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『明日、ママがいない』の悪影響はもう出ている

少女ポストが捨てられた理由

明日リム

このドラマで迷惑被っている人たちのほうが泣ける。日本テレビのスポンサー担当の姿が『明日、流すCMがない』のタイトルでドラマ化されたら俺は絶対に感情移入する。


『明日、ママがいない』を擁護する人たちの意見で「ドラマを責めるのはお門違い、実際に悪いのは子を捨てる親だ」というのがある。一般的な意見だけじゃない、複数の有名人たちが言っている

こういう意見が出ること自体が恐ろしい!何で恐ろしいのかってドラマの中で芦田愛菜演じるヒロイン:ポストが捨てられた理由はまだ判明してないのに、最初から親が非難されているのだ。「最後まで観てから文句言え」「フィクションを真に受けるほうがおかしい」ってそれはどっちの話だ。

『明日、ママがいない』の最終回予想

『明日、ママがいない』の設定は以下の通りだ。

  • ヒロインは幼い頃に母親に捨てられ、母親の顔を知らない。
  • 母親をとのつながりを自らタチ切るためにポストと自分から名乗るようにようなる

この設定から予測できる『明日、ママがいない』のオチは

  1. ヒロインの母親はやむを得ない事情で娘を病院に預けた。
  2. ヒロインはそのことを受け止める。ヒロインはそれでも母親を許さないが、母親が自分に与えてくれた本名を名乗るようになる。
  3. 名前を捨てた少女たちも最終回で自分の名前を取り戻す。
  4. 三上博史演じる魔王は子供たちによってトラウマを救われれることで、『クリスマス・キャロル』のスクルージのように改心する。
  5. 「あの子たちは将来子供を育てるだろう、あの子たちは明日のママなのだ」って三上博史が解説する。

これは俺のテキトーな予想だ。でもドラマを盛り上げるために「やむを得ない事情で娘を捨てた」という設定はやると思う。少なくとも「親が悪い人だから娘を捨てた」という簡単なオチにはならないはず(悪い人オチだったらゴメンなさい、現実には「こうのとりのゆりかご」を使って赤ちゃんの財産を奪う事件もあります)。でも多くの視聴者が「少女を捨てた親が悪い」と非難している。

一応補足しておくと、第一話では別の少女「ドンキ」が酷い親に捨てられる描写があるので、それで「親が悪い!」と言っているのなら何の問題もない。ただ擁護している人たちは「施設に悪評が出る」という懸念に対して「悪いのは施設じゃなくて親」という反論をしているのがほとんどだ。

虐待する親をかばう人たち

虐待する実親が叩かれる風潮については『明日、ママがいない』に抗議している全国里親会が放映前からを懸念していた。全国里親会は既に去年の時点で日本テレビに嘆願書を出している。嘆願書の文章から引用する。

児童の実親も観る可能性があります。実親はどうせ虐待をしたんだから、反論する資格はないと思っておられるのでしょうか。虐待をしようとして子どもを産む親はいません。経済的な事情や人間関係等がうまくいかなかったりすることにより虐待をしてしまうのです。昔の日本の社会であれば、近所や親戚が助けてくれましたが、今の時代はどの家も子育てが孤立化していることも大きな要因となっており、一概に責を実親だけに帰するわけにはいきません。メディアも含めた社会全体の責任と思います。

そこまで考慮すると何も表現できなくなるよ!虐待した親をかばうと今度は虐待された子供が傷つく。何を守るか難しい問題のようかもしれないけど、守らなきゃいけないのは「表現の自由」だ。

で、表現の自由の件はさておき、虐待された子供たちを救う里親会が虐待する実親たちをかばっている点は注目したい。

明日ママ10

「明日、ママがいない」を検索したら、子育ての孤独が出てきた。

フィクションの反応

ためしにツイッターで「明日 ママ 親」で検索かけると、子を捨てる親への非難と責任を追及するツイートがわらわら出てきた。

でも現実の「こうのとりのゆりかご」に預けられた赤ちゃんには母親が小学5年生だったこともあるし、性犯罪の被害者もいる。「こうのとりのゆりかご」は赤ちゃんだけじゃなくて望まない出産から女性を救うための側面が強い。また児童養護施設に子どもが預けられる原因には「親が重い心の病気」というのが多い。

