嘘ついていた」というシーンは伏線になっていて、クライマックスでリエが
「皆、ウソばっかり。政府と同じじゃない」
と周囲を糾弾するシーンに繋がる。しかしここは当然伏線を回収するシーンなので
「皆、ウソばっかり。政府と東京電力と同じじゃない」
というセリフになるべきだ。でも監督が削ってしまったのだ。

監督本人がこのシーンの自主規制について語っているが、確かに自主規制した監督の気持ちはわかる。商業映画で嘘つきの代表例として固有の社名を出すのは難しい。でも削らないで欲しかったかな。

犬と難病と妊娠と

俺がこの映画に大きく感動した理由がもう一つある。『青いソラ白い雲』を構成する要素は犬・難病・妊娠だ。これらは数年日本映画界で安易に使われてきた要素で、犬や難病キャラが出てくるだけで「あ、またか」とうんざりさせられる。またこういう要素を使う映画は駄作ばっかりだった。

でも金子修介監督はこれらの要素を逆手に取った。ヒロインは被災犬を押し付けられた人だし、妊娠ネタは「放射能だらけなのに妊婦がマスクしていないなんて!」と焦りだすキャラを登場させてギャグにしてしまう。難病で死ぬシーンもギャグっぽく撮っている。今までの日本映画が感動させようとして失敗してきた事に、逆のアプローチで取り組んでいるのだ。

放射能コメディ

『青いソラ白い雲』は2012年現時点で商業作品が震災や放射能をどこまでコメディとして扱えるか踏み込んでいる。震災後の状況を誰もコメディとして捉えることができなくて、唯一やってくれているのはネット上の不謹慎ギャグという状況が俺には不満だった。だからこそ『青いソラ白い雲』は2012年の俺の暫定ベスト1映画だ。

だけどこの低予算映画『青いソラ白い雲』はまったく話題にならなかった。監督のインタビューやブログを読んでいると宣伝から放射能コメディの要素が消されたのがよくわかる。ライターのとみさわ昭仁さんと飲み会に行ったときに、とみさわさんが
「この映画が大ヒットしていたら抗議する輩が出てきたと思う」
と言っていたけど、きっとその通りだろう。

でも『青いソラ白い雲』が踏み込んで描いたギャグの数々は、今後の日本の映画やテレビ番組作りにきっと良い影響を与えるはずだ。世間的な評価はマイナーな佳作コメディだろうけど本作は2012年を象徴する映画だ。これは『青いソラ白い雲』の最大級のネタバレなので、未見の人は可能な限りクリックしないで欲しいけど、今この時代にこういうキャラクターを登場させただけでもこの映画は素晴らしい

青いソラ白い雲

放射能コメディというのもこの映画の一つの要素に過ぎなくて、この映画はラストで震災後の日本をどうやって生きればいいのかまで踏み込んでくる。タイトルの本当の意味がわかったとき、感動というよりも清々しい気分になった。

オマケ

ちなみに金子修介監督は「犬と少女というテーマで映画を作ってくれ」という依頼を映画会社から受けていた。映画のテーマとしてはかなり安易なもので、同じテーマを扱った大橋のぞみとソフトバンクの犬が共演する映画『大好きなクツをはいたら』は完成することなく大橋のぞみごと消えた。

ばかもの [DVD]

同じ監督のこの作品も日本にある希望を描いた作品だったな。

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チェスのようなカーチェイス:ドライヴ

ドライヴ

俺はこの映画を観たときファーストカットで「あ、この映画ダメだな」と思ってしまった。ファーストカットはホテルの一室を写し出していて、サソリ柄のジャケットを着た主人公の背中が出てくる。カメラはそのままホテルの一室を舐めまわし、窓に向かうと夜の都会の光景が………って古すぎるんだよ!80年代の映画か?と思った。黒地に紫の筆記体フォントもこれまた古い。

けれど次に出てくる車の修理工場内のシーンで、逃し屋の主人公が仕事用の車を調達するので緊張が貼りつめてくる。そして強盗を乗せた主人公が警察から逃れるために車を発進させるんだけど、いやもう凄まじい緊張感のカーチェイスを堪能した。派手なぶつけ合いは一切なしで、車を何度も停止させながらゆっくり冷静に警察の包囲から逃れていく。『ワイルドスピード』や『トランスポーター』のような手に汗を握ることがまったく無いストレス解消用のカーチェイスとは全く違った、制限速度内のカーチェイスだ。いや、もちろん要所ではスピード上げまくるけど。

『ドライヴ』の監督はオープニングのカーチェイス(のBGM)にチェスをイメージしていたらしいけど、相手(警察)の出方を伺いながら車の停止と加速を繰り返していく様子はまさにチェスの駒のよう。

しかし映画の本筋も古臭かった。昼は映画のカースタントマンで夜は逃し屋の主人公は、無口で感情を表に出さない。そんな彼が子持ちの人妻に惚れる。そして人妻の夫が犯罪計画に巻き込まれたと知ったとき………って時代設定は一応現在だけどストーリーには現代らしさをまるで感じない。

でもこの映画は全体を古臭い演出で統一しておきながら、要所で斬新な演出を挿入してくる。特にヴァイオレンスシーンの直接的な表現はまさに現代映画。俺が観た時は観客から悲鳴が上がってた。中盤のカーチェイスも緩急のつけ方がうまい。