里親会の嘆願書には……俺が要約した文章になるけど

お涙ちょうだい式のドラマで児童に対する国民の意識が高まる考えているとしたら不見識だ。里親の施設や努力があって児童は保証される。

と書いてある。児童を救うには施設や人員と資金、そして国民の理解が必要だ。施設には虐待を受けた子や障害を持つ子も多いため専門スキルを持つ人(とその人に支払う金)を確保しなきゃいけない。『明日、ママがいない』はこれらを無視してこそ成立するドラマなのだ。 もちろんフィクションなんだから無視して構わない。このドラマを割り切って楽しむのもまったく問題ない。『明日、ママがいない』の内容変更を「臭いものに蓋」と非難する有名人が多いけど、それは逆だ。このドラマこそが臭いものに蓋をして問題を隠しているのだ。

『明日、ママがいない』の感想を調べると、抗議した関係者や傷つく子供たちへの嫌味な言葉がたくさん出てくる。割り切って楽しむのは問題ないけど、割り切りすぎているのでドラマを楽しみながら児童福祉の現場をバカにする現象が起きている。ここまでの辛辣な反応は炎上商法狙った日本テレビ&製作側も予想しなかったと思う。『明日、ママがいない』は児童福祉の現場、虐待や子育ての孤立化解消に水を差している。


全国里親会の嘆願書には

本番組が、観る人の優しさに付け込んだ視聴率稼ぎの低俗番組に陥らないように、<中略>慎重かつ十分なご配慮をお願いします。

とあって笑ってしまった。まさに懸念通りのドラマだ。社会問題を描いて国民を社会問題から遠ざける作品も珍しいな。金を払って見る映画や漫画なら構わないけど、公共性の強いテレビドラマでやるべき内容ではなかった。

その他いろいろ
  • 「実際に現場で子供が傷ついているんです!」という施設や団体からの要望を無視し続けた日本テレビが、定例会見で「出演している子役たちの心のケアは万全です」と言ったのは最高に皮肉が効いていた。ケアしているのは良い事だけどさ。
  • 「フィクションを真に受けるほうがおかしい」って反論多いけど、『明日、ママがいない』に抗議している里親会も慈恵病院も声明文の中で施設や里親の虐待が存在していることを認めている
  • 今回のエントリは先週出すつもりだったんけど、『明日、ママがいない』に呆れ果てた15年近くやっている破壊屋史上第二位の大量アクセスとなった。おかげさまでhakayia.comのソフトウェアに障害発生、復旧&仕事が忙しいわで何もできなくなった。そしたら『明日、ママがいない』から全CM撤退⇒内容変更と情勢が毎日のように変わっていく。ちょっとタイミング逃してしまいました。
  • 内容変更についてはこちらにまとめました⇒『明日、ママがいない』の内容変更について
  • 「こんな文章書いたけどポストの親が出てきたらどうしよう」と思って俺は2話と3話も見てしまった。炎上商法は俺に効きまくっている。感想だけど、目の病気の少女や足の不自由な少女とか次々に出てくるのがすげえと思った。それと、なぜお笑いに徹しないのだろう?と強く思った。お涙ちょうだいをやるから商売色が色濃く出てくる。お笑いって社会問題を表現できる強力な武器なんだよね、問題を理解していないと笑えないから(だからやらないのか)。↓で超絶難しい社会問題をお笑いにした映画を紹介します。

知的障がい者のスポーツ大会なら八百長できるよな!というコメディ映画。酷い設定のように思えるが知的障がい者たちが活躍して金が動く場所があるからこそ生まれる設定だ。出演する知的障がい者たちはみんな本物。

在日外国人を題材にしたコメディ。在日朝鮮ヤクザや外国人犯罪も題材にした映画だがオープニングでは「事実に基づくフィクションです」と説明される。公開当時に問題になったのは、コリアンの主人公が従軍慰安婦問題をバカにされても全く気にしないのに料金踏み倒しの件になるといきなり本気を出すシーン。作ったヤツらは監督:崔洋一、原作:梁石日、脚本:鄭義信、製作:李鳳宇と在日コリアンの最強軍団!あらゆる映画賞を総なめにした1990年代日本映画の最高傑作

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『明日、ママがいない』の内容変更について

『明日、ママがいない』の内容変更の検討が決まった。ネット上では「クレーマーに屈した!」「残念すぎる!」って声が多数だ。そういう悔しい気持ちはすごくよくわかる。理不尽なクレームで自主規制の風潮が強まっているのも怖い。

でも内容変更の要求自体は小さいしどこまで要求を受けるかも決まっていない。要求は「施設長の暴言をやめる」「登場する子供のペット扱いをやめる」「ポストというあだ名をやめる」の3点。実際そういう子供は「ペットの里親」という言葉にすら自分を「ペットよりも価値がない」と連想して傷つく。またドラマの製作側は「ポスト」という言葉はもう既に減らしているとのこと。

『明日、ママがいない』の設定をやりたいのなら児童福祉の関係者を監修にして製作すべきだった。それを怠ったうえに野島伸司を監修にしたのは単なる暴挙。内容変更の受け入れは本来の製作の形になったとも言える。

今回は明らかに日本テレビ側の製作ミスだ。内容変更は一番手軽な妥協点。内容を変更せずに検証番組を作るという手もあるけど、そんな面倒なことはやらないだろうし最初から内容変更を想定していたはず。

それにしても肝心の日本テレビ&製作側が「表現の自由」に少しも興味を示していないのが凄い!視聴率とスポンサーの反応がすべてのテレビドラマならではの現象だろう。いまや日本テレビが興味あるのは「いかにして関係各位(スポンサー、芦田愛菜(バーニング周防)、野島伸司のメンツを潰さないか」という点だ。高須クリニックがスポンサーに名乗り出て既存のスポンサー企業のメンツが潰れる形になったのは面白かった。


『明日、ママがいない』が大嫌いでCM降板や内容変更のニュースを「当然だ」と感じている俺だけど、『明日、ママがいない』のBPO審議入りだけは絶対に避けるべき。さすがにこれがBPO審議入りになると表現の範囲が大きく狭まってしまう。『明日、ママがいない』擁護に大きな声をあげた人たちには、ドラマの作り手よりもお笑い芸人たちが多かった。彼らはBPO審議入りの恐ろしさに一番身近な存在なのだろう。

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『明日、ママがいない』に呆れ果てた

明日ママ5

21世紀で一番泣けるんですって。

『明日、ママがいない』騒動について雑感

『明日、ママがいない』への抗議に対する日本テレビの態度は、表現の自由を守るという意味で良かった。内部的にはどうか知らんが広報的には日本テレビが責任を被っていて、製作現場を守っているのも好感持てる。養護施設側からの質問は無視しすぎだけど。

俺は攻撃的なフィクションが大好きだけど、フィクションに抗議する児童養護施設協議会の怒りも当然だと思う。関係者たちの士気やプライドを守るためには強めの行動を起こす必要があるだろう。でも放送中止要求はやりすぎ。

このドラマで問題となっている描写を「ファンタジーだから」と擁護している人が多いけど、あれがファンタジーという感覚をこのドラマの想定視聴者層全員に適用するのは無理だよ。ファンタジーだと割り切るには冷めた視点が必要で、それを持っていない視聴者は多い。これは数年前に起きたケータイ小説をリアルだと感じる世代と、ギャグだと感じる世代の断絶に似ているモノがある。

俺の感想

で、俺のドラマの感想なんだけど、『明日、ママがいない』はどうしようもないクズドラマだ。いや、このドラマのメチャクチャさを面白がっている人たちの感覚は正しい。でも俺が真っ先に呆れたのは子供を虐待から保護する施設である児童養護施設を虐待の出発点として描いていることだ。

通常、施設と虐待事件のモデルになるのは水戸事件だ。それならわかる。ところがこのドラマは「こうのとりのゆりかご」の慈恵病院と結びつけてしまった。ハッキリ言ってこのドラマの製作側と日本テレビの見識を疑う。

日本テレビは「製作経緯を説明するつもりはない」と言うが、いつかどこかで誰かが製作経緯を語るべきだ。「愛やたくましさを描いています」という建前は広報に言わせておけ。
「連ドラって視聴者を挑発するのが鉄則だからやった、ターゲットは誰でも良かった」とか
「芦田愛菜で『家なき子』をやれって依頼されたので…」とか
そういう本音が知りたい。

今の時代と明日、ママがいない

俺が『明日、ママがいない』にかなり不愉快になった理由は簡単だ。認識がズレているからだ。俺の認識だと、こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)は子供を守る最前線だけど、このドラマの製作側は明らかにそういう認識を持っていない。