『ドライヴ』は演技陣に存在感ありすぎでそこも大きな見どころ。ここ数年絶好調のライアン・ゴズリングの無口演技が一番凄い。ライアン・ゴズリングは人妻とその子供に対しては優しい表情を見せるんだけど、ひとたびブチ切れると女の顔に正拳突きを打ちこみかねない殺気を出し始める。幼い人妻を演じるキャリー・マリガンと、強盗仲間となるクリスティナ・ヘンドリックスも魅力的。犯罪者のボスのロン・パールマンは似合いすぎていて怖い。

そういえばスットコ部長ことakiraさんがこの映画の主人公を

(タクシー・ドライバーの)トラヴィス・ビックルの草食系みたいなピュアで胡散臭い純愛野郎

って評していて爆笑した。

だいぶ変わった作品でもあるので、観た人によって評価が大きく割れそうな作品でもある。あとこの映画の監督が運転免許を持っていないというのは驚いた。そういえばバイク映画『トルク』の監督もバイクの免許持っていなかったな。

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一枚のハガキ

2011年のべスト日本映画

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俺の2011年のベスト日本映画は『一枚のハガキ』なんだけど、キネマ旬報のベスト日本映画でも『一枚のハガキ』が選ばれて嬉しかったので、それを記念して今回はこの映画について書きます。

映画の内容

いきなり何だけどあんまりオススメできる映画でもない。映画の設定は陳腐で…

主人公(豊川悦司)が戦友(六平直政)から預かったハガキを、未亡人となってしまった彼の妻(大竹しのぶ)に届ける

というもの。映画の内容はいかにもキネ旬が大好きそうな映画で、上映時間の半分は農村にある寂れた家の会話のみ。『美しい夏キリシマ』とか『キャタピラー』みたいな農民目線の反戦映画ってキネ旬大好きだよねぇ。まあそれでも俺が『一枚のハガキ』を高く評価する理由はたくさんある。

笑える悲劇

劇中で夫の戦死を「滑稽なこと」として演出しているのに感心した。村人たちの万歳三唱と共に戦地へ行った夫が、次の瞬間骨壺になって帰ってくる編集は吹き出しそうになった(その後骨壺ですらなかったことが判明する)。奇跡的に生き延びたトヨエツが悲劇の里帰りをするのも笑ったし、日本軍の兵士たちが死地に赴く前に昭和天皇から承ったイカゲソをかじっているのもおかしくてしょうがない。

これらは実際に戦友を奪われていった新藤兼人監督だからこそできる荒業だよね。戦後生まれの映画監督たちが日本軍の悲劇をギャグとして描けるとは思えない。

一枚のハガキ

『一枚のハガキ』は反戦映画だけど鑑賞会には今上天皇も参加している。さすが平和を愛するリベラル天皇だ。

以下ネタバレ

日本への不信感

この映画の後半でポイントなるのは日本への不信感だ。大竹しのぶの2人の夫は日本軍のメチャクチャな方針の犠牲となった。トヨエツも戦友がみな死んで、故郷に居場所も無くなった。

2人とも生粋の日本人で日本での生き方以外が考えられないのに、もう日本が信用できなくなってしまった。戦後の2人の姿は現代の日本人にも通じる。

農村について

貧しい農村の描き方も怖い。長男の嫁に頼らざるを得ない両親(柄本明・倍賞美津子)は、長男が戦死すると嫁に土下座して家に残らせる。そして次男と結婚させる。このときの柄本明の土下座しながらほくそ笑む表情が怖い。家に取り憑く不幸という概念も上手く脚本にいかされている。

ちなみに出演者全員の演技が素晴らしい映画で、特に倍賞美津子と大竹しのぶは最高だ。こういう映画観てしまうとアイドル映画がキツくなってしまう。アイドルたちだって映画ではちゃんと演技してたりするんだけどね、やっぱり本物たちに比べると差がデカすぎる。

映画のオチについて

映画のオチはひねりが一切ない上に、ポスターやらジャケットやら公式サイトのTOP画像で完全にネタバレしている。

映画のオチは日本が嫌いになりブラジルへ移住しようとした2人が、それでも日本に残って麦農家を始めるというもの。麦は踏めば踏むほど強くなる。ボロボロになっても多くの死に遭遇しても、日本で生きていくことを選んだ二人の姿は震災後の日本の状況にも重ねることができて味わい深い………けど今の日本はその農地の汚染が問題になっているんだけどね。

新藤兼人監督

俺はこの映画の前情報を何も持ってなくて「新藤兼人の遺作も同然だから観に行くか!(注:新藤兼人は死んでません)」程度の気持ちで観に行ったら、そのパワフルさに驚かされた。99歳にもなってこんな映画が撮れる新藤兼人に感服です。撮影現場では新藤兼人本人じゃなくて孫娘さん(この人も監督)が頑張っていた、という真相を知ったときはショックだったけど、もう映画が撮れなくなる新藤兼人よりも新しい才能が残ったということを歓迎したい。新藤兼人監督、今まで数々の傑作をありがとうございます!お元気で!例えあの世に行っても!

午後の遺言状 [DVD]新藤兼人の映画は北野武以上に世界的知名度が高い名監督なんだけど、国内では一般的には知られていない。新藤兼人作品にチャレンジしたい人はこの作品が比較的万人向けでオススメ。

原爆の子 [DVD]原爆が落とされても見事に復興した広島だが……。『一枚のハガキ』とは打って変わって今の日本人が観ると暗い気持ちになる。

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