『明日、ママがいない』は、児童の虐待とそこからの保護を考えなくてはいけない現代の作品だとは思えない。戦後を舞台にしているのなら理解できるけど。

だからこのドラマの最大の欠点は作り手たちの認識が時代とズレているのだ!と指摘したいけれど、実際は視聴率が良好だし、褒めている人も多い。時代とズレていないのかもしれない。「子供が虐げられているところを見て感情移入したい!」という視聴者の欲望に日本テレビが的確に応えているのかも。

日本テレビが「最終回まで見てほしい」と主張しているのは、視聴率を稼ぎたいというよりも「最終回以外は毎回子どもたちが辛い目に遭って視聴者を泣かせるのがコンセプト」っていう事情だと思う。

まあ連ドラなのでこれから脚本にガンガン修正が入るはず。でも認識のズレがどうのこうの以前に、安易に泣かせを狙ってくるこの手の作品が大嫌いなので『明日、ママがいない』はもう観ない。

ペットショップの犬たち

ところで『明日、ママがいない』で俺が一番酷いと思ったのは、養護施設の院長が子供たちに向かって「お前たちはペットショップの犬と同じだ!泣け!上手く泣けたヤツからメシを食わせてやる!飼い主はペットのかわいさで選ぶんだ!」と言うシーンだ。

俺の頭の中では、この酷いセリフの情景と児童養護施設の情景が結びつかない。子供をペット扱いして上手く泣けたらご褒美という、この酷いセリフの情景と真っ先に結びつくのは現在の子役業界とアイドル業界、そして「21世紀で一番泣ける」と宣伝する『明日、ママがいない』そのものだろ

多くの子役たちがメジャーになれずレッスン料を取られ続け、アイドルたちはミニスカートや水着で過酷な労働をしている。ペットショップの頂点的な存在であるテレビ局が、子供を守る最前線である施設をネガティブに、そして不適切に描く。悪い意味で今の時代を写した作品だ。

オマケ1:タイガーマスク

2013年の児童映画と言えば『おしん』と『タイガーマスク』(伊達直人は養護施設への寄付の代名詞)だ。

2013年版の『タイガーマスク』の児童養護施設というか虎の穴は、まさにファンタジー施設だ。なんせ集められた子供たちが殺人術を学び、ボンテージ姿の平野綾がメシを用意する

駄作名高い『タイガーマスク』だけど、ちびっこハウスを守るために土下座しまくる温水洋一の姿は『明日、ママがいない』よりも泣ける

リンク先は公式サイト

オマケ2:おしん

おしん 豪華版(仮) [Blu-ray]

今から2013年版の『おしん』のラストシーンのネタバレを隠さずに書きます。

『明日、ママがいない』はNHK版『おしん』や『家なき子』と同じ系譜の作品だけど、2013年版の『おしん』はズバリ芦田愛菜路線を狙った作品だ。なんせおしん役の子役のためだけに芸能事務所が作られている。


この映画のラストシーンはかなり酷くて、幼いおしんが元気よく奉公先に行くのだ。しかもCGによる黄金色の特殊効果付きだ。

このラストシーンは「おしんが成長した」と解釈すべきなんだけど、それは難しい。身売りと児童労働がそのままハッピーエンドとして描かれていてどう考えても適切じゃない。NHK版『おしん』のように「過去にそういう辛い時代もあったけど乗り越えてきた」と回想形式にすべきだった。家族に尽くすために子供が出稼ぎ労働者になることが良いというのは、古代の儒教社会っぽさを感じる。

オマケ3:四コマでわかる『明日、ママがいない』

画像はクリックすれば大きくなります。


明日ママ1

芦田愛菜ちゃん演じるマコは、両親をオニババに殺されてしまいました。そしてマコのあだ名は「危険なジプシー」になってしまいました。後ろに写っているのがオニババです。


明日ママ2

そんなマコちゃんはある日、素敵なおじ様と出会いました。


明日ママ3

おじ様は紳士的な優しさと野生の厳しさを兼ね備えた上に「子どもの未来どころか、人類の未来を託してもいいんじゃね?」レベルで頼りがいのあるおじ様でした。ややネタバレなので小さい画像にしておきます。


明日ママ4

こうしてマコちゃんはおじ様の娘になりました。そしておじ様から厳しい訓練を受けた結果、手からプラズマキャノンが出せるようになりました


間違えた。これは映画秘宝が2013年最高の映画に選んだ『パシフィック・リム』のストーリーだ!

パシフィック・リム 3D & 2D ブルーレイセット (3枚組)(初回数量限定生産) [Blu-ray]

ちなみに『パシフィック・リム』の「ジプシー・デンジャー」の「ジプシー」は第二次世界大戦前のエンジンの名前から来ています。

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『あまちゃん』が東日本大震災を描いたけれど、阪神淡路大震災の時はどうだった?

『あまちゃん』が東日本大震災を描いて大きな話題になった。震災の回はかなりの緊張感を持って迎えられていたね。作品の中で東日本大震災と向き合うというのはまだまだ難しいんだなと感じる一方で、これで「あまちゃん以降」という区切りが生まれたので今後は色々な作品の中で東日本大震災が描かれることになると思う。

ところで阪神淡路大震災はどうやって映画の中で描かれたのだろうか。俺が印象に残っている3本の映画を取り上げます。寅さん以外の2本は両方とも関西映画で日本映画史に残るレベルの大傑作です。

第48作 男はつらいよ 寅次郎紅の花 HDリマスター版 [DVD]

寅さんシリーズの最終作。

まずは阪神淡路大震災と同じ1995年に公開された『男はつらいよ 寅次郎紅の花』から。阪神淡路大震災は1月に起きて、『寅次郎紅の花』は12月に公開された。本作が阪神淡路大震災を取り上げたことは公開大きな話題になった。

男はつらいよ01

劇中の時期は1995年の夏の終り。オープニングは寅さんへの連絡を乞う新聞広告から始まる。寅さんが1995年の1月に神戸に行ってからというのも、連絡が途絶えていた。神戸では震災が起きたのでみんな心配しているのだ。

男はつらいよ02

寅さんの妹たちは震災当時を振り返るニュース映像を見る。「ボランティア元年」は実際にある言葉で1995年を意味する。

男はつらいよ10

倒壊する家屋のシーンで顔を背ける妹のさくら。

男はつらいよ12

当時をリアルタイムで知っている人は、避難所を訪問する村山首相が印象に残っているであろう。しかしそのとき…。

男はつらいよ03

村山首相の隣でやたら偉そうな男が…。寅さんだ!

男はつらいよ04

「テレビを見ていると寅さんが出てくる」というのはこのシリーズが何度かやっている定番ギャグなんだけど、村山首相に馴れ馴れしい態度をとるギャグは破壊的に面白い。

男はつらいよ05

っていうか首相と知り合いになっているのかよ寅さん!

男はつらいよ06

こうして寅さんは震災でも死んでいなかったことが判明するのだ。

男はつらいよ08

映画のラストシーンは1996年の正月。寅さんはボランティアとして活動していた神戸の長田区に再び向かう。長田区は壊滅的な打撃を受けた場所で一部更地になっている。また長田区は在日コリアンの多い街なので、このシーンはずっと朝鮮舞踊が写っている。

男はつらいよ09

復興を象徴する神戸のパン屋の夫婦を演じるのは宮川大助・花子。

男はつらいよ13

これはシリーズ全体のネタバレになるので画像を小さくしておきます(クリックすれば大きくなります)。

本来はこのあとに2本作って寅さんシリーズは完結する予定だったが、渥美清は1996年にガンで死去。これが寅さんと渥美清の最後のセリフとなった。それを踏まえると渥美清の笑顔とセリフだけで泣けてくる。まさに「ご苦労様」である。

撮影中の渥美清には肝臓と肺にガンが転移しており、画像からもわかるようにガンの症状で顔がむくんでいる。顔がデカいことで有名な宮川大助と同じくらいの大きさになっている。

渥美清はとてもじゃないけど撮影できる状態ではなかったとのこと。実際、寅さんの登場シーンはだいぶ少なくなっているけど、それでも寅さんらしさを失わないように脚本でかなり工夫している作品だ。

男はつらいよ14

これが『男はつらいよ』全48作の最終シーン(クリックすれば大きくなります)。50作で完結予定だったので物語的には中途半端な状態で終わってしまった。しかし阪神淡路大震災後の更地と仮設住宅を写しながら、復興に向けた正月を写しながら終わるというのは正月映画『男はつらいよ』の最期に相応しい。


顔

商品専門検索エンジンgarittoから転載させてもらった画像

次は阪神淡路大震災の5年後の2000年に公開された『顔』。内容は美人の妹(牧瀬里穂)を殺した引きこもり中年のヒロイン(藤山直美)の逃亡劇が描かれている。

顔 [DVD]

2000年最高の日本映画で、数々の映画賞を受賞している。俺もゼロ年代を象徴する日本映画だと思っている。
予告編はこちら、中村勘三郎がなんとレイプ犯を演じている。

阪神淡路大震災は映画の前半で発生する。殺人犯となった姉はラブホテルの住込み従業員として潜伏しているが、そこで大きな地震が発生する。ヒロインは地震が妹を殺した自分に対する罰だと思い「バチが当たった!バチが当たった!」と揺れの中、右往左往する。

ラブホテルの経営者(岸部一徳)が「家族連れが来たらラブホテルに入れてあげてください」と言う心優しいシーンが印象的だ。だがこのあとに衝撃的なシーンがある。

震災後にヒロインが喫茶店のテレビで阪神淡路大震災の報道映像を見ていると、謎の女(内田春菊)に声をかけられる。二人は震災について会話した後に、大震災で死んだ人のために手を合わせるのだが………。この謎の女のモデルは実在の殺人者:福田和子なのである!つまりこのシーンはヒロインと福田和子という二人の人殺しが震災で死んだ人を弔うという皮肉なのだ!


シャブ極道 [DVD]

あまりにもヤバすぎる内容な上にDVDが絶版となり、中古DVDに高額なプレミアがついている状態だった。しかし今月下旬に祝・再発売!定価で買えるチャンスだ!
全部読むには課金が必要だけど、俺の『シャブ極道』評はWeb雑誌cakesで読めます⇒表現の自由を教えてくれた映画『シャブ極道』

最後は阪神淡路大震災の1年後の1996年に公開された『シャブ極道』。この映画の阪神淡路大震災ネタを解説することは、映画の完全なネタバレになるので注意してほしい。

主人公は「シャブを売って打って売りまくって日本を幸せにするんやー」という超危険思想の暴力団組長(役所広司)。主人公は弱小暴力団の組長なのに、シャブ禁止を掲げる日本最大の広域暴力団松田組(っていうか山口組ですね)と対立する。

主人公は松田組に親友を殺されたショックとシャブの打ちすぎで発狂状態になり、松田組の組長を殺す決意をする!あまりにも無謀すぎるため主人公の妻が止めようとするが、そのとき突然何もかもが揺れ出す!シャブの症状ではない、阪神淡路大震災が起きたのだ。発狂している主人公は地震を神からの祝福と解釈し、揺れの中走り出す。妻は地震で立つことができず主人公を止めることができない。

そして神戸は大打撃を負った。松田組は阪神淡路大震災の被災者を救おうと支援活動を行っているが、主人公はその隙を狙って松田組組長を殺そうとする!

俺は高校生の頃に『シャブ極道』を映画館で観たとき、この阪神淡路大震災のシーンで全身が震え上がるほどの衝撃を受けた。起きたばっかりの震災を過激なドラマに組み込んでしまうパワーに打ちのめされた。

ちなみに『シャブ極道』は18禁なので、年をごまかして観に行った。今だったらきっと俺のツイッターは炎上しているだろう。


『顔』も『シャブ極道』も強烈な生きる力を持っている犯罪者の主人公が、震災すらもその力で突き抜けてしまう様子を描いている。

東日本大震災で同じことを描くのは難しい。東日本大震災は津波が何もかもを奪い、原発が世界を脅かし、被災地は風評被害で延々と苦しめられ、首都圏への影響も大きかった。悲劇を比べるのは愚かだけど、やはり東日本大震災のほうが傷ついた人が多い。これに取り組んだ『あまちゃん』は確かに凄いと思う一方で、6434人が亡くなった阪神淡路大震災をネタに『顔』や『シャブ極道』を生み出せる関西パワーにも圧倒される。映画だろうがドラマだろうが作品にも災害と立ち向かう力がある。

『男はつらいよ 寅次郎紅の花』のCG合成は『フォレスト・ガンプ』の影響を受けたのだろう。

東日本大震災を題材にしたコメディは既に2012年に公開されている!俺の映画評はこちら⇒放射能とレディ・ガガ 東日本大震災コメディ映画『青いソラ白い雲』

阪神淡路大震災そのものを描いた作品。薬師丸ひろ子も出ている。

2014年にはシャブい役所広司が『渇き。』で帰ってくるぞ!


こういうエントリ書くと「テレビドラマ○○が阪神大震災扱ってますよ!」っていう情報が大量に寄せられますが、そういうのはいらないです。映画限定だし、取り上げるつもりもありません。

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『風立ちぬ』がつまらなかった…

ツイッターで呟いたので、ここにも載せておきます。

